健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第47話 発端

「ん……」

とある場所で、彼女たちは目を覚ます。

「ここは……」

起き上がった少女はあたりを見回す。

「あ、憂に律ちゃん隊員に澪ちゃんに、ムギちゃんとあずにゃん! 起きて!」

最初に起きた少女……唯は周囲で地面に倒れている友人たちを起こしていく。

「何だぁ?」
「あ、お姉ちゃん」
「……うぅん」

唯の呼びかけに次々と目を覚ます律たちは、目をこすりながらあたりを見回す。

「ところで、唯」
「何? 澪ちゃん」

唖然とした様子で声を上げる澪に、唯は首をかしげながら尋ねた。

「ここはどこ?」
「ここって……どこだっけ?」

周囲を見渡した唯が首をかしげる。

「おいおい、ここは浩介の家の近く………」

唯の言葉に、苦笑しながら律は口を開くが言葉の途中で、自分の置かれた状況を理解したのか言葉を失った。

「何もありませんね」
「芝生と木々だけ」

梓と紬が周囲にある物を口にする。
彼女たちがいたのは見知らぬ草原のような場所だった。

「どうしてこんなことに……」
「えっと、あれは確か律が……」

憂の疑問に、指を顎に添えながら澪はきっかけとなった出来事を思い返した。










「よぉし、全員そろったな」
「あの、これはどういう意味ですか?」

マックスバーガーに、集まっていたのは律と澪、さらに紬と唯に梓の軽音部メンバーに憂を加えた6人だった。
彼女たちは、律の集合命令によって招集されたのだ。

「非常に重大な話があるんだ」
「律ちゃん隊員、その重大な話とはっ?」

真剣な声色で告げる律に、唯は手を上げながら律に問いかけた。

「うむ、それは……」
「そ、それは?」

梓は緊張した面持ちで続きを聞く。

「浩介の実家がどういう場所なのかを探るということだ!」
『…………』

力強く告げられた律の言葉に、律以外の全員が言葉を失った。

「あ、あれ? 反応が悪いぞー」
「いえ、とても重要な話かと思っていたところに、浩介先輩の実家を探るなんて言われたもので」

呆れたような表情を浮かべながらも、梓はおそらくこの場にいる律以外の人が心の中で考えているであろう言葉をつぶやいた。

「だってさー、この間の浩介絶対に何かを隠している様子だったぜ」
「もしそうだとしてもさすがにプライベートを探るのは良くないと思う」

澪は気乗りしない様子で律に止めるように促した。

「だったら、これから浩介の家に言って、尋ねるのはどうだ? それなら探っていることにはならないだろ?」
「ま、まあ。それだったら」
「良いんですか!?」

律の提案に、澪はしぶしぶと頷いた。

「よぉし、そうと決まったらいざゆかん! 浩介の家へ!」
「「「おー!」」」

律の呼びかけに唯と紬の二人が手を上げて応じた。
ちなみに、この時間帯はちょうど人の来店の波が途切れていたらしく、来店者はそれほど多くはなかった。
そのためそれほど視線を集めることはなかった。
とはいえ、多少の視線を集めることになったのだが。

「本当にいいのかな?」
「浩介さんだったら許してくれるよ……たぶん」

一気に浩介の家に向かうことが決まっている流れになっている唯たちをしり目に、首をかしげている梓の疑問に唯が苦笑交じりに応えた。
最後の部分がとても自信なさげだったのはご愛嬌だろう。

(というより、浩介先輩だったら絶対に怒るような気がする)

