健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第11話 キラフェス~午後の戦いと念願の~

「すみません、遅れました!」
「いや、大丈夫。9秒前だ」

あの後、茫然としていた僕は時間を確かめて驚いた。
なんと、僕が厨房に戻る時間の5分前だったのだ。
大慌てでプリエに戻ったが、何とか間に合ったようだ。

「休めたのか?」
「はい、おかげさまでゆっくりと」

今までで入っていたシェフの問いかけに、僕はそう答えた。
実際に眠っていたらなんとかなった。

「さて、俺達も休ませてもらうとしようか」

そう言ってシェフは奥の方へと入って行った。
おそらく着替えるのだろう。

「さあ、大森君もぼけっとしない。オーダーが山のように入ってるんだ」
「はい、わかりました!!」

主任に急かされるまま、僕は奥の方に向かい服を着替えるのであった。
その後……

「カレーライス大盛りを一つ」
「野菜定食を下さい」
「贅沢イチゴのショートケーキを10個ください」

次々とオーダーが入って行く。
そして、僕は急ピッチでオーダーされた料理を作って行く。
それにしても、最後の人はそんなにケーキを頼んで何人で食べるつもりなのだろうか?
まさか全部一人で食べるなんてことはない……よな?
そんな想像をしつつ、僕は割り当てられた10品の料理を作って行くのであった。










『これをもちまして、流星学園キラキラフェスティバルを終了いたします。皆さん、お疲れ様でした』

時刻は夕方。
女子学生のアナウンスが聞こえてきた。
それと同時に、厨房にいた人たちはウエイトレスたちが拍手を上げる。
僕と神楽もそれに倣って拍手をする。
それは、僕たちの地獄のオーダーから解放されたことの証でもあった。

「皆さん、今日一日お疲れ様でした。皆さんのおかげで本日のキラキラフェスティバルは、無事に終えることが出来ました」

少しして主任に集合させられた僕たちは、主任の言葉を聞いていた。

「今後も変わらなぬ努力をし、頑張ってください。お疲れ様でした」
『お疲れ様でしたー』

主任の話が終わり、僕たちは一斉にそう声をあげた。
その時の達成感は、非常に心地よい物であった。
その後、僕たちプリエにいる者全員で、プリエや厨房の清掃をすることとなった。

【神楽、今夜動くぞ。準備をして九条家前に集合を。見つかった際にする言い訳も考えておくように】
【分かったわ】

その際、僕は念話で神楽に指示を送った。
少しずつ余裕が出てきた今しか動くタイミングはない。
今夜、ようやく念願の流星学園内の、総チェックが出来るのだ。

(さて、どういう言い訳にするか)

僕は清掃をしながら、言い訳を考えるのであった。

(そう言えば、さっきのアナウンスの女子学生の声、落ち着きなく僕にメルファスさんの居場所を聞き出そうとした人と同じ声のような………ま、気のせいか)

一瞬頭の中に浮かんだ疑問に、僕はそう結論付けると清掃をするのであった。

「西田さん! しっかりやりなさい」
「は、はい!!」

どこかでそんな声が聞こえたのは、きっと僕の幻聴だろう。

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第10話 キラフェス~新メニューとナンパ男~

10月27日

ついにこの日がやってきた。
そう、学園の行事である『キラフェス』が!!
そう言えば、このキラフェスと言う名前……正式名称があったようだけど、一体なんだったっけ?

(思い出せないんだから、大したことではないのかも)

「おはようございます。今日は『キラキラフェスティバル』です。ここに訪れるお客さんに、誠心誠意の接客を心がけるよう」
『はいっ!』

主任の朝の挨拶にウェイトレスや、僕達厨房のシェフが一斉に返事をする。

「今日のシフトは皆さんにお配りしたとおりです」

今日はどうもシフト制の様だ。
ちなみに僕は午前中が自由行動となっている。
その理由としては、僕に課せられた新メニューだ。
あの図書館での一件の後、事情をすべて話した上で、新メニューを作り完成したケーキを主任に試食してもらい、OKが出たのが午前3時。
それから朝の仕込などをして、それを終えて戻れるようになったのは、日が出た時間帯だった。
一睡もしていない僕の言葉を聞いた主任が、気を回してくれて僕に午前中の自由行動という名目の、休憩時間を与えてくれたのだ。
いや、当日にシフトが公開されることになっていて本当に助かったよ。
ちなみに、僕の考案した新メニュー『贅沢いちごケーキ』は、しっかりとメニューに大々的に乗っている。
何だか自分の考えた料理が、メニューに乗るというのは、とてもこそばゆい物だ。

