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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第25話 今後のプラン

俺達が白銀の光の場所に向かうとそこにいたのは……。

「健司君……それに真人君!?」

制服と同じだが、どこかが微妙に違う白い服を着たなのはに黒の露出度の高い服を着ているフェイトさん。
そしてやや金髪の髪をした俺と同い年の男と、オレンジの髪をした女性がいた。

「真人君って、魔導師だったの!?」
「ああ、うん」

なのはの問いかけに、俺は頷いた。

「全然気づかなかったよ」
「当然だろう。近くに魔導師がいるのが分かっているんだから、魔力をこっちの方で隠滅しておいたんだ」

と、執行人が俺の横に出るとそう答える。
やっぱりあんたがやっていたのか。

「あ、あなたは?」
「僕は……執行人とでも名乗っておこう。こいつの魔導の教導をしている」

執行人はそう自己紹介をした。

「ところで、あの人たちは誰?」

俺はなのは達のそばにいる人たちを見ながら聞いた。

「あ、えっとあの男の人が、ユーノ君で女性の人がアルフさんです」

どうやらやや金髪の髪をした人が、ユーノと言う人物で、オレンジ色の髪の女性がアルフと言う名前らしい。

「初めまして、ユーノさんにアルフさん。山田 真人と言います」
「あ、ユーノ・スクライアです。ユーノって呼んでください」
「あたしはフェイトの使い魔のアルフさ」

と、自己紹介をした時だった。

「うわ!?」

突然光ものすごい光を発したので、思わず目を覆った。

「ああ!?」

やがて光が治まると、そこには三角形の白銀の魔法陣……ベルカ式のものが展開されその上に守護騎士の4人が立っていた。
まるで中央の光を守るように。

「ヴィータちゃん!」
「シクナム!」

二人が守護騎士の二人の名前を呼ぶ。

「……我ら、夜天の主の元に集いし騎士」
「主ある限り、我らの魂尽きる事なし」
「この身に命ある限り、我らは御身の元にあり」
「我らが主、夜天の王……八神はやての名の元に!!」

シグナム達の口上が終わってから少しして、光の球が砕け中から黒い甲冑を着たはやてが現れた。

「「「はやてちゃん(はやて!)!」」」

俺となのはの声に、はやては笑顔で答えた

「夜天の光りよ、我が手に集え!祝福の風、リインフォース……セーット、アップ!!」

その瞬間はやての姿が変わった。
黒色の甲冑に白い服が現れ、さらにスカートの部分も伸びて背中には4枚の黒い羽根が展開し、髪の色は栗色から銀色になった。

「……はやて」
「うん……」
「すみません……」
「あの……はやてちゃん、私達……」

ヴィータ達が、はやてに謝った。
まあ、主の約束を破ってまでも隠れて蒐集していたしな。

「ええよ、みんな解ってる。リインフォースが教えてくれた……そやけど、細かい事は後や。今は……おかえり、みんな」
「うっ……う……うわぁぁぁん!」

はやての言葉に感極まったヴィータは、はやての胸で泣きじゃくった。
はやてもヴィータを優しく抱きしめて受け止めた。

「はやてっ! はやて!! はやてぇ!! うわぁぁぁん!!」

ヴィータ達から聞いたのだが、彼女たちの目的は、はやてと幸せに楽しく暮らすことだった。
……それが今こうして実現して嬉しいのだろう。

「良かったな、ヴィータ」
「ひっく……ぅん」

俺の言葉に、ヴィータは涙ぐみながら頷いていた。

「はやても無事でよかったよ」
「真人君って魔導師やったんやな。とても驚いたよ」

俺ははやての言葉に、苦笑いを浮かべていた。

「なのはちゃんとフェイトちゃんもごめんな。うちの子達が迷惑かけてもうて……」
「ううん……」
「平気……」

すると、上空から男の人がやってきた。

「済まないな。水を差してしまうんだが……時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。時間がないので簡潔に説明する」

