健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第33話 魔王

11月19日

その日はいつもと違った。
例えば、いつもは寝坊しない僕が寝坊をしたり。
それの罰ということで買出しを言いつかったり等々。
そして今まさに、その罰を受けている真っ最中なのだ。

「えっと……これで必要な食材は一通りそろえたかな」

先ほどまで買い物をしていたお店の物である複数のビニール袋の中には大量の食材があり、手元にある買い出しリストを見ながら最終確認をしていく。

「チーズケーキを買ってしまったのはまずかったかな」

袋の中から取り出したのは、お店で見つけたおいしそうなチーズケーキだった。
誘惑に勝てずに購入してしまったのだ。

「ま、自分のお金から出ているからいいよね」

でもなぜか感じるこの罪悪感はなぜだろうか?

「よし、今食べちゃおう」

それが僕の出した最終結論だった。

「そうと決まれば。ガサゴソ、ガサゴソ」

自分でも意味の分からない言葉を呟きながら、僕はチーズケーキの外装フィルムを外していく。

「それじゃ、、いただきま―――――って、なに?!」

今まさに食べようとしていたところで、目の前を黒い何かが横切って行った。
それによって、僕のチーズケーキは消えた。
そしてその黒い影の主は

「イー♪」

何とも小憎たらしい声を出しながら僕の手にあったチーズケーキをほおばっていた。

「………貴様」

何とかこらえようとしたが、こらえきることができずに、僕は怒りを隠すことなく表にさらけ出した。

「よくも僕のチーズケーキを食べたな」
「イー?」

わからない様子で顔(?)を傾げる魔族は、さらに僕の怒りが高まるのに十分だった。

「もう勘弁ならん! 宇宙葬にしてくれる!!!」
「イー!」

僕の怒号に驚いたのか、魔族は慌てた様子で逃げていった。

「待てやごらぁ!」

そして盛大な追いかけっこが始まった。
それがのちに彼女との出会いにつながると知らずに。










「くそっ。逃げ足だけは早いな」

体に羽のようなものが生えている容姿通り、すさまじい速さで逃げていく魔族に、僕は翻弄されていた。

(とはいえ、このまま逃がすわけにはいかないっ)

僕は意地でも逃がさないとばかりにさらに速度を速めようとしたところで、

「ちょーっと、待ったぁ!!」
「むっ」

突如投げかけられた少女の声に僕は急ブレーキをかけて立ち止まった。
体が前方にもっていかれそうになるが、、何とか転倒せずに済んだ。
その場所は住宅街なのか、やや開けた場所だった。
どうやら追いかけている間に九条家とは反対の方向に向かっていたようだ。
それはともかくとして、僕は突然声を投げかけた人物のほうへと振り向いた。

「魔族いじめはだめだよ!」
「はい?」

その先にいたのは、かわいらしいクマのような着ぐるみに身をまとった淡いピンク色の髪をした少女だった。
その背中にはまるでゲームの武器屋で売られているような一回り大きな剣があった。
服装も白のシャツに赤いリボン、そして赤と白のチェックのスカートと誰が見てもかわいらしいその少女は、こちらを怒ったような目で見ていた。

「魔族いじめなんて私の前では許さないんだから!」
「何を言ってるんだ?」

少女の言葉に、僕は首をかしげるしかなかった。
そもそも、どこからどう見ればこれがいじめに見えるのだろうか?

(取られたものを取り返そうとして追いかけていた……うん、いじめじゃないな)

自分の頭の中で冷静に自分の行いを振り返ってみるが、明らかにいじめではなく正当な行為だ。
そもそも悪いのは向こうだ。

「私は正当な行為をしている。第一、お前は部外者。とっととすっこんで」
「部外者じゃないもん!」

少々大人気がないかなと反省していると、少女からそんな言葉が返ってきた。

「ほぅ? では、どう関係しているんだ?」
「ふっふーん。何を隠そう、この私は魔王なんだから!」
「………」

今の僕はきっとハトがまめ鉄砲をくらったような顔をしているに違いない。
それほどまでに少女の告げた言葉は意外だったのだ。

「だから、私は部外者じゃ――「あはははは」――な、なによ!」

驚きの次に出てきたのは笑いだった。

「お嬢ちゃん、十分笑わせてもらったよ。実に素晴らしいジョークだったよ」

怪訝そうな表情を向ける魔王を名乗る少女に、僕は笑いをこらえるようにお腹を抱えながら言った。

「ウソじゃないもん! 修行中だけど私は魔王なんだってば!」
「ダメだよ。ダメダメダメ。ジョークはね、やりすぎると寒くなるんだよ」

僕は人差し指を立てて、子どもに言い聞かせるように答えた。
実際問題、僕の目から見ても彼女が魔王であるとは全く思えなかった。
シンほど力を感じることもないし、何より僕の中にある感覚が彼女は魔王ではないと告げていた。

