健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第43話 約束/訪れた時

9月11日

公開意見陳述会を明日に控えた日の夜、俺達機動六課フォワード陣と隊長陣は、ロビーに集まっていた。

「と、いう訳で明日はいよいよ公開陳述会や。明日14時からの開会に備えて現場の警備はもう始まってる。なのは隊長とヴィータ副隊長、山本副隊長補佐とリィン曹長、フォワード四名はこれから出発、ナイトシフトで警備開始」

はやてからの説明と指示を受ける。
と言うより、俺って副隊長補佐だったのね。
今初めて知った。

【それ、隊員としてはどうかと思うぞ】
「みんな、ちゃんと仮眠とった?」
『はい!!』

執行人からの念話をよそに、フェイトの言葉にフォワード陣は元気よく返事をする。

「私とフェイト隊長、シグナム副隊長は明日の早朝に中央入りする。それまでの間、よろしくな」
『はい!』

はやての言葉に、俺達は返事をした。
そして俺達はヘリポートへと向かった。










「執行人、出てきて」
【了解】

一足早くヘリポートについた俺は、ヘリから少し離れたところで執行人にそう告げると、外に出た。
執行人は何時も俺の中で過ごすことが多い。
ちなみに彼曰くこれはユニゾンではないとのことだ。

「どうした?」
「執行人に頼みたいことがある」

突然の俺の言葉に、執行人は首を傾げながら口を開く。

「言ってみろ」
「転生者が健司に手を出すかもしれない。だから健司の警護をしてほしい」

俺のお願いを聞いた執行人は、しばらく考え込んだ。

「分かった。他ならぬ真人いからの命だ。ありがたく拝命しよう」
「ありがとう」

俺のお礼に、執行人は”なんてことはない”と言いながら病院の方へ飛び立っていった。
そして俺も、ヘリの方に向かう。

「ん?」
「……?」

なのはと合流した俺がヘリに乗ろうとした時、後ろでなのはの声がしたので、振り返った。
そこには寮母のアイナさんに連れられたヴィヴィオの姿があった。
そのヴィヴィオは、不安げな様子でなのはを見ていた。

「あれ、ヴィヴィオ。どうしたの? ここは危ないよ」
「ごめんなさいね、なのは隊長、山本さん。どうしてもママの見送りするんだって……」

申し訳なさそうに謝る愛奈さんに、俺はなのはにつられるように屈んだ。

「もう、だめだよヴィヴィオ。アイナさんに我が儘言っちゃ」
「ごめんなさい……」

なのはは苦笑いしつつ、ヴィヴィオに注意した。

「なのはママ今夜はちょっとお外でお泊りだけど、明日の夜には、ちゃんと帰ってくるから」
「絶対………?」
「絶対に絶対」

なのははそう言うと、小指を突き立てた。

「いい子で待ってたら、ヴィヴィオの好きなキャラメルミルク作ってあげるから」
「うん」
「ママと約束ね」
「うん」

ヴィヴィオはなのはの小指に自身の小指をからめた。
それを俺達は静かに見ていた。










俺達は中央管理局地上本部へと到着した。
日付も12日となっていた。
表はかなり厳重な警戒態勢となっていた。
そして太陽が出始めたころ、俺となのはは本部の入り口の前に着くと、ついてきていたスバルとギンガの方に振り返る。

「さて、じゃあ、そろそろ私は中に入るよ」
「「はい!」」

なのはの言葉に、二人は返事をした。

「でね、内部警備の時、デバイスは持ち込めないそうだから、スバル、レイジングハートのこと、お願いしていい?」
「あ、はい!」

なのはの頼みにスバルは慌てて頷く。
警備なのにデバイス持ち込み禁止と言うのは、何とも矛盾を抱えていると思うのが正直な感想だ。。

「前線メンバーで、フェイト隊長達からも預かっておいてね?」
「はい!」

なのははスバルの返事を確認すると、中に入っていった。

「っと、俺も内部警備だから、クリエイトを預かってくれるか?」
「はい!」

俺は待機状態となっている水晶玉をスバルに手渡すと、中に入った。










あれからかなりの時間が経ち、お昼を回った。
俺は単独で地価の方を警備していたが、つい先ほど局員から差し出された軽食を食べていた。

(健司をあんなふうにした転生者……一体何が狙いなんだ?)

