新入部員を獲得して初めての部活の日を迎えた。
「………」
いつもの席に腰掛けていた僕は、今後のことについて考えをめぐらせていた。
今後のこと、それはバンドの形式だ。
現在は、ギターが二本にベースが一本、ドラムとキーボードが一つずつという形式になっている。
そこに加わった新入部員でもある梓のパートは、ギター。
すると、ギターが三本になってしまう。
そう言うバンドもあることにはあるが、そうなると曲の編成だ。
三本のギターを有効に使う曲というのはある意味難易度が増す。
だからと言って、片方のパートと同じパートを弾く形式は、タイミングや音程などすべてを合わせなければいけないため、演奏の難易度が高すぎる。
(ラインを作るべきか、それとも同一パートで弾くべきか……)
当然だが、こういうことはみんなで話し合って決めるべきだ。
だが、一応考えておくのが筋というものだろう。
「こんにちは!」
そんな結論を出した時、部室のドアが開けられ元気な声が掛けられた。
ドアを開けたのは、新入部員でもある梓だった。
その背中には自信の相棒となるギターがあった。
「お、元気いっぱいだな」
「はい! 放課後が待ち遠しかったです」
律の言葉に、梓は元気な声で若干興奮気味に答えた。
「それじゃ、梓も来たことだし早速……」
「練習ですか!」
律の言葉を受けて、梓はさらに前のめりになって尋ねた。
それを見ながら僕も練習をする準備をしようと席を立ちあが―――
「お茶にするか」
「え!?」
りかけたところで告げられた言葉に、思わずずっこけてしまった。
「浩君大丈夫?」
「またベタなコケを」
「だ、大丈夫」
そんな僕に気遣いの言葉をかけてくる律とあきれた様子で声を上げる二人に答えながら、僕は席に座り直した。
(普通、新入部員を獲得して最初の部活動の時は練習しないか?)
この軽音部は練習とお茶を飲む時間の比率は2:8だ。
つまり、練習は全くと言っていいほどやらないと言っても過言ではないのだ。
とはいえ、新入部員が来たのだからいい刺激になって比率が5:5になるか、変わらなくとも最初ぐらいはまじめに練習をする物と踏んでいたのだが、いつものように平常運転だった。
「ほら、座って座って」
「は、はい」
律に促されるまま律の対面の席に座らされた梓のもとに、紅茶の入ったティーカップが置かれた。
「あ、あの。部室でこんなことをやっても大丈夫なんですか?」
「大丈夫だって」
不安げな表情の梓に、律は軽く答えた。
そして今度は僕の方に視線が向けられた。
僕はそれに肩をすくめて答えた。
「あ、やってるわね」
「ッ!」
程なくして現れた顧問の山中先生に、梓の体が震えた。
そして、自分の左側……僕から見ると対面に腰かけた山中先生に、うつむいた。
「あ、あのこれは――」
「ロイヤルミルクティーをお願いね」
罪悪感のようなものがピークになったのか、いたたまれなくなったのか、梓がしなくてもいい釈明をし始めたところで、山中先生はムギに紅茶を淹れるように頼んでいた。
さすがにそれは予想外だったのか、驚きをあらわにする梓に、僕は苦笑しながら先ほどおかれた紅茶を一口すするのであった。
「顧問の山中さわ子よ。よろしくね」
「中野梓です。よろしくお願いします」
遅れてやってきた澪を交え、梓と山中先生は自己紹介をした。
「お菓子もどうぞ」
「お、ケーキだ!」
そして各々が自由気ままに動き始めた。
ある者は雑談をしたり、またある者は雑誌を読んだり等々、ばらばらだった。
(うーん。机を一つ増やすべきか)
かくいう僕も、その例にもれずに考え事をしていたわけだが。
今現在、ムギが立ちっぱなしになっている。
僕が立てばいいのかもしれないが、それでムギが快く座ってくれるのかが疑問だ。
人に立たせといて自分が座ることはできないという性格ならば、まず無理だろう。
(机を増やすとなるとやっぱり生徒会か。一度掛け合ってみるか)
そう心の中で結論付けた僕は、ふと梓の方へと視線を向けた。
梓は戸惑った様子で律たちを見ていた。
やがて、何を思ったのかいきなり立ち上がるとギターケースから、ボディーの色が白と赤色を基調としたギターを取り出すと、ストラップを肩に通して構えた。
(まさか、この雰囲気を強行突破して練習をさせようとする気か!?)