「だから、嘘じゃないんだってば!!」
「ふぅん……そこまで言うのであれば、証明してもらおうじゃないか」

頑なに自分が魔王であることを口にする少女に、僕は目を細めながらそう告げた。

「証明?」
「そうだ。己が力でこの私に魔王であると示すんだ。簡単だろ? それとも、ウソを認め逃げるか?」

僕の提案に、首を傾げる少女に僕は挑発するように答えた。

「やってやろーじゃない!」

そう言って、少女は背中にある大きな剣を手にして構えた。

「我は、高月浩介。魔王を見極めし者だ。いざ、尋常に」
「「勝負!」」

こうして、魔王を証明する戦いが幕を開けるのであった。

「アビスブレイカー!」
「ふっ」

初手は相手だ。
少女の剣先から放たれた闇の塊は僕へと迫ってくる。
だが、僕はそれをものともせずにサイドステップでかわす。

「だったら、これでどう? エターナルディザスター」

今度は先程よりも精度の高い攻撃だ。
だが僕はそれをかがむことで回避した。

「如何した! 当たらないと意味がないぞ」
「くっ!」

僕の挑発に、少女は唇をかむ。
そして、再び漆黒の弾丸が飛来してくるが、僕はそれを避けていく。
それからどのくらい経過しただろうか?

「はぁ……はぁ……はぁ」

魔法を連発しているために、少女は息を切らせていた。

「ふむ……この程度か」

だが、僕は息も切らさずに、戦況をうかがっていた。
実際のところ、僕は本気のほの字も出していない。

(これ以上やっても意味がないし、終わらせるか)

「ま、まだまだぁ!」

終わらせようとしたところで、少女は剣を握りなおして士気を高める。

(その辛抱強さだけはすごいが)

もはや僕の中では結論が出た。

(であるならば……)

僕は、すべてを終わらせるべく意識を両手に集中させる。
そして両手にずっしりとした重みが加わった。
見れば、手には神剣吉宗があった。
攻撃力は皆無だが、それ以外の術に関してはこれ以上ないほどの効力を有するそれこそ、今の僕にとっては一番必要な武器であった。

「ぶっとばしてあげる!! ブレイジングスターストーム!」

少女から強力な漆黒の槍が放たれた。
僕は神剣のリーチ内までそれを引き付けると

「見つけた! ブレイジングスターストームっ!」

相手の攻撃に対して剣を振り下ろした。
漆黒の槍は、向きを180度変えて少女のもとへと向かっていく。

「え!? うわああああ!!!」

突然の事態に固まってしまった少女は、そのまま自分の攻撃を喰らうこととなった。
そう、渾身の一撃であろうそれを。
そのまま少女は大きく後方へと吹き飛ばされていく。

「終わりだっ」
「あぐ!?」

そしてさらに肉厚した僕は、少女の首筋に鋭い一撃を加える。
少女はそのまま地面に崩れ落ちた。
どうやら、うまく意識を奪えたようだ。

「……色々と残念だ」

崩れ落ちた少女を見下ろしながら、僕はそう一言つぶやいた。
彼女が魔王ではないのは、確かなものだ。
だが、それでは説明できない”何か”を僕は感じ取っていた。
それが何かは分からないが、それさえ目覚めさせることができれば……魔王を名乗ることもできるのではないかと思ってしまう、
だからこそ、色々と残念なのだ。

「とりあえず、しばらくはこのあたりに結界を張っておけばいいか」

このまま目が覚めてしまうと、後あと面倒なことにもなりかねないので、僕は少女が気を失っている間にこの場を離れることにした。

「ぅぅ~ん。アルザード」
「やれやれ……期待しているぞ。名もなき少女よ」

寝言のようなものを呟く少女に、僕はため息をつきながらそう声をかけて、ついでに毛布を取り出すと、それを少女に羽織らせておくことにした。

「さあ、行こう!」

そして僕は、その場を逃げるように離れるのであった。





「はぁ~」

九条家に戻った僕は、自室に帰るなり深いため息を漏らしてしまった。

「………今日はなんだか怒られてばっかりな気がする」

つい先ほどまで主任から絞られていた僕は、ため息しか出てこない。
買い出しに出かけて6時間も帰らなければさぼりだと思われても致し方がないが。

「大変だな、色々と」
「そうなんだよ、大変なんだよ……ん?」

ふと相づちされた声にこたえた僕だが、すぐにおかしいことに気が付いた。
あたりを見回すが、僕以外の姿は見かけられない。
いるのは僕だけだ。
部屋の中にも、特に不審なところはない。
荷物がそれほどないため、部屋自体はすっきりしている。
ある物といえば、白い棚の上には黒色の犬のぬいぐるみが置かれているくらいだ。

