その日、俺は夢を見ていた。
それは、この間のような夢ではない。
目の前にあるのは暴れる巨大な生物。
おそらくは魔物だろう。
周囲には先端が凶器のようなものが付いているツタがひしめき合ていた。
その魔物は何ふり構わず攻撃の手を緩めない。
地面を破壊し、時には森をも破壊する。
まさに地獄絵図。
一瞬、その地獄絵図を醸し出した元凶でもある魔物の姿がはっきりと見えた。
(え?)
俺は動揺を隠せなかった。
(どうして……)
なぜなら、その魔物の姿は
(どうして、■■なんだ?)
■■■だったのだから。
「――――です!! 早く起きてください!!」
「わぁあああ!!?」
夢の中から引きずりだすように、突然耳に聞こえてきた少女の声に、俺は思わず飛び起きた。
(一体なんだったんだ? 今の夢は)
「渉さん!! 大変でありますよ!!」
「な、何!?」
思考に耽っていると、再びリコッタの叫び声に引き戻された。
その後、ドアをけり破るような勢いで中に入ってきたリコッタから、伝えられたことをまとめると次のようになる。
まず、突然レオ閣下が、ビスコッティに宣戦布告をした。
そしてそれの懸賞をガレットの宝剣、『魔戦斧グランベール』と『神剣エクスマキナ』が賭けられたとのこと。
しかも、それにはこっちもそれに見合うものをかけなければいけなくなり、それは宝剣であるということ。
「話は分かった。とりあえず、着替えたいから外で待っててくれる? 2分で終わらせる」
「り、了解であります!」
話を聞き終え、俺がそう告げるとリコッタは慌てた様子で部屋を出て行った。
俺はリコッタが出て行ったのを確認すると、一息ついた。
「今回の宣戦布告とあの夢が、関係がなければいいんだが」
俺は不安を感じていた。
俺が視たあの夢。
それが所謂”予知夢”であるか否かだ。
もっとも俺の場合、視ることはかなり少ない。
しかも見たら俺の場合は必ず現実のものとなってしまう。
つまり、もしあの夢が予知夢だったのなら、あのような魔物が現れるということだ。
その為に周辺はとんでもない状況に陥る。
「………それだけは防がなくちゃ」
俺は再びため息をつくと、着替え始めた。
そして、着替えが終わった俺は、急いで部屋を後にした。
(最悪の事態だけは回避しないと)
そんな、俺の決意と共に。
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