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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第11話 明暗の理由

「いつつ……酷いじゃないか」
「うるさい。いきなり馬鹿げた事を言おうとする方が悪い」

学園を出て少ししたところで気を取り戻した佐久間が、歩きながら不満を漏らすが僕はそう言って退けた。
あんなこっぱずかしいセリフ、男の僕でさえ寒気がしたほどだ。
言われた本人はたまった者じゃないだろう。
現に澪は恥ずかしさのあまり固まっていたし。
そんな馬鹿げたやり取りをしながら、電車で二駅先で電車を降りてから数分。
今僕たちは、住宅街を歩いていた。

「この俺の最高の告白があれば俺は今頃……ぐへへ」

そう言いながら笑みを浮かべる佐久間だが、一体どんなことを想像しているのだろうか。
はっきり言って気持ち悪い。

「お、ここが俺の家だ」
「………ここか」

一気に正気に戻った佐久間が示した一軒家は、可もなく不可もなくといった感じのごく普通の家だった。

「ただいま」

そう言いながら玄関を開けて中に入る佐久間に、僕は玄関の少し手前で立ちどまっていた。

「ほら、入りなよ」
「ああ。お邪魔します」

佐久間に促らされ、僕は佐久間家へと足を踏み入れた。

「お帰りなさい、慶介……あら?」

奥の方から佐久間の母親なのか、温厚そうな女性が姿を現した。

「慶介のお友達?」
「あ、はい。高月浩介です」

尋ねられた僕は、出来る限り丁寧に名乗りを上げるとお辞儀をした。

「これはご丁寧に。慶介の母の吉江です」

女性……吉江さんは静かにお辞儀をし返した。

「それじゃ、俺の部屋に行くか」
「あ、ああ。お邪魔します」
「後で、飲み物を持って行きますね」

吉江さんのその言葉を背に受けながら、僕は佐久間の自室へと向かうのであった。










「ここがお前の部屋か?」
「そうだぜ。ちょっと散らかってるがな」

部屋に足を踏み入れた僕の言葉に、佐久間が答える。
6畳ほどの広さのある祖の部屋には勉強机と本棚、テーブルなどが置かれている。
それ以外に目立った装飾品はない。
机の上も漫画が数冊ほど混ざってはいるが、殆どが教科書類。
散らかっているとは言えない状況だった。

(何だろう)

そして、そんな部屋を見ている僕は、何となく違和感を覚え首をかしげる。
何かがおかしいような気がするのだ。

「さあ、教えてくれ!」

そんな僕の違和感は、佐久間の催促の言葉によって頭の片隅へと追いやられた。

「まずは何から行く?」
「数学!」

即答だった。
凄まじい決断力だ。

「それじゃ、要点と公式を交えて問題を解いていく。今日の目標はこの科目の勉強を終えること!」
「え゛!?」

僕の上げた目標に、佐久間がカエルを潰したような声を上げる。

「返事は?」

そんな彼に、僕はぎろりと睨みつけながら返事を促す。

「い、イエッサー!」

兵隊のような返事をする佐久間に、ため息を漏らしながら勉強を教えて行くのであった。










勉強を教え始めてから数時間が経過した。
佐久間は呑み込みが非常に早く、教えたことを次々に覚えて行く。

「それじゃ、この演習問題を解いてみて」
「ああ」

教科書に載っている問いを試しに解かしてみた。
問題は二次関数の展開だ。
おそらく関数の問題で一番躓くであろう箇所がここだろう。
それを解いている佐久間の姿を見ながら、僕はふと一人の人物の事を考えていた。

(唯、しっかりと試験勉強しているよな?)

赤点を取って、追試で合格点を取らないと部活禁止=部活廃止という壮絶な条件を与えられた唯だ。
彼女が試験勉強をするところが全く想像できない。
出来るとすれば……

『あはははー、うふふふー』

楽しげにベッドで寝転がりながら端から端まで転がっている唯。
そして、その手には漫画があり、お菓子を口にしてまた転がっている姿だった。

(ないよな。あって欲しくない)

そんな本人にはかなり失礼な妄想を頭の中から消し去る。
ちょうど5分ほどの時間が経った時、佐久間は演習問題を解き終え、僕はそれの答え合わせをした。

「正解だ」
「よっしゃー! これで試験範囲完全コンプリート」

結果を告げると、大きく伸びをしながら喜びをかみしめている佐久間の姿に僕は思わず苦笑してしまう。

「って、もうこんな時間か」

佐久間につられて壁に掛かっている時計に目をやると、時刻は9時を大幅に回っていた。

(みんなに連絡しておいてよかった)

ここに来る前の電車の中で、僕は携帯電話のメールでH&Pのメンバー全員に友人に勉強を教えるから帰るのが遅くなると連絡しておいた。
もし連絡していなかったら、今頃携帯の着信履歴はメンバーの名前で埋まっているだろう。
そして、会った瞬間にお小言の嵐だ。

(何だか背筋がぞくぞくしてきた)

「そうだ! どうせだし、夕飯を食べてかないか?」
「え? それはあんたの母親に申し訳ないよ」

さすがに夜遅くに二人分の夕食を作らせるのは、常識の面からばかられる。

「大丈夫大丈夫。作るのは俺だし」
「それはどういう意味?」

自室を後にしながら言う佐久間に、僕は後を追いながらさらに追及する。

「お袋、夜はパートでいないんだよ。だからいっつも夕飯は俺が作ってる」

確かに、佐久間家内に僕たちを除いて人の気配がない。

「という事は共働きか」

最近の家庭はどこも大変なんだなと思いながら、リビングに足を踏み入れた僕に佐久間はさらに衝撃的な事を告げた。

「いや、親父はいねえよ。俺が小学生のころに天国に旅だったから」
「……悪い」

辛いことを思い出させてしまった僕は、佐久間に謝った。

「気にすんなって。俺は別に気にしてねえし」

そう言いながら、包丁で野菜を切って行く佐久間の手つきはかなりのものだった。

「まあ、昔は大変だった。お袋は落ち込んでずっと暗いオーラを纏っているし。俺まで暗くなってたら、今頃真っ黒さ」
「まさか、何時ものあのバカげた言動は」
「本心が4割、演技が6割といった所だ」

佐久間の答えを聞いてようやく、頭の中に浮かんでいた疑問が解決した。
僕が感じた佐久間の自室への違和感の正体は、性格だった。
部屋というのは自ずと性格を表す。
無頓着な(もしくはだらしない)性格だと部屋は散らかっている。
勿論、一元にそうだとは言えないが、僕の抱いている”佐久間慶介としての姿”と、部屋が表現している”佐久間慶介”という人となりがまったく一致していなかった。

「まだ誰にも言ってねえんだぜ。これ」

自信満々に告げる佐久間に、僕は頭を抱えそうになった。

「………僕に言ってもよかったのか? もしかしたら誰かに話すかもしれないぞ?」
「お前はそう言う奴じゃねえだろ?」

佐久間のその一言は、僕の心を揺さぶった。
確かに、僕は人のそう言った部分を積極的に漏らすようなことはしない。
尤も、言うべき時やそれほど重要でない、どちらかと言えばくだらない秘密の場合はこの限りではないが。
だが佐久間は僕という人間を、断片的にではあるが理解している。
目の前の男の観察力に僕は舌を巻いた。

