12月2日
「真人~ご飯よ」
「は~い!」
朝、俺はいつものように下から聞こえてくる母さんの声に返事をした。
俺の名前は
山田 真人どこにでもいる普通の小学生だ。
って、誰に説明しているのだろうか、俺は?
そんなこんなで俺は制服に着替えて、リビングに行った。
朝食を食べ終えて、少しだけゆっくりしている時、俺達家族はテレビのニュースを見ていた。
『続いてのニュースです。4月に発生した原因不明の市街地の壁などが突然壊れた事件ですが、未だに原因が分かってはおりません』
ニュースでは『市街地破壊事件』(俺命名)が取り上げられていた。
その事件は4月に入って少ししてから起きた。
突然市街地の壁が壊れたのだ。
電柱は折れ曲がっていたと言われていた。
それからしばらくして今度は町中に木の幹が出現した。
少し経ったら消滅したが、環境問題による現象や、地球の終わりだとか色々な憶測が飛んだ。
結局答えなどは出なかったが……。
さらには連休中にも光が飛び交うのを見たという目撃証言まで飛び出したりした。
そのため、一時期海鳴市は怪奇な街と呼ばれるようになってしまった。
まあ、そっち関係での観光客は増えたみたいだったが。
(それにしても、一体なんだろう?)
俺はふと考え込んだ。
「嫌だわ、近頃は物騒で」
俺の考えを遮ったのは、母さんのぼやきだった。
「そうだな、真人も気を付けるんだぞ」
「はーい、父さん」
俺はそう答えたものの俺にとっては無関係だった。
そしていつも通りに学校へと向かうのだった。
――そういつも通りに。
「お、真人おはよう」
「おはよう」
クラスの友人が教室に入った俺を見つけて声をかけてくる。
それに対して俺はいつも通りに答える。
「なあなあ、やっぱり今年のミス聖翔は高町さんで決まりだよな」
「おいおい何を言ってんだよケンジ、それならバニングスさんだよ」
「いやいや月村さんという線も」
三人はそのまま討論を始めてしまった。
俺はその三人から離れることにする。
周りを見れば案の定三人を冷たい目で見る女子たちの姿があった。
「あ、おはよう真人君」
「おはよう、なのは」
挨拶をしてきたなのはに俺も挨拶をした。
別に俺となのはは知り合いだとかそういうのではない。
家が隣だからとか近所だからとかはない。
(そもそも学校からバスに2,3分くらい乗って乗って5分程度歩けば家だし)
なのになぜかこういう風に自然に話せるぐらいの中なのだ。
ちなみに呼び方は、彼女自身が指定してきた。
思い当たるとすればたまたま席が隣で元気がない時に、俺が元気づけてあげたりしただけだ。
まさかそれだけで仲良くなれるのであれば、今も俺にひしひしと感じる男からの殺気はないはずだし。
「そう言えばなのははどう思う?」
「え?何が?」
俺はとりあえず気になったことを聞いてみることにした。
「ほら、4月にあった市街地の壁が突然壊れた事件」
「さ、さあ?」
俺の言葉になぜかなのはは慌てていた。
なぜ?
「は~い、皆さん席についてくださいね」
理由を聞こうとしたが先生が来たため打ち切りとなってしまった。
結局その後、市街地破壊事件に関して聞くことはできなかった。
「ふぅ……」
夜、俺はいつものように自分の部屋で本を読む。
読んでいるのは、ごく普通の少年が魔法使いの学校に行くという内容の本だ。
「いいなぁ、魔法って」
一通り読んだ俺はそう呟いた。
やっぱり俺でも魔法というものにあこがれる物さ。
「もし魔法が使えたら好きなお菓子を、いっぱい食べたいな」
俺はそんな現実味のないことを口にする。
でもそれは所詮、作り物。
この世に魔法なんてものは存在しないのだから。
「……寝ようっと」
そして俺は眠りにつくのだった。
―日常崩壊まで残り1日ー
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