健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第27話 目覚める者

「ここからは私一人で行きます」

レオ閣下の挑戦状を聞いた姫君が、突然そう言い出した。

(自分で話し合う気か。だが……)

俺は嫌な予感がしてならない。
だからこそ、少しだけ意見をすることにした。

「それは承認できませんね、姫君」
「え!?」

俺の言葉に驚いた様子で見てくる姫君。

「私もご一緒に行かせていただきます」
「私一人で大丈夫なので、渉さんは」
「でしたらお聞きしますが、上に到着した際に攻撃されたらどうするのですか? 奇襲攻撃に対応できるのですか?」

俺は性格が悪いなと思いつつ問い詰める。

「今のレオ閣下は宝剣を奪うために躍起になっている。どのような事が起こるかは予測も出来ない。そんな状況で姫君を一人で行かせるなど、大問題だ。護衛役として一人つく必要がある」
「おい、渉! 姫様に何ていう事を――「親衛隊長は黙ってろ!」――ッ!?」

俺に怒鳴ってくるエクレに怒鳴り返して黙らした。

「護衛には自分が付きます。もし嫌な場合でしたら、貴方には眠って頂きます」
「ッ!?」

俺は神剣の吉宗を展開して姫君に向けて構える。
吉宗なので、切ることはできない。
よってただの脅しだ。

「分かり……ました」

姫君は声を震わせながら了承した。

(こりゃ、後で謝った方がいいな)

姫君が上に向かう準備をしながら俺はそう考えるのであった。










昇降機に乗り、武道台へと向かう中、姫君は大剣を手に俺は神剣二本を手に無言となっていた。

「先ほどは無礼の数々、申し訳なかった」
「え?」

俺の謝罪に、姫君が驚いたような声を上げた。

「俺も衣食住を見て貰っている恩もあるのでな、これくらいしなければ罰が当たる」
「そんな、もともとは私のせいで……」
「確かにそれはあれだが、いい出会いもたくさんあった。だからこそ今の俺は姫君の懐刀。姫君の身を守り、姫君の命を聞く……ただそれだけだ」

俺は自分に言い聞かせるように姫君に告げた。
そうだ、今の俺は懐刀だ。
相手が向かってくるのであれば、手を汚してでも主を守らなければいけない。

「勿論、二人の話し合いを邪魔する気はありません。到着し次第、自分は離れた場所で待機します」
「ありがとうございます」
「お礼を言われるほどの事ではないですよ」

お礼を言ってきた姫君に、俺は苦笑い交じりに答えた。

「貴方とこうしてお話ししたのは初めてですね」
「そうですね、自分も姫君とまともに話すのは、これが初めてです……と、到着しましたよ」

昇降機が一番右側を指示したのを見て、俺は気を引き締めた。
そして、扉が開く。

「お邪魔いたします。レオンミシェリ閣下」

姫君が前を見据えて声を上げると、昇降機を降りた。
俺も一歩遅れて昇降機を降り、奇襲に対応できる位置に立った。

「レオ様が国の宝剣を賭けて戦われるのであれば、私も宝剣を手にこの場に来ないといけないと思い、失礼ながら勝手に推参しました」

レオ閣下の表情は目が見開かれており、かなり動揺しているようにも見えた。

(俺と姫君の二人で来ることが予想外だったのか、それとも……)

俺が思考に耽っていた時、レオ閣下のそばにいたメイドのような人が、短剣を手に姫君に向かって行くのが見えた。

「はぁ!!」

間一髪のところで姫君の前に立ち神剣二本で防ぐことに成功した。

「分かりやすい奇襲どうも!!」
「お叱りは後でいくらでも! 今は説明している時間がありません!!」

神剣と相手の持つ短剣に火花が散る。

「なッ!? しま――――」

俺は支点をずらされ、そのまま前のめりになってしまった。
倒れるのは免れたが、相手は姫君の所に向かって行こうとした。

「きゃあ!?」

その瞬間、姫君から発せられるエネルギーによって吹き飛ばされた。
そして姫君の手にはピンク色の、二回り小さな短剣が握られていた。
だが、その剣からは異様なものを感じることから宝剣であることはすぐに分かった。
俺はすぐに奇襲を仕掛けてきたメイドの人に剣を突き付け、身動きを制限する。
その間、俺は考える。

(どうも嫌な感じがする。これは空模様のせいなのか?)