「って、僕はぬいぐるみを持ってきていたか?」
「この俺に気づくとは、さすがは我が主だな」

首を傾げながらぬいぐるみのもとに歩みよる僕に、ぬいぐるみは突然立ち上がると感心したような声を上げた。
その声といい、口調といい、思い当たるのは一人しかいなかった。

「ザルヴィス!?」
「おうよ!」

僕の告げた名前に、ぬいぐるみ……ザルヴィスは威勢よく答えた。

「一体全体どう――「わが主、誰かが近づいてきているみたいだぜ」――む」

問い詰めようとする僕の言葉を遮るようにザルヴィスが告げてきたため、僕はしぶしぶ追求をやめることにした。
それからしばらくして、ノック音が聞こえた。

「倉松だが、入るぞ」
「あ、はい」

ドアの向こう側から聞こえた倉松さんの声に、僕は背筋をただす。

「先ほどは失礼しました」
「いや、もういい。それよりもだ」

理由がどうであれ、ミスをしたのは僕だ。
そういう意味を込めて頭を下げようとすると、それを遮るように倉松さんは口を開いた。

「ヘレナお嬢様が、理事長室に忘れ物をされたそうだ」
「……」

なんだか無性に嫌な予感を感じつつ聞いていると、真剣な面持ちの倉松さんから鍵を渡された。

「汚名返上を兼ねて、行ってはくれまいか?」
「わかりました」

断ることは不可能に近かったことと、何より怒られ続けている負の連鎖を断ち切るべく、僕は特別任務を承るのであった。

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『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』最新話を掲載

こんばんは、TRcrantです。

大変お待たせしました。
本日『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』の最新話を掲載しました。
ま早数か月ぶりの掲載なので、忘れられてそうですが(汗)
これからも様々な作品を掲載していけるよう随意努力していく所存です。
そして次話では魔王が登場します。

さて、拍手コメントへの返信を行いたいと思います。

『もうすぐ修学旅行編ですか。 いよいよって感じがとてもします』

コスモさん、コメントありがとうございます。
仰る通り、いよいよですね。
ですが、まだ数羽ほど話を挟みますので、時間がかなりかかりそうではありますが(汗)
修学旅行編でも、コメディもどきをご用意しておりますので、楽しみにしていただければ幸いです。

『アンケートで絵里とことりと凜に一票ずつお願いします』

ライライさん、投票ありがとうございます。

絵里とことりに凛への投票を確認しました。
投票は一人何人でも、何度でも可能ですので、投票済みの方も投票していただけます。
ちなみに中間結果なるものがハーメルンの活動報告にて掲載しておりますので、そちらも合わせご確認ください。

何気に知られていない話ですが、μ's以外の登場人物も投票可能だったりもします。


それでは、これにて失礼します。

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第32話 勉強会と誕生日会と

11月17日

「生徒会一丸となってテスト勉強をするわよ!」

ついに迎えた生徒会の勉強会(と、シンの誕生日会)は、そんな聖沙さんの宣言によって幕を開けた。

「弱者は虐げられ、強き者もその強さゆえに無意味に命を散らして―――」

(一体どこの世紀末?)

テストひとつで世紀末のようなことを言われてたら、世界がいくつあっても足りないと思うのは当然のことだと思う。

「会長さんの家は人がいないので安心ですね。これならいっぱい騒げます」
「騒ぐ気!?」

ロロットさんの言葉に、僕は思わずツッコみを入れてしまった。
普通、勉強会と言えば文字を書く音と勉強を教えあう声が飛び交うものだと思っていたのだが、それは間違いと言うのだろうか?

「何? 勉強会とは騒ぐものなのか? 騒ぐのは苦手だが、騒がねば」

そしてアゼルは変な知識をつけてしまったようで、すっと立ち上がると、

「わー、わー、わー」

と騒ぎ出した。
尤も、騒ぎ方が棒読み感満載だったが。

「静かにしてね」

そんな彼女に、シンは苦笑しながら注意した。
注意されたアゼルの方は驚いた様子だったが。

「さあ、一緒に覚えましょう! 水平リンベー青い船!」
「なるほど、今のは覚えなくてもいいのだな」

ロロットさんの口にした間違った暗記法の言葉をアゼルはその一言で切り捨てた。

「その通りよ」
「それで正解」

あまりにも正しい対処方法に、僕は相槌を打ってしまった。

(それにしても、あれって『スイヘーリーベ―ボクのフネ』だよな。どうすればああなるんだろう?)

