健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第28話 悲しい終わり

「夜天の書の破壊!?」
「どうして!? 防御プログラムはもう破壊したはずじゃ」

話を聞き終わったなのはとフェイトさんは、ハラオウンさんとユーノを問い詰めていた。

「闇の書……夜天の書の管制プログラムからの進言だ」
「管制プログラムって、なのは達が戦っていた?」
「ああ」

アルフさんの言葉に、クロノが頷く。

「防御プログラムは無事破壊できたけど、夜天の書本体がすぐにプログラムを再生しちゃうんだって。今度ははやてちゃんも侵食される可能性が高い……夜天の書が存在する限り、どうしても危険は消えないんだ」
「だから闇の書は、防御プログラムが消えている今の内に、自らを破壊するよう申し出た」
「そんな……」
「でも、それじゃシグナム達も…」
「いや、私達は残る」

フェイトさんが席を立って身を乗り出した時、シグナムの声がした。

「シグナム!?」
「……防御プログラムと共に我々守護騎士プログラムも、本体から開放したそうだ」
「それで、リインフォースからなのはちゃん達にお願いがあるって……」
「お願い?」

そして俺達はシャマルさんからリインフォースさんの頼みを聞いた。










それから少しして海鳴市のとある丘を、俺と健司になのは、フェイトさんの4人で歩いていた。

「……ああ、来てくれたか」

丘の頂上には、魔導書を手にしたリインフォースが居た。

「リインフォース……さん」
「そう呼んで……くれるのだな」
「………」
「貴女を空に還すの私達でいいの?」
「お前達だから頼みたい。お前達のお陰で私は主はやての言葉を聞く事ができた。主はやてを食い殺さずに済み騎士たちも生かす事ができた……感謝している。だから最後は、お前達に私を閉じてほしい」

リインフォースさんにお願いされたのは、夜天の書を俺達の手で消滅させることだった。

「はやてちゃんと……お別れしなくていいんですか?」
「主はやてを悲しませたくないんだ……」
「リインフォース……」

リインフォースさんの答えに、フェイトさんが悲しげに名前を呟く。

「でもそんなの……何だか悲しいよ」
「お前達にもいずれ解る……海より深く愛し、その幸福を護りたいと思える者と出会えればな」

リインフォースさんはそう言いながら、優しく笑った。
すると後ろから誰かがくる気配がした。
おそらく守護騎士のみんなだろう。

「そろそろ始めようか……夜天の魔導書の……終焉だ」
「……覚悟を決めているんですね。リインフォースさん」

俺は今までの会話を聞いて、リインフォースさんにそう声をかけた。

「……ああ、色々と世話になったな。小さな勇者よ」

リインフォースさんは俺ににっこりと微笑んだ。
その笑顔は、とても美しいはずだったのにとても悲しげではかないものだった。
そして、儀式が始まった。










そして儀式が終盤へと進んだ時だった。

「リインフォース!! みんなー!!」

突然響き渡る声に俺達は、驚いて声のした方を見ると、そこには車椅子に乗ったはやてが、息を切らしてこちらに来ていた

「はぁ! はぁ! はぁ!」
「はやてちゃん……」

なのはとフェイトさんは、はやてが現れたことに驚いていた。

「はやて!」

ヴィータは、はやての元に駆け寄ろうとする。

「動くな!! 動かないでくれ、儀式が止まる」

リインフォースさんに一喝され、全員がその場にとどまった。

「あかん! やめて!! リインフォース止めて!! 破壊なんかせんでええ!! 私がちゃんと抑える!! 大丈夫や! こんなんせんでええ!!」
「……主はやて、良いのですよ」

