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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第10話 キラフェス~新メニューとナンパ男~

10月27日

ついにこの日がやってきた。
そう、学園の行事である『キラフェス』が!!
そう言えば、このキラフェスと言う名前……正式名称があったようだけど、一体なんだったっけ?

(思い出せないんだから、大したことではないのかも)

「おはようございます。今日は『キラキラフェスティバル』です。ここに訪れるお客さんに、誠心誠意の接客を心がけるよう」
『はいっ!』

主任の朝の挨拶にウェイトレスや、僕達厨房のシェフが一斉に返事をする。

「今日のシフトは皆さんにお配りしたとおりです」

今日はどうもシフト制の様だ。
ちなみに僕は午前中が自由行動となっている。
その理由としては、僕に課せられた新メニューだ。
あの図書館での一件の後、事情をすべて話した上で、新メニューを作り完成したケーキを主任に試食してもらい、OKが出たのが午前3時。
それから朝の仕込などをして、それを終えて戻れるようになったのは、日が出た時間帯だった。
一睡もしていない僕の言葉を聞いた主任が、気を回してくれて僕に午前中の自由行動という名目の、休憩時間を与えてくれたのだ。
いや、当日にシフトが公開されることになっていて本当に助かったよ。
ちなみに、僕の考案した新メニュー『贅沢いちごケーキ』は、しっかりとメニューに大々的に乗っている。
何だか自分の考えた料理が、メニューに乗るというのは、とてもこそばゆい物だ。

「それでは、自由行動組は、時間まで学園内を見て回るなりして楽しんでください。シフトがあるものは準備を」

主任の言葉を聞いた僕は、ふらつきながらプリエを後にした。










しばらく歩いて、たどり着いた敷地内の木々が生い茂る脇道のような場所の草むらに生えている大きな木の幹に、僕は寄りかかるように腰かけた。

(ん? もう始まったのか)

それからしばらくして聞こえてきた周りの喧騒に、キラフェスが始まったのを悟った僕は、出る際に持ってきていた袋の中から、チーズケーキを一個取り出した。
それは、先日プリエで買い置きをしていた物だ。
この日の自由行動時に、ゆっくり食べようともくろんでいた。

「うーん……やっぱりチーズケーキは神の御業だ」

僕は、チーズケーキに舌鼓を打って、周りの景色を眺める。

(和やかだ)

久しぶりにのんびりとできたような気がする。
この一週間は色々とドタバタしていたからね。

「あれ……何だか眠く………なって……き――――」

突然僕を襲った睡魔に抗うことが出来ず、僕は眠りに落ちた。










「――い。君、起きてください」
「うぅ……ん」

誰かに体を揺さぶられながら掛けられる声に、僕は眠い目をこすりながら周りを見る。
すると、目の前に見える人の姿。
ゆっくりと顔を上げ、その人物の姿をしっかりと見た。

「起きたようですね」
「あ、起こしてくれたんですね。ありがとうございます」

僕は、立ち上がって男の人にお礼を言った。
その男の人は、僕のよりも少しばかり背が大きく、眼鏡をかけタキシードのようなものを着込む一見すればどこかの社長にも見える人だった。

「いえいえ。道端で眠っている君がいたので、差し出がましいとは思いましたが、お声を掛けさせていただきました」

すると、男の人はメガネを持ち上げるしぐさをして、僕を見る。

「ところで、君。お名前は?」
「………どうして名前を聞くのです? それに人に名前を尋ねるのであれば、まずは自分から名乗るのが礼儀ですよ?」

男性の問いかけに、僕は少しばかり目を細めて問い返す。

「失礼を。私が美しき女性以外に声をかけたのは、君が初めて……ぜひとも記念にお名前を伺いたいと思った次第です。私の名は、メルファスと申します。以後お見知りおきを」
「大森浩介です」

男性……メルファスさんに、名前を告げた。

「一ついいですか?」
「ご髄に」
「あなた、まさかなりふり構わず、美しい女性に声をかけていませんか?」

僕は、気になった事を聞いてみた。
すると、メルファスさんは

「ええ」
「そうですか………相手が嫌がるそぶりを見せたら、潔く引いてくださいね? しつこい男は嫌われるそうなので」

ナンパ男だと知った僕は、ため息をつきながら、忠告した。

「ご忠告ありがとうございます」
「あ、それと……起こしてくれたお礼には足りませんが、これをどうぞ」

僕はそう言って手にしていた袋をメルファスさんに差し出した。
それを見たメルファスさんは、一瞬驚いた風に僕を見る。

「よろしいのですか?」
「ええ。ご迷惑でなければ」
「それでは、ありがたく受け取らせていただきましょう」

僕の差し出した袋を受け取ったメルファスさんは、僕に一礼する。

「それでは、また縁がありましたらお会いしましょう。アディオス」

そう告げた瞬間、バラの花びらが舞い狂う。

「うがッ!? ッぺ! ッぺ!」

その花びらが口の中に入り、僕は慌ててそれを吐き出す。
そして、その光景に混ざるように、メルファスさんは走って行った。
………消えるんじゃないのか?

「すみません!!」
「のわぁ!?」

いきなり背後から掛けられた大きな声に、僕は飛び跳ねてしまった。
声のする方を見ると、金色のツインテールの女子学生と黒髪の女子学生が立っていた。
何だか、二人とも殺気立っていて怖い。

「さっきここを変な男の人が通りませんでしたか?!」
「あ、えっと……その人でしたら、あっちに」

彼女の剣幕に押されるように、僕は先ほどメルファスさんが去って行ったであろう方向に指差す。

「ありがとうございます!!」

僕の指差した方向に向かって、女子学生達は走って行った。

「………最近の女子学生は、活発だよな」

半分呆れと時代の流れを感じながら、僕はそう呟くのであった。














■おまけ■

とある日の天界……浩介達しか入ることのできない場所。

「ねえねえ、鍋料理を食べよう!」

それは、神楽の一言が始まりだった。

「鍋料理? 確かに体はあったまるだろうが、一体何の種類にする気だ? おでん?」
「闇鍋!!」

浩介の問いかけに、神楽は胸を張ってこたえる。

「はぁ!? 神楽、落ち着きたまえ。早まるな!!」
「何よ、別に死ぬわけじゃないんだから、良いじゃない」

血相を欠いた様子のノヴァの制止に耳を貸さずに、神楽は準備を進める。
既にコンロと土鍋の用意はできていた。

「後は……」

神楽が指を鳴らした瞬間、

「うわ!?」
「神楽! 周辺を黒く染めて辺りの景色を見えなくさせるのはやり過ぎだ!!」

今まで白一面の世界が、まるで闇に包まれたかのように真っ黒になっていた。

「ふふふ、これこそが闇鍋! 毒を食らわば皿までという言葉を知らないの?」
「それ、用法的に間違っているぞ!?」
「しかも自分で毒って言ってるし!?」

浩介とのヴァのツッコミが入る中、二人の目の前に闇鍋の具材が入った器が置かれた。

「さあ、召し上がれ」
「「………い、いただきます」」

戦々恐々の面持ちで、それを口にする二人。

「「ッ!? ~~~~~~~~ッ!!!」」

そして、そのあまりの味に、二人は地面をのた打ち回る。

「うーん……まだまだ足りないわね。ここはハバネロを入れて……」
「「――――――――」」

二人が気絶していることにも気づかず、神楽は淡々と料理を続けた。





その後、神楽は二人によってきついお灸が据えられたのは言うまでもない。

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