(本当に、こいつは)

そして僕は呆れていた。
自ら嫌われるような性格を演じなくても良い物を。
だが、それがどこかおかしくも思える。

「ほれ、出来たぞ。食べようぜ」
「ああ。いただきます」

テーブルの上に配膳された肉じゃが等の料理は非常においしそうにも見えた。
僕はその中で、肉じゃがに口を付ける。

「美味しい」
「だろ! いやー、食べてくれる奴がいるのは嬉しいもんだ、うん」

僕が口から漏らした感想に、佐久間は嬉しそうに頷いている。
その様子に子供かと思いながら、僕は佐久間が作った料理に舌鼓を打つのであった。










「悪いな、勉強を教えて貰ったり皿洗いまでさせちまって」
「いいって。こっちこそ夕飯までごちそうになったんだし。それ位しないと罰が当たる」

別れ際、玄関先まで見送りに出てきた佐久間の謝罪に、僕は手を振って返した。
皿洗いはさすがに僕がやった。
そうでないと、居心地が悪く感じるような気がしたからだ。

「じゃあな」
「ああ、また明日な。浩介」

僕は佐久間にそう告げて背を向け歩き出そうとするが、足を止めると佐久間に背を向けたまま声をかける。

「佐久間」
「何だ?」
「明日もビシバシと行くからな、覚悟しとけよ慶介・・

僕は、彼にそう告げた。
それは僕にとって彼を真の友人と認めた瞬間だった。

「おう! 望むところだ」

後ろから返ってくる慶介の威勢のいい言葉に、僕は苦笑を浮かべながら手を振ることで答えると、今度こそ歩き出すのであった。

(あと少しで、僕は佐久間慶介という人間を完全に誤った認識をする所だった)

僕もまだまだ未熟だと実感した。

(近いうちに父さんの方に電話でもかけてみるか)

慶介の話を聞いた僕は、無性に父さんの声が聞きたくなったのだ。
僕も十分にも子供だなと思いながら、自宅へと戻るのであった。











ちなみに余談だが。

「おせぇんだよ!!」
「ごめんなさい!!」

家に戻った瞬間、田中さんの罵声が浴びせられることになった。
その場星に、僕はその場で土下座をして謝った。
他にも罵声を浴びせなかったものの、完全に怒っているであろう中山さんや、満面の笑みを浮かべている荻原さんの姿があった。
荻原さんの笑顔はものすごく恐ろしささえ感じさせた。
ちなみに、みんながここまで怒っている理由としては、

「遅くなるとは知っていたが10時過ぎたぁ、度が過ぎるだろうが!!!」

とのことだった。 
この日、青筋を浮かべるみんなによって、ぶっ通しで数時間も練習をさせられる羽目になるのであった。
さらに後日の練習メニューがハードなものになると言われた僕は、崖から身を投げるぐらいの覚悟を決めることにした。
こうして、僕にとって地獄の日々が幕を開けるのであった。



ライブまであと9日。
追試まではあと7日。

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第10話 試験乱舞

あの見極めの試験から、毎晩ライブに向けての練習が始まった。
とは言っても、音の精度を高めるためのものだったけど。
スケジュールとしては、放課後に部活をやって自宅に戻り、6時ごろにメンバー全員がやってきて夕食をローテーションで作って行く。
それを食べてから3時間みっちりと練習。
その後メンバー全員は帰宅して、僕はお風呂に入り次の日の学校の準備をして寝る。
就寝時間は11時。
もう色々と無理をしている感がある。
学生の本分である勉強がおろそかになっているだけでも、かなり問題ありだ。
そんな日々が続くある日の朝のこと。

「おっす、浩介」
「どうしたんだ? やけにテンションが低いな」

いつもならこれからの季節にはやかましい暑苦しさで挨拶をしてくる佐久間が、まるでこの世の終わりといった様子で挨拶をしてきた。

「明日中間試験だろ? それが憂鬱で憂鬱で」
「そうか。試験か」

適当に相槌を打ちながら、授業の準備を始める僕だが佐久間の言葉に引っかかった。

「え、明日?」
「そう、明日」
「……………………………」

この時、僕はさぞかし間抜けな表情を浮かべていることだろう。

(い、一夜漬けだけど今夜は勉強をしよう!)

僕はそう心の中で決意した。










そして迎えた試験当日。
正直に言おう。
まったく勉強していない。
それも先日、勉強をしたいので練習は休みたいと伝えたところ。

『あぁん? 何を甘ったれてんだぁ? 練習が終わった後にすればいいだろうが!』

と一刀両断されたのだ。
言っていることはご尤もだったため、練習と相成ったのだが、いざ終わりお風呂に入って出ると時刻はすでに天辺を超えている状態。
さすがに寝ないと遅刻する時間帯だったため、結局無勉強で当日を迎えることとなったのだ。
その後、教室で試験範囲を見て死に物狂いで悪あがきをすることにして試験に挑んだ。










「答案を返却します」

試験から数日後、担任の先生の一言で答案が一斉に返却された。
僕にとってはまるで死刑台に行く囚人のような気分を味わうことになるわけだが。

「なぜ?」

答案の結果を見た僕は、思わずそう呟かずにはいられなかった。










放課後、いつものように音楽準備室を訪れた僕は、自分の席へと腰かける。

「やっとテストから解放された~!」
「高校に入ってから試験が一気に難しくなって大変だったわ」

両腕を伸ばしながら、試験が終わった解放感を感じる律に相槌を打つムギさん。

「ところで、あそこでこの世の終わりと言わんばかりの様子だけど、何があった?」
「あー、彼女はもっと大変そうな奴だよ」

さっきから気にしないようにしていたがこの世の終わりといった様子で呆然と立ちながら、時より気味の悪い笑い声を上げている唯の方を見ながら尋ねるとそんな答えが返ってきた。

「そんなにテストの結果が悪いのか?」
「フ、フ、フ。クラスでただ一人、追試だそうです」

そう言って掲げられたのは数学の答案だった。
点数は………本人の名誉のために伏せておこう。
とにかくひどい状態だった。

「だ、大丈夫よ。今回は勉強の仕方が悪かっただけじゃない?」
「そうだな。次は勉強の仕方を変えれば――」

ムギさんのフォローに乗るように僕がフォローをしていると

「勉強は全くしてなかったけど」
「励ましの言葉返せ!」

唯から衝撃の事実が告げられ、僕の心の声を律が代弁してくれた。
その後、唯の説明を簡単にまとめれば、勉強しようとしたがギターの練習ばかりしていたらしい。

「でもね、おかげでギターのコードを一杯弾けるようになったよ!」

偉いでしょ! と言わんばかりに胸を張って言う唯。

「自慢することじゃないだろ」
「その集中力を少しでも勉強に回せば」
「そう言うりっちゃんと浩君はどうだったのさ」

あ、こっちにまで飛び火。
まずは律が答案をお披露目する。
点数は中々の高得点だった。

「こんなのりっちゃんのキャラじゃないよ」

唯の言うことも尤もだった。

(絶対に裏があるな)