ロロットさんの成績がなんとなく気になって仕方がなかった。
願わくば同族として、落第にだけはならないでほしいと願うのであった。

(さて、僕は僕のやるべきことをやっちゃうか)

僕はそっとシンの部屋を後にすると台所と思われる場所に向かう。

「よし、始めるか」

前もってリアさんから渡されていた食材を取り出した僕は、腕まくりをして気合を入れると作業に取り掛かった。
これから作るのはシンの誕生日用の料理だ。
真が日ごろ食べたがっていた”ビフテキ”等の豪勢な料理を作っていく。
そして、僕に課せられたミッションはそれをシンに気づかれないようにすることだ。
とはいえ、シンはリアさんたちが部屋に引き止めてくれるらしいので、僕は料理に専念できるが。

(前半でビフテキを完成させればいいか)

12時ごろに休憩ということで昼食がふるまわれるため、それまでに前半の作業を終わらせておく必要がある。
もし、昼食を作るときにシンがやってきたらすべてが水の泡だ。

「よし、始めるか」

こうして僕は、ビフテキの調理に取り掛かるのであった。










「浩介君」
「リアさん。どうかしました?」

何とかビフテキも完成し、あとはもう一度火に通すだけになった頃、キッチンに姿を現したのはリアさんだった。
その後ろにナナカさんやロロットさんたちが続く。

「ちょうどお昼だし休憩することになったの」
「そう言うことで、今日はわたしが、そばをうっちゃる!」

腕まくりをするようなしぐさでそう宣言したナナカさんに、僕は台所を明け渡した。
その際に、シンが来ることを懸念して今まで作っていた料理の痕跡を消しておくことを忘れない。
その後、ナナカさんが打ったそばに、僕たちは舌鼓を打つのであった。
後半の料理も順調に作り終えたころには、すっかり日が暮れた。

「浩介君、準備はどう?」
「こっちはもう何時でも大丈夫です。あとはGoサインがあれば」

様子を見に来たリアさんに、僕はそう答えた。
既に誕生日会用の料理は作り終えており、あとはこれを運ぶだけだ。

「それじゃ、このケーキを持っていこうか☆」
「分かりました」

僕はリアさんが持参していたケーキ(さすがに冷蔵庫がないので保冷材を使って冷やしておいたが)を持ってシンの部屋へと向かう。

「それじゃ、ちょっとここで待っててね」

そう告げてリアさんは一足早く部屋に入っていく。
僕はリアさんからの合図を待つことにした。

『それじゃ、浩介君。お願い』
「失礼するよ」

しばらくして中からリアさんの合図が聞こえたので、僕はドアを開けて中に入る。

「浩介?」

シンの呼びかけに答えず、僕はケーキをテーブルの上に置いた。

『お誕生日おめでとう!』

そして僕たちはいっせいにクラッカーを鳴らしてシンにお祝いの言葉を贈った。
だが、僕の仕事はこれで終わりではない。
さらに次の料理を運ぶために部屋を後にする。

「それで、これが誕生日祝いの料理だ」
「び、びびび……ビフテキ!?」

料理を前にしたシンは卒倒しそうな勢いで興奮していた。

(喜んでくれるのは作った方としては嬉しい限りだけど、ちょっとオーバー過ぎない?)

僕はちょっとばかり複雑な心境だった。

「はい、シン君。お誕生日プレゼント☆」
「あ、ありがとうございます」

リアさんから手渡されたきれいに包装された包みを受け取ったシンはリアさんにお礼を告げる。

「あの、開けてもいいですか?」
「もちろん☆」

リアさんに渡された誕生日プレゼントに、まるで少年のように目を輝かせながら訊ねるシンにリアさんはウインクをしながら頷いた。
リアさんの渡した小包を開けると、中から出てきたのは研ぎ石だった。

「前にその辺にある石で研いでるって聞いたから。それだと刃の寿命が悪くなると思って」

(それ以前に、すごいよな)

そのような石を見つける執念もだが、それで研ごうとする踏ん切りの良さとか。

「ありがとうございます」
「それじゃ、次は私の番ですね!」

何やら息巻いて登場したロロットさんは大きめの箱をシンに手渡した。

「な、なんだかずっしり重いね」
「開けてみてください!」

見るからに重そうな箱を手にしたシンにロロットさんがせかすように告げると、真は箱を開けて中身を取り出した。

「こ、これは!?」

中から出てきたのは、金色に光るシャンデリアというものだった。

「会長さんが貧乏なのは、ゴージャスというものを知らないからです。これがあれば会長さんもゴージャスになれます!」

(それ、ただの嫌味にしか思えないし)

「なるほど! これがあれば、僕もゴージャスライフだね!」
「そもそも、お金がないという問題は解決してないし」

運という意味ではある意味正しいのかもしれないが。
ちなみにもう一つの問題として

「それ以前に天井が落ちちまうぜ」

大賢者の言うとおりだった。

「これは箱にしまってゴージャスな夢を見るね」

こうして、ロロットさんのプレゼントはシンのコレクションになるのであった。
その後も聖沙さんがCDプレーヤーを渡したり、ナナカさんが高枝切狭をプレゼントしたりと、順調にプレゼント交換を進めていく。

