健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第80話 廃部!

男子生徒に忠告をしてから2日ほどが過ぎた。
何の音さたもなく、特に問題なども起こらなかった。

(あの忠告で引き下がったのか?)

心の中でつぶやいてみるが、それはおそらくありえないだろう。
あのタイプの人間が素直に引き下がるはずがない。

(まあ、最悪の状況を予期して、対策はすでに施しはしたけど)

現在はそれが完成していない。
だが、そろそろ完成したものを持ってくるはずだ。
僕の頼んだものを一緒に持った”あいつ”が。

「あの、練習をしなくていいんですか?」

この日もまたいつものようにティータイムが繰り広げられていた。
ここのところ毎日のため、梓が声を上げるのも仕方のないことだった。

「これを食べ終えてからだよー」
「極楽じゃー」
「……やれやれ」

待ったりとお菓子に舌鼓を打っている律たちに、澪がため息交じりに肩を竦めた。
それだけで、今日も昨日の二の舞になるということ物語っていた。

「いいんじゃないの。バンド名を現していて」

梓にそう言いながら、僕はチーズケーキに舌鼓を打つ。
少しすれば山中先生がやって来てティータイムに加わるだろう。
それがいつもの僕たちなのだから。
だがそんないつもの軽音部、放課後ティータイムの一幕は一瞬で終わりを告げることになる。

「ちょっと、あなたたち!」

血相を欠いた真鍋さんの訪問によって。

「ど、どうしたんだよ? 和」
「どうしたもこうしたもないわ! あなたたち一体何をやらかしたの!」

尋常ではない真鍋さんの様子に、律が用件を尋ねるが真鍋さんは息を切らせており、話が見えてこなかった。

「和ちゃん?」
「とりあえず、落ち着いて話して。どうしたんだ?」

そんな真鍋さんの様子に唯が首をかしげる中、僕は真鍋さんを落ち着かせることを優先させた。

「ごめんなさい。さっき会長からいきなり言われたのよ」

冷静さを取り戻したのか、真鍋さんが事情を話し始めた。

「何て?」
「『軽音楽部を本日付で廃部にする』って」

ムギの疑問に答えるように、真鍋さんはその内容を告げた。

「………はい?」

そのあまりにも強烈過ぎる内容に、僕たちは一瞬頭の中が真っ白になった。
だが、それでもじわりじわりと頭で理解していく。

『えぇっ!!?』

そして驚きの声が響き渡った。

「ど、どどどうして!?」
「それが私や会長にもさっぱりなのよ。ただ、これは学校側からの通達なのは確かよ」

混乱した様子で問いただす澪に、真鍋さんは申し訳なさそうに首を横に振りながら答える。

(学校側……か)

「私たち、何かしましたか?!」
「はっ! もしかして学園祭のライブに遅れたからそれで!?」

各々が、顔を青ざめさせる。

「いや、そんな理由じゃない」
「浩介君?」
「浩君?」

そんな中、僕はきっぱりと唯たちの予想を否定した。

「何か心当たりでもあるのか?」

澪の問いかけに、僕は頷くことで答えた。

「真鍋さん、ちょっと頼みがある」
「何かしら?」
「生徒会長殿にこの学校で一番偉い、理事長ないしは校長室に案内させて」

僕の頼みは、生徒会長を同伴して一番の権力を持つ人物の下に向かうことだった。

「曽我部先輩を? でも、もうじき引退よ?」
「良いんだよ、それでも。会長とかいう権限は関係ないから」
「……? 一応頼んでみるから生徒会室前で待っててくれる?」

僕の答えに、真鍋さんは理解できないと言った様子で首をかしげながらも、頷くと真鍋さんは足早に部室を後にした。

「浩介先輩、やっぱりこれは――」
「一応言うけど、この件はみんなには責任はない。僕の判断ミスだ」

僕は梓の言葉を遮るようにしてそう告げた。

「え? それって、どういう――」
「話はあとだ。ちょっと行ってくる」

僕は疑問の声を封じて、部室を後にした。

「…………」

一度僕は深呼吸をして、心を落ち着かせる。

(そこまでしてでも、お前は自分の思い通りにするか)

