健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第9話 新たな魔法少女現る

正宗と吉宗を取りに言った俺は、引き返して急いでまどかと別れた場所へと向かった。

「えっと、こっちか!!」

地面を見ると水がこぼれた跡があった。
俺はそれを頼りに走って行く。





「ここか」

やがてたどり着いたのは、人気のない工業地区だった。

「水跡がここで途切れてるから、ここで間違いないだろうけど、これじゃ」

その中の一つの工場に水跡が続いていたが、そこはシャッターが閉じられていて、入れる状態ではない。

(とにかく、入れそうな場所を探そう!)

俺はそう思い、工場の周りを走った。

(あ、あそこの窓から入れるかも!)

俺はそう思い、窓のそばまで駆け寄る。

ガチャン!

「へ?」

突然窓ガラスの割れる音がしたかと思うと、何かが降ってきた。

バシャン!

「っ~~~~~~~!!!!!!」

降ってきた液体をかぶった瞬間、体中がとてつもない痛みに襲われた。

「おりゃアアア!!!!」

ガシャン!!!

「きゃぁ!」

俺は怒りにまかせて窓をけり破って中に入った。

「誰だッ!!人に向かってバケツを放り込んだ馬鹿は!!!」
「わ、渉君!!」

中にいたやつらにいきり立てる俺に、背後からまどかの声がした。

「遅れてすまない。大丈夫だったか?」
「あ、う、うん」

なぜか申し訳なさそうな表情をしているまどか。
そんな時、何かが落ちる音がした。

「うわ!?」

振り返ると、そこには大人の人達がいたが、目が尋常ではない。
俺はとてつもない恐怖感に苛まれた。
まどかは窓を開けようとしているが、開ける方向を間違えているために開かず、少しずつ奥へと追い詰められていった。
すると、運のいいことに背後にドアがあった。

「まどか!そのドアを開けろ!」
「う、うんッ!!」

俺は前から押し寄せてくる人たちを抑えながら、まどかに指示を出すとドアが開いたので、俺は抑えていた人たちを押しのけてドアを通った。
そしてドアを閉めようとすると、大人たちの手がこっちに入ろうとドアを開けようとするので、俺とまどかで何とかドアを閉めて鍵をかけることに成功した。

「ふぅ……」

俺は何とか一息ついた。
そこは金網に囲まれていて、外に出られる場所はない。

「……ど、どうしようっ……どうしようっ」

その時だった。

「まどか、結界が!!」

背筋に寒気が走った瞬間、変なものがこの部屋に広がって行った。

「炎天の輝きよ。全てを守りし、盾となれ!」

俺はとっさの判断で正宗と吉宗を地面に突き刺して結界を形成した。

「や、やだっ……こんな……」

だが、俺達は魔女の結界内に取り込まれた。





そこは不思議な空間だった。
周りに走るのはメリーゴーランドの馬か?
今は何とか結界で大丈夫だがこのままではいつ殺されるかも時間の問題だ。

「い、嫌……」

まどかの呟きに、横を見ると何かを見ておびえているまどかの姿があった。
そして俺もつられてその方向を見ると、そこには白い人形のようなものが持っているテレビに映し出された巴さんの姿があった。

(まさか……)

嫌な予感がした。

「まどか!気をしっかり持て!!」
「………」

まどかは何も答えない。

(クソッ!結界が)

俺は分かっていた。
結界が少しずつ弱り始めているのを。
このまま結界が破れれば、俺達に待っているのは”死”だ。

(結界の補強をしないと)

俺はそう思い精神を集中する。
しかし……
上空から降りてきたテレビのようなものから出てきた人形たちが、結界に攻撃を仕掛けてきた。

「っくぅ!?」

もろい状態の結界が今にも破られそうになる。

ピキッピキ!!

ひびの入る音がやけにくっきりと聞こえた。

(ここまでか)

俺はそう思い、死を覚悟した時だった。

ガシュン!ガシュン!!パキン!!

突然の青い閃光により人形とテレビが破壊された。
そのおかげで、結界の状態が回復した。

「……さやかちゃん!?」

その閃光を放った人物は、白地のマントに身を包み、青髪が特徴の少女だった。
青い閃光を放った少女の姿を見た時、まどかがそう口にした。
俺にも目の前にいる少女がさやかに見えた。
一瞬さやかと思われる少女はこちらを見ると、白い人形を次々に斬り伏せていく。

