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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第2話 入学式!

あれから数日の時間が流れる。
僕は、新たに通うことになった桜ヶ丘高校の制服に袖を通していた。

「はぁ……」

これから毎日通るであろう住宅街を歩きながら、僕はため息を漏らした。
これで何度目だろうか?
今日は入学式。
おそらく生徒たちはこれから始まる新たな日常に胸を躍らせている事だろう。
そんな中、僕は憂鬱な気分だった。

(何で僕が元女子高に)

僕は、未だに割り切れていなかった。

(まあ、願書を出すの日が遅かったんだから当然かもしれないけど)

それでも割り切ることはできなかった。

(女性に興味がないわけでも恐怖症でもないんだがな)

僕は女性に興味は多少なりともあるし、恐怖症だなんてこともない。
ただ単に”万が一”の時が一番恐ろしいだけだ。
女子の結束力は良い意味でも悪い意味でも恐ろしいほど強いのだから。

「9割が女子で残りの1割の男子の1割に僕が含まれているのか」

そう思うとなんだかすごいと思えてしまうのも仕方ない。

(というより、僕はどうやって合格したんだ?)

面接でも志望理由を聞かれたような記憶があるのだが。
……もっとも答えた内容は忘れてしまったが。

(不純な理由じゃなかったのが合格の決め手になった…………なんてな。そんな分かりやすい基準じゃないか)

一体一クラスに男子は何人いるのだろうか?
僕一人だったらどうしよう?
再び不安になってきた。

「まあ、いつまで悩んでいてもしょうがないか。いっその事楽しむ勢いで行こう」

(それが例の課題(・・・・)もクリアに繋がるのかもしれないし)

僕はそう考えをまとめた。

「すぅ……はぁ……」

いったん立ち止まり目を閉じると大きく深呼吸をする。
そして目を開けると、そこに広がる光景は今までとは見違えるほど素晴らしく見えた。
周りの光景など、心の持ちようで見え方が変わるのかと、どうでもいいことを学んだ僕は再び足を進める。
少し歩くと十字路に差し掛かった。
「この十字路からパンを口にくわえた少女が飛び出したりして」
どこのラブコメだよと心の中でツッコむ。
大体今の時間帯はまだ遅刻するような時間でもないし。

「うわッ!?」

そう思っていたところ目の前の十字路から少女が飛び出して来た。
しかもパンをくわえて。

(な、なんというベタな)

あと一歩前に進んでいたらぶつかっていたかもしれない。
どうやら僕は運がいいようだ。

(にしても、かなり急いでいたな)

僕は少女が走り去って行った方向に視線を向ける。

(遅刻するってわけでもないのに走るなんて。とても律儀な人なんだな)

僕は先ほどの少女にそんな印象を抱いた。
きっと品行方正なのだろう。

「ん?」

自分の中で結論付けて歩き出そうとした僕は、地面に落ちている何かに目を止める。
それはピンク色で何やらキャラクターのようなものが縫われているハンカチだった。

「これって明らかに、さっきの人のだよな?」

もしかしたら別人かもしれないが。

「…………って、早く追いかけないとッ!?」

僕は慌てて少女の後を追いかける。
全速力ではなく若干パワーを抑えている。
そうしなければきっと僕は風になるだろうから。
全速力でなくても今の速さも普通の人よりはかなり出ている。
現にさっきの少女の後姿が徐々に近づいてきているのだから。

「おーい! そこの走っているあなた!」
「ふぇっ!? うわっととと?!」

声が聞こえるであろう範囲まで追いついた僕は大きな声で前を走る少女に声をかけると、それに驚いた少女は一瞬バランスを崩して転びそうになるが、なんとか転ばずに済んだようだ。

「だ、大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です!」

少女は大丈夫だということをアピールしながら答える。
口にくわえたパンはどうやら途中で食べきったようだ。

「これ、君のですか? さっき向こうの方で拾ったんですが」
「あ、私のです! すみません、ありがとうございます」

僕が少女に差し出したハンカチは彼女の物だったようで、大事そうにスカートのポケットしまいながらお礼を言ってきた。
その少女は栗色の髪を左右と真ん中に分け、僕から見て左側をヘアピンで留めていた。

「いや、当然のことですよ」
「……あッ!? 遅刻、遅刻!!」

僕の答えなど聞かず、少女は再び慌ただしく駆けて行った。

「…………」

僕はそんな少女の後姿を呆然として見送る。

(……ただのおっちょこちょい?)