きっと今頃どこかでほくそ笑んでいるであろう人物に、僕は心の中で問いただしながら僕は生徒会室の方に向かうのであった。










「ここが理事長室よ。この学校で一番偉い人にあたる」
「………」

生徒会室前で会長と合流した僕は会長を同伴させて、この学校で最も権力のある人物の部屋の前までやってきた。

「一体どうする気? 言っておくけど私でも理事長を説得するのは不可能よ」
「ご安心ください。あなたにそこまで期待はしてませんから」

会長の心配そうな言葉に、僕は笑顔で返した。

「そうやって笑顔で返されると、怒りを通り越して清々しい気持ちになるわ」
「あなたには一種の証人になってもらいます」

会長の言葉をスルーして、僕は会長に来てもらった理由を話した。

「この中での話し合いでは、ある約束事が交わされます。ですが、所詮は口約束……どちらかがそれを反故にする可能性もあります」
「それで、その約束事を躱したという証人になれ、ということね」

僕の説明で、ようやく僕の目的を理解した会長の言葉に、僕は頷くことで答えた。

「そう言うことなら、私は喜んで引き受けるわ」
「ありがとうございます」

建前とかを気にせずに、僕はお辞儀をしてお礼を言った。
今からすることは、会長の存在がなければ決してできないことなのだから。

「別に、お礼なんていいのよ。だって、――――――」

会長が何かを言ったような気がするが、声が小さくて聞き取ることができなかった。
僕もさほど重要なことではないだろうと判断して、聞きかえすこともしなかった。

「それじゃ、入りましょう」

会長はそう告げると、理事長室のドアをノックした

『はい』
「生徒会長の曽我部です」

中から渋い男性の声が返ってきた。
その声に、会長は堂々とした声色で名乗った。

『どうぞ、お入りください』
「失礼します」

理事長から入出を許可された僕たちは、理事長室に足を踏み入れた。
理事長室内はアンティーク調の家具などが置かれ、威厳のような物を感じさせる雰囲気であった。
その奥の方の社長椅子の方に腰掛けている初老の男性が、理事長だろう。

「おや、君は……」
「初めまして。2年1組の高月浩介です」

僕の存在に気付いた理事長の問いかけに、僕は自分の名前を名乗った。

「それで、いきなり訪ねてきて何の用かね?」
「私が話すことがあることをよくわかりましたね?」

理事長が会長ではなく僕に用件を尋ねたことに、驚きながら僕は理事長に尋ねた。

「ただの勘だよ。それで、用件は?」
「先ほど生徒会から軽音部に廃部の知らせが届きました」

僕の切り出したよう県に、理事長は僕から視線を逸らした。

「部員の人数は満たしており、部としての活動を行っている。それなのになぜ、廃部なのでしょうか? 具体的かつ私が納得のできるお答えをいただきたい」
「………」

僕の問いかけに、理事長は口をつぐんで何も答えようとはしない。

「圧力を掛けられているのではないですか? 例えば、内村財閥かそれに関連する場所から」
「……っ」

鎌をかけてみたところ、効果はてきめんだった。
先ほどまでの様子とは打って変わって、驚いた表情を浮かべた理事長は僕の顔を見てきた。
その顔は”どうして知っているのか?”と物語っていた。

「そうなんですか? 理事長」
「………」

会長が僕に続くが、理事長は何も答えようとはしなかった。

(おそらく、口止めされているんだろうな)

例えば、第三者に口外したら学校をつぶすなどと言って。
だとすれば、僕はそれを守らせたうえで情報を得なければいけない。

「理事長。でしたら、自分たちは理事長の独り言を聞いたということでいかがでしょう?」
「……分かった」

僕の提案に、理事長は首を縦に振った。
つまりは、理事長が話すことはただの独り言で、それを僕が勝手に聞いたということだ。
何かを言われても”独り言”で片づけられる。
まあ、今回の相手は一筋縄でいくような相手ではないけれど

「内村財閥の要求というのは一体なんだったんでしょうか?」
「君が所属する軽音楽部を、即廃部にするようにというものだった」

僕の問いかけに、理事長が答えてくれた。

(やはり、僕が狙いか)

「でも、一体どうして理事長が一学生の要求を?」
「内村財閥は、文部省のお偉いさんに親友がいるらしい。文部省が本校に対して何らかの行動を起こせば、この学校はただでは済まない」

どうやら、内村財閥はかなり強力な力を有しているようだ。

(権力という名の力を自分で得たわけではないのに我が物顔でふるう……僕の嫌いなタイプだな)

どうやら、僕は相手に対して遠慮をする必要はないようだ。

「元々気になってたんですが……」

僕は、ふとある疑問を理事長にぶつけてみることにした。

「彼には人格的に大いに問題があるように見受けられます。そのような人物が、なぜこの学校にいるのでしょうか?」
「……………文部省から圧力をかけられたんだ。言うとおりにしなければ補助金を出さないという」