そしてハラオウンさんから、現状の説明が始まった。

「……あそこの黒い淀み、闇の書の防衛プログラムが後数分で暴走を開始する……僕らはそれを何らかの方法で止めないといけない。停止のプランは現在2つある……1つ、極めて強力な氷結魔法で停止させる。2つ、軌道上に待機している艦船アースラの魔導砲、アルカンシェルで消滅させる。これ以外に他に良い手がないか、闇の書の主と守護騎士の皆に聞きたい」

ハラオウンさんは守護騎士達に聞くが……

「ええっと……最初のは多分難しいと思います……主のない防衛プログラムは、魔力の塊みたいな物ですから……」
「凍結させても、コアがある限り再生機能は止まらん……」

シャマルさんとザフィーラにより最初の案は没。

「アルカンシェルも絶っ対ダメッ!! こんな所でアルカンシェル撃ったら、はやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!!」

ヴィータが猛烈な勢いで反対した。

「そ、そんなにスゴイの?」
「発動起点を中心に百数十キロ範囲の空間を歪曲させながら、反応消滅を起こさせる魔導砲……って言うと大体わかる?」
「あの! 私もそれ反対!!」
「同じく! 絶対、反対!」

2つ目もヴィータとなのはとフェイトさんにより没。
と言うよりも、恐ろしい兵器だ。

「僕も艦長も使いたくないよ……でも、アレの暴走が本格的に始まったら被害がそれより、遥かに大きくなる」
「暴走が始まると、触れた物を侵食して無限に広がっていくから……」
「「………」」

ハラオウンさんとユーノの説明を聞いて何も言えなくなる二人……

【はーい、みんな!暴走臨界点まで後15分切ったよ!!会議の結論はお早めに!】
「ところで、君は一体誰なんだ?」

女性の声の念話が聞こえたかと思えば、目の前にいるハラオウンさんが俺に向かってそう聞いてきた。

「や、山田正人です!!」
「俺は、こいつの魔導を教えている執行人だ」
「クロノ・ハラオウンだ。君達二人には後で、詳しい事情を聞かせてもらいたい」
「……致し方あるまい」

執行人が嫌そうに答えた。

「ね、ねえ真人君は何かいい案がないの?」
「………悪い」

俺にもわからなかった。

「あるではないか。僕が使っていた全ての無へと返すプリマテリアライズ・オーバードライブを使えば、あの防衛プログラムと言うものでも消せるだろう」
「そ、そんな物騒なものを使っても、影響はないのか?」

執行人の提案に、ハラオウンさんがそう疑問を投げかけた。

「もちろんだ。少々強い風が吹くだけだ。周りへの被害は0に等しい」
「……よし、それで行こう」

執行人の答えに、納得したのか、執行人の言ったプランで決定した。

「実に個人の能力頼みでギャンブル性の高いプランだがまあ……やってみる価値はある」
「防衛プログラムのバリアは魔力と物理の複合4層式、その奥に対魔力のバリア……まずはそれを破る!!」
「え?」
「どうした?何か問題でもあるのか?」

突然声を上げた健司に、ハラオウンさんがそう問いかけた。

「あ、いや。なんでもない」

健司は首を振ってそう答える。

【何か問題でもあるのか?】
【………ああ。俺の知っている限りだと、対魔力バリアはないはずなんだ】

健司の言葉に、俺は驚きを隠せなかった。

【健司よ。ここではお前の知っている物語になるとは限らない】

執行人の言葉が、俺には重く聞こえた。

【真人。プリマテリアライズ・オーバードライブの打ち方。覚えてるか?】
【ああ。大丈夫だ】

俺は執行人の問いかけにそう答えた。
前に一度、執行人からはこの技の打ち方を教えてもらっていた。
武装は何でもいいらしいので、弓型にした。

【健司は、真人のサポートをしろ】
【はい!】

俺達の、方針は固まった。

「バリアを貫いて本体にむけて私達の一斉攻撃でコアを露出!」
「そして真人君の魔法で消滅!!」

こちらも、一通りプランの確認を終えたようだった。

【暴走開始まで、後2分!】

まだ少しばかり時間があるようだ

「あ、真人君になのはちゃん、後、そこの人とフェイトちゃんも」
「「「……?」」」

はやてに呼ばれた俺達は、状況がうまく飲み込めない。

「シャマル!」
「はい、3人の治療ですね……クラールヴィント、本領発揮よ」
『Ja』
「静かなる風よ、癒しの恵みを運んで」

シャマルの言葉に呼応するように、緑の光が俺たちを優しく包み込んだ。

「あ……わぁ!」
「ええ……」
「湖の騎士シャマルと風のリング、クラールヴィント。癒しと補助が本領です」
「ありがとうございます。シャマルさん」
「すごいです」
「ありがとうございます、シャマルさん!」
「ふふ……どういたしまして」