「ほら、あなたの番よ」

聖沙さんに促される形で、僕は小さな小箱を取り出した。
青色の包み紙に放送されたそれは、お世辞にもこじゃれたというのとは無縁のものだった。

「これは僕からだ。つまらないものだけど、受け取って」
「ありがとう。開けてもいいかな?」

真の問いかけに、僕は頷くことで答えると、シンは包装紙を丁寧にとって箱を開けると、プレゼントを取り出した。

「これって……」
「ペンダント?」

僕が渡したのは、先端に星の型がとられた無機質なペンダントだった。

「お守りのようなものだよ。持っているといいことがあるよ」
「胡散臭いね」
「というより、完全に怪しいぜ」

僕の説明にナナカさんや大賢者から酷評されてしまった。

「ありがとう、大事に持ってるね」

まあ、当の本人が気に入ってくれるのであればそれはそれでいいのかもしれない。

「さあ、早くお料理を食べましょう」
「そうだね!」

聖沙さんの促す言葉にシンは豪華な料理に口をつけていく。
ちなみに、感想は

「うまい!」

だった。
ナナカさんいわく、それしか感想がないのだとか。
まあ、無言で食べられるよりはましなので、僕はそう思うことにした。
そんなこんなで、勉強会(という名の誕生日会)は無事に幕を閉じるのであった。










「今日はありがとうね、浩介君」
「いえいえ、これでも仲間ですから。これくらいはして当然ですよ」

帰り道、リアさんと同じ家に住んでいるため一緒に歩いている途中でお礼を言ってきたリアさんに、僕は首を横に振りながら答えた。

「優しいんだね浩介君は」
「そんなことはないですよ」

リアさんの言葉に、僕は苦笑しながら応じた。
どちらかというと、僕は真逆の存在だろう。

「あ、すみません。ちょっと先に戻ってもらってもいいですか?」
「え? どうかしたの?」

リアさんの賞賛の言葉に、居心地が悪くなった僕の言葉に、リアさんがきょとんとした表情で問いかけてきた。

「ちょっと彼の家に忘れ物をしてしまいまして……あ、一人で取りに行けるので、リアさんは先に戻っていてください」
「うーん……わかった、それじゃ気を付けてね」

何とも言えない表情でうなったリアさんは運付きながら僕を見送ってくれた。
そして僕はリアさんから逃げるようにその場を後にするのであった。





「とはいえ、忘れ物なんてしてないんだけどね」

シンの家の前にたどり着いた僕は、何とも言えずに苦笑するしかなかった。

「僕も立派な魔王になれるのかな」
「ん?」

玄関口にたどり着いたところで、どこからともなく話し声が聞こえてきた。
僕はその会話に、耳を傾ける。

「魔王様には十分素質は備わっていると思うぜ。後は、魔王様の意気込み次第だぜ」
「うーん……」

その会話はシンと大賢者の物だったようだ。
きっと本人たちには聞かれたくない話なのだろう。
僕は聞かなかったことにしよう。
そう思って僕はその場を静かに去るのであった。
だが、一つだけ。
一つだけ言えるのであれば

「君は立派な魔王になれるよ。あの人・・・のようにね」

それだけだった。

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『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんばんは、TRcrantです。

大変お待たせしました。
本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
今回はネタ満載です。
主にパロディ的な意味で。

それはともかく、次回で律の話は終わりついに修学旅行編に話は移ります。
ここでもちょっとしたネタをご用意する予定ですので、楽しみにしていただければ幸いです。

さて、拍手コメントへの返信を行いたいと思います。

『最後は浩介と唯で終わりましたね。 面白かったです。 特に唯の嫉妬がww』

コスモさん、コメントありがとうございます。
さすがに唯ルートでもあるので、唯を出さなければいけないなという理由で最後はああなりました。
そのうちヤンデレ唯を書くんじゃないかと変な予感を感じていたりします(汗)


それでは、これにて失礼します。

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第114話 輝きと策

「こうふふぇふぁひひひょふぁー」
「食べながらしゃべるな」

昼休み、目の前でお弁当をほおばりながら口を開く慶介を咎めた。
女子は女子で、男子は男子同士で食事を摂るというわけではない。
ただ単に席の問題(僕たちが座るだけの机の幅がなかった)だけなのだ。
そんな唯たちは、楽しげに昼食をとっていた。
だからと言って僕たちも楽しくというわけにはいかない。