そして高らかに笑っている所に澪が一言。

「試験の前日に泣きついてきたのはどこの誰だっけ?」
「ば、ばらすなよ!」

やっぱり裏があった。
そんな律の肩に手を置き唯が一言。

「それでこそ、りっちゃんだよ」
「赤点取った奴に言われたくはない!」

ご尤もだ。
まるでドングリの背比べ状態だ。

「で、浩君は?」
「僕は試験があることを知らなくてまったく勉強していなかったんだけど……こんな感じに」
「げっ!?」
「全部90点台」

取り出した答案の点数を見た二人が声をあげる。
殆どの科目で90点台を取っていた。
最低点は90点だった。

「おそらく留学していた方のカリキュラムが進んでいたんだろうね。ここの範囲は向こうの方で習ったから」

まさに奇跡だった。
進んだ教育構成に救われる形になった。
しかもここの試験はイギリスよりも断然に簡単だったため、解けるレベルだった。
とは言え、無勉強という不安材料のため、希望的観測をしないでいたのだが。

「そ、それだったらこれも当然だな! うん」

律の顔が引きつっていた。
ちなみに佐久間もこれを見た際に

「べ、勉強しないで……これって」

と固まっていた。
そんな答案返却の一幕であった。










そして別の日。
今日のお菓子は羊羹であった。
和を連想させる逸品だ。

「あ、今日は羊羹」

と、いつもより遅れてやってくる唯は席に着くと羊羹を口にする。

「追試の人は合格点を取るまで部活動禁止だって」
「………………ッ!? ゲホッゲホ!」

驚きのあまりむせた僕は、お茶を一気に流し込んで何とか落ち着いた。

「だったらここにいるのもまずいんじゃないのか?」
「大丈夫だよ。ここにはお菓子を食べに来てるんだし」

僕の問いにそう答えながら羊羹を口にする唯。

「そうだな、それなら安心……なわけないだろ!!」

もう完全に部活としての形を見失いかけているけど、一応これも”部活動”だ。

「つまり、もし唯が追試で合格しなければ」
「私達は四人だけになって」
「廃部!?」

そして、僕たちは再び廃部の危機を迎えたのだ。

「大丈夫だよ。追試まで一週間もあるからここに毎日来れるよね」

その唯の発言に、僕たちは一斉にズッコケた。

「一週間”しか”ないんだよ!」
「ここには来ないで家に帰って勉強しろ」

律の言葉に続く様に、ため息交じりに僕は唯に言った。

「そうだよね。皆と部活を続けるために、私頑張る!」
「頼むぞ、本当に」

もう最近ため息しかついていないような気がする。
羊羹を食べ終えた唯は、そそくさと帰って行った。

「大丈夫かな、本当に」
「大丈夫だと、信じましょう」

僕のボヤキに、ムギさんがそう相槌を打つ。

「それにしても、どうしてこ、浩介は試験勉強をしなかったんだ?」

ようやくではあるが澪が名前を呼んでくれるようになった。

若干ドモリつつはあるが、あと少しすれば普通に呼べるようになるだろう。

「いや、用事が立て込んでいて出来なかった」

その用事がライブの練習だとは言えない。

「それであんな高得点って羨ましすぎる」
「まあ、ともかくこれで試験から解放――『助けてくれ!!!』ゴホッ!?」

解放したと、新たに注がれたお茶を飲んで一息つこうとした瞬間、部室のドアが乱暴に開け放たれた。
思わず急き込む僕をしり目に、開け放った人物は僕の肩を掴むと思いっきり揺さぶる。

「追試に受からないと放課後補習なんだ! 俺の素晴らしいアフタースクールプランが無くなるんだ! だから助けてくれ~!!!」
「だぁぁ! やかましいんだ、よ!!」
「がふぁぁ!?」

いい加減気持ち悪くなり始めたため、肩を掴む佐久間の腕を振り払い、思いっきり(割と全力でだが)股間を蹴りあげた。

「はぁ、はぁ。死ぬかと思った」
「うわぁ、大丈夫かな。あの人」

何とか落ち着きを取り戻す僕をしり目に、律たちは地面にうずくまっている佐久間の容態を気にしていた。

「あの、大丈夫です――」
「大丈夫です!」

ムギさんが声をかけた瞬間に立ち上がって答えた。
すごい回復力だな、本当に。

「で、こいつ誰?」
「僕のクラスメイトで、一応友人」
「初めまして。佐久間慶介です。よろしく」

僕の言葉に続く様に、佐久間は自己紹介をする。

「私は田井中律」
「わ、私は、秋山澪」
「琴吹紬です。よろしくお願いしますね、佐久間君」
「佐久間君! はぁぁ~」

君付けされただけで昇天したようだ。

「だ、大丈夫か? なんか行ってはいけない方向に行きかけてるが」
「大丈夫なんじゃない」

そんな佐久間の様子に若干引きながら小声で聞いてくる律にそう答えた。

「で、何点だったのさ」
「っと、そうだった。こんなんだけど」

そう言って取り出されたのは4科目の答案用紙。

「うわ、これは……」
「こりゃまた悲惨だな」

それを覗き込む律たちも顔をひきつらせていた。
点数は本人の名誉のために伏せるが、フォローの言葉が出ない。
一つ言えるのは、唯よりもひどい状態だ。

「たのむ! 全科目ノー勉で高得点をたたき出した浩介だからこそ頼めることなんだ! 俺に勉強を教えてくれ!!」
「…………」

佐久間の両手を合わせて必至に頼む姿に、僕は一つ息を吐き出す。

「オーケー。やってやろうじゃないか」
「助かる! それでこそ、わが友だ!」

喜ぶ佐久間に、僕は大丈夫なのかと不安になった。

「ところで秋山さん!」
「は、はい!?」

佐久間の勢いに、澪は後ずさる。
そして佐久間はこう告げた。

「俺とひと夏の甘い思い出を――げばぁ!?」
「やかましい」

ナンパをしようとした佐久間の脳天に全力で拳を振り下ろす。
いきなりそういう事を言える彼には尊敬の念さえ感じる。

(いきなりナンパまがいの事をしたら)

僕は澪の方へと視線を向ける

「――――」

案の定澪は固まっているし。
取りあえず、固まっている澪は律たちに任せて、気絶している佐久間を引きずりながら部室を後にするのであった。

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第9話 特訓!

