俺は今授業中だ。
「三角形の内角の和は180度です。よってこの角度は――――」
その授業を聞きながら、俺はもう一方の講演会に耳を傾けていた。
【魔法と言うのは俗にいう、奇跡を起こす力だ。もちろん一般人には使うことはできず、この力が使える者は絶大な力とそれ相応の責任が追い求められる】
【責任?】
俺の疑問に、声は淡々と答え始める。
【そう、責任だ。魔法は人を殺したり傷つけたりする武器にもなる。だから魔法と言う力を使うのであれば、覚悟を決めることだ。これからもお前は人を傷つけたり殺めることがあるだろうからな】
まさかと思いたかったが、それはできなかった。
なぜなら昨日、俺はすでにその兆しを見たからだ。
(俺の攻撃が、もしあの子に通っていたら……)
俺はぞっとした。
【そうだ。そのように力の恐ろしさを認識できただけで、お前は少し強くなった】
声はそんな俺を励ますのかどうかは知らないが、声をかけてきた。
【ところで、お前は誰なんだ?】
【………そうだな。今は言わないでおいてやろう。だが……そうだな、名乗るとすれば執行人だな】
その執行人と名乗る男は、それ以上自分のことについて語らなかった。
【試験とは一体なんだったんだ?】
【お前は一度死んだときに、なぜ死ななければいけないのかと疑問を抱いた。その強い思いが僕をここに呼び出したんだ。そして僕はお前に気づかせるチャンスを与えた】
【チャンス?】
【もう一度同じ日を過ごしてもらい、そして前と同じ行動をするかどうか……それが今回の試験だったということだ】
執行人はそう説明するが、俺にはちんぷんかんぷんだった。
【つまり、俺はあの時とは同じ行動をしなかったから合格と言う事か?】
【まあそういう事だ。今まで僕を呼び出すことはできても、全員同じ行動をして死んでいたからな。お前さんが初めての合格者であり、わがマスターになる権利を持ったということだ】
あまり分からないがそういうものなのかと納得することにした。
【と言うことは、お前も戦えたりするのか?】
【ああもちろんだ。戦えば100%勝利で飾るだろう】
(だったらどうして戦わないんだ?)
そんな俺の疑問を感じたのか、執行人は声を出した。
【今はまだマスターの力が弱い。だから僕も力を出すことはできない。今こうやって姿を出せないのも、マスターの力不足が原因だ。マスターの力が強くなれば、僕は姿を現したり、消したりすることが出来るようになる】
要するに今の俺はまだまだ弱いと言うことになるのか。
【まあ心配するな。これから僕と一緒に魔法の練習をすればいいのだし、それに僕だってサポート系の魔法位なら使えるからな】
【それじゃあ、魔法を教えてくれ!!】
俺は速攻で執行人に頼んだ。
またいつかあの少女が現れるかもしれないのだ。
だから俺自身も力を付けなければいけない。
【その言葉を待っていたのだ!よし、では今日の放課後から特訓を始めるぞ】
【はい!!】
俺は執行人にはっきりと返事をした。
この時、俺はまだ魔法の特訓がどんなものなのかを、知っていなかった。
そのことを知った時、俺はこの時の自分の言葉にどれほど後悔したのかは予想もできなかった。
かくして、俺の魔法の特訓はこうして始まったのだ。
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