「すみません、遅れました!」
「いや、大丈夫。9秒前だ」
あの後、茫然としていた僕は時間を確かめて驚いた。
なんと、僕が厨房に戻る時間の5分前だったのだ。
大慌てでプリエに戻ったが、何とか間に合ったようだ。
「休めたのか?」
「はい、おかげさまでゆっくりと」
今までで入っていたシェフの問いかけに、僕はそう答えた。
実際に眠っていたらなんとかなった。
「さて、俺達も休ませてもらうとしようか」
そう言ってシェフは奥の方へと入って行った。
おそらく着替えるのだろう。
「さあ、大森君もぼけっとしない。オーダーが山のように入ってるんだ」
「はい、わかりました!!」
主任に急かされるまま、僕は奥の方に向かい服を着替えるのであった。
その後……
「カレーライス大盛りを一つ」
「野菜定食を下さい」
「贅沢イチゴのショートケーキを10個ください」
次々とオーダーが入って行く。
そして、僕は急ピッチでオーダーされた料理を作って行く。
それにしても、最後の人はそんなにケーキを頼んで何人で食べるつもりなのだろうか?
まさか全部一人で食べるなんてことはない……よな?
そんな想像をしつつ、僕は割り当てられた10品の料理を作って行くのであった。
『これをもちまして、流星学園キラキラフェスティバルを終了いたします。皆さん、お疲れ様でした』
時刻は夕方。
女子学生のアナウンスが聞こえてきた。
それと同時に、厨房にいた人たちはウエイトレスたちが拍手を上げる。
僕と神楽もそれに倣って拍手をする。
それは、僕たちの地獄のオーダーから解放されたことの証でもあった。
「皆さん、今日一日お疲れ様でした。皆さんのおかげで本日のキラキラフェスティバルは、無事に終えることが出来ました」
少しして主任に集合させられた僕たちは、主任の言葉を聞いていた。
「今後も変わらなぬ努力をし、頑張ってください。お疲れ様でした」
『お疲れ様でしたー』
主任の話が終わり、僕たちは一斉にそう声をあげた。
その時の達成感は、非常に心地よい物であった。
その後、僕たちプリエにいる者全員で、プリエや厨房の清掃をすることとなった。
【神楽、今夜動くぞ。準備をして九条家前に集合を。見つかった際にする言い訳も考えておくように】
【分かったわ】
その際、僕は念話で神楽に指示を送った。
少しずつ余裕が出てきた今しか動くタイミングはない。
今夜、ようやく念願の流星学園内の、総チェックが出来るのだ。
(さて、どういう言い訳にするか)
僕は清掃をしながら、言い訳を考えるのであった。
(そう言えば、さっきのアナウンスの女子学生の声、落ち着きなく僕にメルファスさんの居場所を聞き出そうとした人と同じ声のような………ま、気のせいか)
一瞬頭の中に浮かんだ疑問に、僕はそう結論付けると清掃をするのであった。
「西田さん! しっかりやりなさい」
「は、はい!!」
どこかでそんな声が聞こえたのは、きっと僕の幻聴だろう。
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