それは6月に入り衣替えも済んだある日の放課後の事。
その日はムギさんは用事があるとのことで休むとのことだった。
よって僕たちは、唯にギターを教えることにした。

「ギターの弦って細くてかたいから、指を切っちゃいそうで怖いよね」
「そうだぜ。気を付けないと指がスパッと切れてちがどばーっと―――」

ギターの弦を適当に弾きながら呟く唯に、律が相槌を打っていると澪の悲鳴が響き渡った。

「い、痛い話はダメなんだ」

耳を押さえて蹲りながらそう答える澪。
彼女の苦手な物を知ってしまった。

「大丈夫だよ。指は切れてないから」

怯える澪に、唯は澪のそばまであっゆみよると自分の左手の指を澪に見えるように広げた。
それで大丈夫だと分かった澪は立ち上がると、誤魔化すように咳払いを一つする。

「まあ、練習しているうちに指先が固くなってくるから、切れることはないよ」

そう言って自分の手を唯に差し出す。

「お、本当だ。プニプ二~」

そう言いながら澪の手の指を揉む唯。
澪の顔が徐々に赤く染まって来ていた。

「もう、いいかな」
「何をやってんだ? お前達」

黙って見ていた僕は、そう尋ねずにはいられなかった。










気を取り直して、ギターの練習を始めることにした。
澪の差し出した教本を使い、ギターのコードを覚える事から始める。
教本を受け取った唯は適当に開かれたページを見て、固まる。

「まずは楽譜の読み方から教えてください」
「「そこから!?」」

思わずズッコケそうになるのを堪えた。
この日は、楽譜の読み方と簡単なコードの勉強で部活は終わった。
帰りは途中まで皆が同じ通路であることもあり、途中までは一緒に変えるのが当然となっていた。
学校を出て少し歩いた辺りにある信号機が分かれるポイントだ。

「それじゃあな」
「また明日」
「さようなら」

僕と唯は信号機を渡って帰路に就く。
その最中唯は、ずっと唸り続けていた。

「それじゃ、僕はここで」
「あれ? 浩君の家じゃないよね?」

食品が打ってあるスーパーの前で別れることにした僕に、唯が聞いてくる。

「当り前だ。夕食の買い物。そろそろ切れかけていたから」
「そうなんだ。ねえ浩君、どうすればコードを覚えられるかな?」

唯が頷いたのを確認して中に入ろうとした僕を止めるように唯が聞いてきた。

「コードを抑える指使いでもやっておけ」

簡単な事を聞いてきた唯に、至極尤もな答えをする。

「やってみる。じゃあね」
「ああ、またな」

色々と不安を覚えるが、取りあえず食材の買い足しの方を済ませるのであった。










「ふぅ、今日も夕食は美味しかったな」

今日は気合を入れていつもより豪勢な料理のラインラップだった。
皿洗いも終わり、今日の復習をするべく自室へと向かおうとした時だった。

「ん? こんな夜遅くに誰だろう」

突然鳴り響く来訪者を告げるチャイムに、僕は首をかしげると玄関の方に向かう。

(この気配って)

ドアの先の方の気配を感じ取った僕は、それに覚えがあったため、ドアを開けた。

「中山さんに荻原さんそれにみんなまで」
「やあ、突然悪いね」

気さくに言うその手には手土産かケーキ屋の箱があった。

「お邪魔いたします」
「邪魔するぜ」
「お邪魔します」

さらに続く様にして荻原さんに短めの金髪に眼元が鋭いために、威圧感を覚えさせる男性が田村たむら 竜輝りゅうきさんと、短く切りそろえられた黒髪に柔らかい目元という金髪の男性とは正反対の人物が太田おおた まもるさん。が後に続く。
取りあえず全員をリビングの方に通すことにした。

「それで、どうしたんですか? 皆さんお揃いで」
「要件は二つ。まずはライブの打ち合わせだ」

田村さんが本題を切り出すと、持っていた黒のカバンから一枚のチラシを取り出した。
そこには『DK復活記念ライブ』という名前がつづられていた。

「出来ればH&P復活ライブの方がいいと思うんですが」
「もう、これで確定したから修正は無理よ」

どうやらタイトルはこれで確定のようだ。

「えっと、日時は……って、あと三週間弱しかない!?」

もう驚きっぱなしだ。

「一応俺達の方で曲目は考えてあるが、こういう形で行く」

ライブの曲順が記された紙を中山さんから受け取ると、僕はそれに目を通していく。

1:Leave me alone
2:Devil Went Down to Georgia
3:only for you
4:Darling……Kiss immediate
5:Through The Fire And Flames

「最初は簡単な曲で、デビュー曲を織り交ぜつつ高難易度曲で締めくくる……さすがですね田村さん。曲の構成はこれでいいです」

特に問題はなかったため、僕は紙を中山さんに返す。
曲順などの構成を決めるのは、主に田村さんの役割だが今までで失敗したことはそれほどない。
音楽ゲームで使われた楽曲『Leave me alone』から始まって、カバー曲のみで構成されているラインラップではあるが、僕たちの歴史を思わせる物としては十分であった。

「でだ、ここからが本題」
「はい」

嫌な予感がした。
この間の荻原さんの言葉からして、出てくる言葉はもう限られていた。

「これからお前の腕を見極める」
「分かりました」

そう、これは田村さんの”試験”だ。
僕は素早く立ち上がると、テーブルや椅子を横にずらし、カーペットをめくって行く。
すると、隠し扉が床に現れる。

「本当にどういう構造をしてるんだい? ここは」
「あはは」

中山さんの呆れたような言葉に、僕は苦笑しつつも扉を開ける。
そこから先は石造りの急な階段が姿を現した。
そこを僕たちは下りて行く。
薄暗い階段を降りた先にあるスイッチを押すと明かりがついた。
そこは地下だった。
コンクリートに囲まれた何もないその部屋にはドラムやキーボード、アンプなどが置いてある。
そう、ここは僕たちH&Pのスタジオなのだ。
防音設備十分で、真夜中に大音量で演奏しても外には漏れないぐらいだ。
皆はそれぞれ自分の持っている楽器のスタンバイを始める。

「練習をかねて、全曲通していくので良い?」
「勿論だ」

どうせなら練習もしようと考えた僕に、田村さんはOKと返事をする。

「それじゃ、みんな。準備はいい?」
「ええ」
「当然だ」
「こちらも」

全員が演奏の準備を終えているため、大丈夫と返してくる。
後は荻原さんだけとなったのだが……

「ったりめーよ。どんな曲も完璧に引いてやるぜ! おらー!」

いつもの彼女からは想像もできない威勢のいい言葉に、僕は中山さんと顔を見合わせて苦笑する。
いつもは気弱な女性だが、ベースを手にした瞬間その性格が一変する。
それが今の通りであったりする。

「じゃ、行くか」

田村さんの言葉に、僕はギターを持つと深呼吸をする。
それで僕は気分を切り替えた。
今から僕はバンドH&PのDKなのだと、考える。
軽音部のみんなの事は頭の片隅へと追いやった。

「1,2,3,4」

田村さんのリズムコールが終わるのと同時に、太田さんのキーボードが産声を上げた。
続いて荻原さんのベースと田村さんのドラムが音に命を吹き込む。
次は中山さんの簡単なギター演奏で曲は始まる。
この曲は僕がボーカルを務め、田村さんがサブボーカルとなる。
時より弦を弾きながら歌を紡ぐ。
自分がいる場所は非常に不安定な場所。
いつ何がやってくるかもしれない危険地帯だ。
その緊迫感を兼ね揃えた曲がこの楽曲のイメージだ。
ついにサビだ。
僕は複数のコードを引きながら歌を紡ぐ。
紡ぎ切ったところで、間奏が入る。
ここからは僕のギターテクが問われる。
ベースの音とドラムの音を頼りに、音を奏でて行く。
そして間奏の終わりで音を伸ばし、ビブラートを効かせる。
最後のサビも先ほどと同じ要領でギターを弾いていき一気にフィニッシュへと向かう。
中山さんと合わせて弾き、同時にストロークをして曲は終わった。

