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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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プロローグ

「――以上で、式を終わります」

校長のその言葉で、僕がいる講堂中に賑わいが戻る。
色々な場所で、この後どうするかを話し合う声が聞こえる。

「ヘイ、コウスケ」
「ん? ああ、ジョンか」

僕も行動を後にしようとしたところで、声が掛けられた。
声をかけた人物……金髪の美形男子でもあるジョンは、気さくな性格で一番最初に友人になった幼なじみだ。

「本当に帰るのかい?」
「ああ。そのつもりだ」
「寂しくなるな」

本当に寂しそうな表情を浮かべるジョンに、僕は肩をすくめる。

「だけど、どうしていきなり日本に? このままいけば博士まで行けるというのに」
「そうだな………ただの気まぐれかな」

ジョンの問いかけに、僕は行動の出口の方を見ながらそう答えた。
それにジョンは分からないといった様子だった。

「そうだ。これは僕と友人たちからの贈り物だ。受け取って」
「ありがとう」

ジョンに手渡された花束とアルバムを受け取りながらお礼を言う。

「そろそろ行くな。飛行機の時間もあるし」
「そうか……落ち着いたら手紙を送ってね」

ジョンに僕は頷いて答える。

「それじゃ、またな・・・ジョン」

そして僕は、ジョンに対してこれが最後ではないという意味を込めて、別れの言葉を告げるとその場を後にする。










「気まぐれ……か」

僕、高月浩介は空港へ向かうタクシーからイギリスの街並みを眺めながら、黄昏る。
とある事情でイギリスに留学した僕は、中学の課程でもある”キー・ステージ3”を修了したこの年、日本の高校に戻ることにした。
学校の教師やガーディアンの人からもさんざん続けるようにと説得されたが、僕の決意は揺らがずに日本に戻ると言い続けた。
根気強く言い続けたおかげでようやく受験のために日本に戻るのことが出来たのだが、かなり戻るのが遅かったためにほとんどの高校が願書の提出期限を過ぎていたという、絶望的な状況が僕を待っていた。
だが、一校だけ願書の提出期限が過ぎていなかったため、その高校に願書を提出して受験をしたのだ。
そして日本の高校に合格したという報告を受けたのがつい最近の事だ。

(そう言えば、高校はどこだったっけ?)

僕はうっかり高校の名前を忘れていたが、日本に戻れば高校名が分かるので、大して気にもしなかった。
やがて、ヒースロー空港に到着し、僕は日本の成田空港行きの便に乗ってイギリスを後にした。










イギリスをとび立ち、しばらくすると飛行機内の照明が落とされた。
周りが寝静まる中、僕はビニール袋から一冊の雑誌を取り出した。
それはヒースロー空港内で販売されていた日本人向けの雑誌だった。
基本的に週刊誌があまり好きではないが、この雑誌を書く会社は色々な視野から的確な分析と指摘をする記事を多く書いているため、時々読んでいるのだ。
僕は薄暗い中、雑誌を読み始めた。

(ん? 女子高が共学化)

その中、ひとつの記事に目が留まった。
それはとある女子高が男女共学化したと伝えるものだった。
何でも、近年日本で進む少子高齢化の影響で、受験する生徒の数が減少傾向にあるため男子の受け入れに踏み切ったようだ。
後半からはこの共学化の背景にある少子高齢化問題に対する鋭い分析と指摘をしつつ、政府がとらなければならない対策など、細かく書かれていた。
この出版社の記事は最後に読んだ3年前のと変わらない質だった。

(全入するのも、問題だしな)

全入すると、中学程度の学力を有しないものまでもが入学できてしまうという問題もある。
一夜漬けは問題だが、勉強しないよりはましだ。
学校側も、そのリスクを避けるために男子の受け入れという伝家の宝刀を抜いたのだろう。

(にしても、ここに入学する男子は大変なんだろうな)

男であれば、羨ましがる周りのほとんどが女子という状況下で、果たして楽しめるだろうか?
女子の結束力はいい意味でも悪い意味でも強いのだから。
きっと男子たちは自分の居場所を確保するだけでも苦労することだろう。
もっとも、積極的に交流を深めて居場所を確保できる者もいるだろうが。

(私立桜ヶ丘高等学校……ね)

僕は記事に出ていた高校名を見て、雑誌を閉じ再びビニール袋に戻した。
そして、僕も到着するまでの数時間の間、眠ることにするのであった。
この記事が僕に非常に関係することであることも知らずに。

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