フォワードメンバーが休日を楽しむ中、隊長陣とギリギリ隊長陣に分類される俺と健司はと言えば……。
「仕方がないにしてもちょっとだけあれだよな」
「言うな」
デスクワークに追われていた。
六課のデスクワークの量は半端ではない。
しかも今日は新人たちの分を引き継いでいるのでなおさらだ。
「お、やっと見つけたわ」
そんな中、涼しい顔をしてやってきたのは、部隊長でもあるはやてだった。
「ん? どうかしたんですか? 八神部隊長」
「ちょっと部隊長室に来てほしいんよ」
健司の問いかけに、はやては用件を告げた。
「俺達が、ですか?」
「いや、来てもらうのは山本二等空佐だけや」
「お、俺が!?」
はやての突然の言葉に、俺は思わず驚きの声を上げた。
「来てくれへんか?」
「………分かりました」
俺は覚悟を決めた。
はやてからの呼び出しの理由なんて一つしかないのだ。
そして俺はまるで処刑を待つ人のような気持ちで、部隊長室へと向かうのであった。
この時、俺は気付くべきだった。
はやての目がものすごく怪しく輝いていたことを。
「あれ? なのは、どうしてここに?」
「真人君こそ、なんで?」
部隊長室に着くと、そこにはなのはの姿があった。
「おほん! 本題に入るけどええん?」
「「っ!?」」
突然わざとらしく咳払いしたはやてに驚きつつ、先を促した。
「実はななのはちゃんと真人君には今日はお休みしてもらおう思っとるんよ」
「な、何で!?」
突然の宣告に、なのはが叫んだ。
「なのはちゃんに真人君、最近全然休んどらんやろ? ちょうどええ機会やと思って」
「でも……」
そう言えば俺はここに来てから休み何て、2,3日ぐらいしかとってないような気がする。
俺の場合は罪悪感からだが、なのはの場合はワーカーホリックかもしくは天然の素質なのか。
どちらにせよ、あまりいい傾向ではなかった。
「お願いや、聞き入れてくれへん? 人事部から指導が入ったんよ。休みを出せってな」
「そ、それじゃあお言葉甘えちゃおうかな?」
はやてのあまりにも必死な様子になのはも頷いた。
と言うより苦労してるんだな、部隊長って。
「でも、大丈夫なのかな? 私達が休んじゃって」
なのはが心配そうにつぶやく。
「大丈夫や、二人の分はいつも休みばっかとっとる健司君にやらせればいいんやし」
「「あははは……」」
俺達は苦笑いを浮かべた。
健司は俺とは対照的に良く休む。
理由は分からないがとにかく休むのだ。
はやてとしても腹に据えかねたのだろう。
「そして、二人には部隊長権限で極秘任務を与える!」
「極秘任務?」
「それはやな――――」
嫌な予感がする俺をよそに、はやては”極秘任務”を告げるのであった。
「お、お待たせ」
「あ、ああ」
六課のロビーで、俺となのはは顔を赤らめていた。
何故かは、なのはの服装ですぐに分かる。
なのはの服装は六課の制服ではなくピンク色の上着に青のスカートと言う私服だった。
「そ、それじゃ、行こう?」
「そ、そうだな」
俺となのははぎこちないまま、歩き出した。
(何が極秘任務だよ)
俺は心の中で、はやての事を恨んでいた。
はやての出した極秘任務、それは……
『なのはちゃんと真人君の二人で、デートをすることや!!!』
であった。
だからこそなのはも顔を赤らめているのであって……
「………えい!」
「うわ!? ど、どうしたんだよ、なのは?」
突然俺の腕に自分の腕をからめてきたなのはに、俺は慌てて声をかけた。
「だって、この方がデートっぽいでしょ?」
「そ、そうだけど、その腕に当たってるって」
俺は腕に当たり柔らかい感触に内心ドキドキしていた。
「当ててるもん。それとも、真人君は私と腕を組むのは、いや?」
「ッ!?」
なのははわざとではないにしろ、上目使いで聞いて来られた俺にはものすごいドキッとした。
まさか、女性の上目使いがここまでの威力とは……。
「そんなことはないぞ。そ、それより行くぞ!」
「うん♪」
慌てる俺を見て面白いと思っているのか、もしくは楽しんでいるのかは分からぬが、なのはは笑顔で頷くとさらに腕に強く抱きついてくる。
俺は心臓の鼓動を抑えながらクラナガンへと向かうのであった。
おまけ
機動六課オフィス
そこではいつものようにデスクワークが行われていた。
だが、その一部は異様な雰囲気を醸し出していた。
「なんでだ……なぜだぁあああ!!!」
そう雄たけびを上げたのは、健司であった。
「なんで、あいつは休みでデートまでして、俺はここで二人の分のデスクワークをするんだよ!!」
「それはあんたが休みを取り続けてきたからや!」
そう言ってハリセンで健司の頭を叩くはやて。
「だって、しょうがないだろ! コミケだぞ! コミケ! 普通行くだろ!!」
『そんなもの(コミケ)で管理局の仕事をさぼるな!!』
健司のとんでもない理由に、はやてとオフィスにいた者達が一斉に突っ込む。
ある意味自業自得であった。
ちなみにこの膨大な量が片付くまで睡眠、休暇なしと言われ、真夜中まで涙を流しながら処理していたのは余談である。
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