はやての悲痛な叫びに、リインフォースさんは優しく語りかける。

「いいことない!! いいことなんか、何もあらへん!!」
「随分と永い時を生きてきましたが、最後の最後で私は貴女に綺麗な名前と心を頂きました。騎士達も貴女の傍に居ます。何も心配はありません」
「心配とかそんな……」
「ですから、私は笑って逝けます」
「……ッ!! 話し聞かん子は嫌いや! マスターは私や! 話し聞いて!! 私がきっと何とかする! 暴走なんかさせへんって約束したやんか!」
「……その約束は、もう立派に守っていただきました」
「リインフォース!!」

はやての悲痛な声が俺にはつらかった。

「主の危険を払い、主を護るのが魔導の器の勤め……貴女を護る為の最も優れたやり方を、私に選ばせて下さい」

はやての叫びでも、リインフォースさんの決意は覆らないようだ。

「せやけど……ずっと悲しい思いしてきて、やっと……やっと……救われたんやないか……」

はやてはとうとう泣き始めた。

「私の遺志は貴女の魔導と、騎士達の魂に残ります……私はいつも貴女の傍にいます」
「そんなんちゃう!! そんなんちゃうやろ! リインフォース!!」
「……駄々っ子はご友人に嫌われます……聞き分けを、我が主」
「リインフォース!」

はやてが、リインフォースさんの所にさらに近づこうと、車椅子を勢いよく運転する。

「きゃ!?」

何かに車輪が取られたのか、車いすが転倒しはやては車椅子から放り出された。

「あ……!?」

なのはと俺は思わず駆け寄ろうとしたが、さっきリインフォースさんに言われたのでその場に留まった。

「ひっく……なんで……これから……やっと私が……これから、うんと幸せにしてあげなあかんのに!!」
「大丈夫です、私はもう世界で1番、幸福な魔導書ですから」
「……リインフォース」

すると、リインフォースさんははやてのそばまで歩み寄ると、屈んではやてと目線を合わせた。

「主はやて、1つお願いが。私は消えて小さく無力な欠片へと変わります。もしよければ、私の名はその欠片ではなく貴女がいずれ手にするであろう新たな魔導の器に贈ってあげて頂けますか? 祝福の風、リインフォース……私の魂はきっとその子に宿ります」
「……リイン……フォース」
「はい、我が主」

リインフォースさんは、はやての呼び掛けに優しく微笑みながら応えるとはやてに背を向けて、再び魔法陣に戻った。
そして魔法陣がさらに輝きを増した。

「主はやて、守護騎士達、それから小さな勇者達……ありがとう。そして……さよなら」
「ッ!!」

そしてリインフォースさんの姿は、光の粒子となり消えていった。

「あ……」

上空から何か光る物が落ちて来て、はやてさんがそれを受け取った。

「う……」

こうして、闇の書事件は解決した。

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第27話 その後

「……やはり破損が致命的な部分にまで至っている……防御プログラムは停止したが、歪められた基礎構造はそのままだ……私は……夜天の魔導書本体は遠からず新たな防御プログラムを生成し、また暴走を始めるだろう……」
「やはりか……」

アースラの病室で、リインフォースが自身の現状を話していた。
それを聞いたシグナムは、予想していた事態が的中してしまった事にため息をつく。

「修復はできないの?」

シャマルがリインフォースに尋ねる。

「無理だ……管制プログラムである私の中からも夜天の書本来の姿は消されてしまっている……」

だが返ってきた言葉はかすかな希望を壊すものだった。

「……元の姿が解らなければ、戻しようもないと言うか」
「そういう事だ」

リインフォースの絶望的な答えにシャマルは肩を落としていた。

「主はやては、大丈夫なのか?」
「何も問題はない、私からの侵食も完全に止まっているしリンカーコアも正常作動している。不自由な足も、時を置けば自然に治癒するだろう……」

