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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第39話 食堂のひと時

「はい、じゃあ今日はここまで!」
「全員防護服解除!」
「はい……」

なのはとヴィータの号令に、フォワード陣はバリアジャケットから元の服に戻した。

「うむ、惜しいところまで行ったな」
「あとちょっとだったね」

元の服に戻ったフェイトとシグナムさんは、それぞれの感想を口にした。

「最後のシフトがうまくいってれば逆転できたのに……!」
「うぅ~、くーやーしーい~!!」
「フォロー足りなかったね、ごめんね~」
「いえ!」
「ギンガさんは全然!」

悔しがるティアナとスバル、謝っているナカジマさんにエリオとキャロが慌てた様子で否定した。

「悔しい気持ちのまま、反省レポートまとめとけよ?」
『はい!』
「じゃあ、ちょっと休んだら、クールダウンして上がろう? お疲れ様」
『お疲れ様でした!』

終了の挨拶をすると、それぞれがクールダウンを始めた。

「なのは」

それをしり目に、俺はなのはに声をかける。

「何かな? 真人君」
「どうでもいいんだけど、不意打ちのようにいきなり模擬戦に参加させるのはやめて」
「あれしきで根を上げるとは、腕がたるんでるぞ!」

俺の直談判もシグナムさんに一喝された。

「いや、たるむたるまないではなくて――「ええい! 男ならびしっとせぬか!!」――はい」

俺の不満にシグナムさんが、レヴァンティンを突き付けながら怒鳴ったので、俺は止めることにした。
そんな時だった。

「ママ~、パパ~!」
「ん?」

子供の声がしたので、振り返ると、そこにはこっちに向かって駆け寄ってくるヴィヴィオがいた。

「ヴィヴィオ~!!」
「危ないよ! 転ばないでね?」
「うん! うぁ」

フェイトの注意に答えたヴィヴィオは、何かに躓いたのか地面に転んだ。

「わっ!? 大変――」

急いで駆け寄ろうとしたフェイトを、なのはが遮った。

「大丈夫。地面は柔らかいし、綺麗に転んだ。怪我はしてないよ」
「それはそうだけど……」

なのはの言葉に、フェイトは心配そうにつぶやきながら転んだヴィヴィオを見る。

「ヴィヴィオ、大丈夫?」
「うぇ……」

なのはの呼びかけに、ヴィヴィオは顔を上げた。
今にも泣きそうな表情だった。

「怪我してないよね? 頑張って、自分で立ってみようか」

しゃがみこんでそう告げるなのは。
なのはのやり方は正しい。
だが、まだ早すぎる。

「真人君!?」

なのはの驚いた声を無視して、俺はゆっくりとヴィヴィオの前まで移動する

「ヴィヴィオ、自分で立つんだ」

ヴィヴィオの目の前でしゃがむと、俺はなのはが言ったのと同じことを言った。

「うぇ……パパぁ」
「……ふぅ」

俺はヴィヴィオの様子から無理そうだと判断し、ヴィヴィオを抱きかかえると地面に降ろした。

「真人君、甘すぎ」
「なのはのは厳しすぎ。何事も臨機応変だよ」

ヴィヴィオが来ている服についた土埃を、払っているフェイトを見ながら注意してきたなのはに反論した。
しばらくして笑顔が戻ったヴィヴィオと共に訓練スペースを後にするのであった。










場所は変わって食堂。

「ヴィヴィオ、髪の毛可愛いね」
「なのはママのリボン!」

ヴィヴィオの言葉に、料理を運んでいるヴィヴィオが笑顔で返事をした。

「アイナさんがしてくれたんだよね?」
「うん!!」
「良い感じだよ、ヴィヴィオ」
「えへへ」

スバルの感想に、ヴィヴィオは笑顔になった。
そして俺となのはとフェイトとヴィヴィオと同じ席に着いた。
俺はいつもの定食を頼んだ。

「あ……ん………んふふ」

ヴィヴィオは、オムライスをおいしそうに食べていた。

「よく噛んでね?」
「うん!!」

フェイトの声にヴィヴィオは万弁の笑みを浮かべて返事をした。
俺はその微笑ましい光景を見ながら定食を食べる。

「しっかしまあ、子供って泣いたり笑ったりの切り替えが早いわよね~」
「スバルのちっちゃい頃もあんなだったわよ」
「え?! そ、そうかな……」

そんな中ティアナとスバル達はそれぞれ話を膨らませていた。
ちなみにスバルの顔が紅かったのは余談だ。

「リィンちゃんも、ね?」
「ええっ!? リィンは最初から割と大人でした~!!」

シャマルの言葉にリィンが頬を膨らませて不満そうに反論する。

「嘘をつけ」
「体はともかく、中身は赤ん坊だったじゃねーか」
「うう~……はやてちゃん、違いますよね!?」

シグナムさんとヴィータの答えに、リィンははやてに助けを求めるように聞く。

「ふふっどうやったかな~」

そんな中、俺はヴィヴィオが食べていたお皿に残っている緑色の野菜を見つけた。

「ヴィヴィオ、だめだよ。ピーマン残しちゃ……」
「う~……苦いの嫌い!」

なのはが注意するが、なかなか食べようともしない

「え~? おいしいよ?」
「しっかり食べないと、大きくなれないよ?」
「好き嫌いしてると、罰が当たるぞ、おまけで」
「うぅ~」

俺も注意するが、ヴィヴィオは食べようとしなかった。

「真人、ちょっと退いて」
「し、執行人!?」

突然背後から呼びかけられたかと思うと、そこには執行人が立っていた。

「ヴィヴィオ、どうしてピーマン嫌いなのかな?」
「苦いの嫌い」

ヴィヴィオはここ数日で執行人になれたようだった。
今では普通に会話をすることが出来る。
それでも、まだ怯えてはいるが。
ちなみに健司は相変わらずだ。

「だったら僕が、苦いのを消すおまじないをしてあげよう」
「おまじない?」
「そう、おまじない」

首を傾げるヴィヴィオに、執行人は優しくそう言うとヴィヴィオのお皿に残されたピーマンに手をかざす。

「―――――」

そして何かを呟くとすぅっと手を引いた。

「さあ、ためしに食べてみな」
「うぅ~」

執行人に促らされるまま、ヴィヴィオはゆっくりとした動きでピーマンを口に入れた。
すると、ヴィヴィオの表情が明るくなった。

「甘い!」
「そうか、その調子で全部食べようか」
「うん!」

ヴィヴィオは、今までのが嘘のようにピーマンを全部食べた。

【苦みを消す魔法をかけた。でもかけたのは2個だけ。それ以外には掛けていない】
【え? それじゃあどうして】

フェイトの疑問もご尤もだ。

【人間の思い込みを利用した。最初の数個だけ甘くさせれば残りのピーマンも甘いと勘違いして、苦みが少しだけ和らぐんだ】
【でも、そのことを言うと思い込みが解けて苦くなる。まずはヴィヴィオのピーマンは苦いという認識を変えさせるようにすれば、魔法なしでピーマンを食べるようになるはず】

執行人の言葉を引き継ぎ、説明した。

「と言うわけだからそこで嫌いなにんじんを、他人に食べさせようとする人には雷でも落とそうか?」
「い、いただきます」

執行人の言葉に、キャロは慌てた様子で答えていた。
それは、食堂での一時であった。

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