健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第29話 プレゼント!

あの、連続通り魔事件から数日ほどが経った。
犯人を確保したことで、律や澪たちからは”すごい”と言われてしまった。
別に嬉しくないわけじゃないが、僕にとってはそれが当然の行動でもあるのでむず痒くなってしまった。
そんなある日、僕は警察の方から呼び出しがあったので、警察署を訪れていた。
なんでも、事情聴取の最終確認をしたいそうだ。
応接室のような場所に案内された僕は、呼び出した人物が現れるのを待つことにした。

「いやー、わざわざ来てもらって申し訳ない」
「いえ。お気になさらずに」

申し訳なさそうにフランクに謝ってくる男性警察官二名に、僕は丁寧に返した。
後から入った警察の人がドアを閉める。
そこで雰囲気は一変した。

「で、あの下手人は?」
「はい。犯人には魔法関連のことを高月大臣のご指示通り、”幻”と思い込ませました」

僕の問いかけに、男性警察官のうち一人が丁寧に返した。

「それで、動機の方はどうだ?」
「何でも、『付き合っていた女性に振られた腹いせに、やった。だれでもよかった』と言うので間違いはないかと」

僕の疑問に、もう一人の男性警察官が応じる。
もう分かっているとは思うが、この二人は僕の”仲間”だ。
どうして、ここにいるのかはまた別の機会に語るとしよう。

「魔法関係のことでの漏えい等は特にありませんので大丈夫です」
「そう。悪いね、変な役回りをさせてしまって」
「いえ。気にしないでください。それが我々の役目ですから」

即答にも近い形で返事をしてくれる二人の警官に、僕は心の中で感謝の言葉をかけることにした。

「ところで、体のけがはどうですか?」
「心配には及ばないよ。あんなもの、けがの範疇にも入らないから」

心配そうな面持ちで訪ねてくる男性警察官に、僕は肩を竦めながら答える。
唯を突き飛ばすところまではうまく行ったが、その拍子で胸のあたりに一撃を喰らう羽目になってしまった。
もちろん、これは自分の未熟さが招いたことなので、唯を責めることなどありえないが。
あの後、すぐに体の治癒に力を回したことともともと再生能力が高いこともあって、翌朝には傷痕すらも残っていなかった。
なので、”怪我の範疇にも入らない”という表現にしたのだ。
そのあと軽く話(とは言っても世間話だが)をした僕は、警察署を後にするのであった。










その次の日の休日のこと。

「プレゼント何にしよう」

僕は自室でクリスマス会のプレゼントについて悩んでいた。

「やっぱり女子が喜びそうなものがいいよね」

僕以外が女子のため、やはり女子が好きそうなものが一番いいだろう。
とはいえ、一番の問題は

「女子には何をプレゼントすれば喜ばれるんだろうか?」

女子の好みが何なのか、だが。

「……………………」

考える

「…………………………」

とにかく考える

「………………だぁぁっ!!!」

どのくらい考えていたのかはわからないが、諦めた。

「僕に女子の好みのものがわかるか!」

そんな言い訳じみたことを、誰に対して言っているのかは自分でもわからない。

「女子限定で考えるから駄目なんだ。誰がもらっても喜ぶようなものにしよう」

路線を変更して、僕は万人受けするものをプレゼントすることにした。
だが、実際に考えてみると

「万人受けする物って何?」

そんな疑問にたどり着いてしまう。
そしてまた考え込んでしまうわけで。
考えた結論が

「ムリッ」

挫折だった。

「こと、戦いの仕方とかだったら分かるのに」

人づきあいをしてこなかった代償がこんなところに現れるとは。

「…………もういいや、自分の得意分野で行こう」

最終的に、僕の得意分野の代物をプレゼントすることにした。

(そういえば、澪が興味深いことを話していたな……パーティーなんだしいいか)