理事長の悔しさ、苦しさは声からでも十分に把握することができた。

「ひどいわ……まったく」

隣に立っている会長ですら嫌悪感を感じているほどだ。

「ありがとうございます。それで、ここから一生徒ではなく、一個人としての話になるんですが……」
「何を言ってるのかね?」

僕の言葉に、戸惑いの色を見せる理事長をしり目に、僕はポケットから一枚の紙を取り出しながら声を上げる。

「もし、内村財閥によって文部省から不当な圧力が加えられた際はこちらに連絡を。きっと資金援助を無償で行ってくれるはずですから」
「これは………君はいったい何者かね?!」

僕の手渡した名刺を手にした理事長の驚きように、僕は心の中で苦笑しながら

「さあ、誰でしょう?」

ととぼけて答えるのであった。










「今回は、本当にありがとうございました」
「それはいいのだけど、本当に大丈夫?」

会長が言っているのは風紀班や生徒会などがバックアップに着くという話だった。
確かに、風紀班などがバックアップとしてついてくれれば、学校内ではこれ以上ない後ろ盾だ。

「ええ。一部活に、そこまでするのは不公平でしょう」

僕はその理由で、断ったのだ。
強力な後ろ盾は確かにあることに越したことはないが、ほかの部活に対してかなり不公平にも思われてしまう可能性もあった。
尤も、僕が知る中で強力な後ろ盾はすでに大勢いるのだから、必要がないというのもあるが。

「それに、自分でまいた種ですし、我々で対応したいんです」

それが、一番の理由だったのかもしれない。

「……分かったわ。でも、もし必要になったらいつでも言ってちょうだい。できる限りのことはするわ」
「ありがとうございます」

僕は会長に頭を下げてお礼を述べた。
正直そんな時は来ることがないとは思うが、でもその気持ちだけでもとてもありがたかった。

「それじゃ、僕は部室に戻ります」
「ええ。がんばってね」

会長からのエールを受けながら、僕は部室に向かうのであった。





「あ、浩介!」
「ごめん、待たせた」

部室のドアを開けると待ってましたと言わんばかりに、全員が一気に僕の周りに集まってきた。
そう言えば、山中先生の姿を見かけないが、もしかしたら忙しいのかもしれないと、僕は自己完結させた。

「どうだったんですか!?」
「そうだよ、もったいぶらずに話してよ!」
「とりあえず、説明するから落ち着いて」

僕は、矢継ぎ早に話しかけてくる皆を落ち着かせた。

「まず、今回のこの廃部の知らせはやはり、唯に脅迫状を送った犯人の仕業だった」
「はい!?」

僕の説明が、予想外だったのか律が驚きの声を上げた。

「ち、ちょっと待って。それじゃ、その犯人がこの部を廃部にするようにさせたというわけ?」

律の推測に、僕は頷くことで答えた。

「そんな馬鹿なことができるわけが―――」
「ううん。できるかもしれない」

信じられない律に反論をしたのは、ムギだった。

「まあ、ムギだったらば相手がどのようなことをしたのかくらいは想像がつくだろうね」
「ええ。お父様がよく話していたから」

楽器チェーンを展開する琴吹グループだ。
”権力を利用した圧力”の手口を知っていて当然だった。

「えっと、つまりどういうこと?」
「それは―――」

何を言っているのかがわからない澪たちに、わかりやすく説明しようとしたところで、物置部屋のドアが開いた。

「自分たちの持つ権力で、圧力をかけてきたのよ。奴らは」
「「和!?」」
「和ちゃん!?」

突然現れた真鍋さんの姿に、全員が驚きの声を上げた。

「ど、どうして和ちゃんがあそこから入ってくるの?」
「いや、それ以前に何でそこまで言えるんだよ」

唯の疑問の声に律も続いた。
確かに、普通に考えればおかしいことだろう。
だが、それはおかしくもなんともなかった。

(あのバカ)

僕は頭を抱えたくなってしまった。
僕の目がその理由を物語っているのだ。

「その答えはすぐにわかるぞ」
「え?」

数歩前に出て真鍋さんと対峙する。

「このナイフによってな」
「えっと、浩介先輩何をするつもりですか?」

僕が取り出したナイフに、梓は慌てて真鍋さんと僕を見ながら疑問を投げかける。

「何を? ナイフを出してすることと言えば、これしかないだろ」

僕は梓にそう答えると、ナイフを勢いよく真鍋さんの急所に向けて投げ飛ばすのであった。

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