俺は特にダメージなどなかったが、力がみなぎってくる感じがした。
そしてとうとう暴走が始まったのか、黒い球体の周りから、黒い魔力の塊が柱のように立ち上った。

「始まるっ!」
「……夜天の魔導書を呪われた闇の書と呼ばせたプログラム……闇の書の闇……」

黒い球体が割れ、中からはおぞましい巨大生物が現れた。

「■■■!!!」

こうして、俺たちの最後の戦いが幕を開けた。

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『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』最新話を掲載

こんばんは、TRです。

大変お待たせしました。
本日、『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』の最新話を掲載しました。
とはいっても転載したものですが。
ヒロインや作品の進め方の筋書きもできてきたので、移転作業が完了した際には、本格的に執筆を始めたいと思います。


それでは、これにて失礼します。

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第7話 プリエの新人料理人生誕?

「皆さんに紹介する人がいます。本日、急きょ来ることになった方です」
「大森浩介です。ここでは料理人として、皆さんのお力になれればと思います。よろしくお願いします」

プリエの責任者の言葉に続いて、僕は自己紹介すると、お辞儀した。
すると、静かではあるが拍手が湧き上がった。
午前10時ごろ、理事長でもあるヘレナの指示で、僕はここの料理人として働くことになった。

「それじゃ、これからすぐにこのメニューを50個ずつ作ってくれるかしら? 出来るだけ早めに」
「分かりました」

僕は、厨房の主任の指示に頷くと、渡されたメニュー表の料理を作る。
そのメニューはすべてお弁当ものだった。
おそらく休み時間に買いに来る生徒たちの為だろう。
それから完成したのはチャイムが鳴った時とほぼ同時だった。
そして、間に合ってよかったと悟った。

「すみません! カツ弁当を一つ」
「あのー、日替わり弁当を下さい」

休み時間になるのと同時に、殺到する注文の嵐。
そして、ものすごい速度で減って行くお弁当の山。

(これはもしかして、追加を頼まれるかな?)

そう思いながら、僕はお弁当の追加を作る準備を始めた。

「大森さん、お弁当メニュー全品10個ずつ追加!」
「分かりました」

準備が終わるのと同時に、追加の指示が入り僕は素早く調理に移った。
この10分間の休み時間が終わった時には、総勢180個のお弁当のうち、30個ずつ残った。

「助かったわ、大森さん。でも、お昼休みの時が一番混むから気を付けて」
「わ、分かりました」

主任の忠告に、僕は苦笑いを浮かべるしかなかった。
それから後、下準備などを済ませてお昼休みを迎えた。
その時点でも、やはりと言ってはあれだが、注文は殺到し、大忙しとなった。










夜、家に戻りすぐさま、九条家の料理人としての仕事を果たした僕は、宛がわれた部屋で、神楽と今後の事について話をしていた。

「それじゃ、あまりの忙しさに疲れ果てて、学園内をうろつけなかったって言うの?」
「まあ、そういう事になるな」

今日の成果を聞いた神楽は、呆れた様子でため息をつく。

「それって本末転倒でしょ? 私たちは、料理人の修行をするために来たわけじゃないのよ?」
「分かってるさ。だから明日からは気合を入れていくとする。僕も大勢向けの料理を短時間で作ることに慣れていなかったこともあるし。明日は大丈夫だろう」

僕の言葉に、神楽は『だったらいいんだけど』と不安そうにつぶやいた。

「ッと、明日の下ごしらえをしなければいけなかった。ということで、今日はお開きでいいかな?」
「うん、いいよ。本業の方を優先しすぎても、怪しまれれば本末転倒だからね」