「とすると、買い出しに行かないといけないな」

プレゼント用の道具で足りない物を買うために、僕は自宅を後にするのであった。










「ありがとうございました」
「よし、これで必要なものは揃ったかな」

数点ほど購入した僕は、頷きながら雑貨屋のお店の袋を見る。

「にしても、この抽選券はどうすればいいんだろう?」

先ほどの雑貨店でもらった一枚の福引券を手の上で弄びながら呟く。
さすがにこの抽選券の意味ぐらいは知っている。

「あれ? あそこにいるのって唯たちじゃないか?」

そんな時、少し先の方で話している唯たちの姿を見かけた。

「道の真ん中で何をやってるんだ?」
「あ、浩君」
「浩介もプレゼントを買ったんだ」

僕が声を掛けるとこっちの方に振り向きながら話しかけてきた。

「まあね」
「浩介も抽選をするのか?」

律の言葉に、そう頷きかえした僕の手にある抽選券を見つけたようで、澪は僕の手元に視線を向けるとそう聞いてきた。

「そうなんだけど、どこでやればいいのかがわからなくてね」
「どこも何も、ここだよ」
「え?」

律に言われて周りを見回すと、抽選定番の抽選器が台の上に置かれた場所があった。

(唯たちしか見えてなかった)

この間の通り魔と言い、最近弛んできてるような気がしてきた。

(やっぱり一度故郷に戻った方がいいかな)

弛んだ気を引き締めるのに故郷は最適だった。

「一回分か。いいのが当たればいいな」

僕の手にある抽選券を見た澪がそう言ってくれた。

「とか言って末等が当たりそうだけど」
「こら、律! 縁起でもないことを言うな」

本当に起こりそうなことをつぶやいた律に澪が激を飛ばす。

「別にいいよ。その通りだから」

そんな澪に、僕はフォローを入れつつ担当の女性に抽選券を手渡すと、抽選器を回し始めた。

「自慢ではないが、僕ほど悪運が強い人はそうそういないと思うよ。どうせ当たったとしても末等がオチだよ」

出るボールの色など既に分かっているので、僕は期待もせずに回していく。
やがて、ボールが落ちた音が聞こえた。
末等のボールの色は白なので、当然ボールの色も白だ。
そう思っていた僕に、ベルの音が送られた。

(末等でもベルを鳴らすのか)

「おめでとうございます。特賞のお米半年分です!」

サービス精神旺盛だなと思っていた僕に、女性の声が掛けられた。

「え?」

その言葉に、僕が口にできたのはたったそれだけだった。
恐る恐る女性の背後にある景品の方を見てみると、確かに『特賞・お米半年分』と記されていた。
特賞のボールの色は金。
一等がねずみ色でハワイ旅行となっていた。

「すごい、特賞だって」
「ムギよりも強運を持ってるな」

後ろで事の成り行きを見守っていた澪たちが口々に感想を漏らす。
そして僕に差し出されたのは米俵三つだった。
一つの米俵で約60キロ分なので、三つで180キロと言ったところだろう。

(これ、当分お米を買いに行く必要がなくなるな)

僕の家は、基本的におコメの消費量はそれほど多くはない。
せいぜい月に5~10キロ程度。
つまりどんなに多く消費しても18か月分ということになる。

(まあ、得したと思えばいいか)

僕は自分にそう言い聞かせることにした。
とはいえ、一つだけ問題が残っている。
それは

「浩介、それ本当に持っていく気か?」

米俵三つをどうやって家まで運ぶかだった。
僕は担いでいくことを選んだ。

「当たり前。台車を借りたら、返しに行く必要があるから二度手間でしょ」

澪の心配そうな言葉に、僕はそう返しながら米俵を抱え上げた。

「うお!?」
「すごい、力持ち」

180キロの重さのものを軽々と抱え上げる僕に、澪たちが驚きに満ちた声を上げる。
180キロの重さなど、僕には小さな子供を抱え上げる程度二しか感じないので、それほどきつくはない。
尤も、”自動車を持ち上げてみろ”と言われれば話は別だが。

「それじゃ、僕はこれで」
「あ、浩君。せっかくだから一緒に帰ろう!」

後ろの方から掛けられた声に、僕は立ち止まらず歩く速度を落として唯が合流するのを待つことにした。

「それにしても、本当にすごい力持ちね」
「いや、このくらいだったら僕には余裕だけど、いかんせんバランスが」

真鍋さんの驚きが混じった声に相槌を打っている僕だが、バランスを取るのが一番きつい。
どんなに力持ちでも、バランスを崩してしまうと全てが台無しになるのは当たり前のことだろう。
しかも米俵の上には、先ほど購入したプレゼントが置いてあるのだからさらに神経を使う。

