巴さんを探すこと数十分。
比較的早くに見つけることが出来た。
病院に戻った時にはすでに夕方になっていた。
巴さんは昨日の事でまだ起こっているようだったがそのことを口には出さなかった。
まあ視線がかなり痛かったが。
「ここね」
バッグを地面に置いてグリーフシードがあった場所を見る。
そして巴さんはそこに手をかざした。
すると、グリーフシードがあった壁にあの門のような物が現れた。
【キュゥべえ、状況は?】
【まだ大丈夫。すぐに孵化する様子はないよ】
キュウベぇから現状を聞いた。
それによれば、まだ予断は許さない状態らしい。
【さやかちゃん、大丈夫?】
【平気平気。退屈で居眠りしちゃいそう】
まどかの心配そうな声に、心配させまいとわざとか、それとも素でそうなのかは分からないが、元気そうに答えた。
【むしろ、迂闊に大きな魔力を使って卵を刺激する方がマズい。急がなくていいから、なるべく静かに来てくれるかい?】
【分かったわ】
キュウベぇの指示を聞いて、俺達は結界内に入った。
結界内はいつもと同じように異色だった。
瓶の中に入っているはさみやら周りがお菓子だらけと言う事やらがそれを物語っていた。
「間に合ってよかった」
まどかの手を引きながら、巴さんは前へと進む。
「無茶し過ぎ……って怒りたいところだけど、今回に限っては冴えた手だったわ。これなら魔女を取り逃がす心配も……」
巴さんがこっちを振り向くと、話すのをやめた。
俺とまどかは巴さんにならって後ろを振り向くと……
「え?あっ」
そこにいたのは暁美さんだった。
「言ったはずよね?二度と会いたくないって」
巴さんは敵意をむき出しに声をかけた。
「今回の獲物は私が狩る。貴女達は手を引いて」
「そうもいかないわ。美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないと」
暁美さんの提案を巴さんが退けた。
「その二人の安全は保証するわ」
「信用すると思って?」
巴さんがそう言って暁美さんに手をかざすと、黄色のロープのようなものが現れて、暁美さんを縛り上げた。
「ば、馬鹿。こんなことやってる場合じゃ」
「もちろん怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保障しかねるわ」
「今度の魔女は、これまでの奴らとはわけが違う」
「おとなしくしていれば帰りにちゃんと解放してあげる」
「お、おいちょっと待ってよ!!」
俺は巴さんに慌てて話し掛けた。
「今日は彼女を信用してみたらどうだ?それで今後の対応を考えても遅くないと思うけど」
「………」
俺の言葉を聞いた巴さんは初めて俺に対して敵意をむき出しにして睨みつけた。
「なっ!?ぐぅッ!!」
そして俺に手をかざしたかと思うと、俺は暁美さんのように縛られていた。
「ごめんなさいね。時間がないの。ちょっと邪魔だからそこでおとなしくしていれば彼女と一緒に開放してあげるわ。行きましょう、鹿目さん」
「え……あ、はい」
俺は二人が去っていくのを見ていることしかできなかった。
(何だか頭に来た)
待っているとどんどんと怒りがわいてきた。
俺はさっき何をした?
――彼女を信用しろと説得した。
それなのに、この仕打ちは俺の怒りを沸かせるのに十分だった。
「……はっ!!!」
俺は気を放って体中にまきつくロープを砕いた。
「なっ!?」
暁美さんが驚く声が聞こえるが、俺は暁美さんに『彼女の事は任せて』と告げるとそのまま二人の歩いて行った方向へと、全速力で走った。
勘で走ってすぐに魔女がいる場所へと辿り着いた俺が見たのは
「ティロ・フィナーレ!!」
彼女の十八番でもある『ティロ・フィナーレ』を放った巴さんだった。
(よし、戻ったら文句でも言ってやる)
俺はそう心の中で考えている時だった。
巴さんが打ち抜いた魔女から大きな生命体が現れて、それが一気に巴さんの目前に迫った。
「なっ!!?」
そしてその生命体は、口を大きく開いて巴さんを飲み込もうとしていた。
俺は慌てて巴さんの方へと掛けて行った。
3人称Side
結界の中にマミとまどかが入って数十分。
結界のあった場所には人影があった。
しかし、その中に巴 マミと小野 渉の姿はなかった。
Side out
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