健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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エピローグ 失ったものを乗り越えて

「ん………」

俺は、いつものように目を覚ました。

「真人君!?」
「なの……は?」

俺の名前を呼ぶ声に、横を見るとそこには涙ぐみながら俺を見ているなのはがいた。

(これは………夢か?)

「真人君!!」
「うわ!?」

俺の声に、なのはは思いっきり抱きしめた。
俺は、なのはの突然の行動に、思わず声を上げてしまった。
だが、これで分かったことがある。
それは、これが夢ではないこと。
夢だったら、こんな感覚はないはずだ。

「良かった……良かったよぅ」
「心配かけたな。ごめんな」

泣きじゃくっているなのはの背中を優しくさすりながら謝った。
なのはは、ただ泣いているだけだった。










それから数日後、俺は一般病棟に移された。
とはいっても個室だが、それでよかったと思っている。

「はい、真人君。あーん」
「あ、あーん」

理由はこれだ。
なのはは、あれから毎日俺の所にお見舞いに来てくれている。
そして毎回俺にこうして食べさせてくれるのだ。
別にそれはいい。
俺としても男冥利に尽きる。
だが、なのはの場合横に誰がいようとお構いなくやってくる。
ちなみにたまたまその時に立ち会わせていた人物たちは口々に

『えっと………お、おめでとう……かな?』
『べ、別に恥ずかしいわけではないぞ!』
『いちゃいちゃするのは構わないが、少しは場所をわきまえろ!!』

と言っていた。
人前でやるのはやめてほしいというと、なのはは『ダ~メ。真人君は、みんなを心配させたことを反省すべきなの』と断られてしまった。
しかも正論故、反論もできなかった。

「それにしても、目が覚めた所が霊安室って、笑えない冗談だぞ?」
「あ、あはは……」

俺のボヤキに、なのはは苦笑いを浮かべた。
そうだ、俺が目を覚ました場所は霊安室だったのだ。
あの時は正直驚いた。
枕元にはお線香があるし。

「医者も、『し、死者が化けた!!』とか言って逃げ出すし」
「そりゃ、霊安室で死んだと思っていた人が動いていればそう思うよ」

なのはの言葉も尤もだ。
その後、医者による1日がかりの精密検査で、数日程度の入院が必要という結果だった。
さらに、幸運だったのは、今まで動くことがなかった下半身や、見えることが出来なかった目の視力が回復していたことだ。
これからは、普通に歩けるし、見ることもできる。
そのことに俺は喜びを感じていた。
………だが、なんだろう。
この、何か大事な相棒を失ったような感覚は………。











そして、退院した後、俺は少しずつ復旧している隊舎に戻った。
自室に戻った俺がまずしたのは、自分の荷物があるかどうかの確認だった。

「えっと、服は………よし、全部ある」

洋服ダンスを確認すると、洋服はほとんど揃っていた。
部屋はいつも通りだ。
ベッドはちゃんとベッドメイキングがされている。
壁には今までじっくり見ていない絵画が掛けられていた。
そして机の上には水晶玉の形状をしているクリエイトが置かれてある。

「これからもよろしくな。クリエイト」
『はい、マスター』

俺の言葉に、クリエイトは静かに、しかしどこか嬉しそうに答えた。
それから数日後、クリエイトのメンテナンスをしてもらうためメカニックルームに来ていた。

「そう言えば、このクリエイトですけど、調べていたらすごいことが分かりました」

そう告げたのは、メカニックのシャーリーだった。

「すごいこと………ですか?」

俺もそのことに興味がわいたので、聞いてみることにした。

「創造せし者、クリエイトという名前で使用している魔導師がいたんです」
「創造せし者……?」

確かにクリエイトらしい名前だ。
………そう言えば、俺はどうやってこの杖を手にしたんだ?
気づけば手にしていたが………誰かに渡されたような気がしてならない。

「あの? 大丈夫ですか?」
「あ、ああ大丈夫です。続けてください」

考え込んでいた俺を心配そうにシャーリーが聞いてくるが、俺は先を促した。

「その魔導師の名前が、これです」

そう言って表示されたのは、画像つきの人物データだった。
黒髪に、赤い目が特徴の青年だった。

高月たかつき 浩介こうすけ………世界最強の魔導師で、魔法戦闘で彼の右に出る者はいない。現在、どこかの次元の狭間に封印されているとのうわさがあるが、その真実は一切不明」
「……」