神楽のお許しが出たところで、僕は部屋を後にして厨房へと向かう。

「こんばんは」
「ん?」

突然後ろから掛けられた声に、僕はその方向を見ると、寝着を着ているヘレナさんの妹であるリアさんが立っていた。

「これはリアさん。こんばんは」
「どこに行くんですか?」
「ああ、明日の朝食の下ごしらえをしようと思いまして」

リアさんの問いかけに、僕は敬語を使いながら丁寧に答えた。

「あ、そうなんですか。真面目ですね」
「いえいえ、これも仕事何で」

リアさんの心遣いが、ものすごく僕の癒しになる。
彼女の何かが、僕を癒してくれる。
これが彼女の力なのだろうか。

「それでは、失礼」
「あ、待ってください」

歩き出そうとした僕を、リアさんが呼び止める。

「ごめんね、お姉ちゃんが色々と無理をさせちゃって」
「いえ、慣れてみればかなり楽しいですよ。それと………」

僕は、そこまで言うといったん区切った。

「私はこう見えて貴方と同い年です。なので、敬語は不要ですよ?」
「え、えぇ!? 同い年だったの!?」

僕の言葉に、驚きながら言うリアさん。

(僕は、そんなに老けてるか?)

一瞬落ち込みかけたが、必死に耐えた。

「ええ、なので、敬語ではなく自然に話してください」
「うん、分かったよ。それじゃ、私も浩介君って呼んだ方がいいかな?」
「ご髄に」

リアさんの問いかけに、僕はあいまいな答え方だが、そう答えた。

「それじゃ、浩介君。おやすみなさい」
「はい、お休み」

リアさんはそのまま後ろを向いて歩いて行く。

「………ヘレナさんの無茶ぶり、そんな嫌いではないしね。それに、彼女のような破天荒な人は、嫌いではない」

誰もいない通路で、僕はそう呟いた。
そして、今度こそ僕は下ごしらえをするために厨房へと向かうのであった。
ちなみに、その日の夜は、疲労ですぐさま眠りにつくことが出来た。

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第6話 急転直下の展開

10月25日

朝僕はいつものように料理を作る。
九条家に料理人として来てから三日、少しは慣れてきたようにも感じた。

「お、もう出来上がってるな。さすがは元シェフと言う事か」
「ありがとうございます」

突然背後に現れた倉松さんにお礼を言いつつ、料理をトレーに乗せていく。
今度はそれを台車で運ばなければならない。
運ぶのは下っ端である僕の役目だ。
さすがは九条家、食材の質が違う。
殆どが高級食材だ。
………今度普通の食材を買おう。

「それでは、行ってまいります」
「頼んだぞ」

そして僕は、料理の配膳をしに行くのであった。










「お待たせしました。どうぞ」

アンティーク調の家具がある、大食堂についた僕は、早速料理を配膳する。
九条家の旦那様と奥様、そして娘のヘレナさんにその妹のリアさんの前に料理を配る。

「それでは、ごゆっくりと」
「待ちなさい」

一礼してから、台車を押して厨房へと向かおうとする僕を止めたのは、旦那様だった。

「ここに来てから三日は経つが、なかなか板についてきたようだな。これからも頑張ってくれたまえ」
「ありがとうございます。それでは」

旦那様のお褒めの言葉に、僕はお礼を言うと今度こそ大食堂を後にした。










その後、僕達も食事を済ませ、旦那様方の食べた食器を片付け終えた時だった。

「浩ちゃ……浩介さん、お電話です」
「僕に? ………すみません熊松さん。少し抜けます」

突然厨房にやってきたメイド服を着る神楽の呼び出しに、僕は後ろにいた倉松さんに声をかけた。

「おう、行って来い!」

倉松さんの許可を得た所で、僕は神楽と共に厨房を後にした。

「どう? そっちの状況は」
「こっちは順調だ」

しばらく歩いたところで、横を歩く神楽が聞いてくる。
それに対してそう答えると、神楽はため息をこぼした。

「良いな~、浩ちゃんは。私なんてメイド長の人に毎日怒られてるんだよ? 『敬語を話しなさい』って」
「いや、簡単なこと………でもなかったな、お前には」

神楽の性格を考えると、かなり難しいだろう。
神楽は縛り付けられるようなことは苦手なのだ。
いや、嫌いと言うべきかもしれないな。
だからこそ、今のこの場所は彼女にとってはここは苦痛なのかもしれない。

