「うおおおおお!!!」
「はぁあああああ!!!」
最初に仕掛けてきたのは、ドリュールさんだった。
ドリュールさんは俺に向けて鉄球を投げてきた。
どうやら斧と繋がっているようだ。
俺はそれを神剣二本を交差させて防ぐと、真横に逸らした。
次の瞬間、ものすごい音と共に、鉄球が地面に命中した。
(ものすごい威力だ。あんなの一度でも喰らってらひとったまりもない)
俺は、地面にめり込んでいる鉄球を見ながらそう考えると、改めて気を引き締める。
「俺の攻撃を防ぐとは、中々やるな小僧」
「それはどうも。貴方も、とてもお強い」
ドリュールさんの言葉に、俺も答える。
お互いに視線は逸らさない。
目の前に立っている人は、ただのガタイのいい人ではない。
完全な武人だ。
(少しは楽しめそうだな)
「でも……」
「「勝つのは俺だ!!」」
俺とドリュールさんの声がそろった。
そして一気に動き出す。
俺は、持ち前の機動力を生かして彼の背後を取る。
「ッ!?」
「せいやぁ!!」
背後を取り、さらに不意を突いた一撃。
決まるかと思ったが、ドリュールさんは前方に移動することでこの一撃を回避した。
「貰ったぁ!!」
「しまッ!?」
空振りしたことで完全に体勢が崩れた俺に、ドリュールさんは斧を振りかざす。
(仕方ない、あれを使うか!!)
俺はそう考えると、即座に左手をかざす。
次の瞬間、目の前まで迫っていたドリュールさんの斧は少しだけ遠ざかった。
その隙を狙って、俺は転がるようにしてその場から離れる。
すると、今まで俺の立っていた場所に斧が突き刺さった。
「何っ!?」
ドリュールさんが驚きのあまり声を上げる。
だが、俺は次の行動に移っていた。
「驚いている場合ではないぞ?」
「ッ!?」
ドリュールさんの真横に移動した俺の言葉に、彼は驚きながら俺の方を見る。
「紋章術、滅」
「ッぐ!?」
それは、ただ純粋に斬りつけるだけの技だ。
だが今の攻撃が通ったようで、ドリュールさんは脇腹を抑えていた。
俺は、それを確認するまでもなく元の位置に戻った。
「中々やるな小僧。この俺にダメージを与えるとは」
「いえいえ。ただのまぐれですよ」
ドリュールさんの称賛の声に、俺は謙虚に答えた。
だが実際には、俺は与えられる自信があった。
ドリュールさんはおそらく攻撃型。
一撃一撃の攻撃力が馬鹿でかいのが特徴の攻撃型は、機動力がないのが欠点だ。
もちろん全員が全員そうだとは言えない。
だが、今目の前にいる人物には言えそうだ。
だとすれば俺の取るべき行動は――――
(攻撃の威力を捨てて、速さで勝負をかける)
地道な戦いになるが、これならば勝率は少しは高まる。
「はあああ!!」
「うおおおお!!!」
そして俺達は再び駆けだす。
ある時は背後を取り、またある時は背後を取られ。
互いに苦戦しあうが、とうとう決着のときは訪れた。
「うおおおおお!!!」
ドリュールさんが鉄球を投げつける。
(今だっ!)
その時を見計らって、俺は再び先ほどやったように左手をかざす。
次の瞬間、ドリュールさんの放った鉄球は少しではあるが俺から遠ざかっていった。
それを確認しながら、俺はドリュールさんの背後を取る。
「何!?」
「紋章術、裂空一文字!!!」
それはブリオッシュさんの使った紋章術だった。
彼女よりはやや劣るものの、弧を描いてドリュールさんを切り裂いた。
「ぐううう!!?」
「拙者の紋章術を……やはり渉殿は」
防具のようなものが壊れ、ドリュールさんは地面に膝をつけた。
この時、軍配は俺に上がった。
「見事だ小僧」
「恐縮です」
ドリュールさんは静かに呟いた。
「お館さま―! 渉殿ー! 大変でございます! 敵増援でございます!」
そんな時、ユキカゼさんからの警告が聞こえてきた。
「数は?」
「それが、一騎のみであります。レオ姫様が一騎掛けでいらしているであります!」
ブリオッシュさんの問いかけに、リコが答えた。
(レオ姫?)
俺は突然出てきた名前に、首を傾げる。
「ふむ……渉殿、すまぬが奥の方に向かってくれないでござるか?」
「分かりました。それでは失礼をば」
ブリオッシュさんの指示に、俺は素直に従う。
こういった場所での上に立つ者の指示には、素直に従っておく方がいい物だ。
まあ、従ってはいけないときもあることにはあるが。
「ドリュールさん、また機会がありましたら、お手合わせをお願いします」
「俺もだ。次こそは俺が勝たせてもらおうぞ!」
ドリュールさんの言葉を聞きながら、俺はその場を後にしたのであった。
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