あの騒動から日が経った。
あれからティアナを始め、フォワードの動きがさらによくなった。
一度激しく衝突したのが、いい方向に動いたのだろう。
「はい、今朝の訓練と模擬戦も無事終了。お疲れ様」
そんなある日の早朝訓練も終わり、なのはが労いの言葉をかける。
フォワードたちは疲れている様子であった。
ちなみに俺はいつものお得横で書類の整理や訓練データのまとめをしていた。
「でね……実はなにげに今日の模擬戦が、第二段階クリアの見極めテストだったんだけど……」
『ええッ!?』
なのはの衝撃の言葉に、フォワードは驚きを隠せなかった。
「どうでした?」
「合格」
「「早ッ!?」」
なのはの問いかけに、即答したフェイトに、ティアナとスバルがツッコんだ。
「まぁ、こんだけみっちりやって問題あるようじゃ大変だって事だ」
「「あはは……」」
ヴィータの言葉に、エリオとキャロが苦笑いを浮かべた。
「私も皆いい線行っていると思うし……それじゃ、これにて二段階終了!!」
なのはの宣言に、フォワードたちが手を上げて喜んだ。
「デバイスリミッターも一段解除するから、後でシャーリーのところに行ってきてね」
「明日からはセカンドモードを基本形にして訓練すっからな」
『はいッ!!』
フェイトとヴィータの連絡事項を聞いて元気よく返事をする。
そんな中、キャロがヴィータの言葉に気が付いたようだ。
「え……明日?」
「ああ、訓練再開は明日からだ」
キャロの問いかけに頷き、ヴィータは再度説明をした。
「今日は私たちも隊舎で待機する予定だし」
「みんな、入隊日からずっと訓練漬けだったしね」
なのはとフェイトの言葉に、フォワードたちは顔を見合わせていた。
「ま、そんなわけで……」
「今日はみんな、一日お休みです!」
ヴィータの言葉を引き継ぐように、なのはがそう告げた。
実感が出てきたのか、フォワードメンバーの表情に笑みが溢れていた。
「町にでも出かけて、遊んでくると良いよ」
「はーい!!」
こうして、新人たちの休日が幕を開けたのであった。
「……以上、芸能ニュースでした」
俺と健司と隊長陣は、食堂で朝食を取っていた。
食堂では、テレビからニュースが流れている。
「続いて、政治経済。昨日、ミッドチルダ管理局地上中央本部において、来年度の予算会議が行われました。三度目となる再申請の税政問題に基づいて、各世界の注目が集まっています」
俺の周りで流れるのどかな雰囲気とは対照的に、ニュースの方ではやや重要なことが取り上げられていた。
「当日は、首都防衛隊の代表、レジアス・ゲイズ中将による管理局の防衛思想に関しての表明も行われました」
レジアス・ゲイズという名前が出た途端、皆がモニターを見上げた。
「魔法と、技術の進歩と進化……素晴らしいものではあるが、しかし! それがゆえに我々を襲う危機や災害も10年前とは比べ物にならないほどに危険度を増している! 兵器運用の強化は、進化する世界を守るためのものである!」
レジアスの演説に、それを見ていた局員たちが拍手を送る。
「首都防衛の手は未だ足りん。地上戦略においても我々の要請が通りさえすれば、地上の犯罪発生率も20パーセント、検挙率においては35パーセント以上の増加を、初年度から見込むことが出来る!」
「……このオッサンはまだこんなこと言ってんのな」
ヴィータは食事を再開し、呆れた様子で批判した。
「レジアス中将は、古くから武闘派だからな」
そんなヴィータに、シグナムはフォロー(?)をした。
「俺から言うと、少々浅はかではあるけど」
「………?」
俺の言葉に、全員が驚いた様子でこっちを見てきた。
「世界の平和を守るために兵器を投入する。それは一見いいことかもしれないけど、それは新たな争いの火種になる」
「………驚きだな、本局所属のお前からそんな言葉が出るとはな」
俺の意見に、健司が皮肉を込めて言ってきた。
「俺は思ったことを口にしただけだ。まあ、さすがにこんなこと本人には言えないけど」
俺はそう言うと、周りの視線(特にはやての)に耐えられなくなり、誤魔化すように食事を再開した。
それは、急な休日の朝の風景であった。
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