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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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IF-H 第11話 終わりと告白

俺達がいるのは、周りが木々に囲まれた森の中だ。
あの後、魔物の元となった妖刀が落ちて行った場所を追いかけたのだ。
目の前にあるのは紅い蔦のようなものを不気味に動かしている妖刀だった。
その妖刀は近づく俺達に気付いてその動きを遅くさせる

「それにしても、我らの姫君と勇者殿には驚かされる。妖刀の贄となった子をああも見事に退治成されるとは」
「拙者は存じ上げておりましたよ。姫様もシンクも、ちゃんとできる子だと」

ブリオッシュの言葉に、ユキカゼが続く。
そう、あの大きな魔物は勇者シンクと、姫君によって退治されたのだ。
正確には元凶に戻すことが出来たということだが。
それでもすごい物はすごい。

「さすがは勇者と言った所か」
「そうであったな。さて、ここからは拙者のお役目でござる」
「「はいっ!」」

大剣を握りしめながら告げるブリオッシュに、俺とユキカゼは答える。
その瞬間、妖刀が牙をむく。
俺達に目掛けて赤い蔦のようなものを使って攻撃してくる。
それを俺達は巧みにかわす。

「天封!」

隙を狙って俺は蔦の攻撃を止める。

「浮き世に仇なす外法の刃。封じて廻るが、我らの努め……大地を渡って幾千里、浮き世を巡って幾百年」

ユキカゼの詠唱が進むにつれて地面に金色の紋章が描かれる

「天狐の土地神ユキカゼと、討魔の剣聖ダルキアン! 流れ巡った旅のうち、封じた禍太刀……五百と九本! 天地に外法の華は無し!」

短剣から放たれた金色の小さな何かが妖刀の蔦に突き刺さる

「……朽ちよ禍太刀!!!」
「神狼滅牙、天魔封滅!!!」

ブリオッシュの大剣に纏った紫色の光によって、辺りは包まれる。
その力でさえも、妖刀は耐えている。

「天高く舞い上がれ」

そこに俺の一撃が加わる。
その言葉と同時に、俺は背中に生えているであろう翼を使い斬り伏せるように動かした。
それだけでも空刃となって届くため、有効な一撃なのだ。

「点に轟く一筋の光は!」

再び、言葉を切り刻みながら両翼で2回切り刻む。

「絶望の闇を打ち消す光となる!!」

そう叫び両翼で一斉に切り込むように動かすと、俺は神剣二本を頭上で合わせる。
次の瞬間、二本だった神剣は一本の大きな剣に姿を変えた。
白銀の光に包まれたそれは、前に使った時よりも膨大な威力を発揮するだろう。

「紋章術、終焉の幻想郷!」

最後の一言を告げると同時に、神剣を妖刀に向けて振り上げる。
その一撃と二人の攻撃が蓄積していき、妖刀は粉々に砕け散った。
それと同時に、暗雲に包まれた空は元の紫色の空へと変わった。

「うむ。無事に済んだか」
「はい、お館さま。封印刀の中に、しっかりと封印しました」

未だ紫色の光を包むブリオッシュの問いかけに、ユキカゼは地面に突き刺さっていた封印刀を掲げる。
見ただけでもわかる。
その封印刀に秘められた力が。

「うむ」

その答えに、ブリオッシュは満足げに頷くと手にしていた剣を振る。
それを合図に、今までその体に纏っていた紫色の光はまるで殻のように破れて消えた。

「砦にいる姫様たちにご報告に向かわなければな」
「はい! 拙者が行ってまいります」

ブリオッシュの言葉に、ユキカゼがそう答えるとブリオッシュが頷いた。

「ちょっと待ってくれ」

そこで、俺は割って入るように声をかけた。
きょとんとした表情でこっちを見てくる二人。

「その前に、大事な話がある」
「そ、そうであったな」
「う、うう………」

俺の言葉に、二人は頬を赤く染めて答える。
俺は深呼吸をする。
問題はない。

「俺は一人の女性として、ユキカゼとブリオッシュの事が好きだっ!」
「「ッ!?」」

俺の告白に、二人が声にならない悲鳴を上げる。

「でも、俺は一人を選ぶだなんてことはできない。だから――――」
「「渉殿!」」

俺の告白は、二人の声によって遮られた。

「い、今の言葉に偽りはないでござるか!?」
「本当に拙者の事が好きなのでござるか!?」
「あ、ああ。嘘偽りはない」

その俺の言葉を聞いた瞬間、二人の表情が笑顔に包まれた。

「拙者は嬉しいでござる」
「拙者もでござる。どっちか一人だけだったら拙者は泣いていたでござるよ」
「そ、そうか。それならよか…………はい?」

二人の嬉しそうな表情に頷き掛けた俺は、思わず固まってしまい聞き返した。

「拙者とユキカゼも、”渉”が一人の男として大好きでござるよ」
「うわぁ!?」

そう言って二人して抱き着いて来たので、少しばかりよろけたが頭の中は大混乱だ。

(ど、どうして俺は二人と付き合うことに!?)

俺としては、二人は選べないので、もう少しだけ時間を欲しいというつもりだったのだ。
でも、二人は完全に勘違いしている。
こっちの方がよっぽど男としてまずい。

「わ、渉!」
「は、はい!?」
「その拙者と口づけをしてほしいでござる」
「はいぃ!?」

ブリオッシュのストレートな言葉に、俺が慌てる番だった。

「そ、その好きな者どうしで最初にするのが口づけだと聞いているでござる。だから」
「それとも、やはり渉のさっきの言葉は嘘だったのでござるか?」

最初にするのが口づけって、何かおかしい。
いや、俺も声を大にして言えるような経験をしていないが。
しかしこれはまずい。
もはや、正しく説明する事は不可能な状態になっていた。

(ええい! こうなったら覚悟を決めるしかない)

俺は今後訪れるであろう非難を受け入れる覚悟を決めた。

「ブリオッシュ」
「ぁ………ん」

俺はブリオッシュに口づけを交わす。
時間にしてほんの数秒。
だが、それは俺にとっては数十秒にも感じられた。

「うぅ~、お館さまばかりずるいでござる!」
「む……」

大きな声で不満を訴えるユキカゼの声に、俺はブリオッシュから唇を離すとユキカゼの方に向き直る

「んぅ………」

そして、俺はユキカゼに口づけを交わすのであった。
こうして、俺とユキカゼ、ブリオッシュは恋人となるのであった。

………絶対に何かがおかしい。

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