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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第33話 新クラス!

それから二日後の始業式。
二年生へと進学した僕たちは、クラス分けを確認することにした。
クラス分けは昇降口に張り出されており、色々な生徒たちがそれを確認していた。
その中には、友人同士なのだろうか、同じクラスになれたことを喜ぶ人もいれば、担当の教師を確認してげんなりとしている者もいた。

「あった。私は二組だよ」
「あ、私もだ」
「私もよ」

どうやら唯と律にムギは同じクラスのようだった。

「それじゃ、澪ちゃんに浩君も?」

この流れで来れば、澪も同じクラスになっていると考えるだろう。
だが、それは悪い方向で裏切られることになった。

「……一組」
「僕は四組だ」

まったくもってばらばらに割り当てられていたのだから。

「「「……」」」
「な、なんだよ?」

その現状に言葉を失う唯たちに、問いかける澪の肩に手を乗せると涙ぐみながら慰めていた。

「ふ、ふん。律の方こそ、もう宿題を見せてあげられないんだぞ」
「いいもん、ムギに見せてもらうから」

澪の精いっぱいの反論だったが、律は鮮やかにそれを躱して見せた。

「別に、クラスの割り当てぐらいで何をムキに」

そんな二人のやり取りを見ていた僕は、思わずそう口にしてしまった。

「くらいじゃない! クラスに知っている人がいないと一人で寂しいんだぞ!」
「ご、ごめん」

澪のすごい剣幕に圧されて、僕は謝った。

「あ、皆さん。おはようございます」

そんなやり取りをしている僕たちに、声を掛ける人物がいた。

「お。おはよう、憂ちゃん」
「すごく似合ってるわ。初々しいわね」

志望校であるこの学校に合格した唯の妹の憂だった。

(憂だけに初々しいってか?)

ムギの感想に、僕は心の中でそうつぶやいた。

(うわ、寒い)

自分で言っておいてあれだが、非常に寒いギャグだ。
僕は即興で思いついたあまりにも寒すぎるダジャレを、頭の片隅へと追いやることにした。

「そ、そうですか? 浩介さん」
「よく似合ってるんじゃない?」

なぜかこちらに確認を求めてきた憂に、僕はそう答えた。

「あ、ありがとうございます」

それでも満足だったようで、嬉しそうにお礼を口にした。

「あ、お姉ちゃん」

そこで、憂は何かに気が付いたようで唯の襟もとに手を伸ばす。

「クリーニングのタグ、つけっぱなしだったよ」
「あ、まったく気が付かなかった」

さすがは憂だ。
今日も妹スキルは健在のようだ。

「それに寝癖もあるよ」
「今日、寝坊しちゃったんだ」

目ざとく寝癖を見つけた憂は常備しているのかコンパクトサイズのクシを取り出すと髪の手入れをしていく。
そんな二人の姿はまるで妹に世話を焼く姉のような印象を抱いた。

「おまえら、姉と妹交換した方がいいんじゃないか?」

だからこそ律のその言葉には僕も同意見だった。
そんな事をしていると、予鈴が聞こえた。
それを聞いた憂はクシを素早くしまうと一礼して去っていった。

「それじゃ、私たちもいこっか」
「そうだね」

そして僕たちも昇降口から移動する。
階段の前にたどり着いたところで、僕たちは足を止めた。

「二組って二階なんだ」
「いかにも、上級生って感じがするな」

しみじみとつぶやく律だが、僕と澪のクラスは一階に存在する。
何故学年ごとに括らずにバラバラの階にしているのかが理解できなかった。

「じゃあな、一階二年一組と四組の秋山さんと高月君」
「うるさい!」

律のからかうような言葉に澪が怒鳴るが当の本人は気にした様子もなくすたすたと階段を上っていく。
それに続くようにまた休み時間にと言ったムギと律と話をしながら唯が階段を上がっていった。
残されたのは一階に教室がある僕と澪だった。