「はい到着。それじゃあね」
「頑張れよ」

足早に去って行く神楽の背中に声をかけると、受話器を手にする。

「はい、お電話変わりました大森でございます」
『あ、浩介ちゃん。これからちょっと理事長室に来てもらえないかしら?』

電話に出るなり、唐突にそう言ってくるのはヘレナさんだった。

「理事長室ってどこですか?」
『そうよね………分かったわ、今案内する人を向かわせたわ。その人に案内してもらいなさい』
「………了解」

さすがヘレナさんだ。
拒否権をさりげなく奪ってきている。

『それでは、健闘を祈る』

そう告げて電話は切られた。

「はぁ……」

もはや僕には溜息しか出なかった。










倉松さんに事情を説明して、出掛ける許可を貰い僕は、九条家の前に立っていた。

「大森 浩介さんですね?」

僕に掛けられた声、その声を僕は前に二回ほど聞いていた。
声のする方を見れば、やはりそこには紫色の髪に修道服のようなものを着ていて、その手には分厚い本があった。

「あ、はい。そうです」
「理事長であるヘレナから、あなたを理事長室まで連れてくるようにと言われてきました。メリロットです」

目の前の女性……メリロットさんは、事情を説明した。

「高月 浩介です。一応ここの料理人をやっています」
「ええ、存じ上げておりますよ。それでは行きましょうか」

そう告げると、メリロットさんはゆっくりと歩き出した。
そして辿り着いたのは、流星学園の校舎内にある場所だった。

「ヘレナ、連れてきましたよ」
「うむ、出かしたぞ」

ノックもなしに理事長室のドアを開ける彼女は、やはりヘレナさんの親友の様だ。
それにしても、時代劇風な事をちらちらと混ぜるのは、一体なんなんだ?

「よく来てくれたわね。さっそく本題に入らせてもらうわ」

ヘレナさんは、唐突にそう告げると、話を切りだした。

「実は、プリエ……ああ、よく言う食堂の事ね。そこの厨房で欠員が出たのよ」
「まさか……」

僕は、そこまでの説明で、今後告げられるであろう言葉を予想した。

「私が何を言いたいのかが分かるなんて、さすが浩介ちゃんね。そうよ。君にはプリエの厨房のシェフの役目を任命する」
「ちなみに拒否権は―「そんなものはない」―ですよね」

もう分かり切っていたことだ。
この人に常識は通じない。
良い人には違いないのだが、やってることが時々無茶苦茶になる。

「一つだけ質問を良いですか?」
「どうぞ」

僕は、聞きたかった疑問をぶつけることにした。

「何の目的で、私たちをここ九条家に呼んだのですか?」
「………あなた達が、九条家に来ることがふさわしいと思ったからよ」

僕は、何となくではあるがそれは建前であるような気がした。
そうでなければ、わざわざ店を潰す必要はない。
九条家ほどの力をもってすれば、潰すことが可能なのだと、この三日間で僕は思い知ることになった。
だからこその、考えだ。

「分かりました。では、あと一つだけ」

僕は、納得しておくことにした。
時が満ちればすべてが分かるからだ。

「あなたは、私達の敵ですか? それとも味方ですか?」
「………それはあなた次第よ」

僕の問いかけに、ヘレナさんは真剣な表情で答えた。
この時、僕は二人が味方であると微かに期待していた。

「プリエの厨房のシェフの件ですが、ありがたく拝命します」
「そう……それじゃ、よろしくね」
「失礼しました」

話もまとまり、僕は理事長室を後にしたのだった。

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第5話 なぜこうなった?