「これでとどめだぁ!!」

そして本体なのか、テレビに向けて手にした剣を突き刺す。
それによって目の前の景色が揺れ、元の場所に戻った。





「いやーゴメンゴメン。危機一髪ってとこだったね」

さやかの第一声はそれだった。

「さやかちゃん……その格好」
「ん?あー、んーまあ何、心境の変化って言うのかな?」

まどかの心配そうな声色にさやかは笑いながら答えていた。

「ん?あ、大丈夫だって!初めてにしちゃあ、上手くやったでしょ?私」
「でも……」

その時、靴音が響いた。

「!?」

その音を出したのは、暁美さんだった。

「貴女は……」

その眼にあるのは、さやかに対する怒りにも見えた。

「ふん、遅かったじゃない。転校生」

そして暁美さんはそのまま姿を消した。

「さやか、ありがとう。助かった」
「な、何よ……照れるじゃない」

さやかにしては珍しく顔を赤くしていた。

「って、どうしたの?!体中びしょ濡れじゃん」
「あ~!?そうだった!!窓からポリバケツを投げて変な液体をかけた馬鹿がいるんだ!!」

俺はさやかの言葉で思い出した。

「あ、あの渉君」
「ん?どうしたまどか。まさか投げたやつを知ってんのか?」
「ごめんね。投げたの、私なの……」

俺はまどかの言葉に息をするのも忘れた。

「ま~ど~か~?」
「ヒィ!?」

俺が呻るように名前を呼ぶと、怯えた様子でさやかの背中に隠れた。

「まあ、いいや。遅れた僕も悪かったんだし」
「にしても、よく無事だったよね」
「あ、私も気になってたんだ。渉君、さっきのあれ何?」

まどかの言うあれは、俺が展開した結界だ。

「あれは結界」
「へぇ……って!結界!?」
「渉君、魔法が使えたの?!」

俺の答えにまどかが聞いてくる。

「まさか。俺が使ったのは気法だよ」
「気法?」

まどか達が首を傾げる。
まあ、当然だが。

「合気道のようなものだよ。気の力で色々なことが出来る奴」
「なるほど~」
「さっきは本当にビビったぞ。あれは外部からのマイナスエネルギーには強いけど、内部からのマイナスエネルギーにはとても弱いから。まどかは絶望してマイナスエネルギーを放っているから強度がどんどん弱くなるし」

俺のボヤキに二人は笑うだけだった。





3人称Side

「あむ」

とある鉄塔に腰かける少女の姿があった。
その手に持っているクレープを食べながら。

「まさか君が来るとはね」
「マミの奴がくたばったって聞いたからさぁ、…わざわざ出向いてやったっていうのに。何なのよっ!?ちょっと話が違うんじゃない?」

赤髪の少女の言葉に、キュウベぇは顔色を変えずに答える。

「悪いけど、この土地にはもう新しい魔法少女がいるんだ。ついさっき契約したばかりだけどね」
「何ソレ?超ムカつく」

赤髪の少女は不快感をあらわにする。

「でもさあ、こんな絶好の縄張り、みすみすルーキーのヒヨッ子にくれてやるってのも癪だよねぇ」
「どうするつもりだい? 杏子」
「決まってんじゃん」

杏子と呼ばれた少女はキュウベぇの問いかけに答える。

「要するに、ぶっ潰しちゃえばいいんでしょう?……その子」

それは、新たなる波乱を告げる物でもあった。

Side out

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第8話 風穴

翌日、俺達はいつものように通学路を歩いていた。

「でもってー、ユウカったらさー、それだけ言ってもまだ気付かないのよ。『え、何?また私変な事言ったー?』とか半べそになっちゃってー。こっちはもう笑い堪えるのに必死でさー!」
【さやかちゃん、昨日のこと……】
【ゴメン、今はやめよう。また後で】

まどかのテレパシーにさやかはそう返すと仁美の横を歩く。
たった一つ変わったのは、巴さんがいない事だろう。





昼休み、俺とまどかは屋上のベンチに腰かけていた。

「………」
「………」

二人は無言だった。

「ん?」
「何か……違う国に来ちゃったみたいだね。学校も仁美ちゃんも、昨日までと全然変わってないはずなのに。何だかまるで、知らない人たちの中にいるみたい」

まどかがぽつぽつと話し始めた。

「知らないんだよ、誰も」
「え?」

するとさやかが突然そんな事を言い始めた。
「魔女の事、マミさんの事、あたし達は知ってて、他のみんなは何も知らない。それってもう、違う世界で違うものを見て暮らしているようなもんじゃない」
「さやかちゃん……?」
「とっくの昔に変わっちゃってたんだ。もっと早くに気付くべきだったんだよ、私達」
「……う、うん……」

さやかの言葉にまどかは頷いた。

「まどかはさ、今でもまだ魔法少女になりたいって思ってる?」

さやかの問いかけに、まどかは地面を見るだけだったが、それには強い拒否を示していた。

「……そうだよね。うん、仕方ないよ」
「ずるいってわかってるのに……今さら虫が良すぎだよね。でも……無理……私、あんな死に方…今思い出しただけで息が出来なくなっちゃうの。怖いよ……嫌だよぅ」

まどかは涙を流しながら呟いた。
俺は無言でまどかの頭に手を置いた。

「マミさん、本当に優しい人だったんだ。戦う為にどういう覚悟がいるのか、私達に思い知らせる為に……あの人は……ねえキュウべえ?この町、どうなっちゃうのかな?マミさんの代わりに、これから誰がみんなを魔女から守ってくれるんだろう」
「長らくここはマミのテリトリーだったけど、空席になれば他の魔法少女が黙ってないよ。すぐにも他の子が魔女狩りのためにやってくる」

さやかの問いかけにキュウベぇが答えた。

「でもそれってグリーフシードだけが目当てな奴なんでしょ?あの転校生みたいに」
「確かにマミみたいなタイプは珍しかった。普通はちゃんと損得を考えるよ。誰だって報酬は欲しいさ」

暁美さんの事を未だに転校生と言っていることのが、さやかが暁美さんを嫌っていることの表れだった。

「じゃ――――」
「でも、それを非難できるとしたら、それは同じ魔法少女としての運命を背負った子だけじゃないかな」

続きを言おうとしたさやかに、キュウベぇの厳しい言葉がかけられた。

「君たちの気持ちは分かった。残念だけど、僕だって無理強いはできない。お別れだね。僕はまた、僕との契約を必要としてる子を探しに行かないと」
「ごめんね、キュゥべえ」