「運動系の部活の人が見たら確実に欲しがるでしょうね」
「まあ、やる気はないけれど。今のところ、軽音部以外の部活のことは考えていませんし」

真鍋さんのお世辞に、僕は苦笑しながら答えた。
運動系の部活に入っても僕にはあまり意味がないと判断したから文化系の部活を探していたのだから、今更運動系の部活に入ろうとなどと考えるのは馬鹿馬鹿しい。
とはいえ、スポーツ自体が嫌いだというわけではないが。

「”今のところは”ということは、そういうこともあり得るのね」
「だ、ダメだよ! 浩君が退部したら大変なことになっちゃう!」

いたずらっ子のような笑みを浮かべながら言う真鍋さんに、唯は慌てた様子で引きとめようとする。

「お願いですから、重箱の隅をつつくようなことしないでもらえませんか? 真鍋さん。説明が地味に面倒なので」
「ごめんごめん」

絶対に本気で謝っていないといった感じで謝る真鍋さんに、僕はため息をつきながら唯にどう説明すればいいか考えをめぐらせるのであった。










「さて、これで必要な材料もそろったことだし、始めるか」

自宅に戻った僕は、米俵を台所の方に置くと自室に先ほど購入したプレゼントの材料をテーブルの上に置いた。
お店の袋から取り出したのは、緑色の箱とラッピング用の包み紙にリボンに、クラッカーが数個と小さめの巾着袋の計五種類だ。
まずは、巾着から始めるか。
そうつぶやいた僕は、クローゼットの奥に隠されるようにしておいてあるアタッシュケースを取り出した。
それを開けると、中には様々な工作道具が入っている。
その中にある石を一つ取り出すと、それをトンカチで粉々に砕いていく。
粉々に砕いた石に手をかざす。

「…………」

目を閉じて掌に意識と力を集中しつつも頭の中で術式を組んでいく。

「リブーレア」

大よそ組み終えたところで、終結を示す呪文を紡ぐ。
手をかざしていた石には何も変化はないように見える。
だが、暗いところで見るとかすかにではあるが光を発しているはずだ。
この石の正体は故郷で最もよく取れる”魔石”というもの。
この魔石は素材として組み込めば非常に優れた効果を発揮するものだ。
しかも、どのような道具にも素材として使うことができるという優れものなのだ。
そのためこの魔石一つでも数百万という高額な値段がかかるので、あまり使われていない。
使ったとしても、ほんのひとかけらくらいだろう。
これを贅沢にもすべて使用したのだ。
使い方も簡単で、砕いて魔力を注入するだけで、呪文を紡ぐ必要もない。
呪文を紡いだのは、この石自体を魔導媒体兼素材として利用するためのものだ。
それはともかくとして。
完成した魔石を巾着の中に入れると、巾着の口を締めて開けることができないように処置を施した。
そうして完成した巾着袋は一緒に購入した緑色の箱の中に入れる。
残すはクラッカー。
これは単純だ。
僕はクラッカーを一つ取り出すと、ひもを引っ張る。
すると破裂音が響き渡った。
僕は続いてもう一つのクラッカーを取り出すと同じようにひもを引っ張る。
それを何度も繰り返していく。
やがて、家に元々あった画用紙の端の方に指が入る大きさの隙間ができるように半円形に切り込みを入れてそれを巾着袋を隠すように箱の中に入れた。

「ラ・ベルティア・リ・ブレインド」

そしてその画用紙の方に手をかざした僕は、呪文を紡ぐと箱のふたを閉めてさらにラッピング用の包み紙で箱を包んでいく。

「レエーラ・モジスト」

さらにこれまたラッピング用の青と黄色のリボンにも、魔法をかけてから箱に結んでいく。
これで、一見すると普通のプレゼントが完成した。
だが、中身は色々と工夫が凝らされている代物となっているので、パーティの場では非常に最適なものだろう。

「これであとはクリスマス会当日を待つのみか」

僕はそうつぶやきながら壁に掛けられているカレンダーを眺める。
クリスマス会の開催まであと一週間を切っていた。

「さて、変に壊れないようにするためにクローゼットにしまっておこうかな」

そうつぶやいた僕は、完成したプレゼントをクローゼットにしまうのであった。
そして、それから数日後。
ついにクリスマス会の開催日を迎えるのであった。

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