シグナムの問いかけに、リインフォースが答える。

「そう……じゃあ、それならまぁ、よしとしましょうか」
「ああ、心残りはないな」

シャマルとシグナムは、はやてが助かる事に安堵していた

「防御プログラムがない今、夜天の書の完全破壊は簡単だ。破壊しちゃえば暴走する事も二度とない……代わりに私らも消滅するけど」

ヴィータはそう言って俯いた。
夜天の魔導書の完全破壊……それは、夜天の魔導書から生まれたヴォルケンリッター達の消滅と言う事でもあるのだ。

「……すまないな、ヴィータ」
「何で謝んだよ! いいよ別に……こうなる可能性があった事位、みんな知ってたじゃんか」
「いいや、違う…」
「「「「えっ!?」」」」

リインフォース突然の言葉に、シグナム達の視線が集まる。

「お前達は残る……逝くのは……私だけだ」

そう言い、リインフォースは悲しみを含んだ笑みを浮かべた。


★ ★ ★ ★ ★ ★


宇宙船―フェイトさん達曰く、時空航行船らしい―に到着した俺達は、食堂内の席に座っていた

「それで、どうやって真人君は魔導師になったの?」

目の前にいるなのはが俺に疑問を投げかけてきた。
ちなみに席順は俺の横に執行人、健司。
そして向かいには俺の正面になのは、フェイトさんだ。

「実はだな―――――――」

そして俺は、魔導師になるきっかけを話した。





「そんなことがあったんだ」
「まあ、そういう事だ」

話し終えると、なのは達は茫然としていた。

「でもその転生者って、何なの?」
「一度死んで、強大な力を付加させたりして不正に生まれ変わって来たやつの事だ。そのままにしておくと世界自体が狂うことになる」

執行人の説明に、なのは達は首を傾げていた。
やはりよく分かっていないようだった。

「まあ、それは置いといて。はやては大丈夫なのか?」
「……分からないけど。診断の結果が出るまで――――」

俺がそこまで言いかけると、食堂にユーノとハラオウンさんの二人が入ってきた。

「あ、ユーノ君! クロノ君! はやてちゃんは!!」

なのはの問いかけに、二人の表情は曇っていた。

「落ち着いて聞いて貰いたい」
「実は………」

そしてユーノ達から衝撃の言葉が告げられた。

「闇の書を破壊しないといけないんだ」

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第25話 今後のプラン

俺達が白銀の光の場所に向かうとそこにいたのは……。

「健司君……それに真人君!?」

制服と同じだが、どこかが微妙に違う白い服を着たなのはに黒の露出度の高い服を着ているフェイトさん。
そしてやや金髪の髪をした俺と同い年の男と、オレンジの髪をした女性がいた。

「真人君って、魔導師だったの!?」
「ああ、うん」

なのはの問いかけに、俺は頷いた。

「全然気づかなかったよ」
「当然だろう。近くに魔導師がいるのが分かっているんだから、魔力をこっちの方で隠滅しておいたんだ」

と、執行人が俺の横に出るとそう答える。
やっぱりあんたがやっていたのか。

「あ、あなたは?」
「僕は……執行人とでも名乗っておこう。こいつの魔導の教導をしている」

執行人はそう自己紹介をした。

「ところで、あの人たちは誰?」

俺はなのは達のそばにいる人たちを見ながら聞いた。

「あ、えっとあの男の人が、ユーノ君で女性の人がアルフさんです」

どうやらやや金髪の髪をした人が、ユーノと言う人物で、オレンジ色の髪の女性がアルフと言う名前らしい。

「初めまして、ユーノさんにアルフさん。山田 真人と言います」
「あ、ユーノ・スクライアです。ユーノって呼んでください」
「あたしはフェイトの使い魔のアルフさ」

と、自己紹介をした時だった。

「うわ!?」

突然光ものすごい光を発したので、思わず目を覆った。

「ああ!?」

やがて光が治まると、そこには三角形の白銀の魔法陣……ベルカ式のものが展開されその上に守護騎士の4人が立っていた。
まるで中央の光を守るように。

「ヴィータちゃん!」
「シクナム!」

二人が守護騎士の二人の名前を呼ぶ。

「……我ら、夜天の主の元に集いし騎士」
「主ある限り、我らの魂尽きる事なし」
「この身に命ある限り、我らは御身の元にあり」
「我らが主、夜天の王……八神はやての名の元に!!」