キュウベぇにまどかが謝った。

「こっちこそ。巻き込んで済まなかった。短い間だったけど、ありがとう。一緒にいて楽しかったよ、まどか」

キュウベぇはそう言って姿を消した。





放課後、俺とまどかは巴さんのマンションに来ていた。

ピ~ンポ~ン

まどかはチャイムを鳴らすが、部屋の主がいないので、誰も出てこない。
そのまままどかはドアノブを回して部屋に入った。
台所には洗いかけなのか、水につけてあるティーカップが、そしてリビングのテーブルには雑誌と飲みかけの紅茶があった。
まどかはその雑誌の上に、あの黒歴史と化したノートを置いた。
外から聞こえる子供の声が、やけに虚しさを感じさせた。

「ごめんなさい…。私、弱い子で…ごめんなさい」

まどかは涙を流しながら誰にかは分からないが謝り続ける。

「大丈夫。お前は弱い子ではない」

そんなまどかに出来ることは、ただ頭を撫でて声をかけるだけだった。

「でも!でも!」
「まどかは今でも前に進んでいる。それはとてもすごいことだ。普通はあんなことがあったら前になんか進めない」
「…………」
「弱いのは俺だ」
「そんな事!」

まどかが俺の言葉に反論する。

「あるんだよ。俺の時間は、あの時から、ずっと動いてないんだ」

そう、俺がすべてを失うことになるあの時から、俺の時間はすべてが止まってしまった。

「だから、まどかは自分を責めないことだ。責めたところで、何ができるわけでもないんだから」
「………うん」

俺の言葉に、か細い声だが、頷いた。

(第一、巴マミの為に悲しむなんて無駄だ)

俺はそう考えていた。
彼女の死は確かに悲しいものだ。
だが、それは悪く言ってしまえば自業自得。
あの時、暁美さんと俺を拘束していなければ、彼女は死ななかったかもしれない。
もちろん絶対に死なないという保証はない。
だが、可能性を少なくすることはできたはずだ。
人が心配しているのを無視したり、人の言葉を聞かないようなものを俺は馬鹿と言っている。

(とにかく、今後も頑張ろう。俺の目的のために)

俺は再び、そう決心するのだった。





「あっ……ほむら……ちゃん……」

マンションを出ると、そこにいたのは暁美さんだった。

「貴女は自分を責めすぎているわ。鹿目まどか」
「えっ……?」

暁美さんの突然の言葉に、まどかが声を上げた。

「貴女を非難できる者なんて、誰もいない。いたら、私が許さない」
「え……?」
「忠告、聞き入れてくれたのね」
「……うん」

暁美さんの言葉に、まどかは頷いた。
その後俺とまどかは暁美さんと帰ることになった。

「私がもっと早くにほむらちゃんの言うこと聞いていたら」
「それで、巴マミの運命が変わったわけじゃないわ。でも、貴女の運命は変えられた。一人が救われただけでも、私は嬉しい」

暁美さんの言葉に、まどかも呆然としていた。

「ほ……ほむらちゃんはさ、何だかマミさんとは別の意味でベテランって感じだよね」
「そうかもね。否定はしない」

暁美さんの声色が少しだけ変わった。
言うなれば少しだけとげが生えたような感じだ。

「昨日みたいに……誰かが死ぬとこ何度も見てきたの?」
「そうよ」
「……何人くらい?」
「数えるのを諦める程に」

(だからそんなに絶望に満ちた目をしているのか)

俺はようやく彼女の雰囲気に納得がいった。

「あの部屋、ずっとあのままなのかな」
「巴マミには、遠い親戚しか身寄りがいないわ。失踪届けが出るのは、まだ当分先でしょうね」
「誰も……マミさんが死んだこと、気づかないの?」
「仕方ないわ。向こう側で死ねば、死体だって残らない。こちらの世界では、彼女は永遠に行方不明者のまま。魔法少女の最期なんてそういうものよ」
「ひどいよ……」

暁美さんの言葉に、まどかは立ち止まると涙を流した。

「みんなのためにずっと一人ぼっちで戦ってきた人なのに、誰にも気づいてもらえないなんて、そんなの……寂し過ぎるよ」

死んだことを気付いてもらう。
それは人類に与えられた権利だ。
それすらも果たされないことが、俺には悲しかった。

「そういう契約で、私達はこの力を手に入れたの。誰のためでもない。自分自身の祈りのために戦い続けるのよ。誰にも気づかれなくても、忘れ去られても、それは仕方のないことだわ」
「私は覚えてる。マミさんのこと、忘れない。絶対に!」

まどかの一言に、暁美さんが驚いたような表情でまどかを見た。

「そう。そう言ってもらえるだけ、巴マミは幸せよ。羨ましい程だわ」

暁美さんはまどかから眼をそらしてそう言った。

「ほむらちゃんだって!ほむらちゃんのことだって、私は忘れないもん!昨日助けてくれたこと、絶対忘れたりしないもん!」
「……ほむらちゃん?」
「貴女は優し過ぎる」
「え?」

