「申し訳ありません!」
「状況はどうなってますか?」
病院に到着した俺達を、シャッハさんが慌てた様子で出迎えて来た。
「はい、特別病棟とその周辺の封鎖と避難は済んでいます。今のところ、飛行や転移、侵入者の反応は見つかっていません」
「外には出られないはずですよね?」
「はい」
現在の状況を聞いたなのはは、シャッハさんに訪ねた。
「でしたら手分けして探しましょう。シグナム副隊長」
「はい!」
そして、俺達は逃げてしまった少女を探すこととなった。
俺は今、中庭の方に来ていた。
(ここもいない……か)
大概こういう場所に隠れていたりするのだが………
(それにしてもシャッハさんの対応は大げさすぎじゃないか?)
俺はあたりを見回しながら心の中でぼやく。
いくらなんでも相手は子供だ。
それをまるで重犯罪者の様な対処と言うのは、いかがな物だろうか。
そんな事を考えていた時だった。
「………ッ!?」
突然草むらから音がし、驚く俺の前に一人の少女が飛び出してきた。
その少女は、金色の長めの髪に目の色はオッドアイ、水色のワンピースタイプの服を着ていてウサギのぬいぐるみを大事そうに抱えていた。
そして明らかに警戒した様子で俺を見ている。
俺はなのはに念話を飛ばす。
【なのは、中庭にいた】
【了解、すぐに行くから待ってて!】
取りあえずなのはに報告を済ませた俺は、少女に話し掛けることにした。
「こんなところにいたんだ」
この時に、笑顔で接するのを忘れない。
少しでも警戒心が取れればいいのだが……。
「勝手にいなくなったら、みんなが心配しちゃうよ?」
「………」
俺の言葉に、少女は何も答えないが警戒心は少しだけ弱まったような気がしたので、俺はゆっくりと少女の元に歩み寄る。
「うわ!?」
その時、俺と少女の間にデバイスを構え、バリアジャケット姿のシャッハさんが現れた。
その速度に、俺は驚いてしまった。
「あ……ああ……」
それは少女も同じだったようで、 怖がった様子で後ずさりをしている。
「あ、山本二等空佐……それにシスターシャッハ?」
急いでやってきたなのはは、その状況に固まっていた。
視線を名の刃から少女の方に戻すと、今にも泣きそうだった。
「シャッハさん、ちょっと下がってください」
「ですが! この子は――――」
「下がっていてください、ね?」
俺は執行人から教わった、万弁の笑みで殺気を放つ方法を実践してシャッハさんにお願いした。
シャッハさんは、慌てた様子で横に移動してくれた。
(ちょっとやりすぎたかな?)
俺はちょっと反省しつつも、今は泣き出しそうな少女の方を優先する。
「はい。大事な物でしょ?」
俺はしゃがみこんで少女の目線に合わせると、地面に落ちているウサギのぬいぐるみを少女に渡した。
「立てる?」
そして俺の横に移動していたなのはが、少女に優しく尋ねる。
それを聞いた少女はゆっくりと立ち上がった。
「はじめまして。俺は、山本真人。それで、こっちのお姉さんは……」
「高町なのはって言います。お名前、言える?」
「……ヴィヴィオ」
少女は俺となのはの顔を交互に見ていくと、小さな声で名前を呟いた。
「ヴィヴィオ……いいね、可愛い名前だ」
名前を聞いたなのはがそう言っていると、一緒に探していたシグナムさんが遅れてやってきた。
「ヴィヴィオ、どこか行きたかった?」
「……ママ、いないの」
寂しげでどこか不安げなヴィヴィオの声に、なのはは一瞬息を飲んだ。
「ああ、それは大変。じゃあ、一緒に探そう?」
「……うん」
なのはの言葉に、ヴィヴィオは静かに頷いた。
その後、検査の結果異常なしと言う事で一時的に機動六課で保護することになった。
こっちの方の問題は一応解決した。
だが、もう一つの問題が残っていた。
それは……
「あの」
「はい?」
俺は謝罪をしようとシャッハさんに声をかけた。
「先ほどはすみませんでした」
「あ、いえ。私も少々大人げなかったので……ところで」
突然話題を変えたシャッハさんに、俺はどうしたんだろうと内心で思った。
「貴方のお名前、伺ってもいいでしょうか?」
「あ………」
俺は、まだシャッハさんに自己紹介をしていないことに今気づいた。
この後、俺は自己紹介をすることとなった。
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