「今日はここまでだ」
「あ、ありがとう……ございました」
あれから何日目になるのか、俺はシグナムさんによってビシビシ鍛えられていた。
「……どうだシグナム。こいつの調子は?」
「うむ、よくもなければ悪くもない」
「うぅぅ……」
執行人の言葉に、シグナムさんはいつものように容赦ない答えを返した。
「だが、最初の頃よりは格段に良くはなっている」
「ッ!? あ、ありがとうございます!!」
初めて褒められたので、俺はつい舞い上がってお礼を言った。
「調子づく前に早く家に戻るぞ。お前の母親が心配するのではないか?」
「おっと! それじゃ、失礼します!!」
執行人の促しに、俺は慌ててシグナムさんに一礼すると、家に走って行った。
【なあ、執行人】
夜、ベッドに横になりながら、俺は部屋のどこかにいるであろう執行人に声をかけた。
【なんだ? 真人】
いつもの口調で、返してきた。
【もしかしてだけど俺がやらないといけない義務て言うのは、他にもあるんじゃないか?】
【ほぅ、なぜそう思う】
俺の言葉に、口調も変えずに答える執行人に、俺はさらに言葉をつづけた。
【いや、なんとなくだけど……】
【………お前は勘だけは鋭いな】
呆れた様子で執行人は答えた。
いくらなんでも俺に理由がわかるわけがない。
本当に勘なのだから。
【真人、お前は転生者と言うものを知っているか?】
【え? あ、ああ知ってるけど……】
唐突な問いかけに俺は答えた。
―――転生者
よくクラスメイトが話していたのが聞こえてきたときに聞いた言葉だ。
【転生者と言うのは、一度何らかの理由で死んだ者が神様の力によって別世界もしくは同じ世界で再び生きるようになる奴の事を言う】
【でもその転生者と俺の義務と何の関係が?】
俺はたまらずに聞いた。
だが、執行人の言葉は俺の予想の上を行くものだった。
【真人の義務と言うのは、その転生者を排除することだ】
【………は!?】
俺はそれしか言う事が出来なかった。
【な、何で排除をしないといけないんだよ?!】
執行人の言う”排除”が、”殺す”と言う意味ぐらい、俺でもわかった。
【転生者は、世界にとって毒だ。だから排除しなければならない】
【それってどういう意味だよ!!】
俺は分からなかった。
世界とか毒とか言われても、俺には何もわからない。
【世界単体には溜め込められる力の許容量がある。ここまでは良いか?】
【ああ、大丈夫】
俺の答えを聞いて満足したのか、執行人はさらに話を進めた。
【転生者はその大体が強靭な力を得る。それによって世界バランスが崩れるんだ。ここまでは良いか?】
【なんとか】
【それだけではなく、転生者の大多数が不誠実な目的で転生する。世界の女たちを誑し込もうとしたり、世界征服をしたりなどなど………真人はそう言ったやつらを排除するのが責務だ。ここまでは良いか?】
【ああ。でも、もしちゃんとしたやつだったら排除とかしなくてもいいんだよな?】
俺はすがる思いで執行人に聞いた。
【もちろんだ。だがそれを決めるのは僕の役目だ。真人は排除するだけだ】
【………】
俺は執行人の言葉に、言葉にはできない不安を覚えた。
【もう夜も遅い。早く寝ろ】
【あ、ああ】
俺は執行人の言葉に、心の中で執行人がまともな奴であることを願いながら、無理につくのだった。
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