そしてやってきました喫茶翠屋。
なのはは喫茶店にためらいなく入った。
「お母さん、ただいま~」
「なのは、お帰り!」
なのはの声を聴いて厨房から出てきたのは、なのはの母親の桃子さんだった。
【お母さん、若ッ!?】
【ホントだ……】
そして二人は母親の若さに驚きをあらわにしていた。
「お、なのは~! 帰ってきたな!」
「おかえり~なのは」
桃子さんに引き続き、出てきたのはなのはの父親の士郎さんに、お姉さんの美由紀さんだった。
「お父さん、お姉ちゃん!」
と言うよりこの二人も若い。
本当に七不思議の一つにでもなりそうな勢いだ。
「あ、この子達、私の生徒」
「おぉ、こんにちは、いらっしゃい」
「あ、はい!」
「こんにちは!」
「こんにちは」
挨拶をされた二人は姿勢を正してお辞儀をする。
俺もそれに習って挨拶をした。
「あら、真人君! 久しぶりね~」
すると突然桃子さんが話しかけてきた。
「ご無沙汰しています」
俺はどこか申し訳なくなって来て、桃子さんに再びお辞儀をした。
「ケーキは今箱詰めしているから」
「うん、フェイトちゃんと待ち合わせ中なんだけど、いても平気?」
「勿論♪」
なのはの問いかけに、桃子さんは笑顔で頷いた。
「ああ、コーヒーと紅茶もポットに入れておいたからな。持ってってあげてな?」
「ありがとうございます~」
士郎さんの言葉に、リインがお礼を言う。
「お茶でも飲んで、休憩していってね♪ えっと……」
美由紀さんはそう言っていたが、どうやら名前の方が分からないらしく戸惑っていた。
そう言えば何気にまだスバル達の自己紹介をしていなかったっけ?
それに気づいたスバル達が、慌てて自己紹介をする。
「あっ、スバル・ナカジマです!!」
「ティアナ・ランスターです」
「スバルちゃんに、ティアナちゃん!!」
スバルとティアナはちゃん付に若干表情が変わった。
ちゃん付は嫌なようだ。
まあ、俺もされるのは嫌だけど。
「二人とも、コーヒーや紅茶とか、いけるかい?」
士郎さんはスバルとティアナに尋ねた。
ちなみに俺の場合は断然紅茶派だ。
「は、はい!」
「どっちも好きです!!」
「あ、スバル、ティアナ、真人君、こっちにおいで」
「はい!」
促されるように俺たちは席に着いた。
「三人とも仕事が大変だから元気が出るミルクティーね」
「はい!」
「ありがとうございます」
なのはのお姉さんの言葉に、二人はお礼を言った。
俺も無言で一礼する。
「しかし、三人とも……うちのなのは、先生としてはどうだい? お父さん、向こうの仕事はどうもよくわからなくてな」
「あ、その……すごいいい先生で!」
「局でも有名で若い子達のあこがれです」
「俺はよく分かりませんが、たぶんそうだと思います」
なのはとはここ最近全く話をする機会がない。
だからこその答えだった。
「「へえぇ~~!?」」
そしてそれを知った二人は、意外そうな表情をしてなのはを見た。
どうやら子供のころを知る人としては、まったく想像がつかなかったらしい。
【なんか……なのはさんが普通の女の子に見える】
【うん………】
(当たり前でしょうが……)
二人の念話に、心の中でそうツッコミを入れながら出された紅茶を飲む。
「あ、そうだ。クッキーでも食べるか? これがまた自信の新作でな」
「あ、お構いなく」
「は、はい」
士郎さんの提案に、二人は恐縮して答える。
「でも、おいしそうです~」
「それじゃ、リインに一個」
「わ~い! いただきます」
クッキーを受け取ったリインは美味しそうに食べた。
ある意味すごい人だ、本当に。
「真人君、ちょっといいかな?」
「あ、はい」
俺は突然士郎さんに外に連れていかれた。
「あ、あのこんなところに連れ出して何の用ですか?」
「ああ、お礼を言おうと思ってね」
俺は士郎さんの一言で、それが何のことなのかが分かった。
「なのはを助けてくれてありがとう」
「い、いえ! あの、あれは俺が勝手にやった事なので頭を上げてください」
俺はいきなり頭を下げた士郎さんに慌てながら言った。
「………君なら私の娘を任せても大丈夫そうだね」
「へ?」
俺は士郎さんの言葉に、固まってしまった。
「これからも、なのはをよろしくね。真人君」
そう言うと士郎さんは、話が終わったのか中へと入って行った。
(何だかな)
俺は複雑な心境だったが、すぐに切り替えるとお店の中へと戻った。
そうこうしている間に、フェイトが来たので俺達はフェイトの乗ってきた車に乗り込んで、待機所へと戻るのであった。
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