暁美さんの言葉に、まどかは驚いた風に声を上げた。

「忘れないで、その優しさが、もっと大きな悲しみを呼び寄せることもあるのよ」

最後にそう言うと、暁美さんは俺達の前から去って行った。





広場にやってくると、すでに夜だった。

「ほむらちゃん、ちゃんと話せばお友達になれそうなのに。どうしてマミさんとは喧嘩になっちゃったのかな?」

まどかが俺にそう聞いてきた。

「それは二人が馬鹿だからだよ」
「え?」

俺の答えに、まどかがこっちを見た。

「二人して一歩も近寄ろうとしないんだもの。仲良くなれるはずがない。もし二人が半歩でも歩み寄れば、少しはこの未来は変わっていたのかもしれないな」
「……うん」

俺の言葉に、まどかはただ頷くだけだった。

「あれ?仁美ちゃん……」
「ん?あ、本当――――」

俺は仁美の姿を見つけた時、何とも言い難い寒気を感じた。
この感じはあの時に似ている。

「仁美ちゃ~ん!今日はお稽古事……あ」

まどかが走りながら仁美に声をかけるので、俺もそれについて行く。
すると、俺達は見てしまった。
その首筋にあるテレビのようなマークを。

「あれ……あの時の人と同じ」

そう、あえて言うのであれば。

「魔女の口づけ」
「仁美ちゃん。ねぇ、仁美ちゃんってば!」

まどかが仁美の前に回り込んで、肩を揺らすと、彼女はまどかの方を見た。

「あら、鹿目さん、渉さん御機嫌よう」

彼女の俺達を見る目から、操られていることがはっきりとわかった。

「ど、どうしちゃったの?ねえ、どこ行こうとしてたの?」
「どこって、それは……ここよりもずっといい場所、ですわ」
「仁美ちゃん」
「ああ、そうだ。鹿目さんもぜひご一緒に。ええそうですわ、それが素晴らしいですわ」

仁美はそう言うと、俺達の横を通って行った。

「どうしよう……これってまさか……」
「まどか、仁美の後を付けてくれるか?」
「え、渉君は?」

俺の提案に、まどかが聞いてくる。

「俺は正宗と吉宗を取ってくる。幸いここから家は近いし、すぐに行ける。あの二本の剣があでば、大抵の事は何とかなる」
「でも、それだと私たちがどこにいるのかわからないんじゃ」

まどかはもっともなことを言ってくる。

「だから、まどかにはこれで目印を残してもらいたいんだ」

そう言って俺が渡したのは、水が入った2Lのペットボトル。

「これをこぼしながら歩いて貰えれば、それを頼りに行けるから」
「う、うん!分かった」

まどかの答えを聞いて俺は自宅に向かって走った。

(早く行かないとやばい!!)

そう思いながら、俺はひたすらに走るのだった。

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第7話 悲劇

巴さんを探すこと数十分。
比較的早くに見つけることが出来た。
病院に戻った時にはすでに夕方になっていた。
巴さんは昨日の事でまだ起こっているようだったがそのことを口には出さなかった。
まあ視線がかなり痛かったが。

「ここね」

バッグを地面に置いてグリーフシードがあった場所を見る。
そして巴さんはそこに手をかざした。
すると、グリーフシードがあった壁にあの門のような物が現れた。

【キュゥべえ、状況は?】
【まだ大丈夫。すぐに孵化する様子はないよ】

キュウベぇから現状を聞いた。
それによれば、まだ予断は許さない状態らしい。

【さやかちゃん、大丈夫?】
【平気平気。退屈で居眠りしちゃいそう】

まどかの心配そうな声に、心配させまいとわざとか、それとも素でそうなのかは分からないが、元気そうに答えた。

【むしろ、迂闊に大きな魔力を使って卵を刺激する方がマズい。急がなくていいから、なるべく静かに来てくれるかい?】
【分かったわ】

キュウベぇの指示を聞いて、俺達は結界内に入った。





結界内はいつもと同じように異色だった。
瓶の中に入っているはさみやら周りがお菓子だらけと言う事やらがそれを物語っていた。

「間に合ってよかった」

まどかの手を引きながら、巴さんは前へと進む。

「無茶し過ぎ……って怒りたいところだけど、今回に限っては冴えた手だったわ。これなら魔女を取り逃がす心配も……」

巴さんがこっちを振り向くと、話すのをやめた。
俺とまどかは巴さんにならって後ろを振り向くと……

「え?あっ」

そこにいたのは暁美さんだった。

「言ったはずよね?二度と会いたくないって」

巴さんは敵意をむき出しに声をかけた。

「今回の獲物は私が狩る。貴女達は手を引いて」
「そうもいかないわ。美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないと」

暁美さんの提案を巴さんが退けた。

「その二人の安全は保証するわ」
「信用すると思って?」

巴さんがそう言って暁美さんに手をかざすと、黄色のロープのようなものが現れて、暁美さんを縛り上げた。

「ば、馬鹿。こんなことやってる場合じゃ」
「もちろん怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保障しかねるわ」
「今度の魔女は、これまでの奴らとはわけが違う」
「おとなしくしていれば帰りにちゃんと解放してあげる」
「お、おいちょっと待ってよ!!」

俺は巴さんに慌てて話し掛けた。

「今日は彼女を信用してみたらどうだ?それで今後の対応を考えても遅くないと思うけど」
「………」

俺の言葉を聞いた巴さんは初めて俺に対して敵意をむき出しにして睨みつけた。

「なっ!?ぐぅッ!!」

そして俺に手をかざしたかと思うと、俺は暁美さんのように縛られていた。

「ごめんなさいね。時間がないの。ちょっと邪魔だからそこでおとなしくしていれば彼女と一緒に開放してあげるわ。行きましょう、鹿目さん」
「え……あ、はい」

俺は二人が去っていくのを見ていることしかできなかった。





(何だか頭に来た)

待っているとどんどんと怒りがわいてきた。
俺はさっき何をした?