俺は食べながらふと考える。
普通、転生者には何らかの目的がある。
出なければ、行動など起こしはしないはずだ。

(まさか………な)

俺は頭の中に出てきた、最も最悪な一つの可能性を否定した。
その可能性は

――――――世界征服と言うものだった。










そして、開会してから約4時間後、午後6時を回った時だった。
突然の揺れと爆音が響き渡ったのは。

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第42話 見えた敵

「何だって!?」

部隊長室に突然呼ばれた俺は、はやてからの知らせに、俺は耳を疑った。

「せやから、健司君が違法魔導師にやられたんや!」

そう、任務に行った健司が違法魔導師に敗れたという知らせだった。

「それで、健司の容態は?」
「今病院で手術を受けておるらしいんやけど、今はどうなってんのかが分からへん」

俺の問いかけに、はやては首を横に振りながら答えた。

「はやて、病院に行ってきていいか?」
「勿論や」

俺ははやての許可を取り、部隊長室を後にしようとした。

「ちょい待ち」
「何ですか?」

俺は引きとめたはやてに用件を尋ねた。

「健司君の容態、分かったら早く私達にも伝えてな」
「勿論」

はやてのお願いに、そう答え、俺は健司が手術を受けているであろう病院に向かった。










病院に到着した俺は、ベンチに腰かけている長い青髪の女性……アリスを見つけた。

「アリス!」
「真人さん!!」

俺が来たことが分かったアリスは俺に抱き着いていた。

「健司さんが……グスッ……健司さんがぁ!」

涙ぐみながら、悲しげに叫ぶアリスの背中を静かにさすった。
健司には悪いが、後で事情を話せば許してくれるだろう。
なのはは………SLBを覚悟したほうが良いかもしれない。
そんな事を考えていると、手術室と思われる扉が開き、中からはベッドのようなものに横たわる健司が出てきた。

「健司!!」
「健司さん!!」

俺とアリスは目を閉じている健司の元に、近寄って名前を呼びかけた。
口元にはマスクのようなものがつけられ、腕には点滴がつけられていた。

「時空管理局執務官、山本です。何があったかをお教え願えますか?」
「はい、それではこちらへどうぞ」

俺はすぐに気持ちを切り替え、身分を示すIDを医者に提示して事情を聴くことにした。
医者の後を追い、俺は歩き出した。
その際、アリスには健司に付き添うように伝えておいた。










「井上さんですが、心臓の近くを剣で一突きにされている姿で発見されました」
「ッ!!」

モニターに表示されたのは、健司の搬送時に調べられた医療データだった。
その中のレントゲン画像には、健司の体を貫く剣が写っていた。

「幸い、急所を外れていたことと、発見や処置が早かったことが幸いして命だけはとい止めましたが、正直言ってどうなるかは私達にもわかりません。2,3日が山です」
「………わざわざありがとうございました」

俺に出来たのは、お礼を言う事だけだった。
それから後、どうしたのかは自分でもわからない。
気づいた時には、辺りは真っ暗になっていた。
感覚から場所は自室の様だ。
視力はなくなったのだろうか?
そう思った時、眩しいほどの光に照らされた。

「ようやく自分を取り戻したか」

呆れた様子で声を上げたのは、執行人だった。
どうやら、俺が正気を取り戻すまで待っていたようだった。

「なのは達が心配していたぞ。お前の様子がおかしいとな」
「………」
「まあ、そのあたりはこの僕がうまく言っておいたから安心しろ」

執行人が、感謝しろと言わんばかりに言うが、俺は何も言えなかった。

「で、いつまで黙りこくっているつもりだ。そのままじゃ健司を襲った野郎の話が出来ないじゃないか」
「ッ!? 犯人を知ってるのか!?」

執行人の言葉に、俺は胸ぐらをつかんで問いかけた。

「だぁ!!! 落ち着かんか馬鹿者!!」

それを執行人は、鬱陶しげに振りほどいた。

「………悪い」
「はぁ……始めるぞ?」

落ち着いた俺を見た執行人は、ため息交じりに話を始めた。

「健司の体を調べたところ、転生者反応があった」
「健司は転生者だ。反応があってもおかしくないだろ」

執行人の報告に、俺は反論した。
転生者反応とは、転生者が発する特有の魔力反応の事だ。
健司は転生者なのだから、あってもおかしくはない。

「それは、魔力回路や、肉体の話だ。健司の場合はそれが臓器にあった。これがどういう意味か分かるか?」
「……転生者による何らかの魔法を、体の中で発動させた」

執行人の言葉から導き出されたのは、それだった。
身体強化魔法ではなく、物理的に体の中で発動させたのだ。
通常自分の魔力は、魔力回路に異常がない限り自分の体の中……内臓にまであふれることはない。
医者から見せてもらった魔力回路の診断データからは、どこにも異常は見られなかった。