「それでは、自由行動組は、時間まで学園内を見て回るなりして楽しんでください。シフトがあるものは準備を」

主任の言葉を聞いた僕は、ふらつきながらプリエを後にした。










しばらく歩いて、たどり着いた敷地内の木々が生い茂る脇道のような場所の草むらに生えている大きな木の幹に、僕は寄りかかるように腰かけた。

(ん? もう始まったのか)

それからしばらくして聞こえてきた周りの喧騒に、キラフェスが始まったのを悟った僕は、出る際に持ってきていた袋の中から、チーズケーキを一個取り出した。
それは、先日プリエで買い置きをしていた物だ。
この日の自由行動時に、ゆっくり食べようともくろんでいた。

「うーん……やっぱりチーズケーキは神の御業だ」

僕は、チーズケーキに舌鼓を打って、周りの景色を眺める。

(和やかだ)

久しぶりにのんびりとできたような気がする。
この一週間は色々とドタバタしていたからね。

「あれ……何だか眠く………なって……き――――」

突然僕を襲った睡魔に抗うことが出来ず、僕は眠りに落ちた。










「――い。君、起きてください」
「うぅ……ん」

誰かに体を揺さぶられながら掛けられる声に、僕は眠い目をこすりながら周りを見る。
すると、目の前に見える人の姿。
ゆっくりと顔を上げ、その人物の姿をしっかりと見た。

「起きたようですね」
「あ、起こしてくれたんですね。ありがとうございます」

僕は、立ち上がって男の人にお礼を言った。
その男の人は、僕のよりも少しばかり背が大きく、眼鏡をかけタキシードのようなものを着込む一見すればどこかの社長にも見える人だった。

「いえいえ。道端で眠っている君がいたので、差し出がましいとは思いましたが、お声を掛けさせていただきました」

すると、男の人はメガネを持ち上げるしぐさをして、僕を見る。

「ところで、君。お名前は?」
「………どうして名前を聞くのです? それに人に名前を尋ねるのであれば、まずは自分から名乗るのが礼儀ですよ?」

男性の問いかけに、僕は少しばかり目を細めて問い返す。

「失礼を。私が美しき女性以外に声をかけたのは、君が初めて……ぜひとも記念にお名前を伺いたいと思った次第です。私の名は、メルファスと申します。以後お見知りおきを」
「大森浩介です」

男性……メルファスさんに、名前を告げた。

「一ついいですか?」
「ご髄に」
「あなた、まさかなりふり構わず、美しい女性に声をかけていませんか?」

僕は、気になった事を聞いてみた。
すると、メルファスさんは

「ええ」
「そうですか………相手が嫌がるそぶりを見せたら、潔く引いてくださいね? しつこい男は嫌われるそうなので」

ナンパ男だと知った僕は、ため息をつきながら、忠告した。

「ご忠告ありがとうございます」
「あ、それと……起こしてくれたお礼には足りませんが、これをどうぞ」

僕はそう言って手にしていた袋をメルファスさんに差し出した。
それを見たメルファスさんは、一瞬驚いた風に僕を見る。

「よろしいのですか?」
「ええ。ご迷惑でなければ」
「それでは、ありがたく受け取らせていただきましょう」

僕の差し出した袋を受け取ったメルファスさんは、僕に一礼する。

「それでは、また縁がありましたらお会いしましょう。アディオス」

そう告げた瞬間、バラの花びらが舞い狂う。

「うがッ!? ッぺ! ッぺ!」

その花びらが口の中に入り、僕は慌ててそれを吐き出す。
そして、その光景に混ざるように、メルファスさんは走って行った。
………消えるんじゃないのか?