シグナム達の口上が終わってから少しして、光の球が砕け中から黒い甲冑を着たはやてが現れた。

「「「はやてちゃん(はやて!)!」」」

俺となのはの声に、はやては笑顔で答えた

「夜天の光りよ、我が手に集え!祝福の風、リインフォース……セーット、アップ!!」

その瞬間はやての姿が変わった。
黒色の甲冑に白い服が現れ、さらにスカートの部分も伸びて背中には4枚の黒い羽根が展開し、髪の色は栗色から銀色になった。

「……はやて」
「うん……」
「すみません……」
「あの……はやてちゃん、私達……」

ヴィータ達が、はやてに謝った。
まあ、主の約束を破ってまでも隠れて蒐集していたしな。

「ええよ、みんな解ってる。リインフォースが教えてくれた……そやけど、細かい事は後や。今は……おかえり、みんな」
「うっ……う……うわぁぁぁん!」

はやての言葉に感極まったヴィータは、はやての胸で泣きじゃくった。
はやてもヴィータを優しく抱きしめて受け止めた。

「はやてっ! はやて!! はやてぇ!! うわぁぁぁん!!」

ヴィータ達から聞いたのだが、彼女たちの目的は、はやてと幸せに楽しく暮らすことだった。
……それが今こうして実現して嬉しいのだろう。

「良かったな、ヴィータ」
「ひっく……ぅん」

俺の言葉に、ヴィータは涙ぐみながら頷いていた。

「はやても無事でよかったよ」
「真人君って魔導師やったんやな。とても驚いたよ」

俺ははやての言葉に、苦笑いを浮かべていた。

「なのはちゃんとフェイトちゃんもごめんな。うちの子達が迷惑かけてもうて……」
「ううん……」
「平気……」

すると、上空から男の人がやってきた。

「済まないな。水を差してしまうんだが……時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。時間がないので簡潔に説明する」

そしてハラオウンさんから、現状の説明が始まった。

「……あそこの黒い淀み、闇の書の防衛プログラムが後数分で暴走を開始する……僕らはそれを何らかの方法で止めないといけない。停止のプランは現在2つある……1つ、極めて強力な氷結魔法で停止させる。2つ、軌道上に待機している艦船アースラの魔導砲、アルカンシェルで消滅させる。これ以外に他に良い手がないか、闇の書の主と守護騎士の皆に聞きたい」

ハラオウンさんは守護騎士達に聞くが……

「ええっと……最初のは多分難しいと思います……主のない防衛プログラムは、魔力の塊みたいな物ですから……」
「凍結させても、コアがある限り再生機能は止まらん……」

シャマルさんとザフィーラにより最初の案は没。

「アルカンシェルも絶っ対ダメッ!! こんな所でアルカンシェル撃ったら、はやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!!」

ヴィータが猛烈な勢いで反対した。

「そ、そんなにスゴイの?」
「発動起点を中心に百数十キロ範囲の空間を歪曲させながら、反応消滅を起こさせる魔導砲……って言うと大体わかる?」
「あの! 私もそれ反対!!」
「同じく! 絶対、反対!」

2つ目もヴィータとなのはとフェイトさんにより没。
と言うよりも、恐ろしい兵器だ。

「僕も艦長も使いたくないよ……でも、アレの暴走が本格的に始まったら被害がそれより、遥かに大きくなる」
「暴走が始まると、触れた物を侵食して無限に広がっていくから……」
「「………」」

