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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第14話 任務

理事長であるヘレナさんに、校内放送で呼ばれた僕は、理事長室前に来ていた。

「失礼します」

ノックをして一声をかけてから数秒置いてドアを開けた。
そこは理事長室だった。
いつも思うがビリヤード台は似合わないような気がする。
そんな理事長室にいかにも、な教師服を着込んだ銀色の服を着込み、銀色の長い髪を後ろの方で赤いリボンで泊めている女性が立っていた。

「来たわね」

そう言いながら、座っていた椅子から立ち上がると僕に近くまで来るように合図を出した。
僕は理事長席のテーブルの前まで歩み寄り女性の横に立った。

「紹介するわね。彼女は千軒院(せんげいん) 清羅(きよら)先生よ。彼女は来月から教育実習で教鞭をとるわ」
「千軒院です。よろしく」

ヘレナさんの紹介に、千軒院さん(ここは先生と呼んだ方がいいか)は興味がないのか、簡潔に自己紹介をした。

(って、あの人ッ!)

僕には千軒院先生に見覚えがあった。

「浩介ちゃん、自己紹介」
「あ、すみません。大森浩介です。宜しくお願いします」

ヘレナさんに促されるように、僕は自己紹介をした。

「それで、用件と言うのは?」
「君を呼んだのはほかでもない。彼女の校舎案内をして貰いたい」

僕の問いかけに、ヘレナさんはどこかのセリフのごとく答えた。

「あ、案内!?」

僕は思わず声を荒げてしまった。

「一応尋ねますが、僕はまだここに来たばかりですよ?」
「ええ、分かってるわ」

僕の問いかけに、ヘレナさんは表情一つ変えずに頷いた。

「そんな僕が、先生の校舎案内をするというのは無理があります。生徒会長殿に案内させればいいではないですか」
「シンちゃんは今、忙しいのよね~。それに浩介ちゃんにも十分に案内できると思うわよ。あなたが必要だと思う場所を案内するだけでいいわ」

『だからお願いね』とヘレナさんは最後に付け加えた。
拒否したら何をされるかわかったもんではない。

「分かりました。校舎案内の役割……拝命いたします」

だからこそ、僕はヘレナさんのお願いを聞くことにした。
尤も、最初から僕には拒否権はあって無いようなものだが。

「うむ、健闘を祈る」

こうして、僕は教育実習生の校舎案内と言う、無理難題の任務を与えられるのであった。










「ここがプリエです。学生や教師の大半がここで昼食を取っています」
「そう」

最初にやってきたのは、僕にとってはお城のような場所の食堂であった。
僕の説明に、千軒院先生は興味な下げに答える。
そこを後にして、次に向かったのは教会だった。

「ここは教会です。日曜日になると一般開放されるらしいですよ」
「………」

今度は無言だった。
そして再び歩き出す。
今度来たのは高い塔の様なものがある広場だった。

「この塔は『フィーニスの塔』と言いまして、天高く建てられているので名づけられたらしいです」
「なるほど」

どうやら今度は少しだけ興味を持ってもらえたのか、千軒院先生は塔を見上げている。
その後、新校舎は旧校舎等々、必要最低限の学園内を案内して回った。

「ここがグラウンドです。主に部活動などで使われたりします」

そして、今来ているのがグラウンドだ。
ここが最後の場所だ。

「それじゃ、理事長室に戻りましょう」

僕は千軒院先生にそう告げる。
千軒院先生はゆっくりとした足取りで、歩き出した。
それを見た僕はその後を追うように歩き出した。










(やっぱり似ている)

理事長室に向かう道中、横目で彼女の姿を見るがこの間の女魔族にそっくりだった。
魔力の波動パターンを取っていないので断言はできないが、目の色から彼女は魔族だろう。

(僕の知り合いで魔族はこれで6人か)

一人は図書館の司書。
二人目は生徒会長
三人目は会計
四人目はお蕎麦屋さんの主人
五人目はナンパ男
そして六人目がこの千軒院先生だ。

(ここまでくれば偶然を通り越して策略を感じるな)

思わず苦笑いをしそうになるのを必死に堪えた。
とりあえず今後は彼女を要注意人物にしようと、一通り考えをまとめた時だった。

「あなた」
「はい、なんでし―――ッ!」

突然声を掛けられ僕が返事をしようとした瞬間、僕の顎に千軒院先生が手をかけると顔を持ち上げて僕を覗き込むように見た。
そんな状態に、鼓動が早くなるのを感じた。

「あなた、何者?」
「な、何者……とは?」

千軒院先生の問いかけに、さらに鼓動が早くなるのを感じた。
僕は表情一つ変えずに千軒院先生に聞き返した?

「あなた、人間じゃないわね」
「な、何を言ってるんですか? そりゃ人より運動神経は良いですけど、人間ですって」

冷や汗を流しながら、僕は千軒院先生の言葉に反論した。
僕の反論を聞いた千軒院先生は妖しげに笑うと、そっと僕の顎から手を離した。

「あなた、名前は?」
「え?」

突然の千軒院先生の問いかけに、僕は聞き返してしまった。

「名前を聞いているのよ」
「大森浩介です」

前にも自己紹介しただろという言葉は胸の奥に留めておいて、僕は名前を告げた。

「そう。覚えておくわ」

そう言うと、口を噤んでしまった。
僕たちは再び歩き出すと、理事長室へと向かうのであった。
こうして、僕の無理難題な任務は無事(?)幕を閉じるのであった。

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