それは遠い昔の物語。
とある星に伝えられる最強の男の物語。
戦乱の時代、その青年は存在した。
荒廃したその場所は、まるで戦争があったかのような状態であった。
「た、退避! 退避!」
目の前で起きた爆発に、軍服に身を包む男が後ろにいる数人に声をかけ、その場から離れようとする。
「シェイント・フレア」
「なッ!? ぐあああッ?!」
「「「隊長!!」」」
逃げ出そうとする声をかけた隊長と呼ばれた男は、一瞬で業火に見舞われる。
肉の焼ける匂いが男達が持っていた恐怖心を増させる。
「なに逃げようとしてんだ?」
「ッ!?」
黒髪に赤い目をした青年の地獄のように低い声は、男達を震え上がらせる。
「テメェらのせいでこの争いは起きた。それなのに元凶であるテメェらが逃げても良い何て理屈は。ないよな?」
「た、助けて!」
「や、やめてくれぇ!!」
たった一人の青年に数人の兵士たちは完全にひれ伏していた。
「お前らは、餌だ」
「ヒっ!?」
兵士たちが見たのは、青年の右腕だったものが怪しげに揺れる紅く輝く”何か”だった。
「喰らい尽くせ。ブラッディ・アブソプション」
怪しげに揺れる赤く輝くそれは、一瞬で男達を飲み込んだ。
「はぁ……」
青年のため息とともに赤く輝くそれは普通の腕へと姿を変える。
「また、争いが起こってしまった」
青年はどんよりとする空を仰ぎ見ると、嘆く様に呟いた。
「いつになったら、この無限に続く争いは止められる? いつになれば、僕の理想の世界になるんだ?」
それは最強の男にはそぐわない嘆きだった。
「誰でもいい。誰か、この無限の戦いの連鎖を止めてくれ。そして、僕を救い出してくれ」
その言葉を聞くものは誰もいなかった。
それから少しして、青年は行方をくらませる。
青年の行方は、未だに不明だ。
全ては輪廻する。
今、その時が訪れる。
さあ、始めよう。
新たな物語を。
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