俺は、その青年をどこかで見たような気がした。
しかも、今まで俺の隣にいたような………

「これは、この人が使っていた物なんですか?」
「山本さんの使っているデバイスの、クリエイトと同じ名前かもしれませんし、この人の使っていた物かもしれないですし……はっきりとしたことは言えないですね」

俺の問いかけに帰ってきたのは、どうにも微妙な答えだった。

「取りあえずは、お預かりしていたデバイスです」
「ありがとうございました」

俺は、シャーリーからメンテナンスを終えたクリエイトを受け取ると、そのままメカニックルームを後にした。

「クリエイト、さっきの話だけど、もしかしてお前はあの高月 浩介と言う人と共に戦っていたのか?」

自室に戻るや否や、俺は水晶玉状のクリエイトに問いかけた。

『………』
「クリエイト!」
『ええ、そうです。あのお方は私を作ってくださり、最初に扱った人です』

しばらくの沈黙の後、クリエイトは話してくれた。

『私は、あくまでもそのデータに過ぎませんが』
「データ?」

クリエイトの言葉に、俺は首を傾げた。
データとはどういう意味だろう?

『そのままの意味です。私は本体を模して造られたデータの結晶です。おそらく本体は次元のどこかで眠っているでしょう』
「それはどういう――――――ッ!?」

その瞬間、俺の頭の中に大量の情報が流れ込むような感覚に襲われた。
いや、違う。
これは、閉ざされていた情報が一気に外に出てきたような感じだ。

「え?」

そして、俺は気付いてしまった。
違和感の正体に。

「執行人?」

そうだ。
どうして今まで気づかなかったんだ?
今まで俺と共に歩んできた相棒の存在を。

【執行人!!】

俺は念話で執行人に声をかける。
だが、俺の念話にいつまでたっても執行人は何も返さない。
そもそも、俺はどうしてこうして生きてられるんだ?
俺は、代償を支払って死んだはずだ。
記憶もみんなから消され、存在が無くなり、執行人に多少のダメージが行くだけで済むようにした。
なのにどうして俺はこうして生きていられる?

(まさかッ!!)

俺は、最悪の予想をしてしまった。
そう言えば、執行人は俺の従者だ。

『従者は主の危機には命をかけて守ることが定め』と執行人は口癖のように言っていた。

俺はいてもたってもいられずに、部屋を飛び出した。
向かった先は訓練スペースだった場所。
そこには未だ復旧には至っていないが、復旧したらすぐに使えるように、と調整をしているなのはの姿があった

「なのは!!」
「きゃ!? ど、どうしたの? そんなに慌てて」

大声で叫んだため、あのはは驚きのあまり、その場で飛び退いた。

「わ、悪い。聞きたいことがあるんだ」
「な、何かな?」

俺の様子に、何かを感じたのか、なのは表情を変えた。

「正直に答えてくれ。執行人は今どこにいるんだ?」
「…………」

俺の問いかけに、なのはは表情を曇らせた。
それだけで、俺には答えが分かった。

「そうか。悪かったな、邪魔して」
「あ、待って真人君!!」

俺はなのはに声を掛けられるが、振り返ることなく歩いた。
執行人は、己の命を犠牲にして俺を守ったのだ。
その日、俺は眠りにつくまで何をしていたのかははっきり覚えていない。