「すみません!!」
「のわぁ!?」

いきなり背後から掛けられた大きな声に、僕は飛び跳ねてしまった。
声のする方を見ると、金色のツインテールの女子学生と黒髪の女子学生が立っていた。
何だか、二人とも殺気立っていて怖い。

「さっきここを変な男の人が通りませんでしたか?!」
「あ、えっと……その人でしたら、あっちに」

彼女の剣幕に押されるように、僕は先ほどメルファスさんが去って行ったであろう方向に指差す。

「ありがとうございます!!」

僕の指差した方向に向かって、女子学生達は走って行った。

「………最近の女子学生は、活発だよな」

半分呆れと時代の流れを感じながら、僕はそう呟くのであった。














■おまけ■

とある日の天界……浩介達しか入ることのできない場所。

「ねえねえ、鍋料理を食べよう!」

それは、神楽の一言が始まりだった。

「鍋料理? 確かに体はあったまるだろうが、一体何の種類にする気だ? おでん?」
「闇鍋!!」

浩介の問いかけに、神楽は胸を張ってこたえる。

「はぁ!? 神楽、落ち着きたまえ。早まるな!!」
「何よ、別に死ぬわけじゃないんだから、良いじゃない」

血相を欠いた様子のノヴァの制止に耳を貸さずに、神楽は準備を進める。
既にコンロと土鍋の用意はできていた。

「後は……」

神楽が指を鳴らした瞬間、

「うわ!?」
「神楽! 周辺を黒く染めて辺りの景色を見えなくさせるのはやり過ぎだ!!」

今まで白一面の世界が、まるで闇に包まれたかのように真っ黒になっていた。

「ふふふ、これこそが闇鍋! 毒を食らわば皿までという言葉を知らないの?」
「それ、用法的に間違っているぞ!?」
「しかも自分で毒って言ってるし!?」

浩介とのヴァのツッコミが入る中、二人の目の前に闇鍋の具材が入った器が置かれた。

「さあ、召し上がれ」
「「………い、いただきます」」

戦々恐々の面持ちで、それを口にする二人。

「「ッ!? ~~~~~~~~ッ!!!」」

そして、そのあまりの味に、二人は地面をのた打ち回る。

「うーん……まだまだ足りないわね。ここはハバネロを入れて……」
「「――――――――」」

二人が気絶していることにも気づかず、神楽は淡々と料理を続けた。





その後、神楽は二人によってきついお灸が据えられたのは言うまでもない。

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『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』最新話を掲載

こんばんは、TRです。

大変お待たせしました。
本日、『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』の最新話を掲載しました。
移転作業も残すところあと少し。
最新話掲載まで、もうしばらくお待ちください。


それでは、これにて失礼します。

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第9話 地獄の先は地獄?

かくして始まった僕と神楽の追いかけっこ。
フライパンを振り回しながら僕は追いかけ続ける。

「待て! このケーキ泥棒!!」
「待たないよ!? というより、ケーキ一個で大げさだよ!!」

神楽の一言に、僕の中で、さらに何かが切れる音がしたような気がした。

「もう容赦はしない! フライパンがへし折れるまで叩き潰すッ!!!」
「もうそれただの逆恨みだから!!?」

そのまま逃げる神楽を追いかけ、大きな屋敷の前の道を伝いに、再び学園の方へと向かって行く。
後日考えればそこは九条家の屋敷前だったが、今はそんな事は頭に浮かばなかった。
そして、そのまま校舎の中に入り、階段を上がって行く。

「待て!!」
「待たないよ!!」

そう答えながら、ドアを開くと中に入った。

「待てやごらぁ!!!!」
「うおわああ!!?」

部屋のドアをけり破って中に入り、窓際にいた神楽へと突進する。
その部屋には栗色の髪の女顔の男子学生と、赤い髪をした女子学生がいたが、それにかまわずテーブルを飛び越えながら、フライパンを振りかぶる。

