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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第25話 放課後時の仕事

「ナナカさん、決算の報告書はまだ?」
「ごめん、もうちょっとで終わるから!」

生徒会役員は色々と忙しそうに作業をしている。

「………」

リアさんもさりげなくではあるが、いつの間にか飲み干されたお茶を注いで回っている。
それに比べて僕は

(………虚しいな)

ただそこにいるだけの状態だ。
いや、そもそも相談役補佐とは何をすればいいのだ?
文字通りならリアさんの補佐だが、一体全体何を補佐しろと?

「大丈夫」
「え?」

突如掛けられたリアさんの言葉に、僕は思わず声を上げてしまった。

「やるべきことって言うのは、自然と出てくるから、慌てなくても大丈夫」
「………ありがとうございます」
「ファイト♪」

やはりこの人にはかなわない。
リアさんの笑顔での応援を受けて、僕は改めてそう実感するのであった。









「えっと、本当にいいのかな?」
「解散の挨拶はすでにしているんだし良いんじゃない? というより気付かない方が悪い」

気の進まない様子のシンに、僕はそう言い放った。

「それじゃ、お願いね」
「ああ」

シンを送り出して生徒会室に残されたのは僕と……

「……」

聖沙さんだった。
その聖沙さんはデスクに顔を落としたまま黙々と作業を続けている。
聖沙さんはかなりの時間同じ姿勢で作業をし続けていた。
それも、周りの役員メンバーが次々と生徒会室を後にして言っているにも気づかないほどに。

(……手伝うべきか?)

ふと心の中に浮かび上がる疑問。
だが、僕はそれを頭の片隅に追いやる。
僕は生徒会や風紀委員が嫌いだ。
奴らは自らの利権を得るために動くどうしようもない屑の塊だ。
学園の為と言う免罪符を持っているだけにたちが悪い。
そんな僕が生徒会の役員の一員(?)になってしまうのだから笑い話にもならない。

(それに)

追いやった理由の一つが彼女の真剣な表情に手を出すことが憚られたのか、それとも自分の役職でもある相談係補佐だからなのかは分からなかったが、そのどちらか乗り湯が大きく締めていた。

(まあ、紅茶の一杯くらい入れるか)

幸いティーポットのようなものもあるし。
僕は慣れない手つきではあるがティーポットの操作を始めた。
苦戦はしたがなんとかセットを完了し、後は紅茶が出来るのを待つだけだった。

「………」

ペンが走る音だけが聞こえる中、僕は窓から空を見る。
空は流星が走っていた。
普通の人が見れば、これはさぞかし幻想的な光景に見えるだろう。
だが、これは”リ・クリエ”の象徴なのだ。
過去、一人の英雄がこのリ・クリエを止めてもなお、続くこの現象は必然なのか、それとも……

「ふぅ……」
「ん?」

考え込む僕を止めるように、今まで沈黙を保っていた聖沙さんがため息を漏らす。

「お疲れ様。副会長殿」
「役職で呼ぶなーーっ!!」

労いの言葉を掛けたら何故か怒鳴られた。

「あ、ああ。悪い」
「あ、ごめんなさい。つい癖で」

食い下がろうとするのを必死に抑えて素直に謝るとすぐに謝り返してきた。
癖で役職で呼ぶなと叫ぶなんて……なぜ生徒会に入ったんだろう?
きっと本人は触れられたくない内容だと思うので、僕は頭の中に浮かんだ疑問を片隅へと追いやった。

「ところで、どうして誰もいないのよ」
「解散することになったけど、聖沙さんが作業に集中して気づいていなかったから。いつまでも帰れないということで聖沙さんの仕事の邪魔をするのも悪いから、あなた以外は解散にしようということになったわけ」
「なッ!? それで私だけを残して帰るなんて、生徒会長失格ね!」

僕の説明に憤怒する聖沙さん。

「シンだったらついさっきまで残ってたよ。ただ僕が追い払った」
「え? ど、どうして」
「気づかない方が悪いから」

シンにした理由を省略して聖沙さんに告げた。

「ということで、あいつらを責めるのは無しだぞ」
「わ、分かったわ。……あら? いい匂い」
「っと、もうできてたか」

話がまとまったのとほぼ同時に、ふんわりと漂ってくる香りは少し前に僕がセットしたティーポットからだった。

「え? 紅茶を淹れてたの?」
「まあ、相談係補佐だからね一人残って頑張る誰かさんを労うのと、自分が飲むためにね」

僕は聖沙さんに答えながらティーポットからカップに紅茶を淹れる。

「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう。いただきます」

紅茶独特の香りが生徒会室に広がって行く中、僕と聖沙さん入れたばかりの紅茶に口を付ける。

「お、おいしい」
「それはどうも」

聖沙さんの口から出た感想に、僕はお礼を言うことにした。

「それにしても、あなた紅茶淹れるの上手ね」
「そりゃ、嗜んでるからね」

よく自分で紅茶を淹れて飲んでいるのだから、淹れられなかったら問題だ。

「と、そろそろ最終下校時刻だから、それ飲んだらすぐに帰るぞ」
「え、ええ」

僕はすでに紅茶を飲み干し、ティーカップとティーポットを洗う準備をしていた。

「飲み終わったら洗うから貸して」
「え、悪いわよそんなの」
「良いから。これを洗うついでだし。そっちには資料の片付けとかがあるんだから」
「でも……」

食い下がる聖沙さんに、僕はどうしたものかと頭をひねる。

「だったら、そこのデスクに置かれている僕のバッグを持ってきてくれるか? 資料を片づけ終わったらここの施錠をして、それでロビーの方で待ち合わせ。これだったらお互いに平等だろ? 僕はティーカップの洗い物をする。そっちは僕の荷物を持つ」
「た、確かに……って、ティーカップはどうするのよ!!」
「それは秘密だ。何、朝来たときにはちゃんと戻ってるから心配するな」

聖沙さんのある意味、尤もな指摘に、僕はそう答える。

「…………分かったわ。それでいいわよ」

疑いのまなざしを向けられるが、僕はそれを真正面から受け続けると、聖沙さんは諦めたようにため息を漏らす。
そして僕は聖沙さんからティーカップとティーポットを受け取ると、それを洗うべく洗面台のある場所へと向かうのであった。

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