「つまり、第3者による攻撃」
「そう、そしてそれを行った人物は……」

俺と執行人の中で、元まった答えは一つだった。

「「転生者だ!!」」





公開意見陳述会まで、後5日

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第40話 新たな預言とうごめく闇

夕方、夕日が差し込む部隊長室のソファーにはやて、なのは、フェイトの三人が腰かけていた。

「今日、教会の方から最新の預言解釈がきた。やっぱり公開意見陳述会が狙われる可能性が高いそうや」
「うん……」

はやての言葉に、フェイトが頷いた。

「もちろん、警備もいつもよりうんと厳重になる。機動六課も全員でそれぞれ警備に当たってもらう、本当は前線丸ごとで警備させて貰えたらええんやけど、建物の中に入れるのは私三人になりそうや」
「まあ……私達三人が揃っていれば、大抵の事は何とかなるよ」

はやてにフェイトは安心させるように声を上げた。

「前線メンバーも大丈夫。しっかり鍛えてきてる。副隊長たちも、今までにない位万全だし」
「皆のデバイスリミッターも明日からはサードまで上げていくしね」

なのはに続いてフェイトがはやてに状況を言った。

「それと、新しい預言が出たそうや」
「新しい預言?」

はやての言葉に、フェイトたちははやてに聞き返した。

「何でも、【白銀と黒き翼の前に暗黒に落ちし者現れ、黒き翼は折れる】と言う内容だったらしいんや」
「どういう意味だろう……」

はやてが口にした預言の内容に首を傾げるなのはたち。

「ともかく、ここを押さえればこの事件は一気に好転していくと思う」
「きっと、大丈夫」

はやての予想に、なのはは窓の外を見ながら静かに呟いた。










一方、とある場所。
そこには一人の男性が立っていた。
その姿からは研究者だと言うことが伺える。
その人物こそが、広域次元犯罪者として指名手配されている男、ジェイル・スカリエッティだった。

「祭りの日は近いな。君たちも楽しみだろう」
「はぁ~、武装も完成したし、ドカンと一発暴れてみたいっすね」

スカリエッティの言葉に、横にいた短めの赤髪の少女……ウェンディが答える

「君たちは最善兵力の能力だ。存分に暴れられるぞ」
「だって……楽しみだね、ノーヴェ」
「別に。私は確かめてみたいだけだし。私たちの王様がどんな奴か、そいつがほんとに私達の上に立つのにふさわしいのかどうか」

ウェンディの言葉に、その横にいたノーヴェはぶっきらぼうに答える。

「まあ、よく分かんないけど、それってすぐに分かるんっすよね?」
「そうとも」

ウェンディの問いかけに答えながら、スカリエッティは台に手をかざす。
すると、その台から赤い光が発せられる。

「準備は整いつつある。一つ大きな花火を、打ち上げようじゃないか!」

その台にあったのは、大量のレリックだった。
そしてスカリエッティは笑い始める。
その笑いは狂気に満ちたものだった。

「楽しげだな、スカリエッティ」
「おや、君は―――ではないか!」

狂気に満ちた笑いを遮るようにして声を発したのは、黒装束に身を包み銀色の髪に赤い目をしたやや細身の男だった。

「こっちも準備は完了だ。お前に協力をするのだから、素晴らしいひと時を味わえるのであろう?」
「間違いなく、素晴らしい一時になる!」

男の問いかけにスカリエッティは答えると、再び狂気じみた笑い声をあげる。
それを男は冷ややかに見るのであった。





時空管理局 地上本部 公開意見陳述会まであと、7日

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第39話 食堂のひと時

「はい、じゃあ今日はここまで!」
「全員防護服解除!」
「はい……」

なのはとヴィータの号令に、フォワード陣はバリアジャケットから元の服に戻した。

「うむ、惜しいところまで行ったな」
「あとちょっとだったね」

元の服に戻ったフェイトとシグナムさんは、それぞれの感想を口にした。

「最後のシフトがうまくいってれば逆転できたのに……!」
「うぅ~、くーやーしーい~!!」
「フォロー足りなかったね、ごめんね~」
「いえ!」
「ギンガさんは全然!」