「チェストォォォ!!!」
「きゃああああ!!?」

当たると思ったその一撃は、神楽がその場を離れたことにより不発となった。
さらに、神楽の後ろにあった窓ガラスを思いっきり粉砕した。

「待てぇ!!!」
「ちょっと、これどうするんだ!?」

後ろから声が聞こえたが、構っている暇はない。
廊下に出ると、そこには上へと続く階段のようなものがあった。
しかも閉まりかけている。

「させるかぁ!!」

僕は豪快に階段に飛び乗ると、一気に駆け上がり3階へと足を踏み入れた。
そこは何もなく、奥の方に駆けて行く神楽の姿を見つけた。

「逃がさないぞ! 神楽!!!」

神楽を追いかけながら、僕は声の限り叫ぶ。

「もう勘弁して!!」

神楽も神楽で、そう叫びながら隠し階段を下りて行く。
僕もその隠し階段をほぼ飛び降りるように、降りていくとそこはヘレナさんが言っていた『新校舎』という場所だった。

(どこに行きやがった!)

僕はあたりを伺う。
すると、外の方に出て行く神楽の後姿があった。

「見つけたぞ!! 待て!!」

そして僕も駆けだした。
再び補足した神楽と僕との距離を、徐々に縮めながら追いかける。
敷地内を抜けると、最初に降り立った場所……高い塔のある場所にたどり着いた。

「待て神楽!! 今なら500回で勘弁してやるからさぁ!!!」
「それ勘弁してないよね!? というより、浩ちゃん目が血走ってるぅ!!」

なんだろう、こうしてるのが楽しくなってきた。
これがいわゆるランナーズハイだね!
高い塔の前を通り過ぎた僕たちは、今度は広いグラウンドのような場所に出た。
そこの長距離走などで使う、ラインが入った場所を走る。

「ほらほらほらほら!」
「もはや言葉が出せなくなってるよ!?」

グラウンドを5周ほどした後、神楽は抜けるように走り去る。
それを追いかけるようにして、僕も追いかける。

「ここの中に、かくまって貰おう!!」
「ははははは、待てぇ!!!」

西洋風の大きな建物の中に入って行った神楽を追い、僕も中に入る。
そして、僕は神楽を的確に角へと追いやって行く

「これが本当の袋の鼠だ!!」
「し、しまったぁ!? 間違えて奥の方に!!」

神楽は、慌てて周囲を伺い逃げる場所を探しているが、全ては無駄なあがきだ。

「神楽、覚悟ぉぉ――――ッ!?」
「ッ!?」

フライパンを頭上に構えた瞬間、僕は固まった。
それは神楽も同じようで、息をのんでいた。
まあ、神楽の場合は別の理由だろうが。

「そう言えば、ここってどこ?」
「えぇっと……図書館の様だね」

死に物狂いで追いかけっこをしていたことなど、すっかり頭の中から吹っ飛んでいた僕達は場所の確認をした。

「図書館内は、静かにすることがマナー……だよな?」
「ええ……私達は、見事にそれを破ってたよ」

神楽と確認し合うようにつぶやく僕たち。

「僕さ……後ろを振り向きたくないんだけど」
「同感ね。私も今は浩ちゃんの背後を視たくはないかな」

この時の僕たちの表情は、引きつっていたと思う。
何せ、僕の真後ろから鋭い槍のように怒りの感情を含んだ視線が突き刺さっているのだから。
僕は、壊れたロボットのごとく、振り返った。
そこには……

「図書館内は、お静かに」

万弁の笑みを浮かべているメリロットさんがいた。

「あれ? なんで肩を掴むの? そしてどこに連れて行くつもり!?」
「ふふふ、少しだけお話をしましょう。大丈夫、お茶菓子もたっぷり用意してありますから」

右手で神楽の腕を、左手で僕の腕をつかむと、ものすごい力で引きずって行く。

「僕は被害者ぁ~!!!!」

僕の叫びは、図書館内に虚しく響く。
そして、それから数分後……

「「ぎにゃああああああああ!!!」」

僕と神楽の悲鳴が響き渡っただろう。
それから後の事は、覚えていない。

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第8話 世の中、不思議がいっぱい

10月26日

この日、僕はこう問いかけたくなった。
なぜこうなった?