「あの三人、絶対に昼休みに地獄見るな」

この学校の購買部は一階にある。
そして購買部では常に食料の確保という戦争が繰り広げられることが多い。
つまりは、そういうことだ。

「………澪?」
「……寂しい」

いつまでも返事がなかったため、思わず名前を呼んでみるが、反応はなくとてつもなく切ない言葉が返ってきた。

「ちょっと暗いって。明るく行こうよ! 明るく!」

結局、澪の雰囲気は元に戻ることはなかった。










「…………」

二年四組の教室に入った僕は、すぐに自分の席を確認して席に着く。
あたりを見回すが、やはりと言っていいのかどうかは分からないが、知っている人物が一人もいなかった。

(何となく澪の気持ちがわかったような気がする)

まるで陸の孤島に迷い込んだような錯覚を感じてしまう。

(新しい知り合いでも開拓するか)

とにかく行動あるのみ。
僕はそう思い立って席を立ちあがろうとしたところで、ふとある疑問が頭をよぎった。

(このクラスの男子って誰だろう?)

二年生は一クラスに二名の男子が存在する。
僕がその一人でもう一人がこのクラスにいるはずだ。
尤も、新入生は一クラスに五人男子がいるそうだが。

(まずは男の方から攻めたほうがいいか)

女子同士の結束力にはかなわないものの、男子の結束力も捨てたものではない。
まずは同性同士で親交を深めるのもいいかもしれない。

(そう言えば、慶介のやつはうまくやれてるのかな?)

ふと、前の学年で一緒だった慶介のことを思い出した。
暗くならないようにするためにといった理由でわざとあのような変態キャラにしているが、あれはあれで打たれ弱いところもある。

「浩介じゃないか!」

心配ではないが、少しだけ気になった。

「お、今年も同じクラスか!」

それにしても、今年の男子はどんなタイプなんだろうか?

「おーい、聞こえてるか~?」

慶介みたいな癖の強いのはできれば勘弁してほしい。

「浩介~! 聞こえてますか~! 元気ですかっ!!」
「だぁぁぁっ! うるさいっ!!!」

先ほどから耳元でしつこいほど声を上げ続ける奴の頭に全力で拳を振り下ろした。

「いきなりだな、おい」
「人の耳元で大声で叫ぶからだ」

最近慶介の方にも大勢ができてきたのか、僕の全力の一撃を喰らっても数秒で回復するようになってきた。

(本当に、こいつは人間か?)

人間離れした回復力に思わずそんなことを考えてしまう僕だった。

「ところで、浩介、聞いてくれ! 俺の今年の計画をっ!」
「まったくいい予感がしないが、言ってみな」

何だか去年もこんなやり取りをしたような気もするが、僕は続きを促した。

「俺たちももう二年生。つまりは先輩ということじゃない?」
「確かにそうだな」

慶介の前置きに、どうせくだらないと思いながら適当に相槌を打つ。

「だからこそ、俺は今年、先輩としてできることをしたいと思うっ!」
「おぉ……慶介にしては珍しく非常にまともなことを言ってる」

ようやく慶介にも先輩としての自覚が出てきたようだ。

「珍しくとはなんだ、失敬な!」
「わ、悪い。話を続けて」

慶介の怒りに僕は謝ると先を促した。

「おう。そこで俺は思ったわけだ! 先輩としてできることが何かを!」
「それは、なんだ?」
「ずばり、コスプレをして女子を追いかけて声援を受けることSA!!」
「……」