悔しがるティアナとスバル、謝っているナカジマさんにエリオとキャロが慌てた様子で否定した。

「悔しい気持ちのまま、反省レポートまとめとけよ?」
『はい!』
「じゃあ、ちょっと休んだら、クールダウンして上がろう? お疲れ様」
『お疲れ様でした!』

終了の挨拶をすると、それぞれがクールダウンを始めた。

「なのは」

それをしり目に、俺はなのはに声をかける。

「何かな? 真人君」
「どうでもいいんだけど、不意打ちのようにいきなり模擬戦に参加させるのはやめて」
「あれしきで根を上げるとは、腕がたるんでるぞ!」

俺の直談判もシグナムさんに一喝された。

「いや、たるむたるまないではなくて――「ええい! 男ならびしっとせぬか!!」――はい」

俺の不満にシグナムさんが、レヴァンティンを突き付けながら怒鳴ったので、俺は止めることにした。
そんな時だった。

「ママ~、パパ~!」
「ん?」

子供の声がしたので、振り返ると、そこにはこっちに向かって駆け寄ってくるヴィヴィオがいた。

「ヴィヴィオ~!!」
「危ないよ! 転ばないでね?」
「うん! うぁ」

フェイトの注意に答えたヴィヴィオは、何かに躓いたのか地面に転んだ。

「わっ!? 大変――」

急いで駆け寄ろうとしたフェイトを、なのはが遮った。

「大丈夫。地面は柔らかいし、綺麗に転んだ。怪我はしてないよ」
「それはそうだけど……」

なのはの言葉に、フェイトは心配そうにつぶやきながら転んだヴィヴィオを見る。

「ヴィヴィオ、大丈夫?」
「うぇ……」

なのはの呼びかけに、ヴィヴィオは顔を上げた。
今にも泣きそうな表情だった。

「怪我してないよね? 頑張って、自分で立ってみようか」

しゃがみこんでそう告げるなのは。
なのはのやり方は正しい。
だが、まだ早すぎる。

「真人君!?」

なのはの驚いた声を無視して、俺はゆっくりとヴィヴィオの前まで移動する

「ヴィヴィオ、自分で立つんだ」

ヴィヴィオの目の前でしゃがむと、俺はなのはが言ったのと同じことを言った。

「うぇ……パパぁ」
「……ふぅ」

俺はヴィヴィオの様子から無理そうだと判断し、ヴィヴィオを抱きかかえると地面に降ろした。

「真人君、甘すぎ」
「なのはのは厳しすぎ。何事も臨機応変だよ」

ヴィヴィオが来ている服についた土埃を、払っているフェイトを見ながら注意してきたなのはに反論した。
しばらくして笑顔が戻ったヴィヴィオと共に訓練スペースを後にするのであった。