ハラオウンさんとユーノの説明を聞いて何も言えなくなる二人……

【はーい、みんな!暴走臨界点まで後15分切ったよ!!会議の結論はお早めに!】
「ところで、君は一体誰なんだ?」

女性の声の念話が聞こえたかと思えば、目の前にいるハラオウンさんが俺に向かってそう聞いてきた。

「や、山田正人です!!」
「俺は、こいつの魔導を教えている執行人だ」
「クロノ・ハラオウンだ。君達二人には後で、詳しい事情を聞かせてもらいたい」
「……致し方あるまい」

執行人が嫌そうに答えた。

「ね、ねえ真人君は何かいい案がないの?」
「………悪い」

俺にもわからなかった。

「あるではないか。僕が使っていた全ての無へと返すプリマテリアライズ・オーバードライブを使えば、あの防衛プログラムと言うものでも消せるだろう」
「そ、そんな物騒なものを使っても、影響はないのか?」

執行人の提案に、ハラオウンさんがそう疑問を投げかけた。

「もちろんだ。少々強い風が吹くだけだ。周りへの被害は0に等しい」
「……よし、それで行こう」

執行人の答えに、納得したのか、執行人の言ったプランで決定した。

「実に個人の能力頼みでギャンブル性の高いプランだがまあ……やってみる価値はある」
「防衛プログラムのバリアは魔力と物理の複合4層式、その奥に対魔力のバリア……まずはそれを破る!!」
「え?」
「どうした?何か問題でもあるのか?」

突然声を上げた健司に、ハラオウンさんがそう問いかけた。

「あ、いや。なんでもない」

健司は首を振ってそう答える。

【何か問題でもあるのか?】
【………ああ。俺の知っている限りだと、対魔力バリアはないはずなんだ】

健司の言葉に、俺は驚きを隠せなかった。

【健司よ。ここではお前の知っている物語になるとは限らない】

執行人の言葉が、俺には重く聞こえた。

【真人。プリマテリアライズ・オーバードライブの打ち方。覚えてるか?】
【ああ。大丈夫だ】

俺は執行人の問いかけにそう答えた。
前に一度、執行人からはこの技の打ち方を教えてもらっていた。
武装は何でもいいらしいので、弓型にした。

【健司は、真人のサポートをしろ】
【はい!】

俺達の、方針は固まった。

「バリアを貫いて本体にむけて私達の一斉攻撃でコアを露出!」
「そして真人君の魔法で消滅!!」

こちらも、一通りプランの確認を終えたようだった。

【暴走開始まで、後2分!】

まだ少しばかり時間があるようだ

「あ、真人君になのはちゃん、後、そこの人とフェイトちゃんも」
「「「……?」」」

はやてに呼ばれた俺達は、状況がうまく飲み込めない。

「シャマル!」
「はい、3人の治療ですね……クラールヴィント、本領発揮よ」
『Ja』
「静かなる風よ、癒しの恵みを運んで」

シャマルの言葉に呼応するように、緑の光が俺たちを優しく包み込んだ。

「あ……わぁ!」
「ええ……」
「湖の騎士シャマルと風のリング、クラールヴィント。癒しと補助が本領です」
「ありがとうございます。シャマルさん」
「すごいです」
「ありがとうございます、シャマルさん!」
「ふふ……どういたしまして」

俺は特にダメージなどなかったが、力がみなぎってくる感じがした。
そしてとうとう暴走が始まったのか、黒い球体の周りから、黒い魔力の塊が柱のように立ち上った。

「始まるっ!」
「……夜天の魔導書を呪われた闇の書と呼ばせたプログラム……闇の書の闇……」

黒い球体が割れ、中からはおぞましい巨大生物が現れた。

「■■■!!!」

こうして、俺たちの最後の戦いが幕を開けた。

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第24話 自分の魔法

「………」

ザフィーラさんが出て行ってから少し経った。
俺は不安を感じていた。

「遅いな」
「何かあったのではないか?」

俺の呟きに、執行人がそう呟いた。
そうだ、なんで気づかなかったんだ!

