九条家へと戻った僕は、神楽が戻ってくるのを待っていた。
「浩ちゃん!」
「帰ってきたか」
どれほど待ったのだろうか。
僕の姿を見つけるとパタパタと手を振りながら駆け寄ってくる神楽の姿に、僕は今まで寄りかかっていた柱から離れると神楽の方に向かう。
「お疲れ。 どうだった?」
「こっちは全然。魔族の魔の字も出なかった。浩ちゃんの方は?」
「猫魔族が三体ほど出た」
神楽の問いかけに答えた僕は、その時の状況を告げた。
「なるほどね~。それだったら十分問題はないかな」
「ああ。だから今後、魔法陣の作成にはこれを使って行こうと思う」
神楽の反応を見た僕は、そう答える。
「あれ? それじゃ私がこれを持つ意味は?」
「………緊急用という事で」
神楽に言われてようやく僕は気が付いた。
これを神楽が持つ意味がないことに。
「今の間は何っ!?」
「それじゃ、コスプレ用で」
「投げやりに言った!? って、私にそんな趣味はないわよ! あの人じゃないんだから!!」
乗りツッコミを返すあたり、神楽も色々な意味で成長しているようだ。
最初は首をかしげるだけで終わりだったから。
「彼女に送ったら……」
あの人に贈った事を想像してみた。
『そうね! これは露出プレイなのねッ!!』
「………緊急用で持っておけ」
「そ、そうだね! 今嬉々として仮面を受け取る姿が目に浮かんだわ」
体をくねらせながら仮面を受け取る彼女の姿を思い浮かべた僕は、神楽に手渡した。
「今後、これを持っていることは秘密という事で」
「ええ。このままだと神様としての威厳が無くなっちゃう。……まあ、元からないんだけど」
神楽もなんとか納得してくれたようだ。
それよりも、いつから腹黒くなったんだ?
「さあ、仮の仕事に戻ろう。そろそろお昼だ」
「そうだね。あー、こうして休日は終わって行くのね」
ため息交じりに言う神楽の背中には、哀愁が漂っていた。
そんな神楽の方を優しくたたきながら、僕たちは九条家の中に入って行くのであった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「また失敗にゃ」
前にいた場所から人気のない場所の方に移動したパスタは、肩を落としながら呟いた。
「一体なんなのにゃ! あの白仮面は」
パスタは突如現れた白仮面―浩介―に憤怒する。
「あいつ、今度会ったらズタズタにしてやるにゃ!!」
「「「にゃー!!」」」
パスタの気合の入った言葉に、周りにいた猫魔族も声を上げた。
「うぅー、またソルティアに嫌味を言われるにゃ」
そんな哀愁を漂わせながら、パスタはその場を後にする。
パスタは知らない。
倒そうとしているものが、どれほど強いのかを。
そして、何者であるかを。
こうして、それぞれの休日は幕を閉じる。
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