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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第14話 真実

さやかのいる場所に到着すると、、そこにはお互い向かい合っているさやかと佐倉 杏子の姿があった。
佐倉の方はその手に武器の槍を構えて臨戦態勢だ。
対するさやかも手にソウルジェムがあった。
一触即発の雰囲気だ。

「待って、さやかちゃん!」
「まどか。邪魔しないで!そもそもまどかは関係ないんだから!」

顔だけをまどかの方に向けると冷たくそう言い放った。

「ダメだよこんなの、絶対おかしいよ」
「ふん、ウザい奴にはウザい仲間がいるもんだねぇ」

こっちを見ながらそう言い放ってくる佐倉。

「じゃあ、貴女の仲間はどうなのかしら?」
「あっ……チッ」

すると佐倉の背後に、暁美さんが現れた。

「話が違うわ。美樹さやかには手を出すなと言ったはずよ」
「あんたのやり方じゃ、手ぬる過ぎるんだよ。どの道向こうはやる気だぜ」

どうやら二人は手を組んでいるようだ。
それだけは俺にも理解できた。

「なら、私が相手をする。手出ししないで」
「はんッ、じゃあコイツを食い終わるまで待ってやる」

佐倉は暁美さんに口にくわえているお菓子を指さしながら、言った。

「充分よ」
「ナメるんじゃないわよ!」

暁美さんの答えにとうとう我慢の限界が来たのか、ソウルジェムを掲げて変身しようとする。

「さやかちゃん、ゴメン!」

そんな中、まどかは突然走りだしさやかの手からソウルジェムをひったくる。

「ぇい!!」

そしてソウルジェムを思いっきり、車道に向けて放り投げた。

「なッ!?」

俺はその行動に、衝撃を受けた。

「まどか! あんたなんて事を!」

さやかが、怒ってまどかに詰め寄る

「だって、こうしないと――――――」

まどかがそう言いかけた時だった。

「ぇ……さやかちゃん?」

突然さやかの体が人形のように崩れ落ちた。
それをまどかが受け止めた。

「今のはマズかったよ、まどか」

橋の手すりに飛びあがったキュウベぇがまどかにそう言った。

「え?」
「よりにもよって、友達を放り投げるなんて、どうかしてるよ」

信じられないと言った感じにまどかに言った。

「何? 何なの?」

まどかは、何が起きているのかが分からない様子だった。
そんな時佐倉が、俺達の所に駆け寄るとさやかの首根っこを掴んで持ち上げた。

「やめてっ」

まどかの言葉を無視して、佐倉が目を細めると、信じられないと言った様子で目を見開いた。

「どういうことだオイ…。コイツ死んでるじゃねぇかよ」
「えっ?」

佐倉の言葉に、まどかが固まった。

(やっぱりか)

俺は内心で確証を得た。
やはり俺の推測は当たっていたようだ。

「さやかちゃん? ……ねぇ、さやかちゃん? 起きて……ねぇ、ねぇちょっと、どうしたの?ねぇ! 嫌だよこんなの、さやかちゃん!!」

まどかが、地面に横たわっているさやかの体を必死に揺さぶって声をかけていた。

「何がどうなってやがんだ……おいッ!!」

それを見ていた佐倉がキュウベぇに詰め寄る。

「簡単なことだ。精神とのリンクが完全に切れたんだ」
「え?」
「どういう意味だ」

俺の答えに佐倉が目を細める。

「お前たち魔法少女が持っているソウルジェム。それは自分の魂を具現化したものなんだ」
「な……何だと?」

衝撃の事実に、佐倉が目を見開いた。

「これは俺の推測だが、キュウベぇの役割は魂を抜き取ってソウルジェムに具現化させることなんじゃねえのか? 願い事をかなえる代わりにな」

佐倉が睨んできて怖いが、俺は考えを言い切った。

「とまあ、勝手に話したのだが、間違っている箇所、抜けている箇所等があったら修正をよろしく」

俺はキュウベぇにそう声をかけると、二,三歩後ろに下がった。

「まあ、大まかには正しいね」
「おい! これはどういう意味だッ!?」

キュウベぇが俺に答えていると佐倉がキュウベぇに怒鳴り散らす

「君たち魔法少女が身体をコントロールできるのは、せいぜい100m圏内が限度だからね。普段は当然肌身離さず持ち歩いてるんだから、こういう事故は滅多にあることじゃないんだけど……」
「何言ってるのよキュゥべぇ、渉君! 助けてよ、さやかちゃんを死なせないでっ!!」