「本日、ここのウエイトレスとして働く、西田神楽です。よろしくお願いします」

ここはプリエ。
朝の挨拶の時に、現れたのが神楽だった。

【どうしてお前がここにいる!!】
【知らないわよ。私も、今朝になってヘレナさんにここで働いてほしいって言われたんだから】

僕の念話に、神楽が呆れた様子で答えた。
どうやら、あの人の仕業の様だ。
本当に世の中不思議がいっぱいだ。
さて、今日はきらふぇすとやらの学校行事の前日らしい。

「いい? 放課後も手を抜いてはダメよ。放課後もまた地獄なのだから」

それが主任の言葉だった。
何時ものように昼のお弁当&昼食ラッシュを切り抜けた僕は、急ピッチで放課後になったら作るように言われたメニューの、下準備を澄ましていく。
昼休みの時に大勢来た生徒を裁き切って、疲労困ぱいしている神楽はへとへとになりながら、目まぐるしく動いていた。

【浩ちゃん~、地獄よ……ここは地獄よ~】
【僕が夜に学園内を見に行けない理由が、よく分かっただろう?】

神楽の叫びに、僕はそれだけ告げた。
この忙しさは、僕達でさえも初めてでなければ余裕でこなせるが、初めてだとかなりきつい。
こうなることを、一体誰が予想できるであろうか?

「すみません、お水下さい」
「ポテトまだですか?」
「はい、ただいま!」

お客からの言葉に、神楽は半ば投げやりに返事をしていた。
気持ちは分からなくはないが、それだと主任に怒られるぞ?
ここの主任は、とにかく厳しい。
業務態度が悪いウエイトレスには、容赦なく鉄槌を下す。
あ、神楽が捕まった。

「ぎにゃあああああああ!!!」

そして、鉄槌をもろに受けた。
その悲鳴は、とても悲痛な物だった。

(神楽、今日はお前にとって最悪な日になってしまったな)

心の中で、軽く同情をしながら、俺はオーダーされたメニューの料理を作って行くのであった。










お客の流れも一通り落ち着いた頃、僕はあるものを探すため厨房内を歩いていた。

「どうしたの? 浩介さん」
「ああ、神楽か。ちょうどいい、この辺にケーキはなかったか?」

ちょうど厨房に入ってきた神楽に、僕は問いかけた。
僕が捜しているのは、贅沢イチゴケーキだ。
なぜ、それを探しているのか。
それは、約3時間ほど前にさかのぼる









主任に呼ばれて伝えられた話では、どうも今回のキラフェスとやらで、プリエの料理を学生に知ってもらうために料理を賄うことになっている。
そして、そこで新作を出そうということで、僕に白羽の矢が立ったのだ。
新作の料理を一品作り、それを主任に食べて貰ってOKをもらう。
それが出来なかった場合は、僕は徹夜で働くことになる。
なので、当然僕は本気で新作料理の製作に当たった。
そして完成したのが、贅沢イチゴケーキだった。
もはや僕の十八番と化している、このデザートにすべてをかけたのだ。
お客のオーダーした料理と並行して作り、完成させるのに3時間ほどかかって完成させたこのケーキを食べて貰おうと、主任を探しに厨房を離れた。
その時間はわずか10分だ。
そして主任を連れて戻った時、ケーキはまるで最初から無かったかのように消えていたのだ。
そして今に至る。










「あー、あのケーキだったら私が食べちゃった」
「…………は?」

神楽の言葉に、僕はそれしか口に出せなかった。

「イヤー忙しかったから疲れちゃって、景気づけにと一口ね。とってもおいしかったな~」
「……」

神楽の言葉を聞いて、僕は妙に冷静になった。
冷静なのに体中が温かくなってくる。

「神楽」
「何? 浩ちゃん」

何故か巣に戻っている神楽だが、そんなことは僕には気にもならなかった。

「覚悟は、出来ているだろうな?」
「へ?」

僕の問いかけに、首を傾げる神楽だが。
僕はちょうど右手に持っていたフライパンを振り上げた。

「その腐りきった性根、叩き直してくれるわ!!」
「え? ちょっとま―「聞く耳持たぬ!!」―きゃあああ!!?」

僕の豹変ぶりに驚く神楽目がけて、フライパンを振り下ろす。
だが、神楽はそれを得意の身体能力で交わすと、一気に駆け出した。

「待て! このケーキ泥棒!!」

僕は、その後を追いかける。
こうして、僕と神楽の果てしない追いかけっこが幕を開けた。

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