場所は変わって食堂。

「ヴィヴィオ、髪の毛可愛いね」
「なのはママのリボン!」

ヴィヴィオの言葉に、料理を運んでいるヴィヴィオが笑顔で返事をした。

「アイナさんがしてくれたんだよね?」
「うん!!」
「良い感じだよ、ヴィヴィオ」
「えへへ」

スバルの感想に、ヴィヴィオは笑顔になった。
そして俺となのはとフェイトとヴィヴィオと同じ席に着いた。
俺はいつもの定食を頼んだ。

「あ……ん………んふふ」

ヴィヴィオは、オムライスをおいしそうに食べていた。

「よく噛んでね?」
「うん!!」

フェイトの声にヴィヴィオは万弁の笑みを浮かべて返事をした。
俺はその微笑ましい光景を見ながら定食を食べる。

「しっかしまあ、子供って泣いたり笑ったりの切り替えが早いわよね~」
「スバルのちっちゃい頃もあんなだったわよ」
「え?! そ、そうかな……」

そんな中ティアナとスバル達はそれぞれ話を膨らませていた。
ちなみにスバルの顔が紅かったのは余談だ。

「リィンちゃんも、ね?」
「ええっ!? リィンは最初から割と大人でした~!!」

シャマルの言葉にリィンが頬を膨らませて不満そうに反論する。

「嘘をつけ」
「体はともかく、中身は赤ん坊だったじゃねーか」
「うう~……はやてちゃん、違いますよね!?」

シグナムさんとヴィータの答えに、リィンははやてに助けを求めるように聞く。

「ふふっどうやったかな~」

そんな中、俺はヴィヴィオが食べていたお皿に残っている緑色の野菜を見つけた。

「ヴィヴィオ、だめだよ。ピーマン残しちゃ……」
「う~……苦いの嫌い!」

なのはが注意するが、なかなか食べようともしない

「え~? おいしいよ?」
「しっかり食べないと、大きくなれないよ?」
「好き嫌いしてると、罰が当たるぞ、おまけで」
「うぅ~」

俺も注意するが、ヴィヴィオは食べようとしなかった。

「真人、ちょっと退いて」
「し、執行人!?」

突然背後から呼びかけられたかと思うと、そこには執行人が立っていた。

「ヴィヴィオ、どうしてピーマン嫌いなのかな?」
「苦いの嫌い」

ヴィヴィオはここ数日で執行人になれたようだった。
今では普通に会話をすることが出来る。
それでも、まだ怯えてはいるが。
ちなみに健司は相変わらずだ。

「だったら僕が、苦いのを消すおまじないをしてあげよう」
「おまじない?」
「そう、おまじない」

首を傾げるヴィヴィオに、執行人は優しくそう言うとヴィヴィオのお皿に残されたピーマンに手をかざす。

「―――――」

そして何かを呟くとすぅっと手を引いた。

「さあ、ためしに食べてみな」
「うぅ~」

執行人に促らされるまま、ヴィヴィオはゆっくりとした動きでピーマンを口に入れた。
すると、ヴィヴィオの表情が明るくなった。

「甘い!」
「そうか、その調子で全部食べようか」
「うん!」

ヴィヴィオは、今までのが嘘のようにピーマンを全部食べた。

【苦みを消す魔法をかけた。でもかけたのは2個だけ。それ以外には掛けていない】
【え? それじゃあどうして】

フェイトの疑問もご尤もだ。

【人間の思い込みを利用した。最初の数個だけ甘くさせれば残りのピーマンも甘いと勘違いして、苦みが少しだけ和らぐんだ】
【でも、そのことを言うと思い込みが解けて苦くなる。まずはヴィヴィオのピーマンは苦いという認識を変えさせるようにすれば、魔法なしでピーマンを食べるようになるはず】

執行人の言葉を引き継ぎ、説明した。

「と言うわけだからそこで嫌いなにんじんを、他人に食べさせようとする人には雷でも落とそうか?」
「い、いただきます」

執行人の言葉に、キャロは慌てた様子で答えていた。
それは、食堂での一時であった。

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第38話 出向と模擬戦

地上本部の臨時査察が行われてから、数日経ったある日の朝。

「さて、今日の朝練の前に、一つ連絡事項です」

朝練の前にフォワード陣が集合した際に切り出されたのが、その一言だった。

「陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が、しばらく六課へ出向となります」

なのはの紹介を受けて、青髪の女性が一歩前に出た。

「はい、108部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします」
『よろしくお願いします!』

ナカジマさんの自己紹介に、俺達は敬礼をして答えた。

「それから、もう一人」

今度はフェイトの言葉に緑色の眼鏡をかけた女性が一歩前に出た。

「どうもー」

軽い感じで女性が答えた。

「十年前から、うちの隊長陣のデバイスを見て来てくださっている、本局技術部の精密技術官」
「マリエル・アテンザです」

フェイトの紹介に続いて、女性……アテンザさんが敬礼をしながら自己紹介をした。

「地上でのご用事があるとのことで、しばらく六課に滞在していただく事になった」
「デバイスの整備を、見てくれたりするそうですので……」

シグナムさんとシャーリーさんが説明をした。

「気軽に声を掛けてね!」

それを受けて、アテンザさんは笑顔で新人たちに言った。

『はい!』
「おし、紹介が済んだことで、さっそく今日も朝練始めるか!」
『はい!』

一通り自己紹介が終わったのを見計らったヴィータが、一歩前に出て口を開いた。










その後、なのはの提案でスバルとナカジマさんの模擬戦が行われた。
結果はスバルの負け。
だが、そこまでのスバルの動きは前より一段と良くなったと言うのが、なのはの話。

「じゃ、皆集合」
『はい!』

なのはの一声でフォワード陣は再び集合を掛けられた。

「せっかくだからギンガも入れたチーム戦、やってみようか? フォワードチーム五人対、前線隊長五人チーム!」
「………え?」

なのはの言葉に、ナカジマさんが目を丸くして固まっていた。

「いや、あのね、ギン姉。これ、時々やるの」
「隊長たち、かなり本気で潰しに来ますので……」
「まずは地形や幻術を駆使してなんとか逃げ回って……」
「どんな手を使っても、決まった攻撃をいれることができれば、撃墜になります」

スバル、エリオ、ティアナ、キャロが、固まっているナカジマさんに順々に説明していく。

「ギンガはスバルと同じくデバイス攻撃ね。左ナックルか蹴り」
「……はい!」
「いや、ちょっと待って、何気に俺まで入れられて――――」
「じゃあ やってみようか!」

俺の問いかけを遮るようにして、模擬戦は始められた。

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