大きな声で、恥ずかしがることもなく宣言したその言葉に、教室の空気が凍りついた。

「慶介」
「おう、何かアドバイスでも―――ペプラガバァ!?」

僕は慶介の頭に目がけて拳を勢いよく振り下ろした。

「本当に変わらないな、お前のそのバカさ加減は」
「お前のこぶしの強さも、な。それ、世界狙える」

地面に沈んだ慶介は手をぴくぴくと動かしながら反論してきた。

「もしそんなことをしたら、お前を宇宙の果てまで吹き飛ばすぞ」
「それって、死刑宣告!?」

そんな脅し(わりと本気だが)を慶介にしておくことにした。
そうじゃないと、こいつの場合は本当にやりかねない。

「それはともかく、今年もよろしくな、浩介!」
「はいはい。こっちもよろしくな。慶介」

そして僕と慶介は互いに握手を交わした。
何だかすっかり親友になってしまったが、それも悪くはないなと思う僕なのであった。










そんなこんなで昼休み。
この時期では様々な部活が新入部員確保の為に勧誘を行っている。
まさに四月は新入部員が確保できるかどうかの戦いの時なのだ。
そんな中、軽音部も例にもれず、その勧誘を行うこととなったのだが……

「うわ、もう始まっちゃってるよ」
「やっぱり大きい部は手際が違うわね」

既に廊下では数多くの部活動が勧誘活動を行っているのを見た唯が呆然とそれを見ており、ムギは少しばかり追いつめられたような表情を浮かべていた。

「軽音部だからって甘く見るなよ。澪、チラシは!」
「こ、これだけど」

闘志を燃やした律に圧されるように僕と律に渡したのは、軽音部の勧誘のチラシだった。

「「地味」」

それを目にした僕と律の意見は一致したようだった。
チラシにはシンプルに『バンドやりませんか?』の文字があった。

「インパクトがないんだ。なんか軽音部だけにある物を書くとか」
「例えば?」
「そうだな……お菓子食べ放題の軽音部! とか」

唯の問いかけに、少しの間考え込むとまじめな表情でそう答えた。

「それはいいねっ!」
「「よくない!!」」

軽音部としての趣旨から大きく逸脱した内容に、即答で否定した。
そんなうたい文句を書かれた日には確実に変な誤解を与えさせるだろう。

「だったら何かないのかよ? インパクトがあるやつ」
「それなら、私に任せなさいっ!」

腕を組んで聞く律の肩に手を置き、自信満々と言った様子で名乗りを上げたのは、顧問の山中先生だった。

(何だか嫌な予感がする)

そう感じた僕は山中先生たちに気づかれぬようにその場を後にした。

「裏切り者っ!!」

どこからか響く声を背に受けて。










「まずはこのインパクトの少ないチラシを何とかしよう」

安全地帯教室に戻った僕が始めたのはチラシの改良だ。
いくら何でも一文だけというのは寂しすぎる。

「うーん、何を書いたものか……」

僕は腕を組んでどのように書くかを考えた。

「おーい、浩介! 飯でも――「うるさい」――はい、失礼しました」

(とりあえず、これで行くか)

慶介を追い払った僕は悩みぬいた末に、『初心・中級者大歓迎。分からない場所は懇切丁寧に教えます』と付け加えることにした。
ありきたりだが、これはこれでいいだろう。

「よし、これを印刷するか」

僕は新たに出来上がったチラシを印刷するために、コピー機のある職員室へと向かった。

「失礼します」
「どうした、高月」
「小松先生。ちょっと印刷機を借りに」

中に入ると、近くにいた古文担当の小松先生が声を掛けてきたので、僕は用件を口にした。

「印刷機はそこだ。何だ勧誘用のチラシか?」
「まあ、そんなところです」

目ざとく僕の手にしていたチラシに気づいた小松先生の言葉に、僕は頷きながら答えた。

「いろいろ大変だとは思うが頑張りな」
「ありがとうございます」

小松先生のありがたいエールに、お礼を言うと僕は100部印刷することにした。

「失礼しました」

そして僕は職員室を後にすると、先ほど刷ったチラシを配るべく行動を開始することにした。

(まずは屋外からか)

屋内はすでに多数の部活が勧誘活動を行っている。
だが屋外ではそれほど多くの部活が勧誘活動を行っているわけではない。
つまり、邪魔も入りにくく疑問などに答えられる時間も十分に取れるのだ。
そんな思惑で、僕は一人で屋外の方へと向かうのであった。

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