「次だ! 1,2,3,4」

次は『Devil Went Down to Georgia』だ。
早めの田村さんのリズムコールが言い切るのと同時に、僕は弦を弾く。
そして始まる曲。
全体的にアップテンポなこの曲の難関はギターソロ。
4,5分速いテンポでギターを弾き続けたところで、やってくるこのソロが、最大の山場だ。
歌が途切れる箇所では難易度の高いギターのテクニックを求められる間奏もギタリスト殺しと言われる一因だ。
その箇所は、僕と中山さんの演奏バトルのような感じで交互に弾いていく。
そして、全ての音が消えた。
その間、僅か1秒。
それはソロ開始の合図。
最初はゆっくり目で簡単な音を。
だが、徐々に悪魔が牙をむく。
テンポは一気に早まり、音は小刻みになって行く。
複雑なコード変更をしながらも嵐を乗り切る。
ただ乗り切るのではない。
この嵐すらも自分だというのを表現しなければならない。
ソロも最終局面だ。
徐々に晴れて行く嵐の様子に希望を見出した僕は、総会であることを表現するべくピックを振り下ろすことでソロパートは終わった。
後は比較的簡単なパートの為、見事に演奏をし終えた。
その後も3,4曲目を演奏し終えいよいよ最終楽曲を迎えた。
曲名は『Through The Fire And Flames』
先ほど演奏した曲にはやや劣るものの、かなりの高難易度の曲だ。
約7分間、腕を休める場所がないのだ。
つまりはギターをずっとストロークし続けなければいけない。
それも小刻みだったり大振りだったりと、一定ではないのが難易度を上げる。
さらに難易度を釣り上げる要因としてあるのが、3秒ほどの空白の後に訪れる間奏だ。
先ほどのソロほどではないが、非常に小刻みなストロークに素早いコード変更を求められる。
それが2分間にも及ぶことが、最たる理由だ。
しかもここでも曲のテンポが一気に上がる。
だが、弾ければ得られる者は非常に大きい。
弾き切った瞬間に浴びせられる拍手は心地いいのだ。
しかも、この間奏では一つのストーリーも出来上がる。
ある人は『桃太郎』を、またある人は時代劇で悪者を退治していく人の戦う話など。
内容は様々だが、そう言うのを提供できるあたりが、僕自身がこの曲を好む理由の一つだ。
間奏を終え、やってくるのは小刻みなストローク。
だが、ここでも罠がある。
最後の最後で速弾きをしなければいけなくなるのだ。
その速弾きも終わり、曲はきれいにしまった。

「よし、完璧だ。この数年間腕は鈍っちゃいねえな」
「ありがとうございます」

曲がすべて終わり顔中に浮かべた汗をタオルで拭いながら感想を言う田村さんに、僕はお礼を言う。
やはり、褒められるのは嬉しい物だ。

「だが、もう少し練習をする必要がある。ということで、明日から毎晩練習をする」
「え゛?」

田村さんの宣言に、僕は顔をひきつらせているだろう。
一応、僕には学業という物があるので、それをやられると成績に影響が出る。

「まさか嫌だとは言わないよな? これはお前への罰だ。留学とかでいきなり外国に行きやがって。俺達がどれだけ驚いたか知ってんのか!」
「…………」

田村さんの罵声に、僕は何も言えなかった。
イギリスに行く際、その寸前までみんなには相談していなかったのだ。
それには色々と訳があったのだが、それは言い訳に過ぎない。
皆に迷惑をかけたのは紛れもない事実なのだから。

「勿論、夕食面に関しては俺達がサポートする」
「分かりました。みんなこんな僕だけど、これからもよろしくお願いします!!」

そう言って頭を下げると、皆は当然と返してくれた。
こうして、僕にとっての練習地獄は幕を開けるのであった。

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第8話 アルバイト

その週の休み、ついにバイトの日を迎えた。
徐々に日差しが強くなるこの頃、そろそろエアコンのフィルター掃除でもしようかと考えてはいたが、バイトがあるため断念。
しばらくは、”あれ”で乗り切るしかない。
尤もエアコンなどそんなに使ったことはないのではあるが。

「えっと、集合場所は……」

早めについていた方がいいだろうと、この間届いたバイト先からの教についての指示が記されている用紙を確認すると、僕は家を出るのであった。










「ごめんなさいね、本当は彼女たちと一緒にしてあげたかったんだけどね」
「いえ、お気になさらず」

集合場所に到着した僕に告げられたのは僕たちの内誰かが別の場所の担当になる必要があるとのことだった。
何でも、人数調整の為とのこと。
問題はそれが誰かだ。
律は、まじめにやるかが心配だ。
唯は、誰かがフォローしていないと危なっかしい。
ムギさんは……ポワポワしていてかなり無防備で危険だ。
澪に限っては極度の恥ずかしがり屋だ。
知らない人と組んでまともにできるわけがない。
一月経とうとしているにも拘らず、まだ僕と普通の会話が出来ないほどなのだから。
そう言った経緯で、僕が別区画の担当になると買って出たのだ。
唯たちにはメールにてその旨を知らせた。
別区画になってしまい、方角的は唯たちの区画から徒歩5~8分ほど離れた場所で調査をすることになった。
それはともかく、別区画用の待機場で僕はその区画の担当する人を待つことにした。

「あれ、高月さん?」
「ん?」

突然かけられた透き通った女性の声に、僕は思わず視線を声の方へと向けると、そこには銀色の長い髪に麦わら帽子をかぶり目元がくっきりとした女性が立っていた。

「荻原さん? どうしてあなたが」

彼女の名前は荻原おぎわら 涼子りょうこさん。
もう気付いている人もいるかもしれないがH&Pのバンドメンバーだ。
バンドの際の名前は”RK”となっている。
そんな彼女の服装は白色のスカートに白のカーディガンを羽織り、その下には青地のシャツという軽装姿だった。

「どうしてと言われても、交通調査のアルバイトを。高月さんも?」

荻原さんの問いかけに、僕は頷くことで答えた。

「それでは、よろしくお願いします」

雇い主である人の号令で、交通量調査のバイトは幕を開けるのであった。









「そうだったんですか、部活の仲間の人のために、バイトを」

交通量調査の傍ら、事の経緯を話し終えると、荻原さんは納得した様子で相槌を打った。

「まあ、そんなところです」

車が通るたびにカウンターを押していく。
非常に単純な作業だが、眠気と戦わなければいけないという難しさを兼ね揃える。

「荻原さんはどうして?」
「私は……生活費が」

言いずらそうな様子ではあったが、理由を言ってくれた。

「……すみません」
「ち、違うんです! 先月ちょっと楽器系でお金を使い過ぎてしまって」

慌てて否定してくれるが、それは嘘だということはすぐに分かった。
原因は僕だ。
三年間、英国留学の為にバンド活動を休止していたためだ。
ちなみに彼女はベースをやっている。
性格は非常に気弱で、そこが澪と似ている部分がある。
……尤も彼女にベースを持たすと、それはすべて崩壊するが。
どういう意味かはまた別の機会に話そう。