梓はなんとなくそう感じていた。
そんなこんなで、彼女たちはファーストフード店を後にすると、浩介の家へと向かうのであった。









浩介の家に向かう途中、律の携帯から着信音が鳴り響いた。

「あ、浩介からだ」

連絡した相手が分かった律が漏らした言葉に、全員が固まった。

「浩君どうしたんだろう?」
「まさか、私たちが行こうとしているのを察した……とか?」

唯の疑問に澪が答える。

「とりあえず出てみるか………もしもし」

電話に出た律は平静を装い電話口の浩介に声を掛ける。

『律か、ちょっと聞きたいことがあるんだけど』
「何だ?」

一体何を聞かれるのかと律はひやひやしながら浩介の言葉を待つ。

『今どこにいるんだ?』
「い、今か!? えっと、学校近くのファーストフードだよ。憂達も一緒だよ」

浩介の鋭い問いかけに律は一瞬声が上づるが、何とか答えることができた。

『どうして憂も一緒なんだ?』
「偶々近くであってさ。そう言う浩介はどこにいんのさ?」

どうやら怪しまれていないようで、律はほっと胸をなでおろしながら、逆に浩介に尋ねた。

『僕か? 今実家に帰省する準備中だ』
「いつごろ出ていつごろ戻る予定?」

浩介の返事に、律は浩介の予定を聞く。

『あと10分ぐらいしたら。明後日には戻ってくるけど……何か急用でもあったら今聞くけど。たぶん実家ではそういう余裕ないと思うし』
「い、いや特にはないかな。あはは」
『そう? それじゃ、また後日。土産話でも聞かせるよ』

律の返事に若干首を傾げた様子で口にする浩介は律の”分かった”という返事で電話を切った。

「そ、それじゃ行くぞー」
「合点であります!」

深いため息をもらしながらも、さらに進むことを選んだ律はそのまま浩介の家に向かって足を進める。

「あれ?」
「どうかしたのか? 梓」

しばらく歩いていたところで、何かが気になったのか首をかしげる梓に、澪が問いかけた。

「あ、いえ。なんでもないです。すみません」
「そう? ならいいんだけど」

首をかしげながらも澪は梓から視線を逸らした。

「どうしたの? 梓ちゃん」
「うーん、何か今違和感のようなものを感じたんだけど……気のせいだと思う」

声を抑えて問いかける憂に梓はそう答えるが、気のせいだと自己完結した。
浩介に申し訳ないことをしているということが、そう言う風に感じさせたのかもしれないと考えたからだ。

「律ちゃん、浩介君まだ家にいるって?」
「10分ほどしたら出るとか言ってたから、まだ大丈夫だと思う。念のために時間を……って!?」

紬の問いかけに、時間を確認しようと携帯を取り出して待ち受け画面を確認した律が固まった。

「どうしたんだ、律?」
「律先輩?」

その尋常ではない様子に、澪たちが何事だと声を掛ける。

「み、見てくれ!」
「……? ただの待ち受けじゃないか」

律が全員に見えるようにかざしたのは、ただの待ち受け画面だった。

「違う! 電波の方!」
「アンテナって……圏外?!」

画面上部に表示されいる”圏外”という文字に、澪は目を見開かせた。

「あ、私のもだ!」
「私も!」

次々に自分の携帯を確認した唯たちが同じ状態であることを告げた。

「トラブルか?」
「こんな場所で、圏外になるなんて話聞いたことがないぞ」

そこは閑静な住宅街。
どう考えても圏外になるという事態は普通は起こりえない。

「あ、今度は画面が!」
「な、なにこれ」

唯の言葉に、再び画面に視線を向けると今度は待ち受け画面が砂嵐になっていた。

「何だかホラー映画みたいな展開だな」
「ひ!?」

律が漏らした言葉に、澪が悲鳴をあげそうになる。

「な、なあ。戻らない? さすがにこれは変だって」
「そ、そうだな。戻るか」
「私も!」

澪の提案に口々に賛成の声を上げる。

「梓ちゃん……」
「だ、大丈夫だよ!」

不安げな憂に梓は安心させるようにつぶやいた。
そして全員が元来た道を戻ろうとした時に、それは起こった。

「うわ!?」
「な、なんだ?!」

突如として、彼女たちの足元に光が発光し始めたのだ。
それは唯たちを囲むように円状になっていく。

「お姉ちゃん!」
「憂~!」

全員が体を寄せ合う。
そして光はさらに輝きを増し、やがて

『きゃああああああああ!!!!』

閃光のような光を発した。
その光はすぐになくなったが、そこには唯たちの姿はなかった。










「そうだ。思い出した」
「どうしよう」
「それよりも、ここはどこなんですか?」

周囲を見渡すが、薄暗いため草原のような場所以外を把握することは不可能だった。

「これって、神隠しというものじゃないかしら?」
「かみかくし?」

紬がつぶやいた言葉に、唯が首をかしげる。

「それって、確か行方不明になった子供が数日してひょっこりと姿を現す……みたいな?」
「だというんなら、ここは神様の世界? そんな馬鹿な」

澪の言葉に、律は軽快に笑い飛ばした。
常識で考えてありえないのだ。

「それじゃ、ここはどこだって言うんですか?」
「そんなの、携帯で調べれば簡単に……って、切れてる」

携帯電話を取り出した律は、電源が切れていることに気づいた。

「あ、私のもだ」
「私のも」
「私のも切れてる」

唯や紬たちも自分の携帯を家訓するが、全員画面が真っ暗な状態であり電源が切れていた。
唯たちは首をかしげながらも電源を入れなおそうとするが、電源が付く兆しはなかった。

