来てしまった。
いや、ここに来るのが嫌な訳ではない。
だが、なんとなく嫌なんだよな。
(絶対のこの前の事で文句を言われる)
そう思った時肩を掴む人物がいた。
同時に、ものすごいオーラを背後から感じる。
それは言うなれば怒りのような気もした。
そして振り返った。
「渉殿。拙者に、何か言う事はないでござるか?」
うん、やっぱり怒ってた。
声は穏やかなのに、ユキカゼが放つオーラは全く穏やかじゃない!!
「わ、悪かったって。でもあんな状態で寝られるほど、俺は図太い神経はしてないんだ!」
「……イクジナシ」
いや、ジト目で言わなくても。
それとも彼女は、俺に狼になれとでも?
「それはともかく、ユキカゼに頼みがあるんだ」
「拙者に?」
俺の言葉に、ユキカゼは目を丸くして返した。
「魔物関連の事だ」
「………」
俺の言葉に、二人の表情が変わった。
決して、がっかりとした表情はしていない。
その表情は大げさに言えばヴァルキュリエのようなものだ。
「なるほど……すぐに準備をしてくるでござる」
「ああ」
俺に告げて屋敷に駆けて行くユキカゼを見ながら、一息つくのであった。
そして、俺はユキカゼが戻ってくるのを静かに待つのであった。
[1回]
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