「………」
「………」
俺と健司は無言だった。
周囲には言葉では言えないほどの緊張感が立ち込めていた。
「健司、お前は転生者なのか?」
「……ああ、その通りだ」
俺の問いかけに健司は自分が転生者であることを認めた。
「何が目的なんだ?」
俺は健司に聞いた。
俺は心の中で悪い目的じゃないことを祈った。
「そんなの決まってるだろ。なのはやフェイトたちでハーレムを築くのさ!!」
ハーレムと言う言葉の意味がよくわからないが、あまりいい目的ではないことはすぐに分かった。
「そういうお前は何者なんだ? 真人」
「俺?」
「そうだ。俺ばっかりに正体を言わせて自分は言わないのはずるくねえか?」
健司がそう言ってくるが、俺は自分がなんなのかが全く分からない。
分かるのは自分が魔導師だということぐらいだ。
そのことを知らせると、健司はぞっとするような笑みを浮かべた。
「へぇ~、自分の事も知らないで戦ってたんだ?」
「………」
「だったら俺がお前が何者かを教えてやるよ」
健司が俺にそう言ってきた。
「本当か!?」
「ああもちろんだ。でも一つだけ条件がある」
「条件?」
一体なんだろうと思い、俺は健司に聞いた。
「それは簡単なことだ。俺の目的を果たすのに協力することだ」
「……」
健司の出した条件に俺は、絶句した。
つまり俺は、明らかにいけないことをやろうとしている健司を手伝えと言う事なのだ。
「………もう良い。貴様のくだらない話には飽きた」
すると、今まで黙っていた執行人が突然声を上げた。
声色からかなり怒っているのが伺えた。
「だ、誰だッ!!!」
「それは貴様ごとき雑種が知らなくてもよいことだ」
「何!?」
執行人の言葉に、健司が食って掛かる。
「お前のようなどうしようもないものは、世界にとってはただの毒にしかならん。とっとと消し去ってやりたいところだが……」
執行人はそこで言葉を区切った。
「それを許さない頓珍漢なマスターがいるせいでそれもできない」
「お、お前………まさか」
しかし健司は執行人の言葉など聞こえてはいない様子だ。
先ほどまでの余裕な様子はどこへやら、体中を震わせていた。
「おや? やはり転生させたものから聞いていたようだな」
「ヒィッ!! すみません! お許しください!!」
突然健司が土下座をした。
「ハッ! 謝って許されるとでも思ってるのか?」
そんな健司に執行人は、容赦ない言葉を浴びせる。
【執行人】
「…………」
俺の念話に執行人は何も言わない。
「今日は見逃してやる。とっとと失せろ!」
長い沈黙の後、執行人はそう告げた。
健司は逃げるようにしてその場を立ち去って行く。
それから数分して結界が解除された。
【さて、帰るぞ。もう夕方だ】
【ああ】
執行人に促されるようにして、俺は帰路に就くのだった。
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