来てしまった。
いや、ここに来るのが嫌な訳ではない。
だが、なんとなく嫌なんだよな。
(絶対のこの前の事で文句を言われる)
そう思った時両肩を掴む人物がいた。
同時に、ものすごいオーラを背後から感じる。
「渉殿?」
「私たちに、何か言う事はないでござる?」
うん、やっぱり怒ってた。
声は穏やかなのに、二人が放つオーラは全く穏やかじゃない!!
「わ、悪かったって。でもあんな状態で寝られるほど、俺は図太い神経はしてないんだ!」
「「……イクジナシ」」
二人は俺に向かって呆れた風に言った。
(二人同時に言わなくても良いだろうに)
俺はため息を一つつくと、後ろを振り向いた。
「二人に頼みがある」
「「た、頼みでござるか!?」」
俺の切り出した言葉に、二人が驚いた様子で叫んだ。
………なぜか頬を赤らめて。
「な、何でござるか? (渉殿の頼み……これってもしかしてデートの誘いでござるか!?)」
「私達に出来る事だったら何でもするでござるよ(デートの誘いでござろうか? でも二人一緒だなんて……複雑でござる)」
(………)
何でだろう、二人の心の声が聞こえてきそうな気がする。
きっと俺の思い違いだろう。
俺も疲れてるのかもしれない。
「魔物関連の事だ」
「「………」」
俺の言葉に、二人の表情が変わった。
決して、がっかりとした表情はしていない。
「なるほど……事情は分かった。ユキカゼ、準備を」
「はい! お館さま」
ロランさんから聞いたことをそのままブリオッシュに告げると、ユキカゼに指示を出した。
「悪い。こういう魔物関連については二人の方がエキスパートだから、頼らせてもらったが、迷惑だったか?」
「まったく。逆にうれしいでござるよ」
ブリオッシュは、微笑みながら答えた。
「嬉しい?」
「うん。だって――「お館さま―! 早く来てください!」――それじゃ、私も失礼するでござるよ。ちょっとだけ待ってて欲しいでござる」
何かを言おうとしたブリオッシュの言葉を遮るように、ユキカゼが早く来るように促すと、ブリオッシュは少しばかり急いだ様子で、屋敷の中に入って行った。
その後、二人が出てくるまで、俺は静かに待つのであった。
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