「ザフィーラさんは異変を察知して行ったんだ。何かがないはずがないじゃないか」

俺はそう言ってソファーから立ち上がった。

「行くのか?」
「もちろんだ!!」

執行人の、問いかけに俺は答えた。

「今回は少々危険が伴うぞ。それでも行けるのか?」
「当り前だ! 魔法を使えるようになってから覚悟なんてできてる」

執行人に俺はそう答えた。
そうだ。
とうに覚悟はできている。

「よし、それでは行――――――」

執行人が行こうと言おうとした瞬間、空間が区切られるような感じがしたと思うと、景色が変わった。
これは……

「結界!?」
「どうやら四の五の言える状況ではないな。急ぐぞ!!」

執行人は、その結界から何かを感じ取ったのか慌てた様子で俺に告げてきた。

「おう!!」

そして俺達は八神家を飛び出すのだった。









外の景色は、やはり結界内のようでモノクロ色になっていた。

「ここら辺一帯に結界が施されているようだね」
「ああ、しかもこの空気はかなり危険だ」

俺の言葉に、執行人はそう答えながらあたりを見回していた。
確かに雰囲気がいつもとは違った。
まるで俺の知らない何かが現れているかのような雰囲気だ。
言うなれば空気自体がかなり鋭いとげのように俺に突き刺さっているような感じだ。
空気自体が重く、それが俺をさらに不安にさせていた。

「とまれ! 真人!!」
「ッ!!?」

執行人の突然の警告に、その場で浮遊する。

「な、何だあれは!?」

俺の視線の先には、こっちに向かって飛んでくる何かがあった。

「プロテクション・ホバー!」

飛んでくるものを受け止める特殊防御魔法を、前方に展開する。

「うわ!!」
「ぐッ!?」

飛んできた何かが防御魔法にぶつかり、少し両腕に圧力がかかる。

「って、健司!?」
「………真人か」

飛んできた人物は、友人でもあり転生者でもある健司だった。

「この結界は何だ!! 一体なにがあったんだ!?」

俺は苦しげな表情を浮かべる健司に、疑問を投げかけた。

「おい、一気に質問をするな。こいつも困ってるだろ」
「悪い………って、あんた誰?」

執行人の言葉にいつものように答えようとして声のした方を見た瞬間、そこには見知らぬ俺と同じくらいの背をした少年がいた。
短めの銀色の髪をして目の色が赤い少年だった。