喫茶店にお客さんがたくさん来てくれるようになった。
これからも順風満帆にうまくいくであろうと、僕と神楽は思っていた。
だがそれは、開店から四日経った日に起こった。










僕はとある家の厨房にいた。

「新しく来た大森浩介です。若輩者ですが、よろしくお願いします」
「うむ、私は料理長の倉松だ。ビシバシと行くから気を抜かないように」

僕の前に立っているコック服を着込んでいる40代の男性が、簡潔に自己紹介をすると、そう言ってきた。

「はい、よろしくお願いします!」
「よし、ではまずは料理の下ごしらえからだ。あれを1時間ですべて皮を向け」

倉松さんの指示のもと僕は山積みされていたジャガイモの前に行く。
そして僕は皮をむいて行く。
ちなみに神楽はメイドの仕事をしていた。
だが、僕はぽつりとつぶやいた。

「どうしてこうなったんだ?」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、なにも」

僕のボヤキに反応した倉松さんに、そう答えると、僕はじゃがいもの皮をむいて行く。
どうしてこうなったのか、それは今から三日ほど前にさかのぼる。















それは21日の午後の事だ。

「いらっしゃいませ」

一人の女性がお店を訪れた。
その女性は青色の髪をした女性だった。

「そうね、このティーセットを頂こうかしら」
「かしこまりました」

ケーキと紅茶のセットをこしらえて、女性の前にそれを出した。

「お待たせしました。ティーセットでございます」

女性は、紅茶を一口すする。

「うん、おいしいわ。上出来よ、マスター」
「ありがとうございます」

女性の評価に、僕はお礼を言った。
やはり褒められるのは嬉しくないわけがない。

「こっちもおいしい紅茶を飲ませて貰って嬉しいわ。また来るわね」

紅茶を飲み終えケーキを食べ終えた女性はそう告げると、代金をカウンターにおいて去って行った。

「何だかどこかのお嬢様のような感じだったね」
「ああ、さて、次のお客さんが来ている。てきぱきと動く」

そして、僕たちは再び注文された料理を作って行く。















さらに22日の午後。
ようやくお客の数も安定してきたときのこと。

「こんにちは」
「いらっしゃいま……っ!?」

お店を訪れたお客さんの接客していた神楽が固まった。

「どうした、神楽……っ!」

僕はそのお客を見た時、息をのんだ。
そのお客は………ここに来たときに会った学園の教師の女性だったのだ。

「私に何か?」
「あ、いえ。申し訳ありません。こちらへどうぞ」

いち早く我に返った僕は、女性をカウンター席に案内する。
神楽も続く様にしてカウンター内に入った。

「ご注文はいかがしましょうか?」
「そうですね………では、ティーセットをお願いします」
「かしこまりました」

今巷ではティーセットが流行っているのか? と考えながら、僕はケーキ(今日はショートケーキ)と紅茶を女性の前に差し出した。

「ティーセットでございます」

女性は、上品なしぐさでティーカップを持つと、紅茶を一口啜った。

「おいしいです」
「ありがとうございます」
「紅茶の淹れ方は誰かに教わったのでしょうか?」

女性は、僕に聞いてきた。

「ええ、私も紅茶はよく飲むので、母が淹れているのを見ていたら自然と覚えてしまいました」
「そうですか、とてもよく淹れられていますよ」

女性は柔らかく微笑みながら、そう言うと、代金を支払ってお店を後にした。

「………何か嫌な予感しない?」
「ああ、今晩は厳重に警戒しよう」

女性が去ったのを見て神楽が耳打ちするので、僕はそう告げた。
女性は、自然な様子で店内を見回していたが、あれは明らかに何かを調べているような動きだった。
結局その夜、予想していた襲撃はなかった。
だが、翌日僕が予想が現実のものになってしまった。


★ ★ ★ ★ ★ ★


そこは『私立流星学園』のとある一室。
そこで二人の女性が、真剣な面持ちで話をしていた。

「やっぱり間違いないのね?」
「ええ、あのお店は外部から切り離されています。おそらくは外敵から身を守るための防衛手段でしょう」

青い髪の女性の問いかけに、紫色の髪をした女性が見解と共に答えた。

「それで、あの二人がメリロットが言っていた侵入者?」
「ええ、間違いありません」

青い髪の女性の問いかけに、紫色の髪の女性、メリロットと呼ばれた女性は断言する。

「それで、はっきりと聞くわ。あの二人はもしかして……」
「ええ、その可能性が高いと思われます」
「だとすると、目的はこのリ・クリエか、もしくはただの気まぐれか……」

