はやてちゃんの攻撃の射程範囲害に退避した私とフェイトちゃんは、ヘリの方に向かっていた。
「見えた!」
「よかった……ヘリは無事」
ヘリの近くには警護するように真人君がいた。
ヘリが飛んでいるのを見て、私たちは安堵した。
ですが、離れた場所から魔力のようなエネルギーを感じた。
【市街地にエネルギー反応!】
「「ッ!?」」
ロングアーチからの報告に、私たちは驚きのあまり息をのんだ。
【砲撃のチャージ確認! 物理破壊型、推定Sランク!】
「フェイトちゃん!」
「うん!」
私は一緒に飛んでいるフェイトちゃんに声をかけて速度を上げた。
(真人君がいるけど、あんなのを防いだら負担がかなり掛かる。でも、私達が行けば真人君の負担が減らせられる!!)
私は頭の中でそう考えながらヘリの方に向かう。
しかし………
「「なッ!?」」
私達の努力もむなしく、砲撃は私達が到着する前にヘリに向けて放たれた。
「真人君!!」
爆煙に覆われて真人君やヘリがどうなったかが分からない。
私が最悪な状況を考えた時だった。
【こちらスターズ5、砲撃との相殺に成功! ヘリおよび周辺地域に被害は無し】
真人君の報告が聞こえてきたのと同時に、煙が晴れて行った。
その体は黄色い光が纏っていた。
【真人!】
【真人君! 大丈夫なの!?】
私とフェイトちゃんは真人君に念話で真人君に聞いた。
【二人とも、そんなのは後だ! 早く行け!】
真人君の”行け”は、砲撃を放った人物の所へと言う意味だと私は直感で悟った。
【分かった!】
フェイトちゃんも同じだったようで、真人君に返事をすると素早く砲撃の放たれた方角へと向かって行った。
私もそれに続く。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「下の方に行かなくてもいいのか?」
「下には執行人がいるし、言ったらここを守るものがいなくなる」
俺はヴァイスと言葉を交わしながら周りの警戒をしていた。
何も起こらなければ良い。
だが、俺の中で何かが起こると言う予感がひしひしと感じていた。
そんな時、エネルギーを感じた。
【市街地にエネルギー反応!】
遅れてロングアーチから報告が入った。
【砲撃のチャージ確認! 物理破壊型、推定Sランク!】
(くそッ!)
「ヴァイス、念のために姿勢を低くして衝撃に備えて!」
「了解!」
俺は内心で毒吐きながら、ヴァイスに指示を出す。
(前のようにはならないぞ! 絶対に)
俺はそう誓い左手を前に………エネルギー反応がする方向へと掲げた。
「神性典・第1章………」
詠唱の途中に、砲撃が放たれたのか、ものすごい速度で膨大なエネルギーがこっちに向かってくる。
「無を促す光の環!」
直撃するよりも早く、詠唱は完了し、俺の前方に白銀の魔法陣が展開される。
そして、その魔法陣に砲撃が止められた。
それと同時に俺の方にそのエネルギーがまるで滝のごとく流れ込む。
「ッぐ!!」
その重圧に顔をしかめるが、なのはのSLBに比べれば大したこともない。
触れた衝撃で爆煙が立ち込めるが、少しずつ流れ込むエネルギー量が減ってくる。
(あと少しだ!)
