「クソッ!」
俺は机を思いっきり殴った。
理由は今日の戦闘だ。
「この俺が……負けるだなんて」
負け方もとても惨めだった。
俺の攻撃をそのまま跳ね返されたのだ。
(こうなったら、とことんやり合ってやる!!)
【……やめておきなさい】
俺の決心と同時に、俺の頭の中に女性の声が響いてきた。
この感覚を俺は知っている。
この声は、神様だ。
【どういうことだよ!】
【そのままの意味よ】
俺の一言はバッサリと切り捨てられた。
【あなた、前に私がした忠告は覚えてる?】
【……世界のうんたらには見つかるなっちゅう奴か?】
俺は神様の問いかけでその時の事を思い出した。
【半分正解ね。正確には、世界の意志には見つからないで、よ】
【でもどうして見つかったらいけないんだよ】
【見つかれば、間違いなく消されるわ】
俺は神様の言葉を聞いた瞬間、何の冗談だと思った。
一応俺は今最強の力を手にしている。
そんな俺が敗れるわけ……
【破れてるじゃない。戦歴のない彼に】
【なっ!!? あいつ、あれが初戦なのかよ!?】
俺は衝撃を覚えた。
俺は初戦の奴に負けたのかよ!?
【まあ、彼も少しは戦っているだろうけど、日は浅いはず。力量差は明らかなのにあなたに引けを取っていない理由は……】
【理由は!?】
もしかしたら弱点が聞けるかもしれないと思い、俺は先を促す。
だが、神様から語られたのは俺の予想を上回るものだった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「……なあ」
「………」
俺はさっきから何度目かもわからない声をかけた。
しかし執行人は、只々沈黙するだけだった。
「もしかして、怒ってるのか?」
「……いや、そんなことはない。呆れてただけだ」
ようやく口を開いたかと思えば、帰ってきたのは、そんな言葉だった。
「勘違いするな。自分にだ」
「なんでだよ。お前のおかげでここまで強くなれたんだし」
俺の言葉に、執行人は鼻で笑った。
「だが、僕自身は何もしていない。それが一番悔しいんだ」
「………」
俺は執行人に何もいうことが出来なかった。
「僕の力があれば、お前には嫌な役割を押し付けることはないんだろうが……情けないものだ」
「でも、俺が強くなれば執行人だって本当の姿を現せるんだろ?だったら俺はこれからどんどん強くなっていくぞ」
俺の言葉に、執行人は無言だった。
「っふ、お前らしい。だが、もう夜も遅い。早く寝ろ」
そういうと、執行人は二度と何もいう事はなかった。
そして俺も眠りにつくのだった。
しかし、俺は知らなかった。
この翌日、とんでもない事態が発生するという事を。
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