周りの雰囲気が少しずつではあるが、悪くなっているのに俺は気付いていた。
それは、姫君とレオ閣下が言い合っているからではない。

(まさかとは思うが、プラスのエネルギーが消えかけているのか?)

それならば今の雰囲気にも説明がつく。

(だとすれば――――)

「ッ!?」

突然動悸と激しい眩暈が俺を襲った。
まるで、体の奥底から揺さぶられたかのような気持ち悪さを感じる。
しかしそれもほんの一瞬の事だった。

『グラナ浮遊砦攻略戦に参加中の皆様にお知らせします』
「ん?」

突然聞こえてきたのはそんなアナウンスだった。

『雷雲の影響か、付近のフロニャ力が、若干ではありますが弱まっています。また落雷の危険もあることから、いったん戦闘行動を中断してください。繰り返します――――』

(フロニャ力が弱まっている………俺の思った通りか)

俺はアナウンスを聞きながら自分の推測があっていたことを確認した。

「あの皆さん、屋根のあるところへ」

青髪のメイドの人が提案するとゆっくりと歩いて行った。

「二人とも」

俺は対峙している二人にそう告げる。
この時俺は、説明がつかないほど焦っていた。
二人はゆっくりとだがメイドの人のいる所に向かって行く。
そんな時、突如としてマイナスエネルギーが増幅した。

「「「ッ!?」」」

その次の瞬間、地震が発生した。

(これはまずい!!)

増幅し続けるマイナスのエネルギー、総称邪気。
その瞬間、武道台が宙に浮かび始めた。

「ミルヒ!」
「レオ様!」

名前を呼びあう二人だが、俺は空を見ていた。

(あれが、邪気の原因か)