――彼女を信用しろと説得した。

それなのに、この仕打ちは俺の怒りを沸かせるのに十分だった。

「……はっ!!!」

俺は気を放って体中にまきつくロープを砕いた。

「なっ!?」

暁美さんが驚く声が聞こえるが、俺は暁美さんに『彼女の事は任せて』と告げるとそのまま二人の歩いて行った方向へと、全速力で走った。





勘で走ってすぐに魔女がいる場所へと辿り着いた俺が見たのは

「ティロ・フィナーレ!!」

彼女の十八番でもある『ティロ・フィナーレ』を放った巴さんだった。

(よし、戻ったら文句でも言ってやる)

俺はそう心の中で考えている時だった。
巴さんが打ち抜いた魔女から大きな生命体が現れて、それが一気に巴さんの目前に迫った。

「なっ!!?」

そしてその生命体は、口を大きく開いて巴さんを飲み込もうとしていた。
俺は慌てて巴さんの方へと掛けて行った。









3人称Side

結界の中にマミとまどかが入って数十分。
結界のあった場所には人影があった。
しかし、その中に巴 マミと小野 渉の姿はなかった。

Side out

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第6話 悲劇の前触れ

あの魔女退治体験ツアー初日から数日後、俺達は今日もまた何度目かもわからないツアーに参加していた。

「ティロ・フィナーレ!!」

そして今夜も、巴さんの必殺技『ティロ・フィナーレ』により魔女は消滅し、元の景色へと戻った。

「いやー、やっぱマミさんってカッコイイねえ!」
「もう、見世物じゃないのよ。危ないことしてるって意識は、忘れないでいてほしいわ」

さやかにそう言いながら街灯の上から飛び降りた。

「いえーす!」

そしてさやかはさやかで全く分かってないようだし。
と、その時キュウベぇがこちら側に走ってくると、自然な動作でまどかの肩の上に移動した。

「あ、グリーフシード、落とさなかったね」
「今のは魔女から分裂した使い魔でしかないからね。グリーフシードは持ってないよ」
「魔女じゃなかったんだ」
「何か、ここんとこずっとハズレだよね」

確かにさやかの言うとおりだ。
あの初日以来魔女ではなく使い魔が出てきていた。
どうやらグリーフシードは魔女だけが持っているらしく、使い魔は持っていないらしい。

「使い魔だって放っておけないのよ。成長すれば分裂元と同じ魔女になるから」
「……とりあえず、お疲れ様でした」

俺は巴さんに労いの言葉をかけた。

「ふふ、ありがとね、渉君。さぁ、行きましょう」

笑みを浮かべた巴さんの言葉で、俺達はその場を後にした。

「二人とも何か願いごとは見つかった?」

しばらく歩くと、巴さんはまどか達に尋ねた。

「んー……まどかは?」
「う~ん……」
「まあ、そういうものよね。いざ考えろって言われたら」

答えられずに悩んでいる二人に、巴さんは苦笑いを浮かべながらフォローした。

「マミさんはどんな願いごとをしたんですか?」

まどかがそう尋ねた瞬間、巴さんは歩くのをやめた。

「いや、あの、どうしても聞きたいってわけじゃなくて」
「私の場合は……考えている余裕さえなかったってだけ 」

そして巴さんは、自分の願い事について話し始めた。
巴さんが小さいころ、家族での旅行の時に巻き込まれた事故。
両親は即死、巴さんは重症だった。
そんな時に現れたのがキュウベぇで、彼女は助かることを願い契約した。

「後悔しているわけじゃないのよ。今の生き方も、あそこで死んじゃうよりはよほどよかったと思ってる。でもね……ちゃんと選択の余地のある子には、キチンと考えたうえで決めてほしいの。私にできなかったことだからこそ、ね」
「ねえ、マミさん。願い事って自分の為の事柄でなきゃダメなのかな?」

少々暗くなった雰囲気の所に、さやかが疑問を投げかけた。

「え?」
「例えば、例えばの話なんだけどさ、私なんかより余程困っている人が居て、その人の為に願い事をするのは……」
「それって上条君のこと?」

さやかの例えと言う言葉に、まどかが誰の事かが分かったのか名前を言った。

「上条って……あぁ、さやかのす―「た、例え話だって言ってるじゃんか!」 ―」

今ので絶対に図星だと思う俺なのであった。

「別に契約者自身が願い事の対象になる必然性はないんだけどね。前例も無い訳じゃないし」
「でもあまり関心できた話じゃないわ。他人の願いを叶えるのなら、なおのこと自分の望みをはっきりさせておかないと。美樹さん、あなたは彼に夢を叶えてほしいの?それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?
「マミさん……」

巴さんのきつい言葉に、まどかは少しばかり驚いているようだった。

「同じようでも全然違うことよ。これ」
「その言い方は……ちょっと酷いと思う」
「ごめんね。でも今のうちに言っておかないと。そこを履き違えたまま先に進んだら、あなたきっと後悔するから」

さやかの反論に、巴さんはそう返した。

「別に人のためにすることが悪いとは言わないが、無名の偉人のようにはなるなよ」

ついでに俺も忠告しておいた。
無名の偉人。
それは前に二人に話した、最悪と言ってもいい英雄の事だ。
目の前の利益に飛びつき、友すらも蔑ろにした奴のだ。

「……そうだね。私の考えが甘かった。ゴメン」
「さやかの考えが甘いの何て、いつもじゃないか」
「何だとっ!!」

俺の茶々にさやかは過敏に反応した。

「やっぱり、難しい事柄よね。焦って決めるべきではないわ」
「僕としては、早ければ早い程いいんだけど」
「ダメよ。女の子を急かす男子は嫌われるぞ」

巴さんの一言で、笑いが俺達を包んだ。
と言うより、キュウベぇって、オスなのか?
こうして、俺達は帰路へと着くのであった。





さて、今俺が何をしているのかと思えば、巴さんへのストーキングだ。
もちろん理由はある。
彼女に暁美さんと話し合う機会を設けるように、提言するためだ。
話し合いもせずに敵にするというのは、あまりにも愚かで馬鹿げたことだからだ。
しかし、話し掛けようにも彼女は魔女の探測中。
声をかけることもできないまま、公園の広場まで来ていた。

「………」

すると、巴さんはソウルジェムを指輪の姿にした。

(気づかれたか!?)