まどかが俺達に向けて叫ぶが、いくら俺でも魂の原本がなければどうにもできない。

「はあ……まどか、そっちはさやかじゃなくて、ただの抜け殻なんだって。さやかはさっき、君が投げて捨てちゃったじゃないか」
「え?」

ため息をつきながらのキュウベぇの言葉に、まどかは涙を浮かべながら固まった。

「ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんて、とてもお願い出来ないよ。君たち魔法少女にとって、元の身体なんていうのは、外付けのハードウェアでしかないんだ」

キュウベぇの”元の体は外付けのハードウェア”と言う言葉に、俺は無意識のうちに両手を握りしめていた。
そうでもしないと、冷静でいられる自信がなかったからだ。

「君たちの本体としての魂には、魔力をより効率よく運用できるコンパクトで、安全な姿が与えられているんだ。魔法少女との契約を取り結ぶ、僕の役目はね。君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事なのさ」
「テメェは……何てことを…。ふざけんじゃねぇ!! それじゃアタシたち、ゾンビにされたようなもんじゃないか!!」

キュウベぇの言葉に、佐倉が首根っこを摑まえて盛り上げる。

「むしろ便利だろう? 心臓が破れても、ありったけの血を抜かれても、その身体は魔力で修理すれば、すぐまた動くようになる。ソウルジェムさえ砕かれない限り、君たちは無敵だよ。弱点だらけの人体よりも、余程戦いでは有利じゃないか」
「ひどいよ……そんなのあんまりだよ……」

キュウベぇの言葉に、まどかはそう言ってさやかの体にしがみついて泣き出した。

「君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする。訳が分からないよ。どうして人間はそんなに、魂の在処にこだわるんだい?」
「……悪い。話せと言っておいてなんだがもう黙れ。お前の言葉を聞いてると不愉快だ」

キュウベぇの言葉に、とうとう我慢の限界が近づいたので、俺は冷たい声でキュウベぇに言った。
そんな時だった。

「あっ」

杏子の声に俺達は、さやかの方を見るとそこには若干息を切らしている暁美さんの姿があった。
そしてさやかの手にはソウルジェムがあった。
どうやら彼女が取ってきたらしい。
突然起き上がって俺達を見回した後、