「誰って……執行人だ、執行人。声で気付くだろ普通」

額に手を当てて呆れていた。

「執行人ってそういう姿をしてたのか」
「お前、俺の力がないから、姿を現すことが出来ないって言ってなかった?」

どこか感心した感じでつぶやく健司をしり目に、俺は執行人に聞いた。

「確かに僕が姿を現すには、お前が力を付けるしかない。そしてお前にはまだそれだけの力はない」
「だったら―――」

執行人の答えに反論しようとするのを執行人が遮るようにして上空を指さした。
その上空には何もない。

「ここは闇の属性で形成された結界だ」
「??」

よく理解できない俺の様子を見た執行人がさらに説明を続ける。

「属性と属性相乗効果は知っているな?」
「ああ」

属性の相乗効果とは、周囲に形成された結界などの属性が同じだと相乗効果で威力が上がるというものだ。

「何だよ?その属性相乗効果って」

健司はよく知らないらしいので、俺と執行人は健司に説明した。

「と言うことは、闇属性の奴に有利っていう事だよな」
「お前の周りに闇属性の奴はいるか?」

執行人が健司に問いかける。

「えっと闇の書の意志だけだ」
「そうか……こっちは僕と真人の二人が闇属性だ」
「え!? 真人も闇属性なのか!?」

執行人の言葉に、健司が驚いたように聞いてきた。

「ああ、こいつは俺の弟子でもあり、マスターのようなものだ。だから俺と同じ属性だ」

執行人は最後に”まあ、それでも僕よりは劣るが”と付け加えた。

「さて、次はそっちの番だ。何があったかを教えてくれ」
「……分かった」

そして健司は、何があったかを語り始めた。





健司の話を要約するとこうだ。
まずなのはとフェイトさんがシグナム達と鉢合わせになってしまい、主が分かってしまった。
そして屋上でなのは達が戦い始めるが、突然現れた仮面の男(おそらくは俺を襲ったのと同一人物だ)がなのはとフェイトさん、健司を拘束してはやてを呼び出した
そして仮面の男ははやてを闇の書の主として、覚醒させたのだ。
その後、空間攻撃を使って攻撃をしてきて封鎖結界を張られた。
この時に俺は外に出たのだろう。
そしてなのはの持つ魔法の砲撃……確か名前は………まあいいか―――をぶっ放した。
その際に、すずかやアリサ達に正体がばれてしまったのだとか。
そしてフェイトさんが闇の所に取り込まれたらしい。