「それで、何だ?」
「浩介はいいよなって言ったんだ」

あらためて慶介が何と言っていたのかを尋ねると、そんな言葉が返ってきた。

「いきなり何を言うんだ?」
「だってよ、部員はかわいい女の子だけで、顧問だって優しくて美人の山中先生じゃないか」

慶介の口から出たのはある意味いつも通りの言葉だった。

「可愛いはいいとして、山中先生の場合は微妙に違うと思う」

あの人の本性を知っている僕からすれば、素直に頷けられなかった。

「それは自慢か!? 一生俺にはできえないことだという自慢なのかぁ!!」
「うっさい」
「ごふぁ!?」

むさくるしく雄たけびを上げ始めたので、とりあえず沈めておくことにした。

「あなた、本当に扱いなれてるわね」
「慣れているというよりは、どんどん投げやりになってきてないか?」

そんな様子を見ていた真鍋さんと澪から呆れたような驚いているようなよくわからない口調で話しかけられた。

「まともに相手すると時間がもったいないから、最近は面倒だと思ったらぷちっとつぶしてるんだよ」
「ちょっと、俺は虫感覚での対応ですかい!?」

苦笑しながら返すと、例にも漏れずに素早い回復を見せた慶介がツッコみの声を上げた。

「浩介も浩介だけど」
「彼も彼ね」

なんだか僕と慶介が同列に見られているような気がするのは気のせいだろうか?

(それにしても、律のやつはまた放浪の旅か)

ふと視線を横に逸らしてみると、そこにはほかの学生たちと楽しそうに話をしている律の姿があった。

「いいですか?」
「ん?」

ふと廊下のほうから女子の物と思われる声が聞こえてきた。

「私に続いて覚えてくださいね。水平リンベー、青い船!」
「……」

聞こえてきたのは元素表を覚える定番の語呂合わせだったが、それは何かが違っていた。

(それを言うなら、”水平りーべー、僕の船”では?)
なんだかどこぞの星が降る町にいる天使がしそうな言葉の間違いに、心の中でツッコみを入れた。

「天使じゃありません!!」
「…………」
「どうかしたのか? 浩介」

まるで僕の心の声を聞いているかのようなタイミングで返ってきたツッコミの言葉に唖然としていると慶介から声がかけられた。

「いや、なんでもない」

今のはただの気のせい。
夢でも見ていたのだと自分に思い込ませることにした。
そしていつもの昼休みの時間は過ぎていくのであった。










「というわけで、今日もやろうぜ!」
「何が”というわけ”なんだ?」

放課後、一足先に部室に来ていた澪がドアを勢いよく開け放って告げた律の言葉にツッコミを入れた。

「輝け律ちゃんシリーズまだ続いてたんだ」
「もしくは楽器取り換えっこか?」

ギターの一件で辞めないところが律のいいところでもあるのだが、理由が理由なだけに少々微妙な心境だった。

「やっぱり輝いてないとだめかもしれない! さわちゃんを見てみろっ!」
「な、何よ?」

律の言葉に、僕達はいつもの定位置である僕と梓の席の横の部分を利用して優雅にケーキを口にしている山中先生へと視線を向けたので、山中先生は戸惑いの表情をうかべる。

「担任になってからお肌はつやつや髪はきれいだしっ」

確かにここのところ山中先生は輝きを増してきていると思う。
とはいえ、抱く感情はただの憐れみみたいなものだが。

「ふふ。担任ともなると、教壇というステージに立って皆に注目されるからね」
「ぷっくくく」

山中先生の言葉に、僕は笑いがこらえきれなくなり吹き出してしまった。

「な、なによ! 笑わなくてもいいじゃない」
「くくく、すみません。律、優雅に泳いでいるアヒルはその実、水面下では必死になってもがいているもんだぞ?」
「はい?」

山中先生が輝いている理由がわかるために、僕は直接ではなく間接的に伝えたのだが、どうやら通じなかったようだ。

「山中先生、老婆心ながら言わせていただきますけど、やりすぎは毒になりますので、ほどほどに」
「うっ。うるさいわね!」

僕の忠告に、山中先生は一瞬表情をこわばらせたものの、そっぽを向きながらケーキを頬張った。

「――というわけでキーボードを弾いてみてもいい?」
「ええ。もちろんよ」

少ししてやってきたムギに事情を説明した律の頼みに、ムギは快く承諾すると、キーボードの電源を入れて演奏ができるように準備を整えた。

「それでは……」

若干緊張しているのか指を震わせながらも鍵盤に乗せた律は、さらに力を込めて鍵盤を押し込む。
すると、何とも明るい音色が部室内を駆け巡って行った。

「律先輩って楽譜読めるんですか?」

同じく部室に来ていた梓の問いかけに、律はテンポよく数音を鳴らした。

「あ、”だいじょうぶ”だって」

(なんで解読できてるんだ?)

まあ確かに聞こえなくもないけれど

「さすがにムギもめい……じゃないよな」

澪が言葉を途中で止めるほど、ムギの目は輝いていた。
そこでさらに律はさらに3つの音を鳴らした。
それはまるで

「あっ。いま”むーぎーちゃん”って」
「言った言った~」

僕には救急車のサイレンの音にも聞こえるのだが、どうやらムギと唯にはそれが違って聞こえていたようだった。
僕には理解のできない謎ワールドが、律とムギに唯の三人の中では展開されていた。










それから少しして、演奏のコツをつかんだのか、音色を変えながらチャルメラの音を奏でる。

「キーボードっていろいろな音色があって面白いよな」
「新しい曲のイメージがどんどん固まるわ~」

(どんな曲にする気だっ!?)