梓のやろうとしていることがわかった僕は、勇敢な行動に目を瞬かせた。
ピックを手に、弦をストロークさせた。
すると甘い音色の音が響き渡った。
「うるさーいっ!!!」
「ひぇぇ!?」
やはりと言うべきか、魔人と化した(非常に失礼な言い方だが)山中先生の一喝が浴びせられた。
「ぅ……ぅ」
その迫力に、梓は涙ぐむと床にうずくまってしまった。
「さわちゃんのドアホウ!」
「だって、静かにお茶したかったんだもん」
律の一喝に、山名先生はハンカチで目元を抑えながら言い訳をした。
「だもんって、年を考え――「今なんか言ったか。あぁん?」――空耳でしょう」
山中先生のやくざでもビビッて逃げていくのではないかという視線から逃げるように立ち上がると、うずくまっている梓の素へと歩み寄った。
「大丈夫だ」
「あの先生ちょっと変なんだ」
「変とは何よ」
僕に続いて声を掛けた澪に、山中先生が抗議の声を上げる。
(ちょっとどころか、”かなり”だけどね)
口に出したら今度こそ危ないと思った僕は、心の中でツッコんだ。
「ほら、一緒にケーキを食べよう!」
「ティータイムがうちの売りなんだ」
(そんな売りはいらない)
心の中で再びツッコんでいるが、梓の反応がない。
見ると、梓の肩が震えていた。
悲しみと言うよりも、それとは真逆のオーラをまき散らしながら。
「こんなんじゃ、だめですっ!!!」
ついに我慢の限界に達したのか、勢いよく立ち上がると大きな声で叫んだ。
「うわ、キレた!?」
「今度はこっち?!」
今日はよく誰かがキレる日だなと、まったく見当違いなことを感じていた。
「皆さんやる気が感じられないです!」
まったく同意見だった。
「い、いや、新歓が終わって間もないから」
「そんなの関係ないです!」
律の見苦しい言い分をバッサリと切り捨てた。
「部室を私物化するのは良くないと思います! ティーセットは全部撤去するべきです!」
「それだけ、それだけは~」
梓のまっとうな意見に、上着をつかんで涙ながらに懇願するのは山中先生だった。
「「どうして先生(あなた)が言うんですかっ!!」」
山中先生の醜態に、思わず梓と同時にツッコんでしまった。
梓の言っている正論は、僕が常日頃から言おう言おうと思っていたことだった。
「ま、まあとにかく落ち着いて――」
「これが落ち着いていられますかっ!!」
律がなだめるが全く効果はなく、怒りが収まらなかった。
そんな彼女の背後に忍び寄る怪しい(そうでもないが)影。
「いい子、いい子」
「そんなので落ち着くはずが――」
背後から抱きついた唯がやさしく梓の頭をなでる。
そんな彼女に、梓は
「ほわ~~~」
(お、おさまってるし)
幸せそうな表情を浮かべており、すっかり落ち着きを取り戻していた。
「さっきは取り乱してすみませんでした」
数分ほどして、落ち着きを取り戻した梓が僕たちに頭を下げて謝った。
「ううん。大丈夫だよ。まったく気にしてないから」
「え!?」
唯のフォローに、表情がこわばる梓。
(少しは気にしろよ)
その気持ち、わからなくもない。
「梓の言うことは一理ある。みんなもちゃんと練習をするように」
「これを機会に練習の時間を増やしなよ」
澪と僕の言葉に、全員は若干不服そうに返事を返した。
こうして、新入部員である梓を加えた初めての部活動は、不穏な雲行きで幕を閉じることとなった。
土曜日日曜日を跨いだ月曜日の放課後。
新入部員梓を加えた二回目の部活動の日を迎えた。
「浩介、浩介!」
「なんだ、鬱陶しい」
大きな声で名前を二回も呼ばれた僕は、不機嫌であることを隠そうとせずに返事を返した。
「うわ、いつにもまして不機嫌だな。何かあったのか?」
