風月庵に言った二日後、俺は宛がわれた部屋で目を覚ました。
「………」
だが、最初に感じたのは、倦怠感だった。
体がまるで鉛のように重い。
しかも何だか体がほてっているような気も。
(風邪か?)
俺はそう解釈すると、自分の体に治癒能力を高める術式を組むとベッドから起き上がった。
風邪程度でどうにかなるほど、俺は軟じゃない。
そして俺は礼装を着ると外に出た。
朝食を食べ終えた俺が、エクレールに連れて行かれたのは、騎士団長でもありエクレールの兄でもあるロランさんの所だった。
「魔物退治!?」
そして唐突に告げられた内容に、エクレールが声を上げた。
「そうだ。姫様によると、ここから少々離れた森の方で大きめの魔物が姿を現したようだ。まあ、野生動物とは思うが、危険であるため退治する様にとの事だ」
ロランさんが説明するが、俺はちっとも頭に入ってこない。
なぜならば体の調子が起きた時よりさらに悪くなっているのだ。
体が重くてまっすぐ歩けなく、体がふらふらする。
(これってもしかして……)
俺はその症状に心当たりがあった。
だが、それは今の俺にとっては最悪な事態でしかない。
「――――る、渉!!」
「な、何だ!?」
考えに耽っていると、突然耳元で大きな声で呼ばれ、俺は驚きのあまり飛び退いた。
「『何だ』ではない! 話を聞いていたのか?」
「悪い、聞いて――――ごふぁ!?」
答えるよりも前に、エクレールに頭を殴られた。
「魔物退治だ! お前が向かうのだ!!」
「なぜに?」
「生憎、人員が割けないのだ。勇者殿も主席と共にお城内を歩いている。エクレールも、この後訓練が合って手を離せない。そこで君に頼みたいのだ。引き受けてくれるか?」
俺の疑問に、ロランさんが答えてくれた。
俺の答えなど、既に決まっている。
「勿論ですよ。その任務、引き受けさせてもらいます」
「そうか。では、早速で悪いが準備を整え次第向かってくれ」
「はい!」
俺はロランさんに威勢よく返事をする。
俺の体調の事が心配だ。
何も起こらなければいいが。
「あの、ロランさん」
「何かな?」
「この魔物退治に、ダルキアン卿たちを連れて行っても良いでしょうか?」
俺はロランさんに訪ねた。
魔物退治であれば人員も多い方がいい。
あの二人はそれに最適だった。
「勿論だ。二人が快く引き受けてくれたら、だが」
ロランさんもOKを出してくれた。
俺は微妙にOKを出さない場面が想像できなかった。
「それでは、失礼します」
俺は、ロランさんに一礼するとそのままフィリアンノ城を後にする。
神剣はすでに持っているので、問題はない。
問題があるとすれば……誰を誘うかだ。
ユキカゼかブリオッシュか、それとも二人か。
ユキカゼを誘えば機動力を生かした戦いが出来そうだ。
逆にブリオッシュを誘えば、同じ剣の使い手として相性的にはいいだろう。
もしくは二人を誘えば、人員的にはこれ以上ないほど万全だろう。
(さて、どうするか………)
俺は、誰を誘うかを考えながら風月庵へと向かうのであった。
こうして、突如湧いて起こった魔物退治が始まった。
[1回]
PR