「あ、そうでした」

不意に何かを思い出したのか、荻原さんが口を開いた。

「田村さんがとても怒っていらして『今度腕が落ちてないかを確かめる』とおっしゃっていました」
「うげぇ」

荻原さんの口から出た田村さんとは、ドラムを担当する男の人だ。
面倒見が良くて社交的ないい人なのだが、口が悪く怒ると非常に怖い。
僕が留学するので、バンド活動を休止したいと言った際に猛反対をしたのも彼だった。
バンドをしている際の名前は”YJ”であったりする。
とにかく、ギターの練習をするようにしようと心に決めた瞬間だった。
この交通量調査は二時間での交代制だ。
上手くすれば五人全員の休憩時間が重なることがある。
それが今出会ったりする。
ムギさんが拡げたレジャーシートの上でムギさんが持ってきたお菓子を口にする。
毎日たくさんお菓子を持ってきているが、大丈夫なのかという唯の問いかけに、ムギさんは『毎日あまるほど貰っているから』と答えた。
本当に調べてみようかと思った瞬間でもあった。
そして澪と律はシートの上で横になって空を見ていたが、しきりに親指が動いていた。
……まるで、カウンターを押すかのように。

(職業病か?)

そんな事を思ってしまう。
ありえないとは思うが、彼女たちであれば十分にあり得る話だというのを、僕はここ一月で学んでいる。
その後、再び調査に戻り、一日目は無事に終了となった。

「じゃあ、私は電車で帰るから」
「私と澪はバス。唯と浩介はある家帰るんだっけ?」

僕と唯は途中までの道が同じなので、途中まで一緒に帰ることになる。

「明日も――「お菓子よろしく」――……頑張りましょう、って言おうとしたんだけど」

ムギさんの言葉を遮って元気よく片手をあげて言う唯に、ムギさんはどういう表情をすればいいのかが困ったような表情を浮かべる。
どんだけ食い意地が張ってるんだ?

「こらこらこら」

後ろから唯の首に腕を回して嗜めるが、それと連動して親指が動く。

「やっぱり職業病だ」

それを見ていた澪がポツリとつぶやく。

「じゃあねー」

手を振ってバス停から離れて行く唯に律たちはそれぞれ返事を返すと、明日の事について話し合う。
とは言っても集合場所等の事ではあるのだが。

「皆―!」
「ん?」

そんな時、唯の呼ぶ声が聞こえてきた。

「本当にありがとね! 私、ギター買ったら、毎日練習するね!」

そう言って笑う彼女の表情に、僕たちもつられて笑った。

(………よし)

そして、僕はある決心をした。










自宅に戻らずに向かったのは、商店街にある楽器店『10CIA』だ。
その際に、人通りの少ない路地裏で、僕は羽織っていたジャケットを脱ぐと、鞄に入っていた黒いジャケットに黒のサングラスを取り出す。
そしてジャケットを羽織り、サングラスを掛ければ僕は”高月浩介”ではなくなる。
今僕は、H&Pメインボーカル&ギタリストのDKとなった。
そして、楽器店のギターが展示されている場所に向かう。

「ディ、DKさん! ようこそ当店へ!」

僕が入ってきて少し経てば、楽器店の人が出迎えてくれた。

「DKさん、今回はどのようなご用件で! ギターの弦でしたら、良い物をご用意しておりますよ!」
「いや、そういうのじゃない」

僕は矢継ぎ早に言ってくる店員の言葉を遮ると、ギターベースの一点を示す。

「あのギター、『GibsonのLes Paul Standard』を頂きたい」
「あちらですか? ありがとうございます」
「それで、少々無理なお願いをしてもいいか?」
「勿論ですとも! 喜んでお引き受けします」

そんな店員の答えを聞いた僕は心の中でほくそ笑む。

「実は私の友人の友人が軽音部に入部してギターを始めることになったんだ」
「はあ」

僕が語り始めると、店員は何を言いたいのかが分からないといった表情を浮かべる

「だが、ギターを買うような資金は到底持ち合わせていない。そこでだ、あのギターの頭金を私の方で支払うからあのギターをリザーブしてもらいたい」
「分かりました。それでは購入手続きに入りますので、こちらへ」

ようやく何をしたいのかが理解できた店員は、僕を会計の方へと案内する。
そしておもむろに一枚の用紙を取り出すと、それに色々と明記していく。

「DKさん、頭金はおいくらで?」
「20万円だが、問題はないか?」

僕の問いに、店員は”勿論です”と応え、ペンを走らせていく。

「それでしたら、こちらの方にその人物のお名前をご記入してください」

僕は店員からペンを受け取ると、用紙の指定された場所に”平沢 唯”と記入した。
そして、20万円を店員に支払う。

「こちらのお控えと残金5万円、身分証明証をお持ちになってご来店されますよう、お伝えください」

僕は控えを受け取ると、内容を確認していく。
その控えは『予約表』と書かれていた。

「それで、差支えなければこちらの方にサインをいただけないでしょうか?」

そう言って差し出されたのは色紙だった。

「私ので迷惑でなければ喜んで」

ペンを受け取ると、DKのサインと楽器店名を書いていく。

「ありがとうございます! こちらは大切に飾らせていただきます!」
「「「ありがとうございました!!」」」

いつの間にか増えた店員に見送られる形で、僕は楽器店を後にした。
これで、唯は5万円でギターを買うことが出来る。
彼女の気持ちと、努力の度合いから見て、第一段階は合格だと思った為の行動だ。
偽善のような気もするが、それでも自分は間違ってないと自信を持つ。
まだ、これを渡さなければ意味をなさないのだから。
もう少しだけ見極めよう。
依怙贔屓だと言われない、もっと強い明確な理由が出来るまでは。










翌日も、交通量調査のバイトだ。
荻原さんとペアになり、バイトをこなしていく。
途中、楽器関係の話に花が咲きいて、カウントを忘れかけたこともあったが、二日間の交通量調査のバイトを終えることができた。
そして給料をもらい、それを先日別れたバス停で唯に手渡す。
日給八千円なので、一万六千円。
それに×5で八万円。
前借したお小遣いと合わせてもまだ遠く及ばない。

「やっぱりこれはいいよ。バイト代は、みんな自分のために使って」

律たちがまたバイトでも探そうかと話している中、唯は突然そう言いながら僕たちに給料の入った封筒を手渡していく。

「私、自分で買えるギターを買うよ。一日も早くみんなと一緒に演奏したいもん。また、楽器屋さんに付き合ってもらっても良い?」

その唯の問いかけに、僕たちは一斉に頷いて答えた。

(大金を前にしてもああ言えるという事は、これはかなりの人材だ)

普通であれば欲望に負けて受け取ってしまうだろう。
だが、それを彼女はしなかった。
それこそ僕の求めていた強く明確な理由になった。
音楽は、確かに技術も必要だが重要なのは”自”だ。
これにはいくつもの答えがある。
だが、僕は自が良ければ良い演奏が出来る。
逆に自が悪ければ奏でる音も悪くなる。
この論理は最後には、故に僕はいい演奏は出来ないというオチがつくのだが、それはどうでもいいだろう。
この時僕は、彼女に予約票を渡そうと決めるのであった。
唯と一緒に帰路についた僕ではあったのだが……

(な、何をやってるんだ? あいつ)

歩道を所狭しと飛び回る唯の姿に、僕は思わず唖然と見ていた。
完全に恥ずかしい人になりかけている。

(まさか、ギターを弾いているとかじゃないよな?)