「強いて言うなれば、部活に行こうとしたのを止められて、それがしかも慶介だから……かな」
僕は考え込むようなしぐさをしながら、慶介に答えた。
「ひどっ!? 本人前にして言いますか?!」
「普通は言わないけど、慶介だから」
慶介は罵声されても喜びそうな気がする。
「俺とお前は親友だもんな。フッ! もてる男はつれぇぜ」
「……………」
かっこをつけるように髪を払う慶介に、僕は彼を無視して教室を後にした。
「って、そうじゃなくてたな! お前に訊きたいことがあるんだ!」
「なんだ?」
ため息をつきながら足を止めた僕は慶介に向き直る。
「軽音部に新入部員の女子が来たそうじゃないか」
「本当に耳が早いな。それがどうした?」
僕は話の続きを促した。
「おめでとう。ようやく念願の新入部員を獲得できたんだし、しっかりやれよ」
「慶介……」
いつになくまじめな面持ちで送られた祝福の言葉に、僕は感動に飲み込まれた。
いつもはあれな慶介だけど、やはりちゃんとしたいいやつなんだ。
「それで、その子の胸の―――」
その一言がなければ、もっとよかったが。
僕は慶介をいつものように始末すると、今度こそ軽音部の部室に向かうのであった。
「ん? あれは」
階段の前に差し掛かったところで、うつむきながら歩いてい来る黒髪の女子生徒の姿が目に入った。
「梓」
「え? あ、浩介先輩。こんにちは」
声を掛けられてようやく僕の存在に気付いた梓は僕の方を見ながら挨拶をしてきた。
僕もそれに返しつつ、一緒に部室に向かうこととなった。
「あの、浩介先輩」
「何?」
階段を上っていると、横からかけられた声に僕は用件を尋ねた。
「その……この間はすみませんでした」
「その件に関しては梓には非がないんだし、謝る必要はないよ」
前回の大激怒の件を謝ってくる梓の律義さに感心しながら、僕はそう返した。
「でも、皆さんに迷惑をかけて……」
「迷惑? ご冗談を、梓は正論を言ってるんだから、迷惑なんて思ってないし。というか、梓の言っていたことは僕が日ごろから言いたかったことだから、それを言ってくれて感謝してるくらいだ。ありがとね、梓」
「そ、そんな。私は……」
僕のお礼の言葉に、梓は慌てながら反応してきた。
「あいつらに何言っても動じないからな……まあ、今度ばかしは効果はあるだろう。何せ、待望の新入部員に一喝されたんだから、普通は恥ずかしくて練習をまじめにしたくなるはずだよ」
「だと、良いんですけど」
僕の予想に、梓の不安そうな声で相槌が返ってきた。
いくら、動じる気配のない二人でも梓の一喝はかなり効いている……はず。
「お先にどうぞ」
「あ、はい。こんにちは」
先に梓を中に入れ、僕も続いて部室に足を踏み入れる。
「……………」
僕の目の前に広がる光景は、練習の準備を整えている唯たちの姿ではなく、ティーカップ片手に談笑している唯と律、ムギの姿だった。
(全然動じてもいない)
僕の予想は最悪な形で破られることとなった。
隣にいる梓も呆れた様子だった。
「あ…………」
そして、僕たちが来たことを最初に気づいたのは唯だった。
「お前ら、いい度胸してるよ。本当に」
「い、今から練習をしようと思ってたんだよ! 本当だよ!?」
僕たちの視線に、唯たちは慌てて楽器を手にした。
しかもそれらはすでに後ろの方に置いてあったものだったことから、僕たちが来たら誤魔化せるようにしたのかもしれない。
……本当に練習をしようとして、用意していたが皆が来ないのでお茶を飲んでいたという見方もできなくはないが。
できれば、僕もそうであってほしいと思っている。
そして、練習が始めった。
ギターを構えた唯が弦を弾く。