そう思った時だった。

「分かってるの?」

その声は、暁美さんの物だった。

(どういうことだ?さっきまで彼女はいなかったはず)

「貴女は無関係な一般人を危険に巻き込んでいる」
「彼女たちはキュゥべえに選ばれたのよ。もう無関係じゃないわ」

俺の動揺を無視して二人はさらに話を進める。

「貴女は二人を魔法少女に誘導している」
「それが面白くないわけ?」
「ええ、迷惑よ。特に鹿目まどか」

暁美さんから再びまどかの名前が出てきた。

「ふぅん……そう、あなたも気づいてたのね。あの子の素質に」

まどかの名前が出た瞬間、巴さんは目を細めた。
それが俺には、挑発のようにも見えた。

「彼女だけは、契約させるわけにはいかない」
「自分より強い相手は邪魔者ってわけ?いじめられっ子の発想ね」

その瞬間、暁美さんを中心に、とてつもない威圧感が湧き上がった。

「貴女とは戦いたくないのだけれど」

自分の髪を払いながらそう告げた。

「なら二度と会うことのないよう努力して。話し合いで事が済むのは、きっと今夜で最後だろうから」

そう言って巴さんは暁美さんに背を向けて歩き出した。

「あはははは!!!!」
「「ッ!!?」」

俺はそれを見て、自分の状況も忘れて思わず笑ってしまった。

「話し合いって……それが話し合いに入ると思ってるのか?」
「……渉君、どうしてここに?」
「巴 マミよ、今のお前、完全に悪役だぞ。暁美 ほむらの言葉に耳を傾けず、彼女を最初から悪者として話している。こんなんじゃどこまで行っても平行線だ。まあ、彼女は彼女で何かを隠しているようだけど」

俺は巴さんの疑問を無視して話した。

「……女の子の後を付けるのは、あまり褒められた行為じゃないわね。今日は許すから、次は気を付けてね」

巴さんは俺の言葉に、論点をすり替えて注意をすると、そのまま去って行った。

「……んで、お前にも聞きたいことがある」
「………」

俺の言葉に、暁美さんは何も反応をしない。

「なぜそこまで彼女にこだわる?」
「………」

俺の問いかけに、暁美さんは何も言わない。

「………はぁ。言う気はないってか」

俺はその様子にため息を付きながら言った。

「彼女……まどかを守ってあげて」
「…………まあ、できる限りは努力しよう」

突然の暁美さんの頼みに俺はそう答えた。
俺にはこの願いが彼女の目的の本質だと悟ったからだ。

「そう」

そして次の瞬間には、彼女の姿はなかった。

「………帰るか」

そして、俺も帰路に就くのであった。










翌日、俺とまどかはさやかの上条と言う奴へのお見舞いに付き合うために、病院のロビーにいた。

「はあ……。よう、お待たせ」

しばらくして、ため息をつきながらさやかが戻ってきた。

「あれ?上条君、会えなかったの?」
「何か今日は都合悪いみたいで」

外に出ても文句を言っているさやかだが、突然まどかが立ち止まると、一点を見ていた。

「わざわざ来てやったのに、失礼しちゃうわよね」
「あそこ……何か……」

まどかの言葉に、俺達はまどかの見ている方を見る。

「グリーフシードだ!孵化しかかってる!」
「嘘……何でこんなところに」

キュウベぇの言葉に、俺達はさらに近づくと、それは確かに魔女の卵のグリーフシードだった。

「マズいよ、早く逃げないと! もうすぐ結界が出来上がる!」
「またあの迷路が?………まどか、マミさんの携帯、聞いてる?」
「え?ううん」

さやかの問いかけにまどかは顔を横に振った。
そういえば俺達はいつも放課後に合流していたし、有事の際はとテレパシーで事足りていたから携帯の番号を聞くのを忘れていたのだ。

「まずったなぁ。まどか、渉。先行ってマミさんを呼んで来て。あたしはこいつを見張ってる」
「そんな!」

さやかの提案にまどかが声を上げた。

「無茶だよ! 中の魔女が出てくるまでにはまだ時間があるけど、結界が閉じたら君は外に出られなくなる。マミの助けが間に合うかどうか……」
「あの迷路が出来上がったら、こいつの居所も分からなくなっちゃうんでしょ?放っておけないよ。こんな場所で」

キュウベぇの反対にさやかは頑なに意見を変えなかった。

「まどか、渉。先に行ってくれ。さやかには僕が付いてる。マミならここまで来れば、テレパシーで僕の位置が分かる。ここでさやかと一緒にグリーフシードを見張っていれば、最短距離で結界を抜けられるよう、マミを誘導できるから」
「ありがとう。キュウべえ」
「私、すぐにマミさんを連れてくるから」
「死ぬなよ!」