本当に大丈夫なのかという不安が駆け巡った瞬間だった。










そんなこんなで、週が明けた月曜日の放課後。
僕達は再び楽器店『10CIA』を訪れていた。
ギターブースに訪れた僕たちだが、やはり唯はGibsonのレスポールの前で立ちどまっていた。

「よっぽど欲しいんだな」

その様子を見ていた澪が呟くと律がバイトをしようと再び告げた。

「あら? このギター予約されてますね」
「なに!?」

ギターの所に掛かれた表示に気付いたムギさんが言うと、律たちは慌ててギターの前に移動する。

「本当だ」
「ギターって予約できるもんなのか?」

それぞれが声を上げる中、唯は悲しげな表情を浮かべる。

「唯、ほれ」
「え? なにこれ」

僕はカバンから取り出した折りたたまれた予約票の控えを唯に手渡した。
それを受け取る唯は何だろうと首を傾げながら、紙を開いた。

「予約票?」
「こ、浩介。まさかこれを予約したのって」

後ろから覗き込む澪が口にした紙の名前に、律が問いただしてくる。

「いや、僕の知り合いにプロのミュージシャンがいてそいつにちょっと頼んだだけ。というよりそんな大金があったら、僕はギターを買い替えてるよ」
「た、確かに」
「一体アンタはどういう交友関係をがあるんだ?」

律が呆れた様子でツッコんでくるが、それを軽くいなす。

「既に頭金として二十万は払ってあるから、その紙と生徒手帳があれば五万円で買えるはずだよ」
「ありがとう! 浩君」
「はは。知り合いにお礼を言っていたと伝えておこう」

その張本人が僕だなんて、言えない。

「お金は絶対に返すね」
「いや良いと思うよ。料金はその人の将来に投資するって言ってたし」
「何てお願いしたんだ?」
「えっと……『才能あるギタリストにギターを買うお金がないから何とかして』と」

お願いした言葉を聞かれるとは思ってもいなかった僕は、今適当に思いついた言葉を口にする。

「それ、絶対に嘘だろ」
「はいはい。どうでもいいから行って来い」
「うん!」

律のツッコミに、これ以上話が続くとぼろが出そうだったため、唯に買うように急かした。
こうして、唯のギター選びは無事に幕を閉じたのであった。










その翌日、ギターを持ってきた唯によるお披露目会が行われていた。
弾けるか否かはともかくとして、持つだけでかなり様になっている。

「何か弾いてみて!」

そうリクエストをした律に応えるべく、唯はたどたどしくではあるが弦を弾いた。
そして流れるのは間の抜けた音だった。
タイトルはチャルメラ?
唯曰く、ギターがピカピカしているから触るのが怖かったのだとか。

「鏡の前でポーズを取ったり、添い寝をしたり写真を撮ったりはしたんだけど」
「弾けよ」

思わず突っ込んでしまった。
だが、ギターの扱い方ではない。
ちなみにレスポールは非常に耐久力が弱い。
落としただけで割れることがあるため、注意が必要だ。
その点に関しては、添い寝をしても異常がないのは奇跡にも近かった。

「そういや、ギターのフィルムも剥してないもんな」

確かに剥されていない。
そこで何を思ったのか、律が剥してしまった。

「唯ちゃん、お菓子お菓子」

必死に謝る律に、呆然と固まっている唯にムギさんがお菓子の乗っているお皿を差し出す。

(そんなので機嫌が治るわけ)

ないと思いながら唯の方を見ると

(治ってるし!?)

おいしそうにお菓子を食べる唯の姿があった。

「そうだよね、ギターは弾くものだもんね。ただ大事にしているだけじゃかわいそうだもんね」

そう言って律の手を唯が取ると、律の表情が晴れた。
まあ、言っているのは当然のことなんだけど
それで気を良くしたりつの頭を、澪が軽く小突いた。

「ライブみたいな音を出すにはどうすればいいのかな?」
「アンプにつないだら出るよ」

唯の疑問に答えるべく、ギターにリードを差し込むともう片方の端子をアンプに差し込む。
そしてボリュームつまみを上げると機械特有のノイズが走る。

「よし!」

律が唯に合図を出すと、唯はピックを一気に振り下ろした。
奏でるのはただの開放弦音。
それでも、甘く太い音が準備室を包み込む。

「かっこいい!」
「やっとスタートだな」
「私達の軽音部」

その音に酔いしれる唯を見ながら、澪と律が感慨深げにつぶやく。
ここまでがかなり長く感じた。

「夢は武道館ライブ!!」
「「「えぇー!?」」」

片手を上げながらでかい夢を宣言する律に、僕たちは一斉に驚きの混じる声を上げる。

「卒業までに!」

さらにハードルを上げた。
夢や目標はデカければでかい方がいい。
小さい目標ではすぐに行き詰る。
とは言え、大きすぎるのも考え物だ。
そして、再び唯は間の抜けた音を奏でる。

「ごめん、まだこれしか弾けない」

肩を落とす律たちに、唯は申し訳なさそうに謝る

「アンプで音を鳴らすのはもう少ししてからね」

そう言いながら唯はアンプの元に歩み寄ると、つながっているリード線に手を掛けた。

「馬鹿、やめろ!」
「ふぇ?」

僕の忠告は遅かった。
プラグを抜いてしまったアンプから、劈くような爆音が響き渡った。
その音の衝撃に思わず僕は仰け反ってしまう。

「アンプのボリュームを下げる前にコードを抜くとそうなっちゃうんだよ」
「早く言って」

武道館ライフまで道のりはまだかなり長いなと思わせるのには十分であった。

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第7話 楽器選び

その週の休み、集合場所に指定された場所に向かうと、すでに律たちが待っていた。

「後は唯だけか」
「みたい」

それからしばらく待つと、僕が来たのと同じ方向から唯が姿を現した。

「おーい唯、こっちこっち」

律が手を振って唯に場所を知らせると、唯も手を振り返しながら横断歩道を渡るが、渡っている人の方にぶつかったり犬をかわいがったりと、中々たどり着けない。

(あと数mなのに、なぜ?)

世の中には理解できないことが多々あるのだと、僕は改めて知ることになった。
結局、唯はお小遣いを前借してもらう形で五万円を調達したようだ。

「これからは計画的に使わないと………」

使おうと息込んだ唯はふらふらと洋服のお店の方へと、引き寄せられるように歩いていく。

「いけないんだけど、今なら買える」
「こらこら!」

律の制止を振り切ってお店の中に入って行った唯を追うべく、僕たちもお店の中に入るのだが。
洋服を一緒になって選んだり、置物などを見たり、食料品売り場で試食などに講じたり、ゲームセンターで遊んだり等々寄り道をし続けた。
そして、レストランに入ることになった。
唯たち四人の後ろのテーブルに僕は案内された。
僕は注文したチーズケーキを時間をかけて平らげた。

「あー、楽しかった」
「へへー、買っちった」

後ろから聞こえる満足げな声。

(まさかとは思うが、何をしに集まったのかを忘れてはいないよな?)