俺の視線の先にあったもの、それは

―――とてつもない邪気と闇の力を秘めている漆黒の球体だった。





覚醒まで残り、1時間

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第26話 混沌と化し始める戦場

グラン砦が見え始めた時、それは突然起こった。

「ッ!?」
「どうしたの? 渉」

突然息をのんだ俺に、シンクが訪ねてきた。

「式神とのリンクが消滅……消滅時の情報から矢での奇襲を受けたらしい。護衛対象は矢が直撃したが無事とのことだ」

どうやら式神では耐えられない威力だったらしい。
そんな矢を射れるのは一人しかいない。
そして、こっちでも式神の情報通り、物騒な武器をこちらに向けてきた。

「うぇええ!? 銃!? 大砲!?」
「勇者、この間教えた紋章術、間違いなく出せるな?」

敵の武器を見て驚くシンクに、エクレが淡々と聞いた。

「こ、こないだって、槍の奴?盾の奴?」
「盾だ! 貴様が防げ! 私と渉が切り込む!」
「あいよ、了解!」

今さりげなく俺を混ぜたよな!?
しかもシンクは前に出て行くし。
そして浴びせられるのは数多もの銃撃。
シンクは紋章術で展開した盾で、

「神術・第1章、全ての災厄は今取り除かれた」

俺は神術でそれを防いでいく。

「シンク、放たれた大砲を俺がいる上空に弾き飛ばして」
「了解!」

俺は守りっぱなしは嫌なので、シンクに指示を出した。
それと同時に大砲は放たれ、俺は所定の位置に着く。

「だぁぁぁりゃあああ!!!」
『な、なにぃぃぃ!? 勇者シンク、追尾弾をもう一人の勇者殿に弾き飛ばした!!』

シンクは砲撃弾をしっかりと俺のいる場所へと飛ばした。

「ホールド」

俺はそれを手でキャッチすると、爆発しないように固定させた。

「目には目を、歯には歯を!!」

そして、それを思いっきり撃った者達がいる方へと投げ飛ばす。

『もう一人の勇者、素手で追尾弾を投げ返しました!!』
「エクレ!」
「閃空、大一文字!!」

エクレの紋章剣が炸裂した。
さらには俺が打ち返した追尾弾もある。

「ホールド、解除♪」

そしての次の瞬間、追尾弾は大爆発し、守っていた敵陣をほとんど倒した。
だが、俺が気がかりだったのは……

「空に雲が……」

突然空に浮かび上がった薄黒い雲だった。
どこかしらかマイナスエネルギーの値が増えてきたような気もする。
そんな状態をよそに、俺達は砦内に侵入した。









砦内にある階段を登り切り、ドアを開く。
そこはやや広い場所だった。

『全く待ちくたびれたぞ』

レオ閣下の声とともに目の前にあった楕円形にレオ閣下の顔が映った。

『そこにおるのはたれ耳と勇者に、渉殿じゃな。儂は今この砦の最上部、天空武道台におる。ここまでこれた褒美にわしとの一騎打ちのチャンスをくれてやろう』

映像の前まで移動した俺達は映像を見続ける。
シンクは姫君をかばっていた。

『グランベールも、エクスマキナもここにある。これを奪えばポイント的に貴様らの勝利で確定だろうな。無論一人ずつでは叶うまい。仲良く二人で掛かるがよかろう』

それは、完全な挑発であった。

『儂は貴様らを倒しパラディオンを奪った後、ミルヒの陣をぶちのめしに向かう!』

レオ閣下の言葉に、姫君がさらに怯えた。

『さあ、上がってくるがよい!』

それを最後に映像は消えた。





3人称Side

「はぁ……」
「レオ様」

天空武道台では挑戦状をたたきつけたレオが一息ついていた。
その様子を、心配そうに見つめるガレットのメイド長のルージュ。

「なに、問題ない。待っておれば何も知らない勇者とたれ耳が、パラディオンを運んで来よう。それだけでも星が変わるやもしれん」
「はい……」

そう、彼女の計画では、ここにやってくるのはシンクとエクレールの二人であると踏んでいたのだ。
そして、レオは雷が鳴り響く空を見る。

「それにしても、国をかけての大戦じゃと言うのに、何と言う空模様じゃ」

空模様を見て呟いた時、天空武道台に来る唯一の移動手段であるものが到着を告げた。
そして、そこにいる者二人がドアの方へと視線を向ける。
ドアが開いた時、そこに立っていたのは……

「お邪魔致します。レオンミシェリ閣下」
「ッ!?」

大きな剣を持っているミルヒ姫と、その横で不敵の笑みを浮かべ、神剣を構える渉だった。
それは、少し前に星詠みで視たものと、ほとんど同じ構成となっていることを示した。
こうして、続々と悲劇は迫って来ていた。

Side out


覚醒まで残り、1時間26分

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第25話 開戦と、混乱する戦場

あの後、隊列を築いて俺とエクレール勇者シンクと、ダルキアン卿にユキカゼは指定された場所へ向かっていた。
ちなみに、俺はセルクルには乗らずに歩いている。

「勇者殿とエクレールそれに渉殿とは、また一緒の組でござるな」
「はい、残念ながら私がアホ勇者たちの面倒を見ないといけませんので」

エクレの”アホ勇者”と言う言葉にシンクは落ち込み、ユキカゼはそれを見て静かに笑っていた。

「と言うより、俺はこいつほど馬鹿ではないぞ」
「勇者殿、渉殿。相方とは仲良くしないといけないでござるよ」
「なんで僕に言うんですか! エクレが僕をつんけんするんですよ!」