そんな事を思ってしまうのもある意味当然だと思う。

(それにしても彼女も桜高の生徒か)

着ている制服が前に見た桜高の女子用の制服と同じだったことから、僕はそう考えた。
そして僕は再びゆっくりと歩き出すのであった。










「ここが私立桜ヶ丘高等学校」

とうとう来てしまった。
元女子高であった桜高に。

「よしっ!」

僕は絶壁から身をとおじる投じる覚悟で校門をくぐる。
昇降口に入り『新一年生』と書かれた紙の下駄箱に靴を入れると、制服一式と一緒に入っていた青色の上履きを履くと奥の方に張り出されている新一年生のクラス分け表を確認する。

「僕は四組か」

自分のクラスが分かった僕は、四組の教室へと向かう。





「本当に女子しかいないよ」

四組の教室に入った感想が今のだった。
周りを見れば女子、女子、女子。
まさに元女子高であるのを思わせる光景だった。
席の方は黒板に張り出されている席順で決まっている。
僕は廊下側の間だ。
隣の女子生徒はいないようだ。

(入学式までの間、どうしたものか)

この教室に足を踏み入れた時点で一斉に何とも言い難い視線にさらされたのだ。

「お前がもう一人の男子か」

これをもう一度味わえるかと聞かれれば、答えはNoだ。

「よっ!」

最強を名乗る男が何を言ってるんだと思うが、これが現実だ。

「あれ聞こえなかったか? おっす!」
「……………」

ところで、先ほどから馴れ馴れしく声をかけ続ける黒髪の男は何なのだ?
悪く言えば鬱陶しい。
男子は各クラスに二人ずつ入れられているようだ。
何故に二人ずつなのかが分からないが。

「あのー、いい加減反応してくれてもいいでしょうか?」
「なに?」

とりあえず今目の前にいる人物に、僕は鬱陶しさを隠すことなく反応することにした。

「お、やっと返事をしてくれたか! いや、男子がほかにいてくれて助かったぜ。俺は佐久間(さくま) 慶介(けいすけ)。よろしくな!」
「………………」
「あ、あれ? また返事が」

僕は名乗り返すのが嫌になった。
相手の話方から、妙に嫌いな奴のタイプとぴったり重なる。
だが、同じクラススメイトだ。
そうも言ってられない
それに何より。

「はぁ。高月浩介だ。呼び方は任せる」
「おぅ、俺の事も慶介って呼んでくれ!」

目の前の男が悪い奴には見えなかった。
人を見る目だけは、あるつもりだ。
きっとこいつは良い奴だ。
……もっとも、鬱陶しいのが玉に傷だが。

「ところで聞いてくれ浩介! この俺の素晴らしいスクール・プランを」
「言ってみなよ」
「おう! まずはここのクラスメイトの女子とお友達になるだろ、それでお付き合いするという素敵なプランだ!」

はっきり言おう。
目の前の男の言葉で、周囲の温度が三、四度下がった。
そして視線が痛い。

「……佐久間慶介」
「何だ? 俺の素晴らしい計画に感銘したか?」
「僕に話し掛けないでくれるか?」

自分でもびっくりするほどの低い声で佐久間に告げる。

「な、なぜだ!?」
「お前と同類にされるのが嫌だから」
「お前も男だろ! 女の一人や二人と付き合ったっていいじゃねえか! いいか! ハーレムは男の夢だ!!!」

知らないし。
それに、そんな事を大声で言わないでほしい。
本当に視線が痛い。

「佐久間慶介」
「何―――ゲフッ?!」

僕は演説し続ける佐久間の脳天に鋭い一撃を加えることで演説を止めた。

「うるさい」
「ハイ」

ようやく佐久間は大人しくなった。
周囲からの視線も徐々にではあるが暖かい物となった。

(何だかものすごく目立っちゃったな)

今の一連のやり取りで、僕の当初のなるべく静かにして医療と言う密かな目標はことごとく潰された。
そんなこんなで、僕は入学式に出るべく入学式の会場でもある講堂へと向かうのであった。

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