「………」
今の状況を説明しよう。
俺ははやての遠縁の親せきの人達が帰ってくるのを待っていた。
そして入ってきたのは、俺を襲ってきた赤い少女と、ピンク色の髪を後ろに束ねている女性だった。
「「なぜ(なんで)お前(てめぇ)がここにいる!!」」
「あら、山本君」
シャマルさんとほかの二人の言っていることが見事に逆だ。
「って、シャマル、こいつ知ってるのかよ!?」
「この間話したはやてちゃんのお友達よ」
女性に答えるシャマルさんだが、少女は武器を手にしていた。
「おらあああああ!!!」
「っ!!?」
そして一気にこっちにハンマーを振り下ろす。
俺はとっさのことで反応が出来なかった。
しかし……
「なっ!?」
「え!?」
シャマルさん達が驚きの声を上げる。
それもそのはずだ、誰もいないはずなのに少女のハンマーが止まっているからだ。
まるで、誰かが防いでいるように……
「全く、本当に攻撃を仕掛けてくるとはな……ま、分かりやすい軌道だったから防ぐのも簡単ではあったが」
「だ、誰だてめえ!!!」
執行人の声に、少女が警戒心むき出しで吼える。
まあ、誰もいないのに声がすれば当然だろうが。
「やれやれ、人に名を尋ねるのであれば己から名乗るのが流儀だと教わっていないのか? ………まあ良い。わが名は無名の魔導師、執行人とでも呼んでくれ」
「確かにお前のいう事も一理ある。ヴォルケンリッターが将、シグナムだ」
「………鉄槌の騎士、ヴィータだ」
「それじゃあ、私も改めて……癒しの騎士、シャマルです」
「えっと、山本 真人です」
完全に俺達は執行人のペースに巻き込まれていた。
「さて、このまま帰る……と言ってもお前らは帰す気はないよな」
「ああ、その通りだ。主の事が管理局に知らされてもらっては困るからな」
執行人の言葉にシグナムさんが当然だと言わんばかりに答える。
「あの、管理局って何?」
そんな中、俺は気になる単語があったので尋ねることにした。
「あんた管理局知らねえのかよ?」
「管理局と言うのは全次元世界の平和を歌っている偽善者が集う場所だ」
管理局を知っていないことに、呆れながら言うヴィータと、どことなく怒りを込めて言う執行人。
「………そこであんたらに提案なんだが、こいつの魔法の特訓をして貰いたい」
「何?」
執行人の突然の提案にシグナムさん達の表情が険しくなる。
ちなみに何度も言うが、執行人の姿は誰にも見えていない。
「こいつは知識はあるが、戦闘経験が皆無だ。そこでお前たちに戦闘訓練をして貰いたいんだ」
「しかし、お前の方が適任ではないか?」
シグナムさんがもっともなことを言う。
「確かにそうなのだが、僕はどうも実技に関しては教えるのに向いてないみたいでな。そっちの方が実技の方では、いい師匠になれるだろう?それともお前の称号はただのお飾りか」
執行人のあからさまな挑発にシグナムさんが載せられた。
「良いだろう。それほど言われたなら、やってやろうではないか!」
「OK,それなら代わりに僕たちはそっちのやっていることを手伝おう」
「お、おい! 俺を無視して話を――分かった――」
俺の意志はどこへやら、いつの間にか協定が結ばれていた。
「だからな俺の―――」
「良かったなー、真人よ。これでお前は強くなれるぞ?」
俺の言葉を遮るように執行人がう嬉しそうに声をかけてきた。
ただ俺は一言だけ言いたかった。
「俺の話を聞いてくれー!!!!」
こうして、俺達のエンカウントは終わったのだ。
[0回]
PR