俺とまどかはそう言って巴さんを探しに走った。

「まどか!そこを右!!」
「え!?なんで?!」

俺の指示にまどかが驚いた様子で聞いてきた。

「勘だ!俺の勘は良く当たる!!」

俺はそう答えて、曲がり角を右に曲がった。
俺達は巴さんを探すために走った。





だが、俺は知らなかった。
これが巴さんにとって最後の戦いになるという事を。

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第5話 魔女退治体験ツアー

喫茶店を後にした俺達は、昨日魔女がいた場所まで来ていた。

「これが昨日の魔女が残していった魔力の痕跡。基本的に、魔女探しは足頼みよ。こうしてソウルジェ
ムが捉える魔女の気配を辿ってゆくわけ」

「意外と地味ですね」
「地味だからこそ意味があるんだろ?」

すぐに見つかったら楽だけど、なんかつまらないし。
そんなもの犯人がすでに分かっている、推理小説を見ているようなものだ。

「そりゃそうだけどさ……」
「さ、行くわよ」

巴さんの一声で俺達は魔女の捜索を始めるべく、巴さんの後をついて行く。
ちなみにさやかの片手には武器である金属バットが握られていた。
俺はと言えば、さすがにあれは危険だということでOKが出るまでバックの中で出番待ちだ。





「光、全然変わらないっすね」
「取り逃がしてから、一晩経っちゃったからね。足跡も薄くなってるわ」
「あの時、すぐ追いかけていたら……」

巴さんの言葉にまどかが申し訳なさそうに声を上げた。

「仕留められたかもしれないけど、あなたたちを放っておいてまで優先することじゃなかったわ」
「ごめんなさい」
「いいのよ」
「そうそう、胸を張って生きろよ」
「いや、それ微妙に意味違うから」

俺にさやかのツッコミが入った。

「うん、やっぱりマミさんは正義の味方だ!それに引き換えあの転校生……ホントにムカつくなぁ!」
「………」

おそらくだが、暁美さんとさやかは確実に相性が合わないのだろう。

「ねえ、マミさん。魔女の居そうな場所、せめて目星ぐらいは付けられないの?」
「魔女の呪いの影響で割と多いのは、交通事故や傷害事件よね。だから大きな道路や喧嘩が起きそうな
歓楽街は、優先的にチェックしないと。あとは、自殺に向いてそうな人気のない場所。それから、病院とかに取り憑かれると最悪よ。ただでさえ弱っている人たちから生命力が吸い上げられるから、目も当てられないことになる」

さやかの疑問に、魔力反応を探しながら巴さんが答えた。
その時、巴さんのソウルジェムの輝きが増した。

「かなり強い魔力の波動だわ。近いかも」
「このあたりで自殺に向いてそうな場所は……」
「そういえば、向こうの方に取り壊しが決定された廃墟ビルがあったような」

俺はこの間道に迷っていた時に見た廃墟ビルを思い出した。

「そこだ!」
「急ぎましょ!!…渉君、案内をお願い」

こうして俺を先頭に、廃墟ビルへと向かった。





「間違いない。ここよ」

廃墟ビルの前にたどり着き、ソウルジェムの輝きを確認した巴さんがそう呟いた瞬間だった

「あ、マミさんあれ!」

さやかが屋上の方に指を指す。
その方向を見ると、飛び降りてくる人影があった。

「うわ!?」
「きゃーー!!」

最悪な結果を想像したまどかが悲鳴を上げながら目を閉じた。
しかし、巴さんだけは変身しながら落ちてくる場所まで移動していた。

「はッ!」

そして片手を上空に掲げると落ちてくる人―女性―を守るかのように黄色いリボンが女性を受け止めた。
そして俺達は女性の元に駆け寄った。

「魔女の口づけ……やっぱりね」

首筋に複雑な模様が描かれていた。
どうやらこれが魔女の口づけらしい。

「この人は?」
「大丈夫。気を失っているだけ。行くわよ」

まどかの問いかけに答えると、巴さんはビル内へと向かったため、俺達もそれについて行く。
中は特に変わったところもない。
しかし、正面の階段のところに何かがあった。

「今日こそ逃がさないわよ。それと、渉君もそろそろ出してもいいと思うよ」
「あ、それじゃ」

俺は巴さんのOKが出たのはバックの中から二本の神剣を取り出した。
すると、巴さんは片手で二本の神剣とさやかのバットに手を添えた。
その瞬間さやかのバットがカラフルな武器に変わり、俺の神剣は神々しい光を発した。

「うわ、うわー」
「すご~い」

そのあまりの変わりようにさやかとまどかが感嘆の声を上げた。
俺はと言えば、別に強化しなくても平気なんだがと思っていたりした。

「気休めだけど。これで身を守る程度の役には立つわ。絶対に私の傍を離れないでね」
「はい」
「はい!」
「分かりました」

巴さんの注意に俺達は一斉に頷いた。
そして巴さんとさやかにまどかは蝶のような模様のある光の中へと姿を消した。

「ん?」

そんな中、俺はある人物の気配を感じていたが、すぐに光の中へと入った。





結界内で俺達を待っていたのは、蝶のようなものだった。
目の前に現れた蝶を巴さんはマスケット銃で撃っていく。
一方こっちにいる蝶は。

「うわ!来るな!来るな!!

