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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第32話 うごめく陰謀

夜、地上本部の最上階にある展望室

「何だ一体何事だこれは……」

そこでは、海上で戦闘が展開されていることに激昂する一人の男、レジアスとその戦闘を冷静に見る女性がいた。
女性はレジアスの秘書である、オーリス・ゲイズだ。

「本局遺失物捜査部、機動六課の戦闘……その映像です。撃たれているのはかねてから報告のあるAMF能力保有のアンノーン。撃っているのはおそらく六課の部隊長……魔導師ランクは総合SS」
「ん? 機動六課と言うと、あいつから報告があったな。後家人と部隊長は?」

オーリスの説明に、レジアスは真人の報告書の内容を思い出し、オーリスに問いかける。

「後家人の筆頭は本局次元航行部隊提督、クロノ・ハラオウン提督とリンディ・ハラオウン統括官、そして聖王教会の騎士、カリム・グラシアなどの御三方です」
「ちぃ……英雄気取りの青二才どもが……」

オーリスの答えに、レジアスは嫌悪感をあらわにする。

「部隊長は八神はやて二等陸佐」
「八神はやて……あの八神はやてか!?」
「はい……闇の書事件の八神はやてです」

オーリスの言葉を聞いたレジアスは机を思いきり叩き、モニターを睨みつける。

「中規模次元侵食未遂の根源!! あのギル・グレアムの庇護者……どちらも犯罪者ではないか!!」
「八神二佐らの執行猶予期間はすでに過ぎていますし……グレアム提督の件は不問ということになっています。ですから――――」
「同じ事だ!!犯した罪が消える物か!!」

オーリスの言葉を遮って叫ばれた言葉に、オーリスの目が鋭くなった。

「………問題発言です。公式の場ではお控えなさいますよう」
「……分かっている。忌々しい、海の連中はいつもそうだ。危険要素を軽視しすぎる」

オーリスの注意にレジアスは頷くと嫌悪感をあらわにして海……本局を批判する。

「中将は二年前から、地上部隊への対AMFの対応予算を棄却されておられますので、本局と聖王協会が独自策として設立させたのでしょう」

オーリスは六課の創立の理由の見解を言った。

「あいつからはほかに報告はないのか!」
「いいえ、ここ最近は報告をされておりません。こちら側の連絡も一切拒否されております」

その言葉に、レジアスは苛立ちをあらわにした。

「近くお前が直接査察に入れ。何か一つでも失態や問題点を見つけたら即部隊長の査問だ」
「は!」
「平和ボケの教会の連中に良い材料になるかもしれんからな」

レジアスはそう告げると、展望室を後にする。

「了解しました」

それをオーリスは敬礼して見送った。
その陰謀は少しずつではあるが六課に迫って来ていた。


★ ★ ★ ★ ★ ★


割り当てられた部屋に入ると、そこには寛いでいる健司の姿があった。

「………」
「おう、真人。やっと戻ってきたか」
「何をやっているんだ?」

俺は、眉を顰めながら健司に聞いた。

「疲れたからここで休んでたんだよ。何せ俺は5,6人分のデスクワークをやらされたんだからな。それに俺の場所は二人だからゆっくりしずらくてな」
「………うっ!?」

健司の言葉に、俺は申し訳なさでいっぱいになった。
よくよく考えたら、休み呆けている健司が悪いのだが。

「まあ、良いか。それよりも、その様子だと結ばれたようだな。おめでとう」
「あ、ありがとう」

健司にはお見通しだったようで、俺は照れているのを隠しながらお祝いのお礼を言った。

「………」

だが、そこで俺は考えてしまう。
今俺はここにはスパイとして来ている。
それはこの部隊を………友人や恋人を騙しているに等しい。
そんな俺がなのはと付き合う資格はあるのだろうか?

「なあ、健司」
「ん? なんだ?」

俺は気付くと健司に声をかけていた。

「もしも、もしもの話だぞ」

”もしも”を強調すると、俺は仮定の話を切りだした。

「もしも、お前がお世話になっている人からある部隊への諜報活動を命じられて、そこには自分の友人が部隊長をしている場所で、そこには健司の恋人がいたとしたら、健司はどうする?」
「……」

俺の仮定に健司は真剣な面持ちで俺を見据える。

「俺なら」

健司は唐突に口を開いた。

「俺なら諜報活動をやめて部隊長に本当のことを話して土下座で謝るな。友人の部隊で、しかも恋人がいるのであれば尚の事だ」
「………そうだよな、普通はそうするよな」

健司の答えを聞いた俺は、そう返した。

「決心が出来てるのなら、さっさと行け」

健司はすべてがお見通しと言わんばかりに言ってきた。
この時の俺は、とても清々しい気分だった。
だから俺は部屋を出る直前に振り返ると、

「健司、サンキュ」

お礼を言って部屋を出るのであった。
向かう先は、はやてのいる部隊長室だ。

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