ダルキアン卿の軽い注意にシンクが反論した。

「と言うより、俺のボヤキをスルーしないでください!」
「やかましい、貴様らがアホな事ばかりするからだ」

ジト目で俺達を睨みながらそう呟くエクレ。

「アホな事?」
「勇者殿は、出会った初日に、おっぱい揉んだり服を剥いだりしたらしいのでございます」

何のことかわからないダルキアン卿にユキカゼが説明した。

「ほほぅ、それはそれは」
「「誤解です!!」」

二人の声がハモッた。
と言うよりシンクの場合は絶対に違う。

「と言うよりユッキー! なぜそれを知っている!?」
「リコから録画したものを見せもらったのでござる」

そう言えば、カメラのような器材もあったっけ。

「勇者殿もなかなかどうして大胆でござるな」
「あれは本当に不幸な事故で――――」

あの時の事を思い出したのか、エクレはセルクルに乗りながらシンクを蹴っていた。
ものすごく器用な事をする二人だ。
俺以外のシンクやエクレ、ダルキアン卿の腕には俺が渡した腕輪がつけられている。
準備は万端だ。
そして、俺達は指定地点へと向かった。










『さあ、午後に入り食事も終えたビスコッティ、ガレット両軍。現在チャパル胡椒地帯で戦闘開始の合図を待っております』
「いいか? 合図があったら私たちは最短ルートで、その先に抜ける」
「うん」
「了解」

ガレット軍と対峙しながらエクレの指示を頭に叩き込む。

「開幕直後なら皆橋やフィールドを抑えようと躍起になる。私たちなど目にも止めぬはずだ」
「分かった」
「砲術主体! 砲撃はしなくて結構ですので、とにかくエルマール主席を守って私たちに付いて来てください」
『はい!』

エクレの指示に全員が返事をする。
そして……
花火が打ちあがり戦が始まった。
両軍が一斉に動き出す中、俺達は計画通り駆け抜けようとしたが。

「ヒィッハァ!!」
「うおわぁ!?」

突然現れたのはものすごい怖い形相をした者達だった。

「獲物がいたぞ」
「全員で囲め!」
「ち、ちょっと! 話が違う!」
「えぇ!?」

突然の事態に二人が慌てる。
さらに、俺の横からも同じ連中が迫って来ていた。

「弓放て!!」

さらに追い打ちをかけるようにガレットからの弓攻撃。
それは二人の前方と横側から。

「横はこっちに任せておけ!!」
「「了解!」」

僕は二人にそう言うと、この間ダルキアン卿から完全に教わった紋章剣を使う。

「行くぞ! ダルキアン卿直伝!」

すでに展開してある神剣に、光が灯る。

「裂空、一文字!!」

そして放たれた一つの閃光は、矢を吹き飛ばす。
だが……

「死ねぇ!!」
「っと!?」

迫って来ていた顔に切り傷のついた男達5,6人の奇襲にあった。
俺はそれを巧みに躱したことでなんとかなった。

「やっぱり動物に乗らない方が機動が良い」

そんな事を呟いている中、どうやら俺は囲まれてしまったようだ。
周りには10人の兵士。
たったと付けた方がいいかもしれない。

「お前を倒せばレオンミシェリ閣下から、ご褒美がたんまりと出る。だから、朽ち果てろぉ!!」

一人の兵士がそう言って周りにいた兵士たちが俺に迫ってくる。
だが、それでも俺には笑う余裕があった。

「笑止。たかが10人で俺を倒すことなぞ、不可能!」

俺はそう言い放つと神剣を一振りする。

「神術、第2章……光には祝福を、闇には一時の休みをもたらさん」

俺の声が終わるのと同時に、白銀の光が俺の周囲を駆け巡る。
そして、それが無くなり残ったのは……獣玉化して眠っている兵士たちの姿だった。

『うおっとぉ!! これまた二人目の勇者がやりました。一瞬で10人の兵士を行動不能にさせました!!』

しかも一回寝れば3時間は眠り続けるので、戦場復帰はまずないだろう。
合理的な倒し方だ。

「まあ、欠点は、使うごとに霊力を消費することと敵味方の分別がつけられない事位だ」

(合流するか)