今のチャルメラからいったいどのような曲を編み出すのかがとても気になった。

「なんだか楽しそう……」

そんな時、律の楽しげに弾いていく姿に触発されたのか、前のベンチで腰かけていた澪がポツリとつぶやいた。
そして律の目が怪しく光ったのを僕は見逃さなかった。

「ねえムギ、私にも弾かせ―――」

席を立ってムギに声をかける澪の言葉を遮るように、ヘビメタ風の音色を鳴らした。

「や・め・ろっ! そういうのは止めような? そういうのはっ」

勢いよく律の頬を両手でつかんだ澪に対抗して、律も澪の頬を両手でわしづかみにした。

「……まったく何をやってるんだか」
「いやー、でも楽しかったな。これでほとんどの楽器を取り換えっこしたし」

澪との格闘も終わり腕を伸ばしながら感想を漏らす律。

(あれ? 何か抜けてないか?)

ふと僕は何かの楽器を弾いていないことに気付いた。

「ねえねえ、ベースはやらないの?」
「ベースはだめ!」

それは唯も同じったようで首を傾げながら問いかけた唯に、澪はいつになく強い口調で拒否した。

「ベース以外の楽器はやりたくないし、ベースじゃないとできないし……」

恥ずかしそうに視線を色々な場所に移していた澪は、やがて静かに口を開いた。

「低くて太い音色とか、ベースラインを作るのも楽しいし、それにみんなを支えている感じが好きで皆の音に埋もれない、そんなベーシストになりたいんだ」

それは、秋山澪というベーシストの基盤にも思えた。

「知ってるよ。だからベースにだけは手を付けないのさ」

(意図してベースをやらなかったのはそういうわけか)

一瞬、ギターと同じ弦楽器だから避けたのかと邪推してしまった自分が恥ずかしく思えた。

「ほほぅ、私と浩君みたいにアツアツどすなー」
「さりげなくのろけないでください」

唯の言葉に、梓のジト目での注意が飛んできた。
と、そんなときどこからともなく異音のようなものが聞こえてきた。
それは軽い爆発音にも思えた。
そんな異音の発信源は明らかに先ほどから動く気配のない澪であった。

「語りすぎた」

そう言って動かなくなった澪の頭からは、まるで煙でも出ていそうな感じがするほどに燃え尽きたような感じがした。

「うお!? 澪が生きる屍に?!」
「しっかりするんだ、澪隊員ー」

そんな澪に唯が体を軽く揺さぶりながら正気に戻させようとする。

「律ちゃん、私に任せてね!」

と、力強く律に告げる唯だが一体何を任せるのだろうか?
その後に聞いてみても、”ないしょ”という答えが返ってきたため、僕にもそれは分からなかった。
ただ、なんとなく

(絶対にろくなアイデアじゃないな)

そんな気がしてならなかった。










3年生ともなれば、必ずあるのがクラス写真だ。
卒業アルバムのための写真にも必要なため、これからはこういう機会が増えるのは確実だった。
つまり、何を言いたいのかというと、

「早く並んでね」

僕たちは今、クラス写真の撮影中なのだ。
クラス写真ほど、惨めなものはないだろう。
なぜならば、背の低い人はそれをはっきりと自覚させられるのだから。
それはともかく、僕の身長はやや平均並みのため、前から3列目という場所になる。

「あれ、高月君」
「佐伯さんか。奇遇というかなんというか」

隣に立ったのは去年から同じクラスだった佐伯さんだった。

「何、その嫌そうな反応」
「別に嫌だとは言ってない。ただ、あんたにかかわると面倒くさいのが付いてくるからだ」
「その面倒くさいというのはこの俺のことですか? 浩介さん」

ジト目でこっちを見る佐伯さんにため息をつきながら答えていると、後ろのほうからそんな声がかけられた。

「お前、本当にストーカーにでもなる気か?」

僕の後ろに立っている慶介に、僕はため息をつきながら問いかけた。

「それもまたいいかもしれないな。俺は佐伯さんの陰。それはまるで忍者のごとく」
「背中か体に棺を構えたら、どこぞの変体の神様にでもなれるんじゃないか?」

まあ、その前に潰されるのがオチだけど

「それにしても、慶介は僕と身長が同じだったはずだが。なぜそこにいる?」

正確には僕よりも数ミリの差ではあるが小さいので、僕よも大きい背丈であろう後ろのほうにいることが信じられなかったのだ。

「知らねえよ。気づいたらここにいたんだ」
「気づいたらって……完全に背の順関係ないよな」

というより、誰もそれに気づかないのがすごい。

「それを言うなら向こうを見てみろ」
「向こうって……あぁ、なるほど」

慶介の指さす方向に視線を向けると、そこには和気あいあいとしている律たちの姿がった。
何故だか一番後ろの列に立って。

「それじゃ、行きまーす」

カメラマンの日意図が声を上げたため、僕は話をやめて正面を向いた。
この時、僕は慶介を無理やりにでもどこかに移動させるべきだったのかもしれない。
そうすれば、後々にあのような騒動は起こらなかったはずなのだから。