「何? 何なの?」

さやかは訳が分からないと言った様子で言葉を口にした。





「そう……知ってしまったのね、ソウルジェムの秘密を」

対策本部に戻った俺は、マミさんに事の次第を話した。
マミさんは俯いているのでよく分からないが、その声色はとても悲しげなものだった。

「ああ。あいつや佐倉杏子、まどかもかなりショックを受けているようだった」

俺はあの時の事を思い出しながら呟いた。

「それで、渉君は次はどういう手に出るのかしら?」
「そうだな……今は様子見と言った所かな」

俺の方針に、マミさんがそう、と頷いたことで、この話は終わりとなった。
そして俺達は、再び作業を始めるのであった。










翌日、教室にさやかの姿はなかった。
そして昼休み、俺とまどかは暁美さんを連れて屋上に来ていた。
俺達はフェンスに寄り掛かっていた。

「ほむらちゃんと渉君は……知ってたの?」

誰も何も言わない中、まどかが口を開けた。

「………」

俺と暁美さんは何も答えなかった。
だが、それは肯定と受け取ることが出来た。
もちろん俺は知っていたが。

「どうして教えてくれなかったの?」
「前もって話しても、信じてくれた人は今まで一人もいなかったわ」

それもしょうがないことだろう。
何せ、まったくもって確証のないことだ。
もしであった頃の俺ならば、信じなかっただろう。

「どうしてあんなことを私に教えたの?」

まどかが俺に問いかけてきた。

「俺は何も嘘はついていない。さやかの体からあれを離せば、体の動きは止められるしそれ相応の危険もあると言った」

俺は、目を閉じて答えた。

「しかし、まどかがソウルジェムを放り投げるなんて想定外だ。95%の確率でまどかの場合は俺の言った通りに体から離すのだと思っていたのだが」
「確率って………ひどいよ」

まどかが俺にそう非難した。

「……すまない。つい癖でな。何でもかんでも確率で決めようとしちまうんだ」

それが俺の中で一番嫌いな事だった。
人を動かすのは数字ではなく、心だ。
それを知ってもなお、時折こうして数字で考えてしまう。
だからこそ俺は

「生きる価値のない愚か者なんだ」
「えっ!?」

俺のつぶやきが聞こえていたらしく、まどかが驚いた風にこっちを見てくる。

「あ、なんでもない」

俺は平静を装ってそう答えた。

「キュゥべえはどうしてこんなひどいことをするの?」
「あいつは酷いとさえ思っていない。人間の価値観が通用しない生き物だから。何もかも奇跡の正当な対価だと、そう言い張るだけよ」

まどかの疑問に答える暁美さん。
だが、その言葉に俺はキュウベぇが機械生命体ではないかと思った。
なぜなら、言っていることや、やっていることが妙にロボットっぽいものだと感じたからだ。

「全然釣り合ってないよ。あんな体にされちゃうなんて。さやかちゃんはただ、好きな人の怪我を治したかっただけなのに」

するとまどかは暁美さんの方を向きながら言い放つと、下を向いて泣き出しそうになっていた。

「奇跡であることに違いはないわ。不可能を可能にしたんだから。美樹さやかが一生を費やして介護しても、あの少年が再び演奏できるようになる日は来なかった。奇跡はね、本当なら人の命でさえ購えるものじゃないのよ。それを売って歩いているのがあいつ」
「さやかちゃんは、元の暮らしには戻れないの?」
「前にも言ったわよね。美樹さやかのことは諦めてって」

まどかの懇願に、暁美さん冷たい言葉が浴びせられる。

「さやかちゃんは私を助けてくれたの。さやかちゃんが魔法少女じゃなかったら、あの時、私も仁美ちゃんも死んでたの」
「感謝と責任を混同しては駄目よ。貴女には彼女を救う手立てなんてない。引け目を感じたくないからって、借りを返そうだなんて、そんな出過ぎた考えは捨てなさい」

いつもなら、暁美さんのこの言葉に、反論していた俺だがなぜか俺にはそれが出来なかった。
この言葉を否定できるほどの何かを、俺は持っていなかった。

「ほむらちゃん、どうしていつも冷たいの?」
「そうね……きっともう人間じゃないから、かもね」

暁美さんの言葉に、俺とまどかは、何もいう事は出来なかった。










放課後、俺はさやかの反応を頼りに歩いていた。

「ここって……教会だよな?」

しばらく歩くとそこにあったのは、大きな屋敷のような建物だった。
だが、俺にはそこが教会に見えた。

「ちょっとばかり長い話になる」

すると、中から佐倉の声が聞こえてきた。
どうやらこの中にいるとみて間違いないだろう。
そう思い、俺は誰にも見つからないように不可視の術をかけて中に入った。





中は、建物自体が荒れていて、ステンドガラスが割れていたりと、もはやまともに機能していない場所だということがすぐに分かった。

「ここはね、アタシの親父の教会だった。正直過ぎて、優し過ぎる人だった。毎朝新聞を読む度に涙を浮かべて、真剣に悩んでるような人でさ」

そんな中、佐倉の話し声が聞こえてきたので、俺はそれに耳を傾けた。

「新しい時代を救うには、新しい信仰が必要だって、それが親父の言い分だった。だからある時、教義にないことまで信者に説教するようになった。もちろん、信者の足はパッタリ途絶えたよ。本部からも破門された。誰も親父の話を聞こうとしなかった。当然だよね。傍から見れば胡散臭い新興宗教さ。どんなに正しいこと、当たり前のことを話そうとしても、世間じゃただの鼻つまみ者さ。アタシたちは一家揃って、食う物にも事欠く有様だった。納得できなかったよ。親父は間違ったことなんて言ってなかった。ただ、人と違うことを話しただけだ」