だが数回ほどコードチェンジをしたところで、力突きたのか地面に座り込んでしまった。
「はや!?」
「お腹がすいて力が出ないよー」
(そんなのあるはずがないだろ)
唯の言葉に、僕は心の中でツッコみを入れる。
そこへすかさずムギが手にしていたケーキを一口サイズフォークに刺して唯に差し出す。
「う、うま!?」
「なぜに!?」
ケーキを一口食べた瞬間に、速弾きでコードチェンジがうまくできるようになっている唯に、驚愕の声しか出だせなかった。
「梓ちゃんも、一口」
「え、でも……」
速弾きで疲れたのか若干疲れたような表情を浮かべながら一口分のケーキをフォークに乗せて差し出す唯に、梓は躊躇っていた。
だが、何かに負けたのか梓はケーキを口にした。
「あ、おいし――」
「ん? 今なんか言ったか?」
ケーキの感想を口にした梓に、律がすかさずツッコんだ。
「おしいって言ったんです!」
(いや、それ無理があるから)
梓の返事に、僕は心の中でそう口にした。
「うぅ~ん、梓ちゃんは気に入らなかったか」
「うぅ……」
残念そうにケーキが乗っているお皿を見ながらつぶやく唯に、梓の表情は切なげなものとなった。
そんな唯は、梓にケーキが乗っているお皿を差し出した。
すると、梓の表情はまるでひまわりのごとく光輝いた。
だが、逆に唯が腕をひっこめると、今度はどんよりとした雰囲気に包まれる。
そしてまた腕を前に差し出すとひまわりのごとく光輝き、逆にひっこめるとどんよりとした雰囲気に包まれる。
「おもろい」
「後輩で遊ぶな」
若干遊び始めている唯に注意をした僕だった。
ちなみに、この後どうなったのかを目の当たりにした某顧問曰く。
「皆、練習はかどって……って、食べてるし!?」
だった。
「そう言えば、どうしてティーセットを撤去しなかったの?」
「撤去の発起人が……」
山中先生の疑問に肩を震わせた梓の手にはチョコケーキを乗せたフォークが握られていた。
「な、何事も否定するのは良くないかなと思ったので」
「へぇ」
梓の答えに、山中先生たちは意外だと言わんばかりに相槌を打つ。
(間違ってもケーキに買収されたとは言えないもんね)
「梓ちゃんはいつギターを始めたの?」
「小4からです。親がジャズバンドをやっていた影響で」
唯の問いかけに、梓が答えるが完全に初心者というキャリアではない。
(単純計算で5年はやっているのか)
もはや中級者と言っても過言ではない年数だった。
「そう言えば、唯先輩はどうしてギターを始められた切っ掛けってなんですか?」
「え!? えっと……」
梓の疑問に、唯は視線をそらせながら口笛を吹いて誤魔化した。
経緯は律から聞いたが、ものすごい勘違いをしていたということは言えないだろう。
「あ、あの」
「いやー! 新入部員ができて良かった!」
答えようとしない唯を不思議に思った梓が声を掛けた瞬間、唯はわざとらしく大きな声で話した。
(今絶対に誤魔化したな)
「こ、浩介先輩の切っ掛けってなんですか?」
「僕? えっと……」
梓からの問いかけに、僕は視線をそらして考え込む。
唯の二の舞になりかけているが、仕方がないのだ。
何せ、彼女ほどファンとして一番怖い存在はいないのだから。
一つでもミスをすれば全て明かされそうな予感さえするほどだ。
「……三歳のころまで英才教育で、ピアノをやっていたから」
「はい?」
結局、この間律たちにした説明と同じことを話すことにした。
案の定梓はあっけにとられた様子でぽかーんとしていた。
「あ、あの。ピアノからギターに行く過程が分からないんですけど」