さやかがビビり腰でバットをふるう。

「伏せてさやか、まどか!」

俺はさやかたちにそう告げると、神剣の一本正宗を横に一閃した。
一瞬の光の後、俺達の周りにいた蝶は姿を消していた。

「す、すごい」
「なかなかやるわね」
「素質はあるんだけどね」

三者三様の称賛の声が、微妙に心地よい。
だが、こんなもの俺にとってみればお遊戯会レベルだ。

「どう?怖い?三人とも」
「な、何てことねーって!」

走りながらかけられた巴さんの言葉に、さやかは若干ドモリながら答えた。
そして再び俺達を片手で制すとその先には複数の蝶がいた。
それを巴さんは先ほどと同じように、マスケット銃で撃っていく。
しかしその撃ち逃したものが俺達の背後で集まるが、俺の一閃で消滅させた。

「頑張って。もうすぐ結界の最深部だ」

走っているとキュウベぇから声がかけられた。
あと少しで大ボスの場所らしい。
そして髭動物を巴さんのマスケット銃の連発により一気に消し去ると複数のドアをくぐり、広場にたどり着いた。
そこに存在していたのは、言葉では語れない程不気味な生命体だった。
おそらくあれが魔女なのだろう。

「見て。あれが魔女よ」
「う…グロい」

どうやらさやかも俺と同じことを感じていたようだ。
と言うよりこれが可愛いっていう奴はいないだろうが。

「あんなのと……戦うんですか?」
「大丈夫。負けるもんですか」

巴さんはそう言うと、さやかからバッドを取るとそれを思いっきり地面に叩き付けた。
その瞬間俺達の周りに、膜のようなものが形成された。

「下がってて」

そして巴さんは魔女の前に躍り出た。
そして何かを踏んづけると、魔女は巴さんの方を見た。
巴さんがスカートの裾を持ち上げると、そこからマスケット銃が二丁出てきた。
その銃で魔女が投げつけた椅子のようなものを避けて撃った。
さらに帽子から大量のマスケット銃を出すと、空中を飛んでいる魔女に向けて撃っては捨て、また別の銃を手にして打つというのを繰り返す。
しかし魔女に集中していたため、地面にある何かが黒いロープへと姿を変えて巴さんを逆さづりにする。
その状態で巴さんは魔女に向けてマスケット銃をで撃つが、それはすべて外れてしまった。
そしてそのまま壁に叩き付けられる。

「あっ……マミさ~ん!」

それを見たさやかが悲痛な声を上げる。
だが、当の巴さんは

「大丈夫。未来の後輩に、あんまり格好悪いところ見せられないものね」
まだその表情には余裕があった。
その次の瞬間、先ほどの銃の着弾場所から黄色のひものようなものが伸びた。
それはやがて、魔女を縛りつけた。

「惜しかったわね」

一気に有利となった巴さんは胸元のリボンを解くとそれを使ってロープを切った。
さらにそれを使って巨大なマスケット銃を作り出した。

「ティロ・フィナーレ!!」

そしてそれを魔女に向けて容赦なく撃った。
そして魔女は消滅した。
巴さんは地面に優雅に着地すると、どこから出したのかティーカップをキャッチした。
そしてそれに口を付ける。

「あ、勝ったの?」
「すごい……」

その瞬間、周りの景色がぐにゃりと揺れると元の場所なのか、景色が元に戻った。
すると、巴さんは一人で歩いて、腰をかがめると何かを拾った。

「これがグリーフシード。魔女の卵よ」
「た、卵」
「運がよければ、時々魔女が持ち歩いてることがあるの」

魔女の卵と聞いてさやかが顔をしかめるが、巴さんは説明を続けた。
グリーフシードと言うものは真っ黒の物だった。

「大丈夫、その状態では安全だよ。むしろ役に立つ貴重なものだ」

怯えているさやかに気付いたのか、キュウベぇがそう説明した。

「私のソウルジェム、ゆうべよりちょっと色が濁ってるでしょう?」
「そう言えば……」
「確かに」

巴さんのソウルジェムは心なしか、先日より輝きが無くなっているようにも見えた。

「でも、グリーフシードを使えば、ほら」
「あ、キレイになった」

ソウルジェムから黒い靄……おそらく穢れが浮き上がると、それはグリーフシードに吸い込まれた。

「ね。これで消耗した私の魔力も元通り。前に話した魔女退治の見返りっていうのが、これ」

巴さんはそう説明すると、誰もいない場所に向けてグリーフシードを投げつけた。
すると、誰もいないはずなのにキャッチした音が聞こえた。

「あと一度くらいは使えるはずよ。あなたにあげるわ。暁美ほむらさん」

姿を現したのは 暁美さんだった。

「あいつ……」

先ほど感じた気配は彼女の物だったようだ。

「それとも、人と分け合うんじゃ不服かしら?」
「貴女の獲物よ。貴女だけの物にすればいい」

巴さんの言葉に、暁美さんはそう答えると、グリーフシードを投げ返した。

「そう。それがあなたの答えね」

それを受け止めた巴さんはいつになく険しい表情で暁美さんを睨みつける。
そして暁美さんはそのまま姿を消した。

「くぅー!やっぱり感じ悪いやつ!」

姿が消えるのと同時にさやかが声を上げる。

「仲良くできればいいのに」
「お互いにそう思えれば、ね」

まどかの呟きに、巴さんが苦笑いを浮かべながら答えた。

「思う努力もしてないくせに」

俺はついつい本心を口に出してしまった。

「何かしら?渉君」
「あ、言え、こっちの話です」

その後、自殺をさせられた女性が目を覚まし、巴さんは体を震わせている女性を宥めているのを見ていた。

「一件落着、って感じかな」
「うん」

こうして俺達の魔女退治体験ツアー第1回目は幕を閉じたのだった。

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