「あれ?」

眠りにつくと、そこは真っ白な空間だった。

「何へんな顔してんだ?」
「へ、変とは何だへんとは!! ………って、この声は!!」

俺は、ついいつものノリで返したが、ようやくその声の主が誰なのかが分かった。

「やっと気づいたか。状況を素早く把握することが出来ないのは相変わらずだな」

ため息交じりに呟きながら俺の前に現れたのは、執行人……いや

「高月浩介!?」
「おやおや? なぜに僕の真名が分かったのだ?」

俺の言葉に、執行人……高月浩介は、驚いた表情を浮かべて聞いてきた。

「それは……」

俺は、事情をかいつまんで話した。
クリエイトの名前でヒットしたということだが。

「そうか………それと、僕の事は浩介で構わない。フルネームはちょっと勘弁してもらいたいな」
「分かった……浩介、どうしてお前が僕の身代わりになったんだよ!」

俺は、浩介を問いただした。

「それはお前が生きるべき人間であることが一つ。そしてもう一つは僕の解放さ」
「解放?」

俺は、浩介の答えた単語が分からず聞き返した。

「僕とクリエイトは、あくまでデータのようなものだ。ある理由で封印されてしまってな、それでも封印しきれなかった意識が僕に関するデータを全世界に散らばしたんだ」
「どうしてそんな事を?」
「さあ、それは本体でないと分からない。まあ、封印を解いてほしいと言ったものではないかな?」

俺の問いかけに答える浩介は、まるで他人事のようにも感じた。

「今、ちょっとばかし本体の方で問題が発生している。だからこそ、意識片はすべて元の場所に戻って来るべき時に備えておく必要があった」
「来るべき時………それってまさか封印が解けるのか?」

浩介の言葉から推測した俺は、浩介に聞いた。

「さあどうだろう? 僕にもよく分からない」
「………」
「だぁ~!! そんな情けない顔するな! まるで僕がいないと何もやっていけないと言いたげな顔は!!」
「まさしくその通り」

俺の表情から、何を言いたいのかが分かった浩介の言葉に、俺はそう告げた。
すると、浩介はため息を一つつく。

「いいか? お前はもう十分に戦える。これからは僕の代わりに健司や高町たちと共に生きていくと良い。そして、あまり自己犠牲はするな。お前の事を大事に思っている奴や、待ってくれている奴がいる時は特に、な」
「………分かった」

浩介の、教えに俺は、素直に頷いた。
すると、浩介の体が少しずつ透け始めた。

「あぁ、もう終わりか。今の僕は意識片の残りカスのようなものだからな。………これでもよく持った方か」
「浩介!!」

俺は、自分の手を見つめながら呟く浩介の名前を読んだ。
どうしても、最後に言いたいことがあったからだ。

「何だ? 言っておくが、消えないでくれ! 以外にしてくれ」
「今まで、ありがとう」

それは、お礼だった。
今まで、言うことが出来なかった言葉。
それを今言ったのだ。

「ッ!? 全く、お前にはいつも驚かされる。では、また会おう……マスター」

浩介は、俺の言葉に驚いた様子でつぶやくと、最後にそう言って消えて行った。










「ん……」

気が付くと、そこはいつもの自室だった。
窓から差し込む光が、朝であることを告げていた。

「………よし、頑張りますか!!」

俺は、すべてを吹っ切るように言うと、身支度を始めた。
その後、なのはと会った時には、驚いた顔をしていたのは、思い出深い。
何でも、俺が落ち込んでいるのだと思っていたらしい。
そんなこんなで、隊舎も元に戻り季節は春を迎えた。
そう、部隊が解散し、皆と別れる日が。










新暦76年 4月28日
六課解散当日、六課のメンバー全員は隊舎に集まり、はやての挨拶を聞いていた。

「長いようで短かった1年間……本日をもって機動六課は任務を終えて解散となります。皆と一緒に働けて、戦えて、心強く嬉しかったです。次の部隊でも……皆どうか頑張って」

