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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第36.5話 恐怖をなくすために~執行人の奮闘記~

僕はこの前、非常に不快な思いをした。

『パパ……この人たち、怖い』

それは、この間六課にやってきたオッドアイの少女に言われた一言だった。
小さな子供に言われたからか、もしくは一番同類にされたくない人物と同じにされたからなのか、僕は非常に傷ついた。

「このままでは、ダメだ……なんとかしなければ!!」

誰もいない真人の部屋で、僕はそう決心するのであった。

「思い立ったら即行動!」

そして僕は真人の部屋を後にした。










僕が向かった先は部隊長室だ。

「――――というわけなんだ」
「つまり、保護した女の子に怖がられないようにすればええんやな?」

僕の話を聞いたはやては、簡潔にまとめた。
なぜここに来たのかというと、思い立ったは良いものの、何をすればいいかが分からなかったからだ。

「分かるか?」
「もちろんや! 私に任せてくれれば問題なしや!!」

僕の言葉に、はやては胸を叩いて自信が満ちた表情で宣言する。
一体どこにそんな自信があるのかが気になるが、まあ深く考えないようにしよう。

「そうや! 私が徹底的に付きおうたるさかい、ロビーで待っててくれる?」
「……? わかった」

はやての指示に、僕は首を傾げながら頷くと部隊長室を後にした。










「お待たせ」
「やっと来たか。一体何をして―――」

ロビーでしばらく待つと、背後からはやての声がした。
振り返った僕は、あまりの驚きに言葉を失った
なぜならば、はやての服装が、管理局の服ではなく水色のロングスカートに、白と黒の色の縞模様のシャツの上に灰色のジャケットを羽織っているという完全な私服姿だったからだ。

「というわけで、レッツゴーや!」
「あ、おい、引っ張るなって!」

僕ははやてに引きずられるような形で、六課を後にした。
そしてやってきたのは、服屋だった。

「君に一番足りないのは、ズバリ意外性や! いつも黒い服ばかり着とるから怖がられるんや」
「なるほど」

はやての言う事も一理ある。
確かに、僕を見る殆どの人が怖がった表情だった。
きっと僕が黒い服ばかりを着ているからに違いない。

「というわけで、服を漁るで!」

ということで、僕の服選びが始まったわけだが……。

「これはどうや?」
「………僕に女になれと?」

はやてが最初に持ってきたのは少女のイラストが描かれたシャツだった。
とてもではないが、着たくはない。

「む……せやったら、これならどうや!!」

そう言って自信満々に出したのは、アロハシャツだった。

「…………はやて、もういいよ」

僕が言えたのは、その一言だった。










それから1時間後、僕たちは機動六課に戻った。

「今日は楽しかったよ、本当にありがとな~」
「どういたしまして………それにしても、たくさん買ったものだな」

僕の視線の先にあるのは、たくさんの紙袋。
ちなみにこれ全て、はやての(・・・・)洋服だ。
何だか、はやてが楽しむために、付き合わされたような気がしてきた。

「とても楽しかったで~、やっぱり後先考えずに買い物するんもええな~」
「そうだな」

そんなはやての嬉しそうな表情を見ていると、自然とそう口にすることが出来た。
その後、はやてと別れると、僕は再び歩き出した。

「む~」

そしてまた振り出しに戻った。
問題の方はちっとも解決していないのだ。

(どうしたものか)

そうやって、悩んでいた時だった。

「あの、大丈夫ですか?」
「ん? なんだ、フェイトか」

声をかけてきたのは、フェイトだった。
どことなく心配そうな表情で僕を見ていた。

「何か悩み事ですか?」
「まあ、そんなところだ」
「もし私がお役にたてるようだったら答えますので、悩みを言ってくれませんか?」

フェイトのその言葉に、僕は彼女の環境を思い出した。
そう言えば、彼女にはエリオとキャロの二人がいた。
もしかしたら、はやてより的確なアドバイスが、もらえるのではないだろうか?
その希望を抱きつつ、僕はフェイトに事の次第を話した。

「なるほど……」

僕の話を聞いたフェイトは顎に手を添えてしばらく考え込む。
すると、答えが分かったのか僕の方を見た。

「もしかして、笑顔じゃないですか?」
「笑顔?」

これまたあれな方向だなと思いつつ、僕はフェイトに先を促す。

「執行人さんは、いつもしかめっ面というか無表情ですよね? 子供って言うのは表情とかでも人を見たりしますから、いつもその表情でいると怖がるのも無理はないなと思います」
「なるほど………」

フェイトの言葉に、僕はなぜか納得できた。
そう言えば僕は今まで、人前で笑顔を浮かべたことがないような気がする。

「ありがとう。助かった」
「いいえ、お役にたてたのならうれしい限りです」

僕のお礼に、フェイトはそう答えると、頭を下げて再び歩いて行った。

「笑顔か………やってみよう」

僕はそう決心した。










そのチャンスは、翌日の昼ごろに訪れた。

「ん? あれは」

何時ものようにぶらぶらと散歩をしていると、前にきょろきょろと辺りを見ながら歩く金髪の少女がいた。
彼女は、明らかにこの間ここにやってきた”ヴィヴィオ”という少女だ。
僕は彼女に近づいて

「どうしたんだ?」

声をかけた。

「ふぇ?」

僕の声に気付いたヴィヴィオが僕を見上げる。
そして僕は屈んでヴィヴィオに目を合わせ、もう一度聞いた。
勿論、ぎこちなくではあるが出来る限り自然に笑顔を浮かべて。

「こんなところでどうしたのかな?」
「え、えっと………パパがいないの」

若干怯えられているようだが、なんとか会話が成り立った。

「あ~、あいつだったら今訓練場かな。お兄さんと一緒に行こうか?」
「うん」

僕の言葉に、ヴィヴィオは静かに頷いたのを確認して僕はゆっくりと歩き出した。
そしてしばらく歩いた時だった。

「ん?」

何かが手を掴んだので、僕は右手に視線を向けた。
そこにはおっかなびっくりと言った様子で手を掴むヴィヴィオがいた。

「……?」

僕が見ていることに気付いたのか、ヴィヴィオは”何?”と言いたげな目で見てくる。

「大丈夫。すぐにつくからね」
「うん!」

僕はもう一度笑顔でヴィヴィオに言葉をかけた。
この時、なぜか僕は自然に笑顔を浮かべることが出来た。
そして、それにヴィヴィオも万弁の笑顔で答えてくれた。
それを見た僕は、喜びをかみしめつつ、真人たちのいる訓練スペースへと歩き出す。
結局、一番重要だったのは笑顔だったということだ。
その後、それを見た真人にはかなり驚かれた。
あいつは、僕をどのような目で見ているのだ?

(今度問い詰めてやるか)

そんな事を考えながら、僕は真人に声をかけるのであった。
それが、いつもの日常なのだから。

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