メリロットの答えに、青い髪の女性は顎に手を添えて考え込む。

「どちらにしても、あの二人をこのままあそこに置いておくのは危険ね……なんとしてでも監視下に置かないと」
「そうですね。私の予想が正しければ、あのお二人は放置しておくのは危険だと思われます」

メリロットの答えに、青い髪の女性はしばらく考え込むと、どこかに電話をかけ始める。
その電話は割と早く終わった。

「これで良し、と」
「ヘレナ、あまり変なことはしないでくださいね」

ため息交じりにメリロットは、青い髪をした女性……ヘレナに忠告をした。

「分かってるわよ……ふふふ、明日が楽しみね」
「はぁ~」

どう見ても分かっていない様子のヘレナに、メリロットは再びため息をこぼした。


★ ★ ★ ★ ★ ★


「あの………もう一度言ってくれますか?」
「ですから、ここから退去してください」

結局昨晩は何の奇襲もなく、僕の取り越し苦労かと思って店を開けると、黒服の人達がたくさん店の前に立っていたのだ。
そして言われた言葉が先ほどの言葉だったりする。

「なぜ私たちが退去をしなければならないのですか? それ相応の理由をお教え願いますか?」
「も、申し訳ありません。守秘義務でお教えすることはできません。とにかくここは退去していただきます」

僕の殺気を放ちながらの疑問に答えようともせず、黒服たちは僕を追いだした。
家財道具すべてはあの人たちが処分するとのことだ。

(これって人権問題だろ?)

神である僕たちが、人権問題を訴えることが出来るかどうかは定かではないが、神楽は怒りをこらえるのに必死な様子だった。

「これは、マスターさんではないか」

呆然と荷物を運び出される光景を見ながら立っていると、突然横から声を掛けられた。

「貴女は一昨日のお客様ですね」

その女性は、一昨日お店を訪れた青い髪の女性だった。

「そうよ。ところで、お店は潰れてしまったのねぇ。残念だわ」
「申し訳ありませ――「しかし、そんなあなた達に朗報よ!」――え?」

お客さんをがっかりさせたことを、謝ろうとした僕たちに、女性はそう言い放った。

「あなた達にふさわしい仕事があるわ。料理もふるまえて、しかも住む場所も用意されるし、衣食住には不自由しない仕事場が!」
「え、えっと………その仕事ってなんですか?」

女性のテンションの高さに、僕は少しばかり引きながら尋ねた。

「それはね~、私に付いて来れば分かるわよん♪」

そう言うと、女性は僕達に背を向けて歩き出した。
まるでついて来いと言わんばかりに。

「ねえ浩ちゃん。どうする?」
「そうだな………話位は聞いてみるか」

神楽の問いかけに、僕はそう答えると、女性の後を急いで追った。










「ここよ!」
「これは……」
「何ともまあ……」

女性に連れられて辿り着いた場所は、今まで入ることが出来なかった流星学園の敷地内にある、大きなお屋敷だった。
表札には『九浄家』と書かれていた。

「おめでとう! 君達には料理人とメイドの仕事が与えられた!」
「「………」」

女性の言葉に、僕達は言葉も出なかった。

「何よ―、ちょっとはリアクションをしてくれてもいいじゃない~」

そんな僕たちに、女性は頬を膨らませながら抗議をしてきた。

「それで、どう? やってみない。二人にとっては、これ以上にない条件だと思うわよ」
【どうする? 浩ちゃん】
【何か狙いがあるような気もするが、このままだと住む場所がない。ここは言葉に甘えておくしかないだろ】

神楽からの思念通話に、僕はそう答えると、目の前の女性に返答を出した。

「宜しくお願いします」
「……お願いします」
「うむ、いい返事よ! あ、私の名前は九浄 ヘレナよ。流星学園の理事長だ、よろしくね」

目の前の女性……ヘレナさんはここのお屋敷の人だった。
そして、時より映画の軍曹のセリフっぽい口調になるのは、一体なんなんだろうか?
そんな疑問を胸に、僕は屋敷内に招き入れられた。
こうして、僕は九浄家の料理人に、神楽はメイドとなった。





本当に、どうしてこうなったんだ?

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