俺はエクレの方に合流するのであった。










「エクレ!」
「わ、渉か。無事で何より」

分かってはいたことだが、エクレの態度はどこかよそよそしかった。
まあ原因は俺の失言だが。

(なんで、あんなことを言ったんだろう?)

俺は自分の発言の理由を考えていた。

「エクレ―!!」
「お、勇者、無事だったか」

慌てた様子で合流してきたシンク。

「まずいよ。僕が……って言うかパラディオンが狙われている」
「パラディオンって神剣だったよな?」

僕の疑問に、シンクが頷いたことで答えた。

「そのようだな。だが作戦は変えられん。念のためパラディオンは武器化させないようにした方がいいな」
「うん。だから武器も拾ってきた」

目の前にはガレットの軍が迫って来ていた。

「二人とも、あれは俺に任せてはくれまいか?」
「渉? ……まあいい、頼んだ」

俺の提案を聞き入れたエクレは、駈け出そうとするのを止めた。

「感謝する。では……神術・第4章、咎人達は眠りについた」

さっき使ったのとは別の術を使う。
見かけ状変わったのは、砲撃タイプになった事だけだ。
ただ、これの射程範囲内と眠りにつく時間がかなり増えた。
現に、俺達が見えていた敵軍のほとんどが一気に減った。

「さあ、行くぞ!!」
「お、おい! 先に行くな!」

先に走り出した俺に一喝しながら、エクレとシンクは駆けだした。










しばらく走って谷間の場所をエクレとシンク、そしてリコッタと進んでいる時だった。
スリーズ砦の方角から、花火のようなものが打ち上げられた。
それは、ある重大な意味合いがあった。

「リコからの合図」
「本当に本陣への急襲があるとは」

信じられないとばかりに呟くエクレ。

「これで確信が出来ました。レオ様は私に何か隠し事をしています」

今までいたリコッタは煙と共にその姿を姫君の姿へと変えた。
そう、これは急襲がある可能性を考えた計画だった。
つまり、今スリーズ砦にいるのはリコッタと言う事だ。
そんな時、一羽の鷹が走る俺の横に降り立った。

