【では今日も、魔法の特訓を始める】
【おー】
もう今日で二日目。
どうでも良いがこの特訓は、かなり疲れるのだ。
【それじゃ仮想空間シュミレーションをする。目を閉じていつものようにして接続しろ】
俺は執行人にせかされるように、目を閉じて剣を手に集中する。
そして一瞬光が走り、俺は目を開けた。
そこはさっきまでの俺の部屋ではなく、一面砂漠の空間だった。
最初ここに来た時は、かなり驚いたものだ。
何でも、ここは仮想空間と言うもので、執行人が作り出した架空世界らしい。
「さて、それじゃまずはいつものシュート練習から始める。理論は頭に叩き込んでいるから今日でマスターしてもらうぞ」
そして俺の前には光の球だが執行人の姿があった。
何でも、ここだと光の球状態ではあるが姿を見せることが出来るらしい。
ちなみに俺は魔法の実技を教えられる前に、かなりの魔法理論をたたきこまれた。
それも時間がないとのことで、この二日間ずっと理論の勉強をしていた。
寝ている時でさえ、意識の中に入り込んでだ。
おかげで睡眠時間がかなりと言って良いほど削られた。
「では、スタート!」
執行人の合図と同時に目の前に複数の円盤が現れたかと思うと、こっちに攻撃してきた。
数は5個だ。
「はっよっと!?!」
俺はそれを何とか避けていく。
「お、よく避けるな。しかし避けてばかりではきりがない。攻撃して打ち落とせ」
「了解!!」
俺は避けつつも攻撃の機会を伺う。
(よし今だ!!)
「貫け閃光! ライトフレイヤー!!」
俺は弓形態の状態で、一つの円盤に向けて矢を射た。
「よし! 命中」
一気に2個も破壊でき、俺は思わずガッツポーズをした。
「ほぅ? 5発の矢を一瞬で放つか……しかし命中率が悪い。ロックをしっかりしろ」
「はい!」
執行人のアドバイスを聞きながら、俺は再び矢を射る。
気持ちの良い音を立てながら、最後の一発ですべての円盤を撃破できた。
「よし、ミッションクリアだ」
「ふぅ~~!!!」
俺は執行人の言葉を聞いて、地面にへたり込んだ。
「何だ何だ? もうへばってるのか?」
執行人がそんな俺の様子を見て、呆れと優しさを含んで声をかけてきた。
「当たり前だろ?! さすがに疲れるよ!!」
「まあ、今日は新技の成功と言うことで大目に見てやろう」
執行人はそう言うと、何かを呟く。
その瞬間、一面砂漠だけしかない世界が変わり、気づくと俺のよく知る自分の部屋だった。
【お疲れ様だ。どうだ? 二日間の特訓を終えて】
【かなり疲れた。……けど、なんだか強くなれたような気がする】
少なくとも、魔法と言うものには慣れたはずだ。
その実感をさっきの訓練で感じたのだ。
【そうか。それはいいことだ。しかしそれで自惚れるな。まだまだ上があるし、そこで止まっていたらいずれはやられるぞ】
俺は執行人の忠告をしっかりと覚えておくことにした。
この二日間で少しだけだが、この人物の人となりが見えてきたような気がした。
減らず口だが、重要なことはしっかりと言う。
具体的に言えば、面倒見のいい先生のような感じだ。
【分かりました。教官】
【………まあいいだろう。明日からはもう少し訓練の趣旨を変えよう。どんな物になるかはやる時のお楽しみだ】
今の間は、確実に照れていたのを隠すためと見た。
【む?お前今いらぬことを考え―――っ!!?】
「っ!?」
執行人が声を上げようとした瞬間、再び世界が切り取られるような感触がした。
「結界か!!」
俺はすぐに立ち上がった。
「ここでの戦闘は非常にまずい。見通しのいい場所に向かうぞ」
「了解だ!! そこでやってくる敵を待ち構えるということだな!!」
俺は執行人の言葉を先取りして言った。
「おや、どうやら少しは成長したようだな真人よ。では出陣だ!!」
そして俺は、向ってくる敵を倒すべく外に出るのであった。
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