「ピアノをやっていたけど、飽きたから試しにとばかりにバイオリンをやってそこからチェロ、ハーブと行ってもう弦楽器が無くなったからギターの方に手を伸ばしてみたら意外としっくりきてやっているんだ」
「す、すごく手が広いんですね」
僕の説明に梓は、苦笑しながら大人の対応をしてくれた。
何だか対応まで律の時と同じような気がしなくもない。
「あ、そうそう。私、梓ちゃんの入部祝いでプレゼントを持ってきてるの」
「本当です………か」
山中先生の”プレゼント”という単語に、表情を明るくしながら期待にみちた表情を浮かべる。
だが、プレゼントを目にした梓が固まった。
ムギの横で立っていてよく見えなかった僕は、少し移動してそれを確認してみた。
その手にあったのはネコ耳のヘアバンドだった。
「あ、あのこれは?」
「ねこ耳だけど?」
梓の疑問に、山中先生は分からないのと言いたげな様子で応えた。
「いえ、それは分かるんですけど。これを一体どうすれば」
「ウヒヒヒヒ」
困惑した梓の背後に忍び寄る黒い影。
「ヒィッ!?」
「あー、大丈夫大丈夫。儀式みたいなものだから」
(一体どういう儀式?)
肩に手を置かれた恐怖で体を震わせる梓に安心させるようにかけられた律の言葉に、僕は心の中でツッコんだ。
そんな中、梓は山中先生の魔の手から逃れることができたようで自分の体を抱きしめるようにして距離をとった。
「あらあら、恥ずかしがり屋さんね」
「当たり前です! 先輩方も恥ずかしいですよ……」
初々しいわと言った様子の山中先生に反論しながら同意を求めるように背後に視線を向けた梓は、再び固まった。
僕もその方向を見ると、そこにはムギが何の躊躇もなくねこ耳をしている姿があった。
さらには、律に唯と続いてねこ耳をするという始末だ。
一瞬自分が変なのかと思ってしまってもおかしくないだろう。
「はい。今度は梓ちゃんの番」
唯から手渡されたねこ耳に、梓はこちらに救いを求める。
「抵抗するとひん剥かれるから、素直に応じたほうがいいよ」
「ちょっと、私を一体なんだと思ってるのよ?」
(いつも悪酔いをしている人みたいなことをする人)
口には出して言えないので、心の中で答えた。
「ぅぅ……」
そんな僕の返事に、観念したのか梓は断腸の思いでそれを頭に付けた。
「おぉぉ!」
その姿に、思わず僕も完成を上げてしまった。
それほどまでにねこ耳が似合っていたのだ。
「すっごく似合ってるよ!」
「私の目に狂いはなかったわ」
その姿に満足した様子で山中先生が頷いた。
こればかりは僕も同意せざるを得ない。
(これほどまでねこ耳が似合う人っているのか?)
「梓ちゃん可愛い~!」
そう言って梓に抱き着く唯の気持ちが僕には十分わかった。
「”にゃあ~”って言ってみて、”にゃあ~”って」
さらにそこへ律が追い打ちをかける。
「に、にゃあ~」
「がはっ!?」
ネコの手をしながら上目づかいで鳴きまねをした梓に、僕は深刻なダメージを負い、後ろに下がった。
(な、なんという威力……お、恐ろしい)
梓の恐ろしさを再認識する僕なのであった。
「あだ名は”あずにゃん”で決定だね!」
そして、唯の手で梓へのあだ名は”あずにゃん”になるのであった。
ちなみに、これは余談だが。
「何あれ」
「さあ?」
「あれって二年の人だよな?」
「そうだと思う」
僕たちの教室の前の廊下では、粛清されたためにのびている慶介を不思議そうに見ている後輩たちの姿があった。
この日を境に、慶介は廊下を歩いていただけで注目されるようになったらしい。
本人は喜んでいるので、特に問題はないだろう。
……たぶん。
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