「………グラン砦に物騒な武器を持って待ち構える敵陣を確認。数は約15から30人!」
「そ、その鳥は何だ?」

鷹から伝えられた情報を伝えると、怪訝そうな表情で鷹を見ながらエクレが聞いてきた。

「こいつは俺の式神。指示を出せばできる範囲内で色々とやってくれる、優秀な相棒さ」

俺は無言で式神にエクレの方に移動するように指示を出すと、それを受け入れたのか、エクレの目の前までふわりと移動した。

「この際だから触ってみればどうだ? 大丈夫だ噛みつかないから」
「そ、そうか………では」

エクレはおっかなびっくり式神の頭を触る。

「触り心地が良いな」
「そうだろ?」
「へぇ、僕にも触らせて――――」

そんな時、シンクが式神である鷹に触ろうと手を伸ばす。

「あ、おい! やめ――――」
「いぃ!?」

忠告するのも遅く、シンクは鷹に指をかまれた。

「式神は指示を出したこと以外はしないんだよ。無暗に手を出すと反撃されるから気を付けろと言おうとしたのに」
「それを早く言ってってば!」

何とも変な雰囲気となってしまった。

「エクレ、リコッタはこっちに合流するんだったよな?」
「そうだが」
「だったら、こいつに護衛させようか?」

俺の提案にエクレはしばらく考えると”ああ、頼む”と答えた。

「おい、追加指令だ。スリーズ砦から出るリコッタの護衛をしろ」

俺の指示を聞いた鷹は高く羽ばたくと砦の方へと向かった。
そして俺達も、グラン砦へと向かうのであった。

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第24話 開戦の日

とうとう戦の日が訪れた。

「………うん。快調だ」

俺はフィリアンノ城外で、自分の力を確認する。
その力は、未だ衰える所を知らない。
いや、ここに来る前より快調のような気がする。

「ここが正念場だ」

俺は自分にそう言い聞かせると、フィリアンノ城へと戻った。









姫君から作戦内容を伝えられたのは、戻ってからすぐの事で半分聞き逃したが、重要な事だけは聞くことが出来た。
それは、俺がシンクやエクレ達と同じ隊列であること。
作戦を聞き逃すなど、武人には重大なミスだが、まだ挽回するチャンスはあるだろう。

「む、渉か。準備は出来たのか?」
「お、エクレ。いいところにいた」

不機嫌そうな表情で、俺を見ながら声をかけてくるエクレに俺はそう返した。

「どういう意味だ?」
「いや、これを受け取ってもらいたい」

そう言いながらエクレに差し出したのはガウル達に渡したのと同じ腕輪と、銀色のさやに入った一本の剣の二つだった。

「何だ? これは」
「その腕輪は、3回分どのような攻撃でも9割のダメージを軽減させるか、1回のみダメージやけがを完全回復することが出来る代物さ」

俺は不思議そうに俺の渡したものを見るエクレに、ガウルにしたのと同じ説明をする。

「もう一つの剣は、名称は一応ラグナロク。通称神殺しの剣だ」
「なッ!?」

神殺しと言う言葉を聞いてエクレが目を見開いてこっちを見る。

「その腕輪は姫君やリコッタあとは自分で身に着けておけ。そしてその剣と共にエクレに頼みがある」
「な、何だ……頼みって」

真剣な面持ちで俺の頼みを聞こうとするエクレ。

「もし、俺が姫君やシンクを襲った際は、その剣で」

そして俺はその言葉を口にする。

「この俺を貫け」
「なッ!? で、出来るわけないだろ!」

俺の頼みに驚いたエクレは、猛抗議する。

「それであれば、全員が死ぬことになる。それでもいいのなら、やらなければいい」
「………」

エクレは何とも言い難い表情を浮かべる。
その両手は強く握りしめられていた。

「何、心配するな俺はそれで貫かれても死ぬことはないから」
「渉……お前は一体」

俺の言葉に、エクレールが問いかけてきた。
俺はその問いかけの趣旨に気付いていた。

「それは、この戦が終わった時にすべてを話す」

俺はエクレの問いかけにそう告げた。

「全てを終わりにされるんであれば、俺の一番好きなエクレにして貰いたい」
「ッ!?」

俺の言葉に、エクレが今まで以上に顔を赤くした。

(何を言ってるんだ。俺は?)

