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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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IF-Y 第6話 真明が解放される時

走り出してどのくらいたっただろうか?
少しずつグラナ砦に近づいて来ていた。
ブリオッシュとは少し前に分かれた。
何でも気になることがあるとの事らしいが。

「曇り空に雷………明らかに何かが出る気配全開だな」
「……そのようでござるな」

俺の軽口に対し、ユキカゼの声は緊迫感に包まれていた。
俺でもわかる。
今まで数は少ないものの、何体もの魔物と対峙していた俺でも。

―――今回出てこようとしている魔物は、今まで対峙してきた中で最強であると。

『グラナ浮遊砦攻略戦に参加中の皆様にお知らせします』
「ん?」

突然聞こえてきたアナウンスに、俺は耳を傾ける。
若干聞こえずらいが、聞こえないことはない。

『雷雲の影響か、付近のフロニャ力が、若干ではありますが弱まっています。また落雷の危険もあることから、いったん戦闘行動を中断してください。繰り返します――――』
「これも……」
「うむ、魔物が出てくる前兆でござるよ。急ぐでござ――「止まれッ!」――ッ!?」

フロニャ力の低下が魔物出現の前兆であると告げてさらに速度を上げようとしたところで、俺はユキカゼに止まるように大きな声で叫んだ。
それは本当にとっさの判断だった。
ユキカゼは驚きはしたものの、徐々に速度を落として止まった。

「どうしたでござるか? 渉殿」
「良くは分からないが、これ以上進んだらまずい気がしたんだ」

突然の俺の言葉に戸惑いを隠せない様子のユキカゼをしり目に、俺は一点を見つめる。

「それに、あれが魔物何だよな?」
「……おそらくは」

俺の疑問にユキカゼが答えるのと、地を揺さぶるような雄たけびが響き渡るのとはほぼ同時だった。

「ッ!?」
「おいおい」

雄たけびの次の瞬間に、あちこちで立ち上がる火柱に俺は冷や汗をかいてしまった。

「風神!」

俺は慌てて神剣を地面に突き刺す。
それと同時に俺達が立っている場所が白銀の光で覆われる。

「渉殿、これは?」
「守護結界……フロニャ力をさらに濃くしたようなもので、この中にいれば魔物の類は俺達に手も足も出せない」

ユキカゼの質問に、俺は答えながら次の一手を打つ。

「星流風神砲!」

上空に向けて神剣を掲げてそう叫んだ瞬間、空に向かって白銀の光が放たれる。
その白銀の光は空で弾け、星のように降り注ぐ。
だが、それでも……

「フロニャ力に変化はなし。下がり続けているだけか」

フロニャ力の減少は止まらない。

(どうする? どうすればいい)

俺は必死に考える。
だが、考える必要などなかった。
答えなど既に最初から出ていたのだから。

(真名解放……)

そう、真名解放をすれば、神の力を完全に開放することのが出来る。
そうすれば、この事態はすぐに解決するだろう
解決できなかったとしても、この土地の浄化が出来、フロニャ力を従来の値にまで増加させて魔物を弱らせることくらいはできる。
だが問題は二つ。

一つは俺の余力。
真名解放は強大な力を解き放つとともに、膨大な霊力を必要とする。
今の状況で、それを行うのは自殺行為。
霊力を込めておいた、霊力石を使えば持つかもしれない。
石の数は二つで余裕もある。

そして二つ目が、俺自身の問題。
真名解放は神としての力を前面に出すこととイコールだ。
つまり、どう取り繕っても俺の正体がユキカゼに知られる。

(はは、本当に変わったな俺って)

自分の思考に、苦笑を浮かべる。
今までは、『正体を知られてはいけない』という掟の為に言いたくはなかったのが、それが今ではユキカゼに嫌われるのが怖いからという物に変わっているのだ。

「渉殿」

ユキカゼの静かな声で俺は思考の海から抜け出す。
目に見えた光景はものすごく巨大な魔物が歩いている姿だった。

「大丈夫でござる。拙者は、渉殿がどんな存在であったとしても受け入れるでござるよ」

俺の心の不安を見透かしたようなその言葉に、俺の心の中にあった”何か”がゆっくりと崩れて行った。

「はははっ!」

そして口から洩れたのは笑いだった。
魔物がいて世界全体が負のオーラに満ちているかもしれないこの状況で、笑えるのはもはや異常だろう。

「本当に変わったよ、俺は!」

俺は首にかけていた巾着袋から霊石を一個取り出すと、それを口に入れ飲み込んだ。
すると、今までほぼ空に近かった霊力が体中に満ちて行くのを感じた。

「ふぅ………我が、世界統括せし三神が一人、小野 渉の名の元に命ず。真名解放!」

その力強い言葉と同時に、体の中にあった霊力が一気に弾けた。
体中が熱い。
何でもできるという、根拠のない気持ちが溢れだす。
体中の熱がふっと下がったのは時間にしてほんの数十秒程度でも、俺にはその倍以上の長さに感じられた。

「ユキカゼ、大丈夫か!」
「う、うむ」
「なんとか………」

真名解放時の突風で吹き飛ばされたのか、最後に見た時よりも距離があるユキカゼに声をかけたが、無事のようだった。
風神が衝撃緩和の役割を果たしたのかもしれない。

「ユキカゼ」
「何でござるか? 渉殿」

俺に声を掛けられて要件を尋ねてくるユキカゼに、俺はゆっくりと告げた。

「これが終わったら、話したいことがある」
「………ッ!?」

俺の言葉に、ユキカゼが息をのんだ。
俺の言葉の意味はユキカゼには伝わったようだ。

「分かったでござるよ。
俺の言葉に、ユキカゼが頷くと構え始めた。

「その話を聞くためにも、早く終わらせるでござる!」

何だかユキカゼに闘志が漲っている。
しかも何だか不純な理由で。
そんな彼女に苦笑を浮かべながら、俺はもう一度神剣を空に向けて構える。

「わが名のもとに、この地に祝福の恵みを。天宝の恵み!」

その言葉と同時に、神剣から白銀の光が天空に目がげて放たれる。
その光は荒々しい物ではなく、周りを包み込む柔らかい物へと姿を変え地面に降り注ぐ。

「これで、周囲の危険なものは排除できたな」

周囲の安全を確認しながら俺はそう呟く。
フロニャ力も、少しではあるが上昇したようだった。

「すごいでござるよ渉殿」
「さあ、早く片を付けるぞ!」
「はい!」

称賛の声を上げるユキカゼに声をかけ、俺達は魔物を退治するべく動き出すのであった。

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