彼女の昔話に、俺はその場を動けなかった。
人と言うのは、新しいことを始めるのに臆病な存在だ。
とくに宗教とかはその予兆が出やすい。
だから、人が離れていくのも当然なのだ。

「5分でいい、ちゃんと耳を傾けてくれれば、正しいこと言ってるって誰にでもわかったはずなんだ。なのに、誰も相手をしてくれなかった。悔しかった、許せなかった。誰もあの人のことわかってくれないのが、アタシには我慢できなかった。だから、キュゥべえに頼んだんだよ。みんなが親父の話を、真面目に聞いてくれますようにって。翌朝には親父の教会は、押しかける人でごった返していた。毎日おっかなくなるほどの勢いで信者は増えていった。アタシはアタシで、晴れて魔法少女の仲間入りさ。いくら親父の説法が正しくったって、それで魔女が退治できるわけじゃない。だからそこはアタシの出番だって、バカみたいに意気込んでいたよ。アタシと親父で、表と裏からこの世界を救うんだって……でもね、ある時カラクリが親父にバレた」

佐倉の声色が少しだけ暗くなった。

「大勢の信者が、ただ信仰のためじゃなく、魔法の力で集まってきたんだと知った時、親父はブチ切れたよ。娘のアタシを、人の心を惑わす魔女だって罵った。笑っちゃうよね。アタシは毎晩、本物の魔女と戦い続けてたってのに。それで親父は壊れちまった。最後は惨めだったよ。酒に溺れて、頭がイカれて。とうとう家族を道連れに、無理心中さ。アタシ一人を、置き去りにしてね。アタシの祈りが、家族を壊しちまったんだ。他人の都合を知りもせず、勝手な願いごとをしたせいで、結局誰もが不幸になった。その時心に誓ったんだよ。もう二度と他人のために魔法を使ったりしない。この力は、全て自分のためだけに使い切るって」

そこまで話すと、佐倉は過去の話をするのをやめた。
どうやら今のでおしまいみたいだ。
だが、俺は彼女に何ていえばいいんだ?
ドッチにしても、彼女に声をかけるほど俺は人としてできてはいない。

「奇跡ってのはタダじゃないんだ。希望を祈れば、それと同じ分だけの絶望が撒き散らされる。そうやって差し引きをゼロにして、世の中のバランスは成り立ってるんだよ」
「何でそんな話を私に……?」

佐倉の言葉に、目を細めながらさやかが問いただす。

「アンタも開き直って好き勝手にやればいい。自業自得の人生をさ」
「それって変じゃない? あんたは自分のことだけ考えて生きてるはずなのに、私の心配なんかしてくれるわけ?」

佐倉の答えに、さやかは視線を外して問いただす。

「アンタもアタシと同じ間違いから始まった。これ以上後悔するような生き方を続けるべきじゃない。アンタはもう対価としては高過ぎるもんを支払っちまってるんだ。だからさ、これからは釣り銭を取り戻すことを考えなよ」
「あんたみたいに?」
「そうさ。アタシはそれを弁えてるが、アンタは今も間違い続けてる。見てられないんだよ、そいつが」

佐倉の言葉に、さやかの表情からは感情が読み取れなかった。

「あんたの事、色々と誤解してた。その事はごめん。謝るよ。でもね、私は人の為に祈った事を後悔してない。そのキモチを嘘にしない為に、後悔だけはしないって決めたの。これからも」

だが、ふと顔を上げるとその眼には何かしらの決意が読み取れた。

「何であんた……」
「私はね、高すぎるものを支払ったなんて思ってない。この力は、使い方次第でいくらでもすばらしいモノに出来るはずだから。それからさ、あんた。そのリンゴはどうやって手に入れたの? お店で払ったお金はどうしたの?」
「……ッ」

さやかの言葉に、佐倉は何も言えなかった。
それはすなわち肯定だ。

(あのリンゴ、袋付だけどどうやって持ってきたんだ?)

