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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第13話 今後と差し入れ

「それじゃ、魔族の二人がこの町に、魔法陣を設置しているので、間違いないんだよね?」
「ああ、この耳でしっかり聞いたから間違いはない」

あの後、僕と神楽は合流してお互いの結果を話した。
神楽の方は何ら異常はなかったとのこと。
まあ、図書館の方から不審な気の流れを感じると言っていたが。

「それにしても、やっぱり天使族は何も行動をしないんだね」
「仕方があるまい、もし動いたとしても、おそらく太刀打ちは出来ないだろうよ」

神楽が苦虫を潰したような表情でつぶやくのに対し、僕はそう感じていた。

「どういうこと?」
「女性の魔族は雑魚だが、男性の方は違う。あれは歴戦の戦士……いや、狂戦士と言った方が妥当なほど、強い。周囲の些細な気配だけで僕の居場所を把握できるのだからね」

僕は、あの男の人から感じた気配を説明した。
一見無防備にも見えるが、遠くの方に潜んでいた僕を見つけるという芸当を披露したのだ。

「……その男の魔族に注意すればいいんだね?」
「ああ、妨害している僕たちの事に気づかれ、ましてや正体まで気づかれたら確実に厄介だ」

神楽の確認に、僕はそう返した。
勿論、負けるからという意味ではない。
ただ、仲間などが来たり正体が敵方に知られ行動が取り辛くなってしまう可能性があるのだ。
それだけは避けなければならない。

「万が一魔族の二人、天使と遭遇したら一般人を装え」
「了解!」

とりあえず今後の計画はまとまった。
なので、僕たちは九条家のお屋敷へと戻ることにした。















10月29日

翌日、僕はいつものように料理を作って旦那様方にふるまった。

「大森、少しは慣れてきたか?」

厨房で食器を洗っている時、倉松さんが話しかけてきた。

「あ、はい。おかげさまで何とか」
「そうかそうか。その調子で頑張ってくれ」

倉松さんは僕の答えに満足げに呟くと、自分の仕事に戻って行った。
そして、僕は食器洗いを終えプリエに向かうのであった。









「よし、これで今日は終了かな」

放課後、人の来店数が落ち着いてきたので、僕は伸びをしながら呟いた。
そんな時であった。

『浩介ちゃん浩介ちゃん、理事長室まで急いできてね。来てくれないとあ~んな事や、こ~んな事をしちゃうからね~』

校内放送のようなものでヘレナさんが、僕を呼び出したようだ。

(って、あの人はまともに呼び出しもできないのか?)

あまりの内容に、僕はため息をこぼした。
そして理事長室へと向かうのであった。











「失礼します」
「お、速かったね。さすが浩介ちゃん」

理事長室に入ると、ヘレナさんがいつものように笑顔で出迎えた。

「それで、用件は?」
「少し前にプリエで買ったこのケーキを、生徒会室に届けてほしいのよ」

そう言ってデスクに置いたのは、確かにプリエで売っているものだ。

「まさか、それだけですか?」
「そうよ。やってくれるわよね?」

僕の問いかけに、ヘレナさんは当然だと言わんばかりに答えるとそう聞いてきた。
僕には、頷く以外選択肢はなかった。
そして僕は、ケーキの入った箱を手に生徒会室へと向かうのであった。










「ここが生徒会室だな」
『あのねロロットちゃん。病気で休んでたのに出てきて大丈夫なの? という発想はないのかな』

中に入ろうとしたら、中からリアさんの声が聞こえた。

(リアさんって生徒会の人だったのか)

そんな事を思っていると、再び声が聞こえてきた。

『おおっ。それは目からロココです。さすが、おっぱいが大きいだけのことはありますね』
「それを言うなら、目からウロコだ!」

思わず、扉を開けてそうツッコんでしまった。

(あーあ、みんながこっち見てる)

「あれ、大森さん? なんでここに」
「おお~、あの時のシェフさんです!」

それぞれが違う反応を示す中、僕は手にしているケーキの入った箱を机に置いた。

「色々あって、今はここのプリエで料理人として働いているんで」
「えぇ!? 浩介君って、プリエでも働いていたのッ!?」

僕の説明に驚くリアさん。
というより、なぜ驚く?

「え? お姉さまのお知り合いの方ですか?」
「これは、ズバリ! 恋人ですね!!」
「「「「こ、恋人ぉ!?」」」」

金色の髪をした女子学生の問いかけに、ローゼン・クロイクさんが、とんでもない爆弾を投下した。

「えぇ~!?」

リアさんは頬を赤くして固まっている。

「違うからっ! 彼女の家に料理人として仕えているだけだ!!」
「そ、そうだったのか―」
「そ、そうだったんですか」

頷いていたり、ほっとしていたりするものと様々だった。

「ふむふむ、これは執事とお嬢様との禁断の――「ほざくのも大概にしろよ?」――はぅわ!?」

取りあえず、クロイトさんは強引に黙らせることにした。

「と、ところで、この箱は?」
「ああ、どこぞの謀略野郎にここに持ってくるように言われたから持ってきただけ」
「謀略野郎? それって一体―――」

金色の髪の女子学生の声を遮るようにして、再び校内放送のチャイムが鳴る。

『浩介ちゃん浩介ちゃん、今すぐに理事長室に来てね』

それだけ言うと、放送を終えるチャイムを鳴らした。

「「「「………」」」」」

全員が、固まる中一番最初に口を開いたのは……

「あはは、ごめんね」

苦笑いを浮かべて謝るリアさんだった。

「はぁ……失礼」

僕はため息交じりに生徒会室を後にした。

(あ、そう言えば自己紹介とかしてなかったけど……まあいいか)

そんな事を思いながら。

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