何となく不安に思えてきた。

「次はどこに……あれ、何か忘れてない?」
「楽器だ!」

本当に忘れてたよ。
そんな大きな寄り道をして、僕たちはようやく楽器店へと向かう。
楽器店の名前は『10CIA』だ。

(なるほど、ここか)

その楽器店は、バンド用に使っているGibson ES-339はこのお店で購入したのだ。
この楽器店での密かなセールスアピールに”あのDKの持つギターを購入した楽器店”があるくらいだ。
まあ、表だって書かれたりはしてないけど。
そしてギターなどが置かれているベースにたどり着くと、唯はギターを見て行く。

「唯、決まった?」
「うーん。何か選ぶ基準とかあるのかな?」

唯の疑問に澪が解説をするが、唯はそれを聞かずにギターの方を見ている。

「あ、このギター可愛い」

(Gibsonのレスポールか)

唯が興味を示したのは、僕が愛用するギターのメーカGibsonの物だ。

「そのギターは、かなりの重量があるけど大丈夫なのか?」

このレスポールは音が伸びやすく、多少のごまかしが効く初心者向けの楽器ではあるのだが、重量が約4,5キロするため彼女には少々厳しい楽器だ。

「それに、そのギター25万もするぞ」

レスポールは値が張るものが多い。
ビンテージものになれば百を超える物だってある。

「うーん。さすがにこれには手が出ないや」

律が付け加えるように言うと困った表情を浮かべる。

「このギターが欲しいの?」

ムギさんの問いかけに、唯は深く頷いた。
その後、律が他のギターを見るように促すが、唯は動くことはなかった。
ギターを買う上で重要なのは、ネックや音の響きなども当然だが、一番必要なのはフィーリング。
これだ! と直感的に思うギターに出会った時こそ、その人に最適なギターの一つでもあるのだ。
その後澪と律が楽器を購入する際の話をしてくれたが、正直律の値切り話にはここの店員の人に同情してしまった。

「よし! みんなでバイトしよ! 唯の楽器を買うために!」
「え? そ、そんな悪いよ」

律の言葉に最初は遠慮していた唯だが、”部活の一環”という律の言葉に圧され、ムギさんが賛成する形でアルバイトは決定したのであった。










「バイトぉ!?」
「ああ」

週が明け、休日に何をしていたかを聞いてきた佐久間に楽器選びの話をすると、驚いた反応が返ってきた。

「部活をするにはバイトもするのかぁ。大変なんだな、軽音部は」
「まあな」

楽器という高価な物を買う以上、資金面で問題はついて回る。
僕が出せばいいじゃないかとも思うかもしれないが、それでは意味がない。
重要なのは買うために努力をすることなのだから。
そうすれば、ギターを手に入れた喜びもさらに増す。

「やっぱりバイトってファミレスとかか?」
「知らない」

どのようなバイトをするかを決めていないため、そう答えるしかない。

「もしファミレスだったら、俺大量に注文するぜ!」
「………お前が来たら億単位で請求を出すことにしよう」
「ひど!?」

絶対に周りの迷惑になりそうだったため、牽制をかけておくことにした。
ちなみに、僕の場合は本気だ。










「アルバイトと言ってもどういうのをするんだ」

バイトをすると決まれば問題はどのような内容かだ。
放課後を利用して探すがなかなか見つからない。

「ティッシュを配るのは?」

律が提案した内容は僕はおおむね賛成だったが、約一名無理そうなのがいる。
現に今、想像したのか拒否反応を起こしているし。
渡そうとしているが全員素通りするため、あたふたとしている光景が浮かんできた。

「ファーストフードとかどうですか?」

ムギさんの提案に、再び拒絶反応を起こす澪。
僕も、いやだったりする。
長い時間敬語を使い続けなければいけないのは、微妙に苦痛だ。
しかもマナーの悪い客に対して何も言えないかと言えばそれは否だ。
確実に一悶着起こす。

「ダメ……かも」
「あ、そっか。澪にはハードルが高いかもね」

澪の頭の中では何が再生されているのだろうか、この間と同じように頭から何かが噴出して脱力した。

「ごめんね、澪ちゃん! 無理しなくていいから」

唯も慌てて澪に告げた。
それをしり目に、僕はバイトの求人広告に目を通す。

「わ、私、何でもやるよ!」

よさそうなものを見つけた僕の耳に、澪の声が聞こえてくる。
彼女にとっては一大決心なのだろう。

「あ、だったら」
「な、なに!?」

僕が声を上げると、澪が過剰な反応を示す。
というより声が裏返ってるぞ。

「こういうのはどうだ」
「何々……交通量調査?」

僕がみんなに見えるように内容の書かれた本を置くと、全員がそれを覗き込む。

「道を歩く人や車をカウントする仕事だ。これならば、極度の恥ずかしがり屋にでも出来ると思うが?」

僕の説明に唯が”野鳥の会だね!”と意味が分からないことを口にする。

「そうだな、これなら澪にもできるっしょ!」
「本当ですね」

話し合いの末、僕たちのアルバイトは”交通量調査”に決定するのであった。
ちなみに、この時澪がほっと胸をなでおろしていたのは余談だ。





『へぇ、バイトね~』

夜、中山さんから調子はどうだという内容の電話で、事の経緯を話すと意外だと言わんばかりの返事が返ってきた。

『懐かしいね~、私達もかなり昔に楽器を買うための資金源を確保するべく、よくバイトをしたな』
「そうなんですか?」

僕の記憶にないため、おそらくは僕がバンドに入る前の話だろう。
その為、僕はさらに話を掘り下げることにした。

『ああ。半年かけてバイトをして、ようやく目当てのギターを手に入れた時は、嬉しくてうれしくて仕方がなかったな』
「分かります。自分もほしいギターを手に入れて喜んでいましたから」

中野さんの嬉しい気持ちに、僕は共感を感じた。
最初にギターを手に入れた時、僕は肌身離さずにギターを持ち続けていた。
音色もそうだが、形のどこかに僕を引き込むものを持っていたのだろう。
それが何なのかは自分にもわからないが。

『それじゃ、そっちの方でサポートとかはするのかい?』
「ええ。でも様子を見てから決めることにします」

中山さんの問いかけに、僕はそう答えるにとどめた。
サポートとは”資金援助”の事だ。
するつもりではあるが、現在は様子を見ている状態だ。
少なくとも、努力せずにギターを手に入れるよ言うなことはあまりよろしくない。
なのでタイミングを見なければいけないのだ。
本当に難しいことをすると我ながら思う。

『まあ、頑張りなさいな』
「ありがとうございます」

その後、世間話を少しして、電話は切られた。
次の日の学校の授業の準備を終えた僕は、きっと今週はあっという間に終わるだろうなと思いながら、眠りにつくことにした。

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