「浩君、もうちょっと前」
「こうか?」

放課後、唯の指揮のもと僕は律のドラムを前のほうへと移動させていた。
そうしているうちに、顧問である山中先生をはじめ梓達も集まってきた。

「おーっす………って、何をやってんだ?」

そして一番最後に訪れた律は、ドラムの前に腰掛ける唯に、唖然としながら声をかけた。

「律ちゃん、ドラムの位置を変えてみたんだ!」
「へ、へぇ」

思いっきり引いてはいるものの、唯は自信満々の様子でさらに言葉をつづけた。

「たまには席替えをした方がいいんだよ!」

どうやらそれが唯の考えた策のようだった。
これならば確かに、目立たないという問題点は解決する。

「めっちゃ恥ずかしいぞ」

とはいえ、恥ずかしさが増すのは明らかなのと、もう一つの問題点があった。

「ちょっとその位置じゃ変よ。もう少しドラムが後ろにしないと」

ドラムが一番前に出てくるバンドは多くない。
そのため、この配列は違和感しかなかった。
なので、山中先生の指摘は十分に的を得ているものであった。

「もうちょっと後、もう少し」

そして山中先生の指導の下、僕たちはドラムの位置を丁度いい場所にまで移動させていった。
その結果

「うん、これで十分よ」
「今までと変わってないな」
『ですよねー』

これまでの配列と同じものとなってしまった。

「大丈夫! まだまだ策はあるから」

最初の席が餌羽扇が失敗に終わったかと思えば、唯は突然ヘッドライト月のヘルメットをかぶった。

「わきゃ!?」

そしてヘッドライトをつけるとそれを律に向けて照射した。

「これなら輝けるよね!」
「や、やめろぉ!」

律の悲鳴に辞めるどころかさらにライトで照らす唯に、律の体は小刻みに震え出した。

「やめろ、唯っ! もう虫の息だ」
「や、やってもうたっ」

唯の二つ目の策であるライトアップ作戦は、律の気絶で失敗となった。





「もしかして、律ちゃんは寂しいんじゃないの?」
「寂しい?」

しばらくして意識を取り戻した律に、唯はそう尋ねた。

「演奏中はいつも後ろだから」
「なるほど、確かに的を得ているな」

寂しい=輝きたいという図式はどうにもわからないが、人は時に本心とは違う感情を抱いてしまうことがある。
吊り橋効果のようなものがその典型例だろう。
まあ、今回のような事例は聞いたことがないけれど。

「だから、演奏中にもっとコミュニケーションをとろうよ! 後ろで寂しい律ちゃんのためにっ」
「……」

唯の出した策になんとなく嫌な予感がするのは気のせいだろうか?
そもそも、どうやって演奏中にコミュニケーションをとるのだろうか?

「あの、どうやってですか?」
「こんな風だよ。じゃかじゃかじゃんじゃんじゃかじゃ、はい!」
「………」

梓の疑問に答えるように実演して見せた唯に、僕は思わず言葉を失った。
演奏するマネをしながら要所要所で律のほうに振り替えるという、何とも単純な方法だった。
とはいえ、それをやられる方は心臓に悪いのは言うまでもないが。

「皆も一緒に、後で寂しい思いをしている律ちゃんとコミュニケーションを取ろう!」
「えぇー」

全員にやるように呼びかける唯に、嫌そうな表情をうかべる梓の気持ちはよくわかる。
僕とてやりたくない。

「せーの。じゃかじゃかじゃんじゃんじゃかじゃ、はい! じゃかじゃかじゃんじゃんじゃかじゃ、はい!」

そんな梓の意思を無視して強引に始めた唯に、僕と梓もいやいやではあるがコミュニケーションをとることにした。
まあ、肝心の律はやるたびに肩を震わせているので、結果はお察しだろう。

「唯、もういい――――」
「ダメだよ律ちゃん! 律ちゃんの悩みはみんなの悩みだよ!」

律の言葉を遮って心配した様子で語りかける唯。

「いや、だから別に悩んでは――」
「皆で乗り越えようね!」
「話を聞け―」

なんだか茶番劇のような感じになってしまったが、これはこれである意味有意義なものだったのかもしれない。
なぜならば、僕はようやくこの問題の本質を知ることができたのだから。

(ならば解決の時も近いか)

押し問答を繰り返している唯と律を見ながら、僕は心の中でそうつぶやくのであった。

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