「それで、それを助けようとした健司はここまで吹き飛ばされてきたという事か」
「……ああ」

健司の声は、どこか元気がない。

「情けないよな。魔法を使ってちょっとしか経ってない奴に負けて、勝てるはずの敵にも負けて」
「………」

健司の言葉を俺は静かに聞いていた。

「だったら、このまま消えるか?その方が僕も手っ取り早くて助かるんだが」

執行人が健司にそう尋ねる。
俺は思わず執行人の事を怒鳴ろうとしたが、それを必死に堪えた。
なぜなら、これが俺のやるべき宿命なのだから。

「執行人」
「……どうぞ」

俺の表情から、何を言いたいのかを察した執行人は、そう言うと一歩下がった。

「なあ、健司」
「何だよ」
「健司にとって魔法ってなんなのかな?」

俺は、前に執行人に問いかけられた言葉をそのまま聞いた。
魔導師にとっての根源でもあるその質問を。

「それは………」

健司は答えに詰まった。
どうやら、俺と同じように考えてなかったようだ。

「………あの、執行人さん」
「なんだ?」

健司はしばらく考え込むと、執行人に声をかけた。

「俺にも協力させてください!!」
「………理由を聞こうか?」

突然の言葉に、執行人はしばし考えると、そう返した。

「見つけたいんです。俺の魔法の意味を。だから、もう一度戦わせてください!!」
「………………」

健司の言葉に、執行人は無言だった。

「執行人。俺からもお願いだ」

俺は執行人に頭を下げた。
しばらくすると、”はぁ”というため息が聞こえた。

「前からお前は甘いと思ったがこれは、相当だな。まあ、そんな奴をマスターにしてしまったから仕方ないか」

執行人は後悔しながら、だが表情は嬉しそうだった。

「お前はマスターだ。僕に頭を下げなくてもいいんだぞ。だが、真人のお願いを断るわけにはいかねえな。おい健司」
「はい!」

執行人に名前を呼ばれた健司は、背筋を正した。

「お前の抹殺は今後の経過を見て判断しよう。だがしかし、もし不審な行動をとったらすぐに抹殺するゆえ、気を付けるんだな」

その言葉は、執行人なりのOKだった。

「ありがとうございます!」
「ありがとう!」

俺と健司は執行人にお礼を言った。

「本当に変わってるな。さあ、早く行くぞ! 時間もあんまりなさそうだし」
「了解!」
「おう!」

俺と健司と執行人は、前方に光る白銀の光に向かって飛んで行った。

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第23話 接触/男同士の語らい

12月24日

「ごめんねはやて、毎日来れなくて」

はやての病室に、シグナム達全員がお見舞いに来ていた。

「ううん。元気やったか?」
「めちゃめちゃ元気!」

病室にどことなくのどかな雰囲気が漂っていた時だった。

コンコン

突然病室のドアがノックされた。

「ん?」
「こんにちは~」
「っ!!?」

外から聞こえてきた声に、ヴィータ達はドアの方を見る。

「あれ? すずかちゃんや……はい、どうぞ!!」

はやての声と同時に、病室のドアが開く。

『こんにちは~』
「っ!!」

ヴィータも入ってくる人を見て息をのんだ。

「あれ、今日は皆さんお揃いですか?」
「こんにちは、皆さん初めまして」

なぜなら、アリサとすずかが入って来て、その後に入ってきたの人物が……

「「っ!!?」」

フェイトとなのはだったからだ。

「あ、すみません。お邪魔でした?」

雰囲気が重いのを感じたアリサが、謝りながらシグナム達に聞く。

「あ、いえ」
「いらっしゃいみなさん」

シグナムとシャマルは表面上では穏やかな表情で歓迎した。

「なんだ、よかったぁ」
「ところで、今日はみんなどうしたん?」

ほっとしているすずかにはやてが聞いた。

「「えへへ……せーの」」

合図を出して取り出されたのは、いかにもなプレゼントの箱だった。

「サプライズプレゼント~♪」

それにはやては嬉しそうな表情を浮かべた。

「ぁ……」

なのはは怯えていた。
なぜならばその視線の先には、やくざもびっくりな形相で睨んでいるヴィータの姿だった。

「なのはちゃんどうしたの?」
「あ、ううん何にも」
「ちょっとご挨拶を……ですよね?」

なのははから笑いしていた。

「はい」
「あ、みんな、コート預かるわ」
『は~い』

シャマルの言葉に全員返事をする。

「………………」
「えっと、あの……そんなに睨まないで」

さて、未だに睨まれ続けているなのはは、ヴィータにそうお願いする。

「睨んでねえです。こういう目つきなんです」
「こらヴィータ、嘘はアカン! 悪い子にはこうで」
「んぅー! んぅー!」

はやてがヴィータの鼻をつまむ。
それによって病室内の雰囲気は多少だが改善された。


★ ★ ★ ★ ★ ★


今、俺は八神家にいるのだが。

「………」
「………」

シャマルさん達がはやての所にお見舞いに行くと言うことで、俺とザフィーラの二人でお留守番をすることになったのだ。
お互いに何も会話がなく、ものすごく居心地が悪い。

「真人」
「は、はい!」

突然声をかけられたので、思わず声が裏返ってしまった。

「そう構えなくてもよい」
「あ、はい」

ザフィーラさんに突っ込まれてしまった。

「………お前は何のために戦う?」
「え?」

予想外の問いかけに、俺は一瞬固まった。

「お前たちの戦う理由が分からなくてな。執行人に理由を聞いたが、言いたくないとの一点張りだったのだ」
「当り前だ。なぜ僕が、答えなければいけないのだ?」
「あ、あはは……」

執行人の言葉に、俺はただ笑うしかなかった。
そういう意味では執行人らしいと言えば言えるが。

「俺の戦う理由………ですか」

俺はふと考えてみる。
俺が魔法の力を手に入れたのは、アクシデントに近かった。
簡単に言えば、生きるために力を手にしたようにも思える。
でも、それは違うような気がする。
それじゃ、俺の責務をこなすため?
それも違う。
全ては後付けの言い訳のような気がする。

「………無理に答えを出さなくてもよい。だが、いつかその答えがとても必要になる時が来ることは覚えておけ」

ザフィーラさんの言葉には、重みがあった。

「はい」

俺に出来たのは、ただそう答えるだけだった。

「それにしても、シャマル達と念話が通じない。様子を見てくる」
「あ、俺も!」

俺はザフィーラさんが立ち上がったのを見て立ち上がるが、それはザフィーラさんの右手に阻まれた。

「いや、真人は良い。俺が行く。しばらく待っていてくれ」

ザフィーラさんはそう言うとリビングを後にした。

(何だか、いやな予感がする)

俺はそんな予感を感じながら、ザフィーラさんが戻ってくるのを待つのであった。

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