俺はそう解釈するとさらに踏ん張った。
やがて、砲撃によるエネルギーが無くなった。
それは俺が耐え切れたことを示すものだった。
(ッと、そうだった)
俺は急いでこのエネルギーを放出する。
そうしなければ中から許容量を超えたエネルギーで崩壊するからだ
「クリエイト、フルパワーモード!」
『了解です。マスター』
俺の指示を聞いたクリエイトの応答によって、俺の体中に力が漲った。
【こちらスターズ5、砲撃との相殺に成功! ヘリおよび周辺地域に被害は無し】
俺はすかさずロングアーチに報告をする。
【真人!】
【真人君! 大丈夫なの!?】
するとなのはとフェイトの念話が聞こえてきた。
【二人とも、そんなのは後だ! 早く行け!】
俺は二人に砲撃を放った人物の所に行くように言った。
【分かった!】
その念話の瞬間、金色の光が飛んでいくのを見た。
しばらく遅れて桃色の光も飛んで行った。
俺はしばらくはその場で待機することにした。
★ ★ ★ ★ ★ ★
市街地のとある場所に、ボディースーツを着た三人の人物の姿があった。
「ふぅ、トーレ姉さま、助かりましたぁ」
白衣を身に纏い、栗色の髪にメガネをかけた女性……クアットロが横に立っている紫色の紙に、目つきが鋭い女性……トーレにお礼を言う。
「感謝……」
横にいる短めの栗色の髪をした女性……ディエッチは申し訳なさそうにお礼の言葉を呟いた。
「ぼうっとするな、さっさと立て! 馬鹿者共め」
そんな二人に鋭い視線を送りながら厳しく言い放った。
「監視目的だったが、来ていてよかった。セインはもうお嬢とケースの確保を完遂されたそうだ。合流して戻るぞ」
「はぁい、トーレ姉さ――――っぐぅ!?」
トーレの言葉に、答えようとしたクアットロは突然くぐもった声を上げるとその場に倒れた。
「クアットロ!?」
突然の事態に二人は慌ててクアットロに駆け寄る。
「がぁ!?」
その瞬間、次はディエッチがクアットロと同じように地面に倒れた。
「ディエッチ!?」
一瞬の出来事にトーレは混乱するが、すぐにそれに気が付いた。
「これは……矢?」
クアットロとディエッチの背中には、矢が突き刺さっていたのだ。
しかも人で言えば心臓がある位置だ。
(何と言う恐ろしいやつだ)
矢を放った人物に恐怖感を抱きつつ、トーレはすぐに周囲に視線を向ける。
(これを放った奴は、次は私を狙うはず)
だが………
「ッ!?」
突然の風切り音がする。
横を見ると、地面に倒れ伏すクアットロの背中………最初の矢のすぐ近くに二本目の矢が突き刺さっていた。
そして再び風切り音、次はディエッチだ。
すかさず風切り音が響く。
「一体どうなっているんだ、これは」
二人が市街地のとある場所に降り立ったころ、そこから離れた場所にあるビルの屋上に佇む一人の人物の姿があった。
「見事に隠れてたみたいだが、執行人の捜索網からは逃れることはできない」
その人物は、真人であった。
彼の目には三人組が佇んでいるのが見えていた。
「おいたと仲間を傷つけるとどうなるか、教えてあげる」
そう呟くと真人は弓状のクリエイトに普通の矢をセットする。
「第一射!」
そして真人はクアットロの背中に照準を合わせると矢を射た。
そこはちょうど心臓のある位置だ。
「続いて第二射」
すかさず真人はディエッチにも同じ位置に矢を射る。
「慌ててる慌ててる。警戒しているようだけど、これは魔力を使わないものだから、把握するのは難しいと思うけど………第三射」
周囲を警戒するトーレをあざ笑うように、真人はクアットロの背中に向けて再び矢を射る。
正確無比に狙撃できるのは、クリエイトのサポートと真人自身が持つ弓矢のスキルだった。
しかも本人は微妙な力加減をしており、致命傷にならないように手を抜いている。
真人はどんどんと矢を射る。
約20本の矢を射た時だった。
「毒矢、第一射」
それは矢の先端に毒が塗られている矢だった。
その矢を真人は容赦なく二人に向けて射る。
ちなみにその毒は記憶の混乱を引き起こすものだった。
具体的に言うとその場での記憶が狂い、本人では何があったのかが理解できなくなると言うものだ。
二本の矢は寸分たがわずに二人に命中した。
「ラスト一本、目には目を歯には歯を!」
そして真人はトーレの足元に照準を合わせると毒矢を射た。
それは命中し、トーレは足の痛みをかばいながら去って行った。
「………お遊びが過ぎたかな?」
真人はクリエイトを剣状にしながら、静かに呟いた。
本気であれば、真人は三人を捕まえることもできた。
それをしなかったのは、仲間を傷つけようとしたことに対する復讐であったのだ。
「さて、帰還しますか」
真人は最後にそう呟くと、その場を後にするのであった。
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