関係ないところで、微妙に恐ろしく思っていた。

「言えないんだね。なら私、そのリンゴは食べられない。貰っても嬉しくない」
「バカ野郎! あたしたちは魔法少女なんだぞ? 他に同類なんていないんだぞ!?」

佐倉に背を向けて教会を去ろうとするさやかに、佐倉が大きな声で叫んだ。

「私は私のやり方で戦い続けるよ。それがあんたの邪魔になるなら、前みたいに殺しに来ればいい。私は負けないし、もう、恨んだりもしないよ」

さやかはそう言うと、教会から去って行った。
それを見ながら佐倉はリンゴをやけ食いするように、がむしゃらに噛みついていた。
俺はそれを見ながら不可視の術を解除すると、声をかけることにした。

「人の心を変えるっていうのは、かなり骨が折れる物だ」
「ッ!? あんたいつからそこにいた!!」

背後にいた俺に、驚くように問いただしてきた。

「最初っからだ。気配を消す術をかけていたんだ」
「何なんだよ一体。あいつと言いあんたと言い」

佐倉の言うあいつは暁美さんだということは何となくだが分かった。

「それで、何の様だよ」
「……お前の父親が信仰した神の特徴とか役割は分かるか?たとえば、人々の恋を成就させるとかそんな奴だ」
「確か……世界を創ったとか言ってた記憶が」

俺は佐倉の答えを聞いて額に手を当てた。

「それがどうかしたのか?」
「おそらく、ぱったりと人が来なくなったのは、その神を信仰したからだな」
「どういうことだ?」
「第一種接触・召喚禁止部族と言う単語を知っているか?」

俺の問いかけに、佐倉は首を横に振った。
どうやら知らないようだ。

「簡単に言えば、会ったり召喚をしたりすると、世界規模で不安定になるような部族の事だ」
「それと、来なくなったのにどういう関係が?」
「信仰する神と言うのは人を選ぶんだ。神社とかも、どういった願い事が成就するのかによって変えたりするだろ? それと同じ」

恋愛成就ならば、そう言った部類の神様を奉っている神社に行ったりする。
それは人が自然にやっているように見えるが、無意識のうちに神によって来る人を選んでいるのだ。
もちろん、この理論が間違いだと言う事もあるが。

「それで、第一種接触・召喚禁止部族と言うのは、信仰されてはいけないんだ。当然だよね。何せ信仰されればされるだけ歪が出るんだ。人の思念の強さによってね」
「……つまり、あたしの親父は信仰してはいけない神を信仰したからこうなったと?」

佐倉の言葉に、俺は無言で頷いた。

「これに含まれる神は、世界を創造する神とされる”創造の神”、世界に影響を与える者がいないかを監視し、いる場合は直接対処に向かう”裁きの神”、そして人々の運命、世界の状態を制御する”世界の意志”の三神だ」
「なんでそんなに詳しいんだ?」

佐倉が目を細めて問いかけてきた。
……ちょっと話すぎたか。

「俺の祖父が神社の神主でな。俺もそう言うのに興味があったから歴史書を読み解くうちにね」

俺はそう答えることにした。

「それと気を付けることだ。あまり強い力を使っていると、世界から排除されるから」
「それってどういう―――――――」

俺は佐倉の問いかけに、答えずに教会を後にした。
今問題なのは、さやかだ。

(まあ、なんとかなるか)

だが、俺はこの時この後に訪れるさらなる悲劇を知る由もなかった。

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