はやての挨拶が終わると、盛大な拍手が響いた。
その後、はやてに言われるがままついて行った場所で健司と共に待つと、フォワードメンバーが集まってきた。

「うわぁ~」
「この花って、確か……」

フォワードたちは、桜並木を見て感嘆の声を上げていた。
確かに、こういった類の花はここではなじみがないだろうから、知らなくて当然か

「うん。私となのはちゃん、それに真人君の故郷の花」
「お別れと、新しい始まりの季節に、付き物の花なんだ」

はやての説明に、フェイトが補足した。
その花の名前は”桜”。
まさか、ここでもこれが見れると、は思ってもいなかった。

「よし……フォワード一同、整列!」
『はい!』

ヴィータの号令でフォワード達がその場に整列した。

「さて……まずは4人とも、訓練も任務もよく頑張りました」
「この1年間、あたしはあんまり褒める事は無かったが……お前ら、まあ随分と強くなった」
『え!?』

ヴィータからの一言に、フォワード達は驚いた表情を浮かべる。
かくいう俺達もだが

「辛い訓練、きつい状況、困難な任務……だけど、一生懸命頑張って、負けずに全部クリアしてくれた。皆、本当に強くなった。4人とも、もう立派なストライカーだよ」

なのはの言葉に、スバルやティアナ達は泣き始めた。

「あ~、泣くな。バカタレ共が」

それを見ていたヴィータは、フォワードたちにそう言うが、自分だって涙ぐんでいる。
まあ、口に出してしまえばその後どうなるかは大体わかっているので、何も言わないが。

「さて、せっかくの卒業、せっかくの桜吹雪。湿っぽいのは無しにしよう!」
「ああ」

「自分の相棒、連れてきてるだろうな?」
なのはの言葉に、シグナムは一歩前に出て、ヴィータはデバイスを起動させた。

『……え?』

その隊長陣の行動に、フォワードたちは茫然とし、俺と健司は何のことかがさっぱりわからなかった。

「え? ええ!?」

いや、フェイトもだった。

「なんだ、お前達は聞いてなかったのか?」

レヴァンティンを起動させて構えながら取り乱しているフェイトと、茫然としている俺達に聞いてきた。
というより、ちっとも聞いてない。

「全力全開、手加減なし! 機動六課で最後の模擬戦!」
『はい!』

フォワード陣も、ようやく意味が呑み込めたのか、元気よく返事をした。

「全力全開って、聞いてませんよ!?」
「まあ、やらせてやれ。これも思い出だ」

フェイトの意見に、シグナムが反論した。

「あぁ、もう~! ヴィータ! なのは!」
「固いこと言うな。せっかくリミッターも取れたんだしよ」
「心配しなくても大丈夫だよ。だって、みんな強いもん」
「はぁ~……」

ヴィータ達の答えを聞いて、ため息をつくフェイト。
ちなみに俺達はもう諦めているので、すでにデバイスを起動させてある。

「フェイトママ、大丈夫。皆……とっても楽しそうだもん」
「う~ん」

ヴィヴィオの言葉に、フェイトは首を傾げる。
おそらくは納得していないだろう。

「お願いします、フェイトさん!」
「頑張って勝ちます!」
「……もう」

そんなフェイトにエリオたちが追い打ちをかけるように声をかけたことで、とうとうフェイトも折れた。

「頑張って♪」

ヴィヴィオの楽しそうな言葉に、フェイトもバルディッシュを取出し、起動させる。

「それでは……」

バリアジャケットを着込んだ隊長陣+俺と健司、そしてフォワード陣が向き合う。

「「レディ……ゴー!!」」

はやてとギンガの合図で俺達は一斉にとび出した。





ちなみに、この模擬戦の結果は、ご想像にお任せしよう。
まあ、最後に取った記念写真では、みんながバリアジャケットがボロボロの状態であった事を追記しておく。















その後、俺は希望していた戦技教導隊に配属され、今では四苦八苦しながらも教導を続けている。
及川さんは、精神干渉が認められて隔離施設にいたが、数か月が経つと、出所したらしい。
誰の差し金かは知らないが、彼女の保護観察官が俺になったとのことで………

「これから3週間、皆さんの戦技教導となった山本真人ニ等空佐です」
「同じく補佐官の、及川(おいかわ) 真奈美(まなみ)です」

このように、俺の補佐官となったのだ。
休憩時間になると………

「あの、山本二等空佐」
「なんだ?」
「あちらはあのままでもよろしいのでしょうか?」

男性局員が見ている方向には……

「真人君は、私のものなの~!!」
「あらぁ~? 真人さんはあなたの所有物ではありませんよ?」

言い争いをしている及川さんと、なのはの姿があった。

「怪我をしたいのであれば、止めた方がいいと思う」
「じ、自分は向こうで自主練をしてまいります!!」

俺の答えに、男性局員は逃げるように去って行った。
あれが毎日行われるのだから、気が気ではない。
まあ、あれで仲は良いのだからいいの………か?
そんなこんなで、慌ただしい毎日を俺達はすごしていた。
もし、時間が出来れば世界旅行をしてみようと思っている。
本物の浩介と再会するために。


Fin.

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