俺は自分の口から出てきた言葉に、恥ずかしく思いながらすぐに謝ることにした。
この間のように鳩尾への一突きが来たらたまったものではない。

「悪い。変な事を言ったな」
「いや………」

エクレはそれ以上言葉にすることが出来なかった。
そして少しばかり話をした俺は、そのままエクレに背を向けた。

「あ、姫君やリコッタたちに”有事の際以外では使うな”と伝えておいてくれ」

言い忘れたことを言って、俺はそのまま歩く。

「これで、すべての布石は打ち終わった。後は開戦を待つのみ」

勝負の時はすぐそこまで迫って来ていた。

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第23話 最悪な未来を変える為に

シンクとリコッタ、そしてユキカゼと合流して、外に出た。
すると、一部が騒々しかった。
そして時たま聞こえてくる少女の声。

「あの子、もしかして……」

シンクも気づいたのか、そう呟いた時、ユキカゼが突然その場所へ向かった

「エミリオ、どうしたでござるか?」
「パネトーネ筆頭! いえ、ガレットからの密偵が騎士団に化けて」

青色の短髪の青年……エミリオがユキカゼの問いかけに答えた。

「密偵ちゃうって」

そこにいたのはガレットの隠密部隊のクラフティだった。

「うちはさるお方から、勇者シンクと傭兵の渉宛ての秘密のメッセージを持ってきただけや!」

俺とシンクの姿を見るや否や指を指してそう告げてきた。

「僕宛ての、メッセージ?」

シンクは真剣な表情で、そう呟いた。










俺とシンクはクラフティと共にある場所へと向かっていた。
それは、彼女が持ってきたメッセージに話があるので来るようにといった内容の事が書かれていたからである。
ちなみに、俺以外の二人はセルクルに乗っている。

「あ……」

そしてフィリアンノ城を出て少し歩いた森に、黒いセルクルに乗ったガウルがいた。

「シンク、それに渉。突然呼び出して悪かったな」
「それで、どうしたの急に?」
「決まってるだろ。今回の戦の事さ」

シンクの問いかけに、ガウルは即答した。

「今回の戦は、ゴドウィンも反対なんだ。どうにも納得がいかねえことも多い」
「こっちでも、ガレットは本気でここを侵略する気なんじゃないかって」

確かに、道中すれ違う人たちは全員不安げだったのを覚えている。

「いくら姉上でもそれはねえ。ガレットとビスコッティは友好国として、何代も前から支え合ってきた。それをいまさら侵略なんぞ、道義もたたなければ意味もねえ」

確かにそうだ。
なぜ侵略するのか。
それにはそれなりの理由があるはずだ。
俺には、レオ閣下が恨みつらみで侵略をする暴君には思えなかった。
だが、その理由は思い当たらない

(いや、もしかしたら……)

俺は推測ではあるが、理由が分かった。

(確か、星詠みは未来を視ることもできるんだったよな? もしレオ閣下が星詠みをして、未来を視ていたとすれば)

しかも、その未来が残酷な物であったならば、レオ閣下はそれを避けたいはずだ。
もちろんこれは推測だから間違っている可能性はある。
だが、見当がつくのと着かないのとでは大きな違いがある。
気が付けば、二人の話は終わり、ガウルはこの場を去っていた。

「シンク、悪い。一人で戻っててくれ」
「あ、渉!?」

俺はシンクに一言告げて、答えを聞かずにガウルの後を追った。











「ガウル!」

俺はガウルに追いつくと声をかけた。

「何だ、渉? まだ話があるのか?」
「ああ、渡しておきたいものがある」

いつになく真剣な様子のガウルに五つの腕輪を渡した。

「何だ、これ?」
「それは俺が作ったお守りだ。念じるだけで3回分の防御か、1回分の完全回復をすることが出来る。これをレオ閣下やジェノワーズに渡してくれるか?」
「別にいいけど、どうしてだ?」

俺の頼みに頷くと、ガウルは俺に理由を聞いてきた。
俺は、一瞬誤魔化そうとも思ったが、正直にいう事にした。

「今回の戦で大量の犠牲者が出る可能性がある」
「何!?」

俺の言葉に、ガウルは驚きを隠せなかったようだ。

「どういう経緯かは分からない。だから、万が一の時にこれを使ってそんな事態を食い止めてほしい。俺は戦えないから」
「それって、どういう――――」
「俺の話はそれだけだ。後それは万が一のとき以外使うなと言っておいて」

俺はガウルの言葉を遮ってそう伝えると、そのまま二人に背を向けて歩き出した。

(絶対に食い止めてやる。その為ならば、この命、力。すべてをかけてやる)

俺は再び強く決心しながら、フィリアンノ城へと戻った。
道中、花火が打ちあがったことから、ビスコッティは、今回の宣戦布告を受けるようだった。

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