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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第17話 変化

11月2日

金曜日のこの日、プリエである変化が起きていた。

「今日ここでウエイトレスをやることになった……」
「パスタにゃ」

赤い髪に赤い目をした小さな女の子がウエイトレスとして来ていた。
来ている服はウエイトレスとしてふさわしいだろうが、耳としっぽが異様すぎる。

(ここまであからさまに”魔族”が来ると拍子抜けするな。もしくはばれないと思ってるのか?)

考えても答えは出ないので、僕はそこで考えるのを打ち切った。

「彼女の教育係は西田さん……は無理だから大森君。貴方に頼むわ」
「酷ッ!?」
「自分がですか?」

神楽の言葉をスルーしつつ、僕は主任に聞き返した。
自分は厨房で料理を作るのが仕事。
ウエイトレスではない。

「貴方の言葉使いとかから判断したのよ。普段それだけ礼儀が出来るのなら、彼女の教育もできるはずよ」
「……分かりました」

主任の評価に、喜んでいいのか迷いながら頷くことにした。

「あ、そうだ。しばらくの間厨房の仕事は休んでくれてもかまわないわ。そうね………3日ぐらいあれば十分よね」
「分かりました」

どうやら、僕は3日限定のウエイターになったようだ。
こうして僕は新人ウエイトレスである、パスタの教育係を務めることになった。










パスタにはウエイトレスとしての態度や流れを説明していった。
飲み込みはいい方であったが……

「何だお前ら。金がないなら出て行くにゃ、貧乏人はいらにゃいのにゃ!」
「お前なんか水で十分にゃ!」
「ここではお金を払う人だけが偉いのにゃ!」

これはパスタのお客さんへの暴言の一部だ。
もう一度言おう、一部・・だ。
そしてそのたびにいさかいが起きる。

「なッ!? あなた何様よ!」
「うるさいにゃ、注文しないのならとっとと出て行くにゃ!」

今もこうやっていさかいが起きている。

「こっちの方からお断りよ!」

そう言って立ち上がろうとする女子学生のテーブルの方に、僕は慌てて駆け寄る。

「すみません。すみません。私に免じてお許しください。彼女には私の方からきつく言いますので」
「ま、まあ……許してあげるわ。だからA定食をお願い」
「申し訳ありません。お詫びにA定食の代金は結構ですので」

何度も何度も頭を下げ続ける僕に、相手の怒りも収まったのか注文をしてきた。

「パぁスぅタぁ!」
「何だにゃ?」

僕はパスタにお仕置きをすることにした。
頭のこめかみに両手の拳を当てる。
そして一気に力を込める。

「この大馬鹿者がぁッ!!」
「うんにゃああああああっっっ!!」

梅干し攻撃に、パスタは絶叫を上げて気を失った。

「西田さん。馬鹿を仮眠室に」
「う、うん」

神楽は引きつった表情を浮かべながら、パスタを抱いて仮眠室に向かって行った。

(これで大丈夫なのか?)

「すみませーん」
「あ、はい!」

一概の不安を抱きながら、僕はオーダーを取りに向かうのであった。















11月5日

生徒会室では、リ・クリエの話が行われていたが、それはやがて苦情の話へと変わった。

「あ、そう言えば何か苦情が来てたって話が」
「プリエの新人アルバイトが横暴で、ウエイターがかわいそう……だそうよ」
「なにそれ?」

シンの疑問に答えるように聖沙が苦情の内容を口にすると、ナナカは首をかしげる。

「取りあえず、行ってみよう」

リアの一言で、生徒会メンバーはプリエへと向かうのであった。










浩介がパスタの教育係になってから、三日ほど経った。
パスタに対する教育は形式上一通り終わった。
そう、形式上・・・は。

「すみません。すみません。私に免じてお許しください。彼女には私の方からきつく言いますので」

今日もまた浩介hは、パスタの暴言の尻拭いに奔走していた。
彼女の暴言は、どんなに日が経っても無くなることはなかった。
いや、さらにひどくなってると言っても過言ではない。

「何だお前ら。金がないなら出て行くにゃ。貧乏人はいらないのにゃ」
(……次から次へとトラブルを招き入れる。不幸の招き猫か? あいつは)

再び浩介の耳に聞こえてきたパスタの暴言に、思わずため息が漏れそうになる。
もっとも、実際に猫ではあるが。

「うーん、美味しい! これ早く新メニューになると良いにゃあ。そうしたら毎日たかるのに!」

そんな浩介の心情など知らないとばかりに、パスタはさらにすごいことを言い放っていた。

「こらそこの貧乏人。がっくりしてる場合じゃない! お前の権力で1月を明日からにするにゃ!」
「ごめん、それは無理」
「本当に役立たずなのにゃ!」

肩を落とすシンにパスタは容赦なくそう言うと、プリエに来ていた彩錦が口を開く。

「パスタはん」
「なんだ良い人間? もう一つくれるにゃ?」

パスタは背後に潜む”それ”に気付くことなく聞くなか、彩錦はパスタの背後を見ながらこう告げた。

「厨房のおばちゃんと後ろの料理人がメンチきってはりますえ」
「っ!?」

彩錦が言い切るのと同時に、ぽふっと音がたてながらパスタの肩に手が置かれる。

「ふふ……ふふふ」

とても低く、冷たい笑い声にシンたちは一歩後ずさる。

「今日で僕の教育係の任もおしまいだ。どうだ? 今日でお前の命も終わらせてくれようか?」

パスタが感じたのは凄まじい怒気と殺気。
後ろを振り返らなかったのは、ある意味正解だろう。
今振り返れば、そこにあるのは狂気に満ちた浩介の顔なのだから。

「明日はねこ鍋定食か。そうだ。どうせなら暴言を吐いたお客様の目の前で解体ショーでも開いてくれようか? パスタ君」

ぞっとするようなことを告げる浩介に、パスタが取った行動は……

「ぎにゃああああ!! また折檻されるにゃあ! 絶壁悶絶唐辛子は嫌なのにゃ!」

大きな声で叫びながら、逃走を図ることだった。
だが、そのかいも空しくパスタはあっさりと厨房の主任に掴まり、そして

「ふにゃああああっっっっ!!!」

凄まじい悲鳴と共に、折檻された。

「お疲れ様どす」
「本当に申し訳……ありません」

それを見ていたシンたちをよそに、彩錦は浩介に労いの言葉を掛ける。
浩介は疲れ切った表情で謝っていた。

「ん? お前たちは……どうしたんだ?」
「あ、うん。ちょっとウエイトレスさんが横暴だって苦情が入ったからね」
「……本当に申し訳ない」

シンたちの存在に気付いた浩介の問いかけに、シンがここに来た理由を告げると浩介はさらに小さくなって謝罪の言葉を口にした。

「あ、いや、大森君が謝ることじゃないよ」
「そう言ってもらえるとありがたい」

浩介のため息は、彼の苦労を把握させるのに十分な物であった。

「彼女は物覚えはいいし、根は優しいんだが………」
「………苦労してるんだね」

浩介の言葉に、シンはその大変さを感じながら浩介に声をかけるのであった。
一方、その頃厨房では

「と、撮るな……ガク」

四肢を震わせているパスタを無情にも写真に収めている、アゼルの姿があったとかなかったとか。

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