~海鳴市 臨海公園~
「まだ来てないようだな」
【ああ、でも確実に近づいているな】
今俺達は見通しのいい場所にいた。
聞こえるのは静かな風とさざ波の音だけだ。
【この気配は……あの時の人物と同じだな】
執行人から伝えられる情報に、俺は何度も深呼吸して気を落ち着かせる。
何分これが二度目の戦いなので、緊張しているのだ。
【もう緊張するな。何、この僕がついているのだ。いくらお前がへっぽこでも、心配することはなに一つもないさ】
【そ、そうだな】
俺は応援している(?)執行人にそう頷き返した。
【お、こっちに到達するまで残り10秒、9,8,7……】
(っ!!)
執行人の言葉に、俺は高鳴る鼓動を落ち着かせる。
気づけば手足が震えていた。
(大丈夫。俺なら出来る)
俺は自分にそう言い聞かせ、敵が来るのを待った。
「今度は逃げねえんだな」
「ああ、今の俺はこの間とは違う!!」
目の前にいる赤い服を着た少女に、俺は言い返しながら剣状態のクリエイトを握りしめる。
「今日こそ、リンカーコアを蒐集してやる!!」
少女はそう言うや否やいきなり鉄球を5つほど放ってきた。
「何のこれしき!!」
俺はそう叫びながら5発すべてを避ける。
しかし3発はこっちを追撃してくる。
どうやら誘導弾のようだ。
「おりゃ~!!」
「なっ!!」
俺の行動に少女が信じられないと言った感じで見てくる。
俺がやったのは魔力刃を放って3発破壊しただけだ。
「これで終わりなら、次はこっちから行く!!」
俺はそう宣言してこの間執行人に教えてもらった俊足を使い、一気に少女の背後を取る。
「全てをたち切れ! 断絶!!」
「っち!」
一撃必殺に思われた俺の攻撃だが、何かに阻まれたような感触だった。
どうやら防御魔法のようなもので防がれたようだ。
「やんじゃねえか」
【相手はどうやら一筋縄ではいかないようだな。どうする?真人よ】
執行人が俺に問いかけてくる。
答えなんてものはとうに決まっていた。
【サポートを頼む。少しでも彼女を止められれば……】
【了解だ。彼女の身動きを止めればいいのだな】
俺の答えに、執行人はそう返す。
そしてそれは一瞬だった。
「ぐはっ!?」
「今だ!」
突然少女がはりつけにされたような体制で固まったのだ。
そして俺は反射的に動いていた。
「一刀、両断!!!」
「うああああああ!!!!」
俺は必殺技でもある魔法を少女に使った。
今度こそ命中したのか、それなりの感触が伝わってきた。
「喜べ、倒したぞ」
「ッ!! ぃぃいいよっしゃ~!!!」
執行人の宣言に、俺は思わず声を上げて喜んだ。
何せ、初めて敵を打倒すことが出来たのだ。
喜ぶなと言う方がおかしい。
【さて、とっとと帰――――下がれ、真人!!】
「え?」
突然執行人の声が響く。
しかし俺の体は突然のことに固まってしまった。
その次の瞬間だった。
「があああああ!!!」
俺は突然現れた何者かによって斬られたのだ。
「だい――――――よ」
「いわ――――――だよ」
襲撃者と少女の声がかすかに聞こえる。
だが、俺の体はびくともしない。
ふいに、こちらに近づく気配がした。
(これで、終わるのか?)
俺は悔しかった。
このままやられてしまう事実を理解するのが。
だから目をそむけた。
(もし終わるのなら)
鼓動だけが俺の耳に聞こえた。
(その結果を……この俺が覆して見せる!!!!!)
その瞬間、俺の意識は完全に途絶えた。
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