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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第26話 戦闘

「あ、こっちこっち」
「は、早いわね」

驚いたような眼差しを向けながら駆け寄ってくる聖沙さん。
その手にはやや大きめの黒い手提げバッグがあった。
勿論、僕のだが。

「はい」
「ありがとう」

僕は聖沙さんから黒い手提げバッグを受け取る。

「ところで」

聖沙さんはそこでいったん区切ると鋭い視線を向けてくる。

「ちゃんとティーポットとカップは戻したんでしょうね?」
「勿論だとも」

聖沙さんの問いかけに、僕は応える。
確かにちゃんと戻している。

「一体どうやって戻すのよ」
「それは企業秘密」

勿論魔法で。
具体的には転送魔法だが。

「企業って、あなた何か会社でも始める気?」
「それはいいね。預かってから全国各地に1時間以内にお届けしますって」
「………」

冗談で答えたら呆れられてしまった。

「冗談だからね?」
「高月君が言うと冗談に聞こえないのよ!!」

(そこまで言わなくても)

聖沙さんの言葉に、僕はため息をつく。
確かに、一瞬考えたりはしたが。

「ところで、高月君はどうやって―――――モゴゴッ!?」

僕は聖沙さんの言葉を遮るように、口を塞いだ。

「何をするのよ!」
「静かに。聖沙、戦闘準備を」

僕の手を振りほどいて怒鳴る聖沙さんに、僕はそう告げる。
理由は微弱ではあるが感じた魔力。
これは魔族が現れたと見るのが妥当だ。
そして、数瞬後にそいつは姿を現した。

「「にゃー!!」」
「ま、魔族!?」

突如現れた猫耳を付けた二体の魔族に声を上げる聖沙さん。

「ほら、戦う準備を。その為のクルセイダースなんでしょ?」
「うぅ、でも………」

僕が促すが、聖沙さんは躊躇っている。
その隙にも魔族たちは徐々に距離を縮めて行く。

「オーケー。だったら僕がやる」
「え?」

僕の言葉が意外だったのか聖沙さんは声を上げる。

「ほ、本気なの!? 相手は魔族なのよ!」
「本気も本気だ」

僕は聖沙さんに答えながら、手提げバッグを地面に降ろして、中から鞘に収まる一本の剣を取り出す。
鞘から剣を抜く。
やや長めの西洋風の剣は、こういった時のために用意していたお守りだ。
剣を抜いた瞬間に、こちらに近寄る魔族たちの動きが一瞬止まる。
本能から、この剣の恐ろしさを感じたのかもしれない。

「掛かってこい!」
「「にゃー!!」」

僕の声に反応して、猫魔族たちは一斉に動き始める。
放たれるのは螺旋状に渦巻く水流とこちらに迸る電撃。

「せやっ!」
「「にゃ!?」」
「え?!」

気合と共に剣を横に振りぬくとそれらすべてはまるで壁が出来たかのように何かに・・・阻まれる。
その事に驚きをあらわにする猫魔族たちと聖沙さん。
この剣は、魔法などの攻撃を無効化することに特化された物だ。
昔、人間で効果は違うが同じような剣を持って世界を救った英雄がいた。
なので、人間だと思い込ませるのにある種好都合な物であった。

(とは言え、このままでは埒が明かない)

あくまでも、僕がやっているのは”時間稼ぎ”だ。
後ろにいる彼女が決定打を与えない限り、これは永遠に終わらない。

(だったら、無理矢理決定打を与えさせるか)

僕はそう思いつくと、早速行動に移すことにした。

「ニャー!!」
「ッつぅ!?」
「高月君!」

一体の猫魔族が放った火炎が僕の左腕を直撃した。
後ろの方で聖沙さんが悲鳴を上げる。
だが、これは僕の予想通りだ。
彼女に戦わせるために、ワザと僕は左腕に直撃させたのだ。
成功率は低かったが、何とか始まりは良かった。
後は相手の攻撃を避け続けるだけだ。

「「にゃー!!」」

二体の猫魔族は攻撃が当たった事に気をよくしたのか、攻撃の勢いを強める。
僕はそれを紙一重で避けて行く。

(どうでもいいけど、ヤバいな)

左腕を動かす度に鈍い痛みが走る。
どうやら、少々傷が深かったようだ。

(これは覚悟を決めるか)

聖沙さんが決定打を放たない時の対処法を行うことの覚悟を決める。
それは僕の力を解放すること。
そうすれば、この危機を脱することが出来る。
ただし、その後に待ち受ける事態は覚悟しなければならない。
そんな時だった。

「気高く在れ、ノーブレスレイザー!!」

後方から雷撃が放たれた。
それは猫魔族の一体に見事命中した。 

「にゃー!」

そんな猫魔族たちは、まるで逃げて行くかのように僕たちの前から姿を消した。
おそらくは、僕たちを倒すのは無理だと思ったのかそれとも何らかの目的を達成したのか。
どちらにせよ、なんとかしのぐことが出来た。

「あ、ありがとう。助かったよ」
「ありがとうじゃないわよ、馬鹿! あと少しで大怪我してたのよ!」

お礼を言うと、若干露出度の高い黒と白を基調とした戦闘服に身を包んだ聖沙さんが大きな声怒鳴ってきた。

「分かってたけど、僕がやらないで誰がやるんだ? 仲間を呼ぶにしても時間が掛かる中で」
「う゛」

僕の切り返しに、聖沙さんは言葉を失う。
確かに、僕の行為は無謀だ。
だが、それでもこの場でできる人がいないのであれば、それをしなければならない。
それが、僕たちに課せられた使命なのだから。

「……約束して、絶対に今後無茶なことはしないって」
「…………善処する」

聖沙さんの言葉に、僕はそう答えるにとどめた。

「さあ、保健室に行くわよ。その怪我を直さないと」
「ありがとう。心配してくれて」
「なッ! べ、べつに、貴女の事を心配なんてしてないんだからね! ただ、私のせいで怪我をさせたお詫びなんだから!」
「はいはい、分かりました」

顔を赤くして否定してくれる彼女に、僕はさらりと流した。

「~~~~~っ! いいから行くわよ!」
「うわッ!?」

さらに顔を真っ赤にした彼女は、僕の腕をつかむとずんずんと歩き出す。

(掴んでいる腕は怪我をした方なんだけど、黙っておくか)

そう思いながら、僕は保健室へと向かうのであった。

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