「ダメだ、電源がつかない」
「そんな馬鹿な」
「どうしよう」

絶望的な状況に全員はその場にとどまることしかできなかった。

「皆!」

そんな時に立ち上がったのは唯だった。

「歩こう! 歩けばきっと誰かに会えるよ!」
「このままここにいるよりかは断然いいか」
「そうだな……」

唯の提案に律に続いて澪も頷く。

「梓ちゃん、寒くない?」
「あ、はい。大丈夫です」

薄着の姿だった梓に気遣う紬に梓はお礼の言葉を口にする。
その場所の気温は肌寒くはなくちょうどいい暖かさだった。

「よっしゃ、気合入れていくぞー!」
『おー!』

こうして、律たちの冒険が始まった。
しばらく歩いたころだった。

「な、なんだ!?」

突如けたたましく鳴り響く警告音に、律が驚きの声を上げた。

「やっぱり向こうの方に人がいるんですよ!」
「そうですね。人がいなければ、こんな音なんてしませんし」

梓の言葉に憂も頷いた。

「それじゃ、走ろう!」
「あ、待てって唯!」

唯は音のする方に走り始めた。
それを追う澪と律に梓と憂の4人。

「唯ちゃん、何か言ってるわ!」
「ほえ?」

だが、鳴り響いている警告音に交じって何かが聞こえるのを紬は聞き逃さなかった。
全員は足を止めるとその音に耳を澄ませる。

『警告! 国内に6名の不法侵入者を検知しました! 襲撃に備えてください! 職員は至急指定エリアへ向かい不正侵入者を確保せよ! 繰り返す――――』

「不法侵入者6名って……」
「私たちのことじゃないよね?」

男の物と思われる逼迫したアナウンスに、全員そこから動けなくなった。

「6人というのも、偶々かもしれませんよ」
「そ、そうだよね、梓ちゃん」

梓の希望にも違い考えに憂も賛同した。

「いいや。ここは私たちだという可能性で進めたほうがいいかもしれない」
「だとすれば、結論は一つ」

澪の言葉に、律は即座に対応策を導き出していた。

「逃げろ~!」

唯が叫ぶのと同時に、全員が一目散に駆け出す。
追っ手がどこから来るかわからずに知らない場所で逃げるのは、まさに恐怖だった。
どれだけ走ったのか、唯たちは追っ手の気配を感じていない。

「律ちゃん! あそこ」
「お、明かりだ!」
「これで話が訊ける!」

そんな中、唯が見つけた明かりのようなものに、全員の表情が明るくなる。

「よぉし、ラストスパート!」

律はその一言でさらに走る速度を速めた。

「あ、あのすみません!」
「お嬢ちゃんたち、そんなに慌てた様子でどうしたのかね? まさか……」

滑り込むように初老の男性に声を掛ける律たちの様子に、男性は驚いたような表情を浮かべながら問いかけると、何かを思いついたのか目が見開かれた。

「ッ!?」
「遭難者かね!」

まずいと思った唯たちだったが、男性が告げたのは全く予想だにしない言葉だった。

「遭難者?」
「そうじゃよ。この辺りは時頼迷い込んでしまうものが多くての。この列車はそう言った者たちを入口まで送り届けるためのモノなんじゃよ」

よくは分からないが、どうやら自分たちは遭難者として認識されているようだ。
それを知った唯たちはほっと胸をなでおろす。

「さあ、早く御乗りなさい。あと数分で出発じゃよ」
「あ、でもお金が……」
「お金は不要じゃよ。これは救済用なのじゃから」

財布を取り出す律に、男性は笑顔で告げると、彼女たちを中へと迎え入れる。

「うわぁ、まるで普通の特急列車みたい」

中に足を踏み入れた梓が感想を口にする。
周囲はネズミ色で覆われており、向かい合うように背もたれの部分と座る部分が緑色の座席は向かい合うように配置されている。

「あの人たちも遭難者みたいですね」
「あ、本当だ」

憂の視線の先には次の車両に続くドアの近くの座席に腰掛けている、何やら話をしている二人組の男の姿があった。

「私たちも座りましょう」
「そうね」

梓の提案で、全員が座席に腰掛ける。
ちょうど6人掛けだったようでぴったりとおさまった。

「お、動き出した」

それから数分後、列車はゆっくりと動き出した。
窓の外の光景は相変わらず芝生などしかない。

「これからどうする?」
「入口って言ってたぐらいだし、到着すれば人がたくさんいるかもしれないし、そこで考えよう」
「そうね。人がいれば話を聞くことだってできるかもしれないし」

澪たちは今後の行動について話し合っていた。

「あれ、列車が」
「止まりましたね」

そんな最中、列車は突然走るのを止めてしまった。

「停車駅?」
「お弁当とか売ってるのかな?」
「いや、ここどう見ても駅じゃないし。というより、唯は少しは自重しろっ」

澪と唯の言葉に、律が相槌を打つ。

「何だか、前の車両が騒がしいみたいですけど……」
「どうし――――」

前の車両から音が聞こえてくる中、唯が”どうしようかな”と言い切ろうとした時だった。

「連盟だ! 動くなっ! 全員両手を上にあげろ!!」
「な、なに!?」
「し、知らないけれど従ったほうがいいな」

一斉に雪崩れ込むように車両に入ってきた数人の男たちに、唯たちは驚きのあまり叫びそうになるのをこらえた。
律に言われるがまま全員は両手を上にあげた。
すると、男の一人はサングラスのようなものをかけた。

「ファッションショー?」
「そんな雰囲気じゃないだろっ」

声を潜めて唯のボケにツッコみを入れる律。

「もしかして、追っ手じゃないかな? どこかの刑事みたいな入り方だったし」
「………」

澪の言葉に、全員が固まった。
その間も男は周囲を見渡していく。
まるで人を探しているかのように。
その様子が唯たちに追っ手であるという確証を与えるのに十分であった。
そしてサングラスをかけていない男が唯たちの方へと足を進める。
徐々に自分に近づいてくるのに比例して、彼女たちの鼓動が速さを増していく。
そしてすぐそばまで来た時だった。

「不法侵入者2名確保!!」
「「「「「「えぇ!?」」」」」

律たちは思わず声を上げて驚きをあらわにした。
見れば、男たちが捕まえていたのは最初から乗っていた二人組の男たちだったのだ。

「くそ! バレてないかと思ってたのに!」
「ほら来い! どこから来たか、あと4名の行方を吐いてもらうぞっ!」

そのまま男たちは二人組の男性を引っ張るように連れて行った。

「………助かったの?」
「……見たい」

その光景を見ていた律の疑問に、澪が答える。

『はぁ………』

そして一様にその場に力なく座りこんだ。
そんなこんなで、列車は再び動き出し始めた。

「そう言えば、あれだけ走ったのにまったく疲れませんね」
「言われてみればそうだな」

徐々に夜が明けていき周囲の景色が見えるようになったころ、梓が思い出した様子で口を開いた。
唯たちが走った距離は、フルマラソンと同じくらいの長さだ。
しかもそれをノンストップでだ。

「なんだかおかしいよね」
「あっけらかんと言うけど、ここって本当にどこなんだ?」

律たちを乗せた列車はそのまま走り続ける。
それから数十分経った頃だった。

「あ、着いたみたい」

駅らしい場所で列車が止まったのを確認した澪が声を上げる。

「外に出るか」

そして唯たちは、列車を後にした。

『ありがとうございました』
「礼儀正しい嬢ちゃんたちだね」

初老の男性を見つけた唯たちは、一様に頭を下げてお礼の言葉をかけると、軽快に笑いながら感心した様子で応じた。

「あの、すみません」
「何かな?」

そんな中、唯が前に出て男性に尋ねる。

「浩君の家はどこですか?」
「こうくん? 誰かね?」

唯の問いかけに、あだ名だと分からなかったようで首をかしげながら聞きかえす男性。

「唯先輩、ちょっと黙っててください」
「ぷぅー」
「あの、高月浩介っていう人なんですけど」

梓によって一刀両断された唯が頬を膨らませるのをしり目に、梓が言い直した。

「…………お嬢ちゃんたち、坊ちゃんの知り合いかね?」
「は、はい。そうです」

一瞬男性の表情が険しいものに変わったが、それもすぐに元に戻り人当たりのいい笑顔で聞かれたため、梓もそれに答えた。

「それだったら、ここをまっすぐ進むと見えてくるはずだよ。分からなければいったん降りて誰かに尋ねてみるといい」
「は、はぁ……」
「ありがとうございます」

目を瞬かせる律に変わって憂がお礼を述べた。

「とりあえず、この道をまっすぐ進めばいいんだよな?」
「私に聞いても……とりあえず歩こう」

こうして唯たちは浩介の家へと向かうこととなった。
のだが……

「うん、迷った!」
「威張るなっ」

腰に手を当てて胸を張りながら告げる律の頭に、澪の鉄拳制裁が下る。

「でもおかしいですよね、言われた通りに言っているはずなのに」

色々なところで道を尋ね、その通りに行動をしたものの一向に浩介の家にたどり着くことはなかった。

「まさか、嘘をついているとか!?」
「何で嘘をつく必要があるんだよ?」
「そうですよ。きっと私たちが間違えてるんですよ」

律が漏らした言葉に、澪が異論を唱え、それに梓が続く。

「とはいえ、ここはどこだろう?」
「住宅街みたいだけど」

律たちが迷い込んだのは閑静な住宅街だった。
列車を降りた時に上っていた日はすでに空高くまで上がっていた。

「仕方がない、こうなったら道を聞くか」
「そうだな」
「そうですね」

律の言葉に全員が頷き、近くにあった家のインターホンを押そうとした時だった。

「うわひゃ!?」
「きゃあ?!」
「な、なんですか?!」

突然目の前に何かが落ちてきたことに驚きを隠せない唯たち。
その何かはゆっくりと立ち上がった。
落ちてきたのは人だった。

「兄貴! どうやらまいたようでっせ」

その一人の青髪のトサカヘアの男の呼びかけに、金髪の男は立ち上がりながら満足げに頷く。

「よし、少しここでおとなしくするぞ。おい山! あれを持ってこい」
「はっ、熱々のコーヒーであります!」

金髪の男の呼びかけに答えるように、黒髪の男から差し出されたコーヒーの入った紙コップ。
どう見ても熱いのは確かであった。

「馬鹿野郎! こんな暑い日に熱いコーヒーを入れるな! 冷たい食い物をよこせと言ってるんだ!」
「ははぁっ! ただいま!」

金髪の男に怒鳴られた黒髪の男が用意したのは氷だった。

(な、何あのコント)
(あの人たち、どこから来たんだろう?)

律たちは三人組の男のやり取りを、呆然と見ていた。
声を出そうにも出すことができない。
そんな雰囲気の中、平然と声を上げる人物がいた。

「あははは! あずにゃん、とても面白いコントだよ!」
「いえ、唯先輩。たぶんコントじゃないと」

大きな声で笑いながら近くにいた梓に声を掛ける唯に、梓はいろいろな意味で唖然としながらも返した。

「おいこら、ガキ共!」
『ひゃ、ひゃい!?』

突如浴びせられた罵声に圧されるように、唯たちは姿勢を正して返事をした。

「俺たちは見世物ではないぞっ!」
『す、すみませんでした!!』

勢い良く頭を下げて謝る彼女たちを見て満足したのか、視線を外した。

「兄貴、早く逃げないと死神が!」
「っと、そうだったな。とっとと逃げるとするか」

横にいた青髪の男の言葉に金髪の男は逃げようと動き出した時だった。

「それは諦めてもらおうか」
「「「ッ!?」」」

突然頭上から降ってきた声に、三人組の男たちは固まった。

「あれ、この声どこかで……」

一方の唯は、その声に心当たりがあるのか頭を抱えて考え込み始めた。

「私の目からは決して逃れることはできない。どこまでも追っていき捕まえてやる」

そんな彼女たちの頭上から、再び声が掛けられる。
そして、その声の主はゆっくりと目の前に降り立った。

「え?」
「はい?」
「嘘……」
「ど、どうして?」

その姿を見た唯たち全員が信じられないとばかりに口をパクパクと動かしていた。

「浩君?」
「あ? 誰だ、この私をそのような馬鹿げた呼び方で呼ぶの……は」

唯の呼びかけに応じるように鋭い視線を向けた人物こそが、唯たちが探し続けた高月浩介であった。
その姿は黒いマントを羽織り、手には西洋風の剣が手にしてあった。

「どうして、お前らがここにいるっ」

唯